主張・講演中小企業の情報化

中小企業Webサイト構築の手引き


はじめに

はじめに

インターネットは、中小企業が大企業に互角に戦える土俵だといわれます。実際に小さなベンチャー企業が世界を市場にして発展した例は多くあります。また反面、せっかくWebサイトを開設したのだが、全然アクセスがないという話もよく聞きます。この違いは、Webページのデザインの良し悪しではなく、ビジネスとしてのWeb販売戦略の違いにより生じたのです。
 ここでは、小規模企業が初めてビジネスとしてのWebサイトを開設する手順と、注意事項について説明します。なお、読者はすでにインターネットでWebページを閲覧したり、電子メールを利用したりされているとして、日常的な用語や概念の説明は省略します。私が大学の授業で用いている自作テキストです。基本的な概念の理解に役立つと思います。ご参照ください。
EC(電子商取引)の区分規模BtoC(Web販売)の概要運営電子マネーとポイント


1 まず自ら体験を

1 まず自ら体験を

顧客の行動を体験することが、Web販売戦略を検討する基本です。
 インターネットで商品を購入した人もあるでしょう。その経験がない人は、ぜひ体験してください。経験のある人も、自社のWebページをどうすればよいかの観点から、いくつかの実験をしてください。当然、購入する必要はありませんが、購入の直前まで試みてください。また、注文後の対応なども調べるために、いくつかは実際に購入することを勧めます。

(1)実験対象商品

(1)実験対象商品

典型的な分野と調査するべき特性を列挙します。自社の分野に関係なく多様な分野で実験することが必要です。どのようにして気に入った商品・サービスを探して購入するかがポイントですので、あえてURLは示しません。有名なサイトだけでなく、自分で発見することも心がけてください。

事務用品
ボールペンでも机でもかまいません。商品に関する知識は十分にあります。非常に多様な商品から、自分が求める商品が探しやすいかどうかをチェックすること、少量でもよいか、返品は可能かなどの取引条件が明記してあるかどうかをチェックすることが目的です。
名産品・観光旅館
地方名産の菓子や酒の類です。銘柄も知らないことにしましょう。消費者側には商品知識がありませんし、購入する必要性もないのです。それをどうやって購買意欲に結び付けているかを調べましょう。
観光旅館では、どこに行きたいかを限定しないことにして、どうしてその地域や旅館を選んだのか、どのような情報をあるとよいかを調べましょう。
パソコン
高額取引になりますので、相手の信用度とか決済の方法などを真剣に検討するのに適切です。また、メモリや周辺機器などのオプション指定にどのように対応しているかを調べるのに適しています。
Tシャツ・ファッション服
パソコンよりもさらに趣味が優先する商品です。色や素材を指定できるのは当然ですが、自分がデザインしたイラストを用いたり、体型を入力して模擬試着できるサイトがあります。どのように訴求して関心を高めているを調べます。
旅行
列車あるいは飛行機の予約、宿泊の予約、当地で行われるイベントの予約、名所の桜や紅葉の見ごろなど多くの要素があり、それらがすべて満足すれば予約をするというように、関連するWebサイトが多数になのが特徴です。例えばイベント予約はできたのに宿泊予約ができず、イベント予約を解約するというような手間がかからないように、すべてを一つのWebサイトでチェックできれば便利です。そのようなサイトを探しましょう。
図書
これではアマゾン・コムを対象にします。図書を探すことよりも、実物を見ないでどこまで内容がわかるか、どのような紹介をしているか、過去に検索・購入した内容が画面にどう影響するかを体験します。購買履歴の活用例を知るのに適切です。
(2)チェック項目

(2)チェック項目

この目的は、顧客がどのようにしてWebページをアクセスして購入するのかを、顧客側の行動を知ることにより、以降のWebページ構築の資料にしたいからです。次のような事項を記録しておきましょう。


Web販売戦略
2 Web販売のビジネスモデルを決める

2 Web販売のビジネスモデルを決める

Web販売を検討するには、どのような儲けの手段にするのか、ビジネスモデルを考えることが必要です。それには、  ・現在のビジネスをWebでも行う
 ・実店舗との相互連携を重視した新サービスを行う
 ・新しいサービスに進出する
に区分して検討するのが適切です。

(1)Web販売の特徴

(1)Web販売の特徴

Web販売は通信販売であり無店舗販売です。従来から存在した通信販売でも、
  ・店舗展開に要する費用や店員が不要になる
  ・24時間365日、全世界からの注文に応じられる
  ・店舗在庫が1か所になる、あるいは注文生産になるので在庫を低減できる
  ・個人情報が入手できるので、個客マーケティングができる
などのメリットがありますが、さらに、Web販売では、次の特徴があります。最も重要なのは、商品カタログがWebページになるので、その配布が不要になることです。

このように、Web販売サイトでは(特に中小企業では)、狭くて深い専門店のほうがよいのです。
 酒店ではビール、ウイスキー、日本酒など多くの種類を取扱っているでしょうが、それをすべて対象にするのはではなく、ワインだけに絞る。しかも、ハンガリーのワインだけに絞り込んで、そこの銘柄については日本では類を見ない品揃えをするとか、ハンガリーワインについての薀蓄を示したほうが効果的なのです。地酒についても同様で、その地酒の由来とか、それに関する生産者の想いなどを掲げるほうがアクセス増加、売上増加につながるのです。

自社の弱みを逆手にとったビジネスもできます。木彫り人形を制作しているが、職人肌で気が向かなければ作らないとか、どんな作品ができるかわからないことを、うまくPRすることにより、会員になってもらいます。できたときに電子メールを送るから、そのときにWebページを見て、興味があったら注文してくれというようなビジネスすら成立するのです。

(2)実店舗との相互連携

(2)実店舗との相互連携

実店舗とWeb店舗の特徴を考えて、相互に連携することを重視したマーケティング戦略をクリック・アンド・モルタルといいます。Web販売での多くの成功例は、この戦略を採用しています。

