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電磁波の波長・周波数による区分
放射線、電波(無線)、光線、音波などは、すべて波(電磁波)であり、波長が異なるだけです。しかも波長は連続したものであり、境界はありません。ここでは、波長による一般的な区分を示します(右図)。
波長は波の1周期の長さであり、1秒間あたりの周期数を周波数といいます。周波数の単位はは Hz(ヘルツ)=[回/s] です。波長と周波数の関係は、次式で与えられます。
波長[m] × 周波数[Hz] = 光速(300,000,000 [m/s])
放射線(ionising radiation)~10nm
コバルト60やセシウム137など放射性原子の崩壊により発生する電磁波です。波長が短い(原子の大きさ程度)、高エネルギーの電磁波であり、粒子としての性質が現れます。その結果, 物質を貫通する力(透過性)も大きくなり、人体などの物体を通過します(鉛板は通過できません)。
- ガンマ線(gamma ray)~1pm
放射性物質の原子核からα線(ヘリウム原子)、β線(電子)、中性子線などの粒子放射線が飛び出した跡の原子核が、より安定な状態に移る時に発生する電磁波として放出されたものがγ線です。
- X線(X-ray)1pm~10nm
ガンマ線が原子核からの放射線であるのに対して、X線は原子核の周囲をまわる電子のエネルギー状態の遷移によって発生します。
光線(light ray)10nm~1mm
光の定義はやや曖昧です。狭義には人間が光として認知する波長帯、すなわち「可視光線」を指しますし、広義には電磁波全体を指します。通常は可視光線に紫外線と赤外線を加えた太陽光を指します。
- 紫外線(ultraviolet rays、UV)10nm~400nm
x線と可視光線の中間的存在で、高いエネルギーを持った光線です。比較的可視光線に近いものは細胞に衝突して「日焼け」や「ガン化」を引き起こすので、UVカットのメガネ、日傘、化粧品などて防ぎます。X線に近いものはさらに強い作用を与えますが、地球上空にあるオゾン層で酸素分子が紫外線を吸収するので、地表には届きません。
- 可視光線(Visible light)380nm~780nm、400~800THz
人間が光や色として感知できる波長の光です。紫は短波長・高周波数、赤は長波長・低周波数です。
このように、全ての色は波長により決まります。ところが私たちは「光の3原色」として、色を赤、緑、青の混色として捉えています。それは、人間が「色」を赤、緑、青の3つの色に分解して認識しているからです。視覚を通して得られる感覚によるもので、物理的な根拠はないのです。
- 赤外線(infrared light、IR)750nm~1mm、300GHz~400THz
- 近赤外線 750nm~2500nm
赤外線通信(infrared transmission)として使われます。赤外線は光ですので、直進する性質を持っています。そのため非常に指向性が高く、リモコンなどでも操作対象に対してまっすぐに向けないと届きません。また、途中に障害物があると途切れてしまいます。
- IrDA(Infrared Data Association)800nm帯
赤外線ポートを向かい合わせるだけで通信できます。主にノートパソコンや携帯電話、デジタルカメラなどの接続に利用されます。
- リモコン 900nm帯
テレビや空調などのリモコンで利用されます。
- 遠赤外線 3μm~1000μm
加熱・乾燥機に利用されます。分子運動の振動周波数に近い電磁波を照射すると共鳴吸収してより振動が激しくなり温度が上昇します。水や食品などの吸収波長領域が2μm~20μmの間にあるものが多く、遠赤外線はこれらに熱を良く伝え、浸透させるという性質をもっています。
電波(radio wave)1mm~~100km、3kHz~300GHz
短波長・高周波数帯 長波長・低周波数帯
通信容量 大容量 小容量
直進性 強い(障害物に弱い) 弱い(回り込みできる)
通信角度 特定方向 幅広い方向
- サブミリ波(sub-millimeter wave、SMW)、0.1mm~1mm、30GHz~300GHz
サブミリ波の波長は、0.1mm~1mmで、電気通信では赤外線として扱われますが、天文学ではこの波長域を電波として扱います。
- 天文学での利用
宇宙空間に存在する多くの分子が、この波長域で輝線を発します。星間塵の熱放射を捕らえるのに適した波長域でもあります。ミリ波と同様に電波望遠鏡による天文観測が行われています。
- 通信分野での利用
巨大な無線設備が必要なこと、水蒸気による吸収が大きいため、通信用としてはほとんど利用されていませんが、この周波数帯は大容量の通信ができるので、今後の利用拡大が期待されています。
- ミリ波(Extra High Frequency、EHF)、1mm~10mm、3GHz~30GHz
