4ステージ、経営(部門)の壁、企業の壁
経済産業省は、企業のIT利活用の高度化を図るために、2006年に「ITの戦略的導入のための行動指針」を策定し、自社のIT成熟度を確認し向上させる評価方法である「IT経営力指標」に体系化しました。
経済産業省は、企業(特に中小企業)の経営改善を行うにはITの活用が重要だとして、それを「IT経営」と命名しました。そして、企業のIT経営推進を支援するためにWebサイト「IT経営ポータル」を運営しています。
「IT経営力指標」では、IT活用の発展階層を4つのステージに区分しています。(図示)
業種・業態など企業の特徴によりIT化の重点分野は異なりますが、このステージは、企業のIT活用が「部分最適から全体最適へ」と進んでいることであり、IT活用の成熟度を示しているといえます。
また、企業におけるIT活用の発展の歴史の観点では、低ステージの企業は未だに古い時代の位置づけにとどまっているともいえます。(参照「企業におけるITの発展年表」)(説明)
ステージ1は、1960年代のEDPS段階です。あるいはパソコンがオフィスで活用されるようになった、1980年代初頭のOAの初期段階だともいえます。
しかも、EDPSでも「単に手作業の機械化をするのではなく、業務の見直しが必要だ」「個別の業務を機械化するのではなく、全体の観点から統合することが重要だ」と指摘されていたのですから、ステージ2や3ですら、EDPS以前の段階かもしれません。
1970年代にはMISの概念により、経営管理者が企業全体の動向を把握することが重要だといわれました。さらに、1990年代前半のBPRでは、ITは業務改革のインフラだといわれました。これらはステージ2からステージ3へ移行することの重要性を示したものだといえます。
ステージ4での企業間最適化は、1980年代後半のSISで企業間ネットワーク活用が注目され、QR/ECRなど企業間連携が進みました。さらに、1990年代後半にはSCM(サプライチェーン・マネジメント)へと発展しました。
このような概念を的確に把握して実現していたならば、2000年にはすべての企業がステージ4になっていたはずなのです。
この7つの評価項目について、各ステージでのレベルが示されています。(図示)
これにより、自社がどのステージにあるのかが評価できます。経済産業省では、Webサイト「IT経営ポータル」で、「IT経営力評価」を中心に、質問票に回答することにより、自社のステージを知ったり、同業、同規模での統計値と自社とを比較したりできます。さらに、上のステージにするには、どのような改善をすればよいかを知ることができます。
経済産業省は「IT経営力指標」を用いて「IT経営力指標を用いた企業のIT利活用に関する現状調査」を行い、報告書を発表しています。(第4回・2010年)
規模別、業種別などでのステージ分布と動向の解説をしています。米国・韓国との比較もしています。