色の種類が多いTシャツの販売を考えます。実店舗では陳列面積の制約により、すべての色の商品を揃えることはできません。それに対して、Web販売では全色(商品実物がないものまで)を陳列できます。
また、スタンダードの商品はインターネット販売するが、凝った商品は店舗で相談して作成するというように商品を区別する場合もあります。
 店舗で「他の色はWebサイトで」、Webページで「特殊な仕様は店舗でご相談」というように、Webサイトと実店舗が連携し誘導することにより相乗効果が得られます。

アパレル関係では実物を見たり試着したりする必要があるので、インターネットには不向きなように思われますが、逆転の発想によりビジネスになるのです。一方的な商品展示ではなく、袖、身頃、衿など部品毎に色を変えて個性的な商品にしたり、イラストや写真を送ってデザインしたりする機能をもたせることができます。さらには、顧客の写真や体型を入力すると、本人が実際に着たときの動きや、シチュエーションに合わせた動画像も見せることもできます。
 実店舗では、長時間をかけて多様な注文をつけたり多数の試着をして、買わずに帰るのは気がひけますが、インターネットでは店員の気持ちを考慮する必要はありません。それで、このような機能はWeb販売に適した機能だといえます。
 しかし、顧客は実物を見て実際に試着してから購入したいと思います。それでWebサイトで検討したものを製作して実店舗に送り、そこで確認してから購入するサービスをします。
 逆に、先に実店舗にきた客が、適切な商品が見つからないときには、Webサイトの紹介や使い方の説明をして、Webサイト利用へと誘導することができます。

(3)新規ビジネスへの進出

(3)新規ビジネスへの進出

Webサイト構築は、実店舗展開よりも簡単にできるので、他分野に進出するのが比較的容易です。現在はソフトドリンクだけを取り扱っているが、仕入先が酒類も取り扱っているので、酒類をWebサイトで販売しようというような場合です。
 このような場合には、次のような法律に注意しておきましょう。
酒店(酒税法)[国税庁] http://www.nta.go.jp/category/sake/sake.htm
医薬品販売(薬事法)[厚生労働省] http://www.houko.com/00/01/S35/145.HTM
旅行代理店(旅行業法)[国土交通省] http://www.mlit.go.jp/hourei/all.html
オークション(古物営業法)[警視庁] http://www.npa.go.jp/safetylife/seiankis9/kobutu.htm
職業紹介(職業安定法)[厚生労働省] http://www.houko.com/00/01/S22/141.HTM
不動産業(宅地建物取引業法)[国土交通省] http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S27/S27HO176.html

最近はマッシュアップという、他社のWebサイトを利用する技術が普及してきました。例えばグーグルでは地図情報とそれに自由に情報を付け加える仕様(APという)を公開しています。それにレストランの位置を加えて閲覧者がそれをクリックすると、該当するレストランのWebサイトに移動します。そして、このレストラン地図の作成者はレストランから紹介料を得るというビジネスになります。
 このようなビジネスは本業というより副業的なものでしょうが、適切なビジネスモデルを考案することができれば、人気のあるポータルサイトにブレークすることもありましょう。あるいは、商店街や同業者が共同して展開することも考えられます。


3 Webサイトでの機能範囲を決める

3 Webサイトでの機能範囲を決める

Webサイトで、商品の紹介だけを行うのか、受注から代金決済までも行うのかにより、開発・運用費用は大きく異なりますし、組織体制や情報システムにも影響を与えます。

Web販売のビジネスモデルが明確になったら、実際に何をWebサイトで行うのかを考えることが必要になります。
 これのいかんにより、Webページ開設の費用がほとんど無料に近いものから数百万円まで変化しますし、場合によっては、現状の業務を全面的に変更しなければならないこともあります。

特殊技術を持つ製造業が販路を拡大することを目的とするのであれば、単に一方的に見せるだけのWebページだけでも効果があるでしょう。小売業でも、Webページには商品やサービスの紹介をするだけで、実際の受注はWebページとは切り離して、電子メール、電話、郵便などの手段を使い、代金決済はオフラインでの銀行振込などを使うことが考えられます。
 このようなケースでは、Webサイトは一方的な情報提供だけでよいので、その作成も運営も比較的簡単です。しかし、実店舗ならば商品と代金を交換するだけでよいのですが、Web販売は通信販売です。受注や問合せへの対応、宅配便による出荷、入金処理、個人情報保護など、従来とは異なる業務への体制や管理システムが必要になります。

Webページから注文を受け、決済もオンラインで行うケースでは、買い物かご、配送管理、決済などの機能をWebページに持たせることになります。双方向のシステムになるので、Webページの作成が複雑になります。しかも、決済方法をクレジットカードにするのか、宅配便での代金代行にするのか、振替ならば前払いなのか後払いなのか多様な手段があり、それぞれに必要なシステムを構築する必要があります。特にクレジットのオンライン決済を採用するときには、セキュリティ対策が大きな問題になりますので、自社での運営では限界があります。

さらに、Web販売システムの受注と在庫確認、配送、代金処理までのバックオフィスのシステムとを連動させることが考えられます。受注時に納品日まで通知するサービスをするならば、それらの全システムが365日24時間オンラインで連動させることになります。おそらく、従来のシステムをそのまま使うことはできず、近畿開発あるいは全面改訂する必要があります。そのようなシステムまで、独自仕様で開発しようとしたら、数百万円から数千万円の費用がかかるかもしれません。しかも、その運用体制が必要になります。後述するサイバーモールが提供する機能程度に抑えておくほうが無難です。

Webページの開設では、とかくWebページを作ることに関心が集中しますが、実際にはこのようなバックオフィス業務の整備のほうがはるかに重要なのです。


4 サイト運営の方法を決める

4 サイト運営の方法を決める

Webサイトを運営するには、それを公開するためのコンピュータ(それをWWWサーバといいます)に載せることになりますが、そのサーバの運用を自社で行うのか、アウトソーシングするのかを決める必要があります。
 Webサイトの構築や運営によほどの自信がない場合は、サイバーモールへの出店が適切です。そうでなければ、ホスティングサービスやSaaSを利用します。

