TSS、DSS、情報検索系システム、OA、グループウェア
コンピュータ利用の歴史はコンピュータ利用の大衆化の歴史,すなわち,EUC発展の歴史だともいえます。それを簡単に振り返ってみましょう。☆
1970年代にTSS(Time Sharing System)が発展し,DSS(Decision Support System)の考え方が普及しました。これにより,エンドユーザが自分の机の上にある端末(パソコン)から,メインフレームを操作して,情報を得ることができるようになりました。
1980年代を通して,TSSの利用は急速に普及し、情報検索系システムの利用形態がポピュラーになりました。
ここで注目すべきことは,簡単な処理に限定されますが,エンドユーザが自分でプログラムを作り情報を入手できるようになったことです。それまではプログラム技術が未発達であったために,プログラムが書けることが特殊知識であり,それが情報システム部門のアイデンティティだったのですが,これが一般的な知識になったのです。また,エンドユーザが自分で情報を入手することが当然となると,それだけエンドユーザの責任が増大したともいえます。
時代 設置台数 技術・概念 出現システム
1960年 会社に1台 EDPS 基幹系システム
1970年 部に1台 TSS DSS
1980年 課に1台 OA 情報検索系システム
1990年 1人に1台 CSS グループウェア
1980年代になると,OAの概念とともにパソコンが普及しました。これによって,個人で管理できるコンピュータを入手できたのです。メインフレームのデータをパソコンに取り込み,パソコンの使いやすいツールを用いて多様な編集加工ができるようになりました。その後,パソコンの普及は目覚しく,現在では1人に1台の環境にもなり,鉛筆やノートと同様の事務用品になってきました。コンピュータの設置台数と情報システムの出現を対応表にすると上表のようになります。
パソコンの普及により,小さいながらエンドユーザが自分で管理するコンピュータを持ったのです。特定の分野では,情報システム部門よりも知識能力の高いエンドユーザも出現しました。その能力により,自分あるいは自部門のローカルシステムを,情報システム部門に頼らずに構築・運用するようにもなったのです。これは,情報システム部門の負荷を減らしますし,全社的にみても望ましいことなのですが,反面,統一性のないシステムが乱立する危険もあります。
1980年代末から1990年代初にかけて,CSSが普及しました。この環境で普及したのがグループウェアです。従来のコンピュータは,文字通りデータを計算処理することが目的でしたのでプログラムが重要でしたが,電子メールや電子掲示板などの利用では,計算処理をするのではなく,文書や画像の伝達や共有などの機能が中心になります。すなわち,コンピュータがコミュニケータとしての利用へと発展したのです。
このようなシステムは,あえてシステムとして構築するものではなく,エンドユーザでも簡単に運用できます。また,基幹業務系システムなどとは異なり,情報を入力することはエンドユーザの恣意に任されています。しかも,エンドユーザからみれば,このような利用のほうが利用度が多いのです。
1990年代中頃からインターネットが急速に普及しました。もはや企業での情報化とは独立に,エンドユーザが世界中の情報を入手したり,世界中に情報を発信することができりようになりました。また,インターネット技術を社内ネットワークに適用したイントラネットが進み,エンドユーザはWWWブラウザだけを使って社内システムも利用できるようになりました。