大企業ではシステム再構築と戦略的活用への取組み,中小企業では事務効率化への適用段階
例えば、売上計算や会計処理などは、大企業ではコンピュータ導入当初にシステム化の対象とした分野です(参照:「EDPS」)し、小企業でがパソコンを導入したときにはこれらのパソコンソフトを使うでしょう。ですから、「売上計算にITを利用しているか?」の質問には、どちらも「はい」と答えます。ですから、IT適用業務には大差はないといえます(図表)。しかし、次のような違いがあります。
ITの活用では、個別業務を独立にシステム化するのではなく、全社を統合する必要があり、さらに関連会社、グループ外へと対象を広げることにより効果が増大します(参照:「全体最適化と部分最適化」。すなわち、システム間の連携が重要です。
中小企業のなかには、その特徴を活用して、先端的なIT活用をしている企業もありますが、平均的には大企業とくらべて、遅れている状態です。
経済産業省では、「IT経営力指標」として、IT利活用のレベルを次の4つのステージに区分しています。
(図表)
(参照:「IT利活用の4ステージ」)
ステージ1:情報システムの導入の段階(個々の業務のIT化)
ステージ2:部門内最適(部門内で活用)
ステージ3:企業内最適(全社的に「部門を超えて」活用)
ステージ4:企業間最適(取引先、顧客など関係者を含め「企業を超えて」活用)
大企業では、約半数がステージ3や4に達してますが(それでも米国等に比べ劣っている)、中小企業のほとんどはステージ2の段階です。
(図表)
同じような業務をシステム化していても、この面では、大企業と中小企業の間に顕著な差異がみられます。(図表)
中小企業では、企業により大きな違いがありますが、まだステージ1、2の段階、すなわち、事務処理のシステム化に取り組んでいる状態です。EDPS、MISの時代と同じレベルだといえます。
中小企業が、大企業に比べてIT活用が遅れているのには、次の事情があります。
行政は、日本経済成長には中小企業の経営体質の改革が必要であり、そのためにはITの活用が効果的であるとして、IT化への資金援助やITコーディネータ派遣などの施策をしている。ところが、講演会をしてもあまり集まらないし、経営相談でもIT関連の相談は極めて少ない。
ITコーディネータ協会では、その活動の最初を、経営者にIT利用への関心をもたせること、「気づき」に設定したほどである。
経営者がIT化に関心をもたないのは、次のような理由がある。
大企業では、販売システムや会計システムなどの事務処理のシステム化は、すでに数十年前に構築していました。
(参照:「EDPS」、
「MIS」)
しかし、現在でも、その再構築が行われています。
ITを戦略的に活用することの重要性は、1980年代後半でもいわれていました(参照:「SIS」、「BPR」)。これらは継続的に発展させなければなりません。収益につながるシステム、競争優位のためのシステムへの取り組みが進んでいます。
しかし、米国等に比較して、日本の取り組みが不十分であること(参照:「IT適用分野での国際比較」)、成果が十分に実現できていないことが指摘されています。