(1)自社で運営する

(1)自社で運営する

単にWWWサーバを開設するだけであれば、費用もたいしてかかりませんし、高度な技術も必要ありません。
 非常に極端な話をすれば、インターネットに常時接続できるパソコンがあるならば、それをWWWサーバにすればよいのです。サーバに必要なソフトウェアもフリーソフトを利用すれば、直接的な費用はあまりかけなくても実現できます。
 個人用のWebページ作成用ソフトは数千円で入手できますし、電子店舗用に必要なページを作成するためのテンプレートなどを揃えているものもあります。ワープロやデジカメが使える人ならば、Webページを作って、そこから電子メールを受け取るだけならば、1週間程度で習得できます(出来栄えは別として)。そのしかし、買い物かごや決済の機能はついていません。

このように簡単なことですから、パソコンの初心者でもWWWサーバを運営することはできます。実際に自社運営をしている中小企業も多くあります。しかし、次のような限界があるので、私はこれはお勧めしません。

現実の費用
個人の趣味的なWebページならばこれでもよいでしょうが、ビジネスとして運営するのであれば、WWWサーバがダウンしたら利用者に迷惑です。ダウンしない対策や早急な復旧の対策をするのは、素人では困難です。在庫確認など他のシステムと連動させるには、システムが完全に正しく動くことが必要ですが、そのようなシステムは素人にはムリです。ましてクレジット決済などのシステムは、誤処理や漏洩など万一のことがあれば大変です。これらのシステムを専門業者に依頼したら、数百万円の費用がかかります。
セキュリティ対策
WWWサーバは常にウィルスや不正アクセスの脅威にさらされています。顧客の個人情報が漏洩する危険もありますし、そのサーバを踏み台にして、第三者にウィルスを伝染させたり、第三者のサーバの攻撃をしたりされる危険があります。あなたが被害を受けるだけでなく、他人への加害者になる危険もあるのです。すなわち、セキュリティ対策は社会的責任なのです。
 しかも攻撃はいつ発生するかもわからないのです。365日24時間監視する必要がありますし、セキュリティ対策には専門的技術が必要です。そのため、よほど自信がない限り、自分でサーバを運営するべきではありません。
(2)サイバーモールに出店する

(2)サイバーモールに出店する

Webサイトの開設はあくまでもビジネスの手段であり、サーバを管理することは自社の本業ではないでしょう。それならば、サイバーモール(仮想商店街)に加入するのが簡単です。
 これは、大きな店舗ビルにテナントを出すようなものです。たとえば、「楽天市場」では、Webページ作成から決済までの通常の機能があらかじめ用意されており、簡単に利用することができます。また、Webページ作成やWeb販売の支援(無料と有料がある)が得られます(参照:楽天「出店資料のご案内」)。

サイバーモールに出店する利点として、そのサイバーモールの知名度によるアクセス増大が期待できます。しかし、数千の店舗がある巨大なビルにテナントとして出店してもお客がくるかどうかはわからないように、このようなモールに出店したからといって、かならずしも多くのアクセスがあり、受注につながるとはいえません。まして近くに強力なライバル店舗があるのですから、個性のない店舗は見向きもされないことになります。

(3)ホスティングサービスやSaaSを利用する

(3)ホスティングサービスやSaaSを利用する

Webサイト作成などに自信があるならば、せめてセキュリティ対策などサーバの管理だけでも外部に委託するほうが安全です。プロバイダが所有するサーバやディスクを利用度に応じた料金で貸し出し、その管理も行う形態をホスティングサービスといい、特にWebサイトとして利用するものをレンタルサーバといいます。しかし。一般的なホスティングサービスでは、買い物かごやクレジット決済など電子取引に必要な機能まではサポートしていません。

それに対して、近年はSaaS(Software as a Service)あるいはクラウドコンピューティングという形態が普及してきました。これは、Web販売に限定したものではありませんが、受注や決済などの機能を独立に、あるいは統合したソフトウェアをプロバイダが用意しておき、ユーザはそれを適当に組み合わせることにより、システムを構築できるというサービスです。システムもデータもプロバイダ側におき、ユーザ側にはそれをインターネットでアクセスするクライアント(パソコン)だけをもてばよいという仕組みです。初期費用が少なくて済むので、中小企業(特に小企業)のIT化に適した環境であり、国もこれの推進をしています(参照:経済産業省「J-SaaS」)。
 Web販売はSaaS利用に適した分野です。サイバーモールとホスティングサービスの中間的な位置づけだといえましょう。サイバーモールのような自由度が少ない丸投げの形態では困るが、自社で構築・運営をするのは困難だという場合に適しています。


売上向上の方法

ここまでで、基本方針が決まりました。ここから実際にWebサイトを構築することになります。しかし、単にWebサイトを構築しただけで売上が増大するような甘い世界ではありません。
   ・サイトへのアクセス数(来客者)を増やす
   ・来客者を販売ページへ誘導する(ナビゲーション)
   ・購買率を高める。
   ・リピート率を高める。サポータになってもらう。
などの対策が必要になります。
 ここで、先にお願いした「まず自ら体験を」が重要になります。体験サイトで購入した(しなかった)理由を検討しつつ、以降をお読みください。


5 アクセス数を増やす

5 アクセス数を増やす

ともかく来店してもらうことが大切です。インターネット環境では、Webサイトに多数アクセスしてもらうことが必要です。Webサイトに到達するには、
  ・直接URLを入力する(「お気に入り」からもある)
  ・検索エンジンのリストから
  ・他サイトからのリンク
があります。これらのすべてについて対策を講じる必要があります。

(1)URLを知ってもらう

(1)URLを知ってもらう

最初に、Webサイトに来るプロセスでは、検索エンジンや他のサイトのリンクによるのが大部分で、URLを入力して直接に来客することは少ないでしょう。しかし、何度も来客する場合には、そのプロセスを再現するのは困難ですので、URLによる来客が多くなります。その場合でも、「お気に入り」に登録してあればURLを入力する必要はないのですが、通常は「お気に入り」にしてもらうことは期待できません。それで、URLを知ってもらうことが必要です。
 名刺、封筒、ちらしなど、自社のすべての印刷物にWebページのURLを入れましょう。特に企業間取引の場合は、これがかなり有効です。新聞・雑誌などに広告をする場合も同様です。

ホスティングサービスでは、通常はドメイン名が自社の自由にはなりません。たとえば、http://home.ocn.ne.jp/kogure-shoten/ というようになってしまいます。これでは、「借り物=真剣ではない」という印象を与えますので、自社のドメイン名を取得して http://kogure-shoten.co.jp/ としたほうが適切です(ドメイン名取得には1万円/年~2万円/年程度です)。
 ドメイン名には工夫が必要です。 http://kogure-shoten.co.jp/ のように屋号を用いるのは、有名な大企業ならそれが適切でしょう。しかし、無名の中小企業が消費者を顧客とするとき、顧客はそのドメイン名を連想することはありません。http://unagi.co.jp や http://www.wine.com のように、訴求するものをズバリと示すほうが記憶に残ります。

Webページには多くの広告があります。Web広告は新聞広告を抜き、テレビ広告に次ぐ第2の広告媒体に成長しています。しかし、ヤフーやグーグルなどの有名サイトでは費用がかかるので、通常の小規模な取引、特に小額商品の取引には向かないと思います。また、自社商品とはあまり関係のないサイトでは、ヒットする確率はかなり小さいでしょう。

(2)検索エンジンで上位に表示させる

(2)検索エンジンで上位に表示させる

検索エンジンからの来客が大多数です。ところが、その検索結果で上位(その最初のページ、通常は20位ごと)に表示されなければ無視されてしまいます。有料で別枠に表示する手段がありますが、費用がかかるので、中小企業が最初に行うのには不適切です。Yahoo!のような登録制もありますが、現在では申し込んでもなかなか登録してもらえません。それで、キーワード検索でリストの上位に表示されるようにする工夫が必要になります。その技術をSEO (Search Engine Optimization:サーチエンジン最適化)といいます。SEOのノウハウをサービスする会社もあります。
 SEOにあまりにもこだわるのは不適切ですが、ある程度の知識は持っていたほうがよいでしょう(参照: Google「Google のテクノロジー」アイオイクス「SEO Japan」

有名サイトにリンクを依頼する

SEOで最も重要な要素は、良質のサイトからリンクをしてもらうことです。逆に、いかがわしいサイトからのリンクはマイナスになります。リンクをすることを商売にしているサイトなどは避けたほうが賢明です。また、知り合いのサイトから相互リンクの誘いを受けたとき、そのサイトが自社サイトと無関係だと、来客が違和感をもつことがあるので注意しましょう。
 中小企業にとって、最適な「良質サイト」は、その地域の地方公共団体、商工会議所、業界の協会などがあります。地域名産品や旅館ならば観光協会の最適です。これらは、一般に検索エンジンの上位に表示されるため、検索エンジンのSEO対策だけでなく、それらのサイトのリンクによるアクセスも期待できます。また、これらのサイトは信用が高いので、間接的に自社サイトの信用にも役立つでしょう。
 公共団体では特定の企業を優遇するのを拒否する場合もありますが、近年では地域振興手段、経費削減目的により広告を出すところも増えています。また、公共団体サイトの制約をカバーするために、地域SNSが成長しているところもあります。このようなサイトに依頼をすることが重要です。

リンクしてもらえるコンテンツにする

あえて依頼をしなくても、先方が自主的にリンクを張るのが理想的です。それには、自社サイトが付加価値が高いことが要件になります。例えば銘菓のサイトならば、単に販売のページだけではなく、銘菓の由来、生産でのこだわり、地域の伝統など、関連する質の高い情報を掲載することにより、リンクされる機会が増大します。これこそ、最大のアクセス向上手段だといえます。
 もし、自分でそのようなコンテンツが作成できないときは、他の優れたサイトへのリンク集にすることもできます(諸説がありますが、単なるリンクは著作権の侵害にはならないし、許可を得る必要もないといわれています)。

SNSに加入する

「良質サイトからのリンク」の亜流として、有名なSNSがあります。検索エンジンにより異なりますが、一般に有名SNSでのページは、上位に表示される傾向があります。それに加入して、自社サイトへリンクする記事を投稿するという手段も有効です。


6 販売ページへの到達率をあげる

6 販売ページへの到達率をあげる

このWebサイトに到達した人は、店舗内に入ってきた顧客です。顧客はなんらかの目的をもっています。ところが、顧客はせっかちです。数回クリックしても目的の情報が得られなかったら、さっさと他のサイトに移ってしまうでしょう。インターネットでは、他店舗(他のWebサイト)に行くのが簡単だという特徴があります。また、販売ページに到達してから、それを注文するのにどうしたらよいかわからないし、取引条件も不明だというのでは困ります。

スタートページに来た人は既に店内にいるのでから、重要なのは店内案内です。最初に来店した人には、目的の商品はどこにあるのか、用件を果たすにはどこに行けばよいのかがよくわかることが重要だし、再来店した人には、目新しいものは何かがわかることが肝心なのです。
 また、スタートページ以外のページに直接入ってくる人もいますし、操作中にさまよって目的以外のページにいってしまう人もいます。その場合に現在の位置(スタートページとの関係、目的ページへの近道など)を明示することが必要です。これらをナビゲーションといいますが、Webサイトのわかりやすさの多くはナビゲーションの巧拙によることが多いのです。
 実店舗でいえば、入口に案内係がいて目的の売場へいく適切な方法を示すことができ、どの売場の店員も他の売場への経路を知っていることです。これは接客能力の基本であり、顧客からの評価の大きな要素になります。それだけ、ナビゲーションの巧拙は重要なことなのです。
 ナビゲーションは、リンクにより行うのが通常ですが、「サイト内検索」も役立ちます。グーグルなどが無料でその手段を提供しています。

スタートページを看板だと誤解しているページがよくあります。ふんだんに画像(音声や動画まで)を使って美しいページにしたがります。それなりの美的センスは必要ですが、顧客は、Webページに芸術性や高度な技術を求めているのでありません。
 一般に画像などを多く使うとページが重くなります。従来から、顧客はせっかちで、8秒で表示できなかったら他のページへ移るという8秒ルールがありました。ブロードバンドが普及した現在では2秒ルールになったといわれています。顧客にいらいらさせることは、顧客満足にもとります。


7 購入率をあげる

7 購入率をあげる

購入ページに到達したことは、目的の売り場に来たことです。しかし顧客は買おうかやめようか迷っています。店員の対応が重要な場面です。
 実店舗での販売とWeb販売での顧客行動の違いを理解して、長所を生かし短所を補うことが大切です。

(1)購入する気持ちにする

(1)購入する気持ちにする

商品検討の情報・機能を提供する

実店舗ならば実物がありますし、洋服やアクセサリなら試着ができます。洗濯やアイロンができるかなど店員に聞くことができます。ところが、Webサイトでは、そこに記述されていることだけで判断しなければならないです。先に示したように、部品の組み合わせや、仮想試着、シチュエーションでの動画像などが見えるようになっていれば、実店舗以上の満足が得られるかもしれません。
 期待した以上の思いがけないサービスに出会うと、実店舗以上に顧客満足を得ることができます。しかし、提供者の独りよがりでは意味がありません。顧客の身になって、どのような機能が必要なのかを考えることが必要です。

インセンティブも必要

Web販売では、販売コストが低減されること、受注後の処理が容易になること、個人情報が得られることなど、店舗に大きなメリットがあります。これは顧客の好意によるものだと考えて、そのメリットを還元するべきです。
 値引きやおまけをするのが一般的ですが、場合によっては実店舗の販売に不適切な影響を与えることがあります。それを防ぐために、例えば壁紙や着メロの提供など、Webサイト利用に合致したようなサービスを工夫する必要もありましょう。適切なサービスをするためにも、顧客の分析が必要ですし、サービスの選択を分析して顧客特性を把握することができます。

(2)代金支払手段は多様なオプションを

(2)代金支払手段は多様なオプションを

代金支払には、クレジットカードによる引き落とし、オフラインでの銀行振込、宅配業者による代行など多様な手段があります。漏洩が危険だとしてクレジットカードを避ける人もいますし、わざわざ銀行に行くのは面倒だという人もいるように、顧客の価値観も多様です。できるだけ、多様な手段から選択できるようにすることが適切です。
 サイバーモールに出店するのであれば、クレジット会社や宅配業者との交渉はサイバーモール事業者が行いますが、自社運営の場合は自分で交渉しなければならず、現実には限定されてしまいます。

(3)信用が重要

(3)信用が重要

実店舗では代金と引き換えに商品を受け取りますが、Web販売では、クレジットカード番号を伝えたり先払いします。商品が来ないのではないか、Webサイトの説明とは異なる粗悪品ではないか、個人情報が他の目的に使われたり漏洩するのではないかという不安があります。
 実店舗でも信用が重要ですが、店舗や店員の様子からある程度の判断ができます。いかがわしい雑居ビルの一室で黒シャツの連中がたむろしている場所では、まともな取引ができないことは明らかです。ところがWebページでは、瀟洒なショッピングビルの写真を掲げ、誠実さに満ちた記事にすることは簡単です。それで、Webサイトでは、実店舗以上に信用を大切にすることが必要なのです。

法律やガイドラインを守る

Web販売に関する法律に、特定商取引法があります。「この法律は、特定商取引を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」ものであり、Web販売も特定商取引に含まれます、
 Web販売サイトに関する主な事項を列挙します。
 ・広告の表示(法第11条)
   ・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
   ・販売価格、販売価格や送料等以外に購入者等が負担する費用
   ・代金支払時期と方法
   ・商品の引渡時期・方法
   ・ソフトウェ販売では動作環境
   ・相手方の承諾がない広告電子メールの件名欄の冒頭に「未承諾広告※」
 ・誇大広告等の禁止(法第12条)
 ・前払式通信販売の承諾等の通知(法第13条)
 ・顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止(法第14条)
   例えば、インターネット通販では
   ・あるボタンをクリックすれば有料申込みとなることを、容易に認識できるようにする
   ・申込みをする際に、消費者が申込み内容を容易に確認し、訂正できるようにする

また、Web販売では、必然的に個人情報を取り扱います。それで、個人情報保護法での個人情報取扱事業者の義務が課せられます。これに関しては、既にポピュラーだと思いますので説明は省略します。

日本通信販売協会(JADMA)は、「通信販売業における電子商取引のガイドライン」を策定しています。特定商取引法に準拠して解説するとともに、自主的に追加すべき事項を示しています。

プライバシーマーク等の取得

企業が情報セキュリティ対策や個人情報保護対策をマネジメントとして、適切に取り組んでいることを、第三者が査定して、それに合格するとWebページ等に認定マークの表示を許可する制度があります。個人情報保護を対象にしたプライバシーマークがポピュラーですが、次のように多様な団体が同様な制度を運営しています。
 これらは必須ではありませんが、権威のある協会等による「お墨付き」ですので、利用者への信用を高めるのに効果的です。

自主的な表示も

表示義務はなくても、信用を高めるために、積極的に情報提供をしましょう。

プライバシーポリシー、セキュリティポリシー
これらは、経営者が責任をもって個人情報保護やセキュリティ対策に取り組むこと、その基本方針を社内外に宣言する文書です。プライバシーマークやISMSマークの取得には必須の文書ですが、マークの取得に関係なく掲示することが望まれます。
クーリングオフの自主適用
Webページでの取引は、消費者が熟慮する環境があるとして、法的にはクーリングオフの対象にはなりませんが、自主的にそれを設定することは顧客に大きな安心を持たせます。
会社情報
顧客がこのサイトの信用を調べられるように、会社情報が必要です。パンフレットの「会社案内」に株主総会の「事業報告書」を合わせたような内容にすればよいでしょう。
取引での各種注意事項
発注ボタンを押したとき、応答が遅いとクリックをして二重発注をしてしまう場合があります。それを防ぐための表示だとか、発注ボタンを押してもすぐには受注とせず、確認の表示をして再クリックをさせるとか、「メールで確認書を送るので、それで確認の返信をする」というような手順にすることも必要です。これらの手段はトラブルが発生したときの責任を明確にすることからも重要です。

暗号通信は必須

個人情報を通信するので、その暗号化は重要です。一般にはSSL(Secure Socket Layer)という標準的な手順が用いられます。その手順は、通常のブラウザに標準装備されているほどポピュラーなものですが、情報の機密性により、さらに厳格な手順が適切なこともあります。また、店舗側はあらかじめ認証局に電子署名の認証を受けておく必要があります。


8 リピータ、サポータになってもらう

8 リピータ、サポータになってもらう

1回のアクセスですぐに購買につながることはありません。1回の購買だけでリピートがないのは、商品やサービスに満足しなかったからです。Web販売では、通りすがりにショウウインドウを見て来店し買ってもらう機会は非常に少ないのですから、実店舗以上に、リピート客になってもらうことが必要です。
 実店舗では、新聞チラシやダイレクトメールが再来店率を高めていますが、電子メールでの広告や勧誘は迷惑メールとされて、むしろ店舗のイメージを悪くする危険がありますし、法律でも厳しく制限されています。顧客に受け入れられ喜ばれるような電子メールの運用を工夫する必要があります。
 Web販売では、実店舗以上に口コミの効果が大きいといわれています。インターネットでの口コミとは、ブログなどでの発言です。これを適切に運用することにより、サポータになってもらえるのです。

(1)フォローアップを誠実に

(1)フォローアップを誠実に

受注後の連絡

発注から商品到着までの間、顧客は心配しています。それを解消するためには、状況を報告することが求められます。
 受注したら直ちに、受注受理、納品予定を電子メールで通知します。受注画面でも確認表示をしますが、それとは別に電子メールで連絡することにより安心感が増します。これは、本人が発注したことを確認して、後日のキャンセルを予防する手段にもなります。
 納品までの日数がかかる場合は、現在どの工程になっているかを検索できるWebページを提供します。そして、発送時には電子メールで連絡します。
 パソコンや家電のような耐久商品の場合は、後日に使用感を尋ねる電子メールを送ると信頼感はさらに向上します。ここまで行えば万全だといえましょう。

ヘルプデスク

問い合わせや苦情の窓口をヘルプデスクといいます。この応対が信頼感や満足感に大きな影響を与えます。よくある不満に、
  ・電話がなかなかつながらない
  ・たらいまわしにされる
  ・状況の理解ができない
  ・適切な回答が得られない
などがあります。

 「なかなかつながらない」のは担当者数の問題ですが、応対時間を短くすることが効果があります。それは残りの3つの背景にあることと一致します。顧客に納入した商品の仕様、これまでの質問、類似質問への対処方法などが瞬時に対応者のパソコン画面に表示できる仕組みを構築することが効果があります。

情報システムの整備

受注後の連絡作業に人手をかけることはできません。情報システムで自動化する必要があります。そのためには、受注後のバックヤードシステムを整備する必要がありますが、これらは本来、生産管理のために必要な情報システムです。ヘルプデスクでのデータ整備も、Web販売の有無によらず、顧客管理や品質管理で必要なことです。
 Web販売を行うのでこのような情報システムを構築するというのではなく、本来必要なことなのに拘置していたが、Web販売は実施への絶好の機会だと認識するべきでしょう。

(2)Webページの更新を頻繁に

(2)Webページの更新を頻繁に

会社を訪問したときに、去年のカレンダーがかかっていたら、もうそれだけで会社の状況がバレてしまいます。それと同様に、作りっぱなしで更新されていないWebページでは、その内容が現在でも有効なのかどうかも疑問になります。季節外れの商品が並んでいたり、「new!」マークがあるのに、その日付が1ヶ月も前だというのでは、Webページへの取り組み姿勢がバレてしまいます。
 リピータは、新しい発見を期待しています。前回は春物を購入したが夏物にはどんな商品があるだろうかとか、 前回訪問したときに面白い企画があったがその後どうなっているだろうなどを期待しているのです。それに応えるページにすることが期待されます。
 さらには、冒頭の「まず自ら体験を」でのアマゾン・コムのサイトのように、過去の訪問履歴や購買履歴などから、顧客をいくつかの層に分類して、それぞれに応じたページをアクセスしやすいように工夫すると、リピータ客の満足が向上します。

(3)ダイレクトメールの工夫

(3)ダイレクトメールの工夫

迷惑メール防止法による規制

購入客に新商品のお知らせのような電子メールを送付することは、リピート率を高めます。反面、多数の広告メール(いかがわしいものが多い)が迷惑メール(スパムメール)であり、迷惑メール防止法(正式名:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)が定められています。
 広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールを特定電子メールといいます(第2条)。そして、あらかじめ、その送信を求めたり送信をすることに同意(オプトインという)した人、あるいは、送信者と取引関係にある人以外の人に特定電子メールを送信してはならない(第3条)し、以前にオプトインしていた人が、受信拒否の通知をした(オプトアウトした)ときには送信してはならないと定められています。

先の「受注後の連絡」は取引に関係するものなので、特定電子メールではありませんが、ダイレクトメールはそれに相当すると解釈されることがあります。それを回避するために、Web販売ページあるいは受注連絡メールなどでオプトインしてもらうのが適切です。

メールマガジン、RSSの利用

メールマガジン(メルマガ)とは、あらかじめ登録したメールアドレスに一斉配信する仕組みです。その登録がオプトインだと解釈されるので特定電子メールにはなりません。しかし、個人でメールマガジンを運営するのは、会員リストの管理が案外大変です。それで、メールマガジンをサービスしているサイトを利用するのが適切です(参照:「まぐまぐ!」「melma!」

RSS(RDF Site Summary)とは、Webページ(むしろブログ)の見出しや要約をデータベースにしたものです。Webページ作成者がRSSのデータ(RSSフィードという)を作成し、閲覧者がRSSリーダーにそのサイトを指定しておけば、Webページが更新するたびに、その要約を読み、必要に応じて本文を読むことができる仕組みです。
 RSSでは、閲覧者がWebサイトを指定するのですから、特定電子メールにはなりませんし、メールマガジンが登録が必要なのに対して、RSSはその必要がありません。しかも、RSSフィードのソフトやRSSリーダーはブログやブラウザで標準装備されています。これは積極的に利用すべきでしょう。

(4)SNSの活用

(4)SNSの活用

メールマガジンやRSSは店舗側からの一方的な情報伝達ですが、SNS(会員制ブログ、ここではTwitterも含めてSNSとします)では、店舗と顧客、顧客間の双方向での情報伝達ができます。
 一般に新顧客拡大では、顧客間の口コミの影響が大きいといわれていますが、インターネット時代の口コミがSNSだといえます。SNSを適切に運営することにより、顧客をリピータに、リピータを固定客に、固定客をサポータにすることができます。
 しかも、小規模なSNSならば、インターネットプロバイダで無料で開設できるし、Webページよりも簡単に作成できるので、ぜひ活用してほしい環境です。
 しかし、顧客のなかには「変わった人」がいて、自己宣伝や誹謗中傷などSNS荒らしをされることもあります。適切な運用が必要です。


Webページの作成
9 Webページでの留意事項

9 Webページでの留意事項

ここからは、Webページを作成するときの留意事項を列挙します。実際の作成は専門業者に依頼するでしょうが、第三者に対しては自社に責任がありますし、Webページの評価で影響を受けるのは自社なのですから、これらの理解が必要なのです。

(1)コンプライアンスが重要

(1)コンプライアンスが重要

コンプライアンスとは法律遵守と訳されますが、法律だけでなく、業界基準、社内規定、さらには社会通念などに忠実であることです。まさか公序良俗にもとるようなWebページにはしないでしょうが、知らずに道義に反することがあります。

顧客情報の取扱

顧客情報を入手することは重要です。しかし、顧客は個人情報が漏洩することを大きな危険であると考えています。 個人情報保護法や各種ガイドラインに従うのは当然です。ここでは、Webページで留意すべき事項を掲げます。

著作権等を侵害しないように

Webページは、全世界の人の目に触れるのですから、図書を出版したりテレビで放送するようなものです。店舗内のポスターや地域限定のチラシとは質が違うのです。しかも、個人の趣味のページではなく、営利目的のページなのですから、著作権者から訴えられたときには、多額の賠償を覚悟しなければなりません。
参照: 著作権情報センター:はじめての著作権講座「著作権って何?」

特許権を侵害しないように

特許とは自然法則を利用した発明の権利を対象にしたものですが、それが拡大適用されて、Web販売システムやWebページに適用されることがあります。しかも、特許があることを知らずに、独立に発案した場合でも特許権の侵害になりますし、なかには特許が侵害されたのに黙っていて、その事業が成功した時点で侵害を主張し多大な賠償を請求するような手口もあります。

著作権や特許権については、素人が判断するのは危険です。専門家に相談しましょう。ところが、製造業以外の中小企業は、このような分野の弁理士や弁護士との付き合いがないのが通常でしょう。サイバーモール事業者や情報システム開発者を介して対応することになります。

(2)Webアクセシビリティ等に留意する

(2)Webアクセシビリティ等に留意する

Webアクセシビリティ

Webアクセシビリティ(accecibility)とは、高齢者や障害者などハンディを持つ人が、Web閲覧で不自由させないことです。JIS X 8341-3として規格化されています。アクセシビリティに考慮することは、障害者や高齢者への「思いやり」ではありません。すべての人が平等に社会生活をするための「権利」であり「義務」なのです。
 Webアクセシビリティの典型的なものが「画像」です。Webページを読み上げるソフトはポピュラーになっていますが、画像を読み上げることはできません。それでWebページの作成言語であるHTMLの文法では、画像を指定する命令のなかに代替文を記入することになっており、読み上げソフトはその代替文を読むことになっています。
 しかし、それでは不十分ですので、画像がなく本文だけでも理解できるようにすることが求められます。まして、画像のある部分をクリックするといような機能は、代替機能を用意することが必要です。
 その他、いろいろな留意事項がありますが、「Webアクセシビリティ」を参照してください。
 なお、WebページがJISやWeb文法に合致していない個所をチェックする無料サービスサイトもあります。

Webユーザビリティ

Webアクセシビリティが、Webページを閲覧するときに、高齢者や障害者がもつハンディキャップをなくすことであるのに対して、Webユーザビリティは一般の人が利用する際の便利さのことを指します。これもJIS Z8521になっています。
 ・利用の有効さ:やりたい作業を確実に達成できるか
 ・利用の効率性:作業を短い時間で達成できるか
 ・利用者の満足度:利用した人が、また利用してみたいと思うか
を満たすことです。具体的には、
 ・見てすぐ何をすればよいかが分かるような画面や手順にする
 ・基本的な用語、指示、デザインには一貫性を持たせる
 ・利用者が操作や入力を間違えないデザインや案内を提供する
 ・利用者が必要とする時に、ヘルプ情報やマニュアル等を利用できるようにする
ことなどがあります(参照:「Webユーザビリティ」)。

(3)その他の留意事項

(3)その他の留意事項

訴求内容と信用対策以外で留意するべきことをトピックス的に列挙します。

逆に、次のようなマイナスな事項にも留意しましょう。


10 Webページの作成と更新

10 Webページの作成と更新

ようやく実際にWebページを作る段階になりました。モールに参加するのであれば、サポートスタッフがいるので、その助力を得ることができますが、そうでないときは、自社で作るのか、外注するのかの判断があります。
 WebページはHTMLという言語を用いて作成するのですが、その文法を習得するのは比較的容易ですし、知らなくても作成できるツールがあります。しかし、これまで述べてきたような多様な機能を取り込み、多様な留意事項を考慮したWebページを作るのは素人には困難です。それに、Webページは店内装飾と同様、美観やセンスも必要です。それで最初は専門家に依頼して作成するのが適切です。
 しかし、Webページのコンテンツは、頻繁に更新する必要があります。そのつど外注していたのでは費用や時間がかかるので、更新作業は自社で行うべきです。また、それができるように、最初の外注の際にテンプレートなどの工夫をしてもらうのが適切です。
 自社更新のためには、HTMLの初歩知識や前述の「Webページでの留意事項」の理解が必要です。また、更更新を行う体制の整備が必要です。

(1)自社でWebコンテンツを作成する場合

(1)自社でWebコンテンツを作成する場合

表示するだけのWebページなら簡単

会社案内のような単に表示するだけのWebページを作成するだけなら簡単です。WebページはHTMLという言語で記述するのですが、見出し、本文、箇条書きというような区分を、文章の前後にタグという記号をつけて指定すればよいのです。しかも、Web作成ツールを使用すれば、そのタグを覚える必要もありません。デジカメで撮影した写真をWebページに取り込むことは簡単です。ボタンやラインなどのイラストは、Webページ作成ツールにも付いていますし、フリーで使える素材集もあります。ですから、単に「Webページを作る」だけでしたら、初心者でも簡単なことです。

本格的なツールもある

CMS(Content Management System)というWebサイトの素材データとデザインやルールなどを一元管理するシステムです。一般的に次のような機能を持っています。数百万円しますが、自社で管理するときには便利です。

でも、専門業者に依頼すべきだ

しかし、実際のWeb販売システムにするには、ここまでに述べてきたように、多様な機能をもつ必要があります。例えば、Webページのなかでも、販売ページでデータ入力したとき、誤ったデータが入力されたとき、誤りを指摘して再入力させる機能や、応答が遅いときに再度クリックしても二重発注にならない仕組みにすることが必要ですし、在庫管理や顧客管理など関係する情報システムとの連携などには、高度の技術が必要になります。しかも、他人の個人情報やクレジットカード番号などを預かっているのですのですから、信頼性の高いシステムにする必要があります。
 そのため、少なくとも当初は、Webページ制作の専門業者に依頼するのが適切です。

(2)専門業者への依頼での留意点

(2)専門業者への依頼での留意点

通常、Webページ制作業者と関連する情報システムの開発業者は異なります。個別に依頼するのか、システムインテグレータ(ゼネコンのような存在)に依頼するのか、サイバーモール運用業者に依頼するのか、多様なケースが考えられますが、ここでは、Webページ制作だけを対象にします。

依頼先の選定

Webページ作成業者は、高校生のアルバイトから専門のコンサルタントまで、非常に多様ですし、その費用もピンキリです。
 目的と費用に応じて選択することになりますが、信頼できる業者を選定する必要があります。
  ・Web取引、対象商品販売に関する法的規制を熟知していること
  ・著作権やWebアクセシビリティなどを熟知していること
  ・要求した機能を適切に実現できる技術力があること
     それに多大な費用がかかる場合に代替案を提案できること
  ・他システムとの連携に関する知識経験が高いこと
     他システムの構築や改訂は他のソフトウェア会社に委託するのが通常だが、
     適切な連携作業ができること
  ・対象顧客の心理を理解し、それに訴求する技術を有していること

また、ごく単純な基準ですが、「自分とウマが合う」ことが肝心です。Webページの体裁や全体の構成は多分に趣味的なものです。顧客に受けいられるかどうかが前提ですが、経営者がこのWebページに愛着がもてないのでは、その運営の熱意も冷めてしまいます。その観点から趣味が合う業者を選ぶことは、案外重要なのです。

機能をどこまで取り込むか

結論を先に言えば、
  やりたいことをすべて列挙してランク付けをしたものを示すこと。
  業者から費用による松・竹・梅の提案を受けること。
  相談して「第1次計画」を決定し、契約すること。
になります。

丸投げをしない

経営者がこのWebサイトを通して顧客に訴求したいこと、さらには、当社の経営理念を開発者に伝えましょう。それと業者がもっている、顧客心理を理解して訴求する技術が合致して、優れたWebサイトになるのです。これに時間をかけることは無駄になりません。

サイト全体の構成、商品説明などのコンテンツは、素案を自社で作成して開発者に渡すのが適切です。素人が作成したのですから全面改訂になるのは当然ですが、開発者がヒアリングして原稿を作るよりも、意が尽くせるし、費用を節減できます。

Webページを確認するときは、顧客にも参加してもらいましょう。社員だと前提知識がありますし、特殊な用語も理解しているので、チェックに限界があります。そもそも、この利用者は社員ではなく顧客なのですから、顧客の観点でチェックすることが重要です。

(3)Webページの更新は自社で行う

(3)Webページの更新は自社で行う

これまでも述べてきましたが、Webページはタイミングよく更新することが必要です。Webページが充実してくるのに伴い、更新頻度が大きくなります。それを業者に依頼していたのでは、タイミングを逸することもあるし、費用がかかります
 また、制作依頼段階で更新が簡単にできるように、ページの構成の標準化や部品化の工夫をすることを契約しておくべきです。

著作権についての契約が重要です。取り決めがないと、開発者が作成したコンテンツの著作権は開発者にあります。極端には開発者の許可なしにコンテンツを変更すると開発者から訴えられることがあります。それを回避するために、著作財産権を発注者に譲渡すること、開発者は著作人格権を主張しないことを契約書に明記しておく必要があります。

Webコンテンツの管理体制が必要です。Webページが多くなり更新頻度が多くなると、少数の担当者への負荷が増大します。そのページの業務担当者が分担して作業するのが適切です。
 しかし、勝手にWebサイトに登録すると、個人情報や機密情報が漏洩するとか不適切な表現をする危険があります。それを防ぐために、コンテンツ作成は分担するが、登録はその担当者が行うというような体制にする必要があります。


おわりに

おわりに

小企業が初めてWebページを構築するときの手順と留意点を示しました。題名から「Webページの作り方-HTMLの書き方や画像の扱いなど-」を連想した人もおられかもしれません。ところが、そのような作業はほんの一部にすぎません。Web販売のマーケティング戦略、リンクの依頼、顧客とのコミュニケーションなど、「非IT活動」が大部分の作業であり、その適否がWeb販売の成否に影響しているのです。
 それがしっかりしていれば、実店舗と比較して初期投資も運営経費も安価で開店することができます。小規模企業の発展にはWebページ戦略が効果的です。ご成功を期待します。