天文学では、サブミリ波と同様、電波望遠鏡による天文観測に広く利用されています。
通信分野では、マイクロ波と同様に強い直進性があり、非常に大きな情報量を伝送することができますが、悪天候時には雨や霧による影響を強く受ける欠点があります。そのため、比較的短距離の無線アクセス通信や画像伝送システム、簡易無線、自動車衝突防止レーダ等に利用されています。
なお、低い周波数帯と比較してあまり利用が進んでいないことから、大容量・長距離の伝送を可能とする技術や無線装置の小型化・低価格化等、利用促進に向けた技術の研究開発が行われているところです。
- マイクロ波(Super High Frequency、SHF)、1~10cm、30GHz~30GHz
伝送できる情報量が非常に大きいこと、特定方向への発射に適していることから、固定設備間の大量通信、主に放送の送信所間を結ぶ固定の中継回線、衛星通信、衛星放送や無線LANに利用されています。
強直進性によりレーダにも適しており、気象レーダ、船舶用レーダ、ETCなどに利用されています。
- 極超短波(Ultra High Frequency、UHF)、10cm~1m、300MHz~3GHz
伝送できる情報量が大きく、小型のアンテナと送受信設備で通信できることから、携帯電話や業務用無線を初めとした多種多様な移動通信システムを中心に、GPS、地上デジタルTV、空港監視レーダーや電子タグ等に幅広く利用されています。
- 超短波(Very High Frequency、VHF)、1~10m、30MHz~300MHz
直進性があり、電離層で反射しにくい性質もあります、山や建物の陰にもある程度回り込んで伝わることができます。短波に比べて多くの情報を伝えることが出来るため、FMラジオ放送用や多種多様な業務用移動通信に幅広く利用されています。
- 短波(High Frequency、HF)、10~100m、3MHz~30MHz
約200~400kmの高度に形成される電離層のF層に反射して、地表との反射を繰り返しながら地球の裏側まで伝わっていくことができます。長距離の通信が簡単に行えることから、現在でも、遠洋の船舶通信、国際線航空機用の通信、国際放送及びアマチュア無線に広く利用されています。
- 中波(Medium Frequency、MF)、100~1000m、300kHz~3MHz
約100kmの高度に形成される電離層のE層に反射して伝わることができます。電波の伝わり方が安定していて遠距離まで届くことから、主にAMラジオ放送用として利用されています。送信機や送信アンテナは大規模なものが必要ですが、受信機は簡単なもので済む利点があります。
- 長波(Low Frequency、LF)、1~10km、30~300kHz
1930年頃まで電信用として利用されていましたが、大規模なアンテナと送信設備が必要という欠点と、短波通信の発展により、電信用にはあまり用いられなくなっています。船舶や航空機の航行用ビーコン及び電波時計などに時間と周波数標準を知らせるための標準周波数局に利用されています。
- 超長波(Very Low Frequency、VLF)、10~100km、3~30kHz
地表面に沿って伝わり低い山をも越えることができます。また、水中でも伝わるため、海底探査や潜水艦通信にも応用できます。
音波(acoustic wave)10km~、~3kHz
音波とは、狭義には人間や動物が耳で認識する空中を伝播する弾性波(空気を伝わって聞こえる)のことですが、広義では、気体、液体、固体を問わず、弾性体を伝播するあらゆる弾性波の総称です。電波までは、媒体によらず真空でも通信できますが、音波になると空気や水の振動として伝えられます。
- 超音波(ultrasonic)
狭義には「人が聴くことができない音」、広義には「人が聞くこと以外の目的で利用される音」のことです。そのため波長の下限値や周波数の上限値は不明確です。
この周波数帯は、電波としての性質(超長波)と音としての性質(超音波)の両方を持っています。
超音波は指向性が高く、ハードウェアでは周波数調整や音圧の調整が容易であることから、広い分野で使われています。
超音波の反射時間から距離を測定する
距離計:車間距離・障害物発見まど、ソナー:魚群探知機、音響測深機など
高周波振動を利用する
洗浄。霧化、溶着、切断など
多様なセンサー
- 可聴域(Audible sound)、20Hz~20kHz
人間の耳の可聴域は20Hz~20kHzですが、これは案外広いのです。楽器では、ピアノ:30Hz~3kHz、チューバ:30hz~300Hz、フルート:300Hz~3kHzですので、比較的低周波数帯になっています。また、外国語の修得には耳の訓練が必要だといわれますが、日本語の聞き取りやすい125~1,500Hzに対して、英語は2,000~16,000Hzだそうです。
可聴域では、難聴や騒音が問題になります。「音の大きさ(音圧レベル)=単位:dB(デシベル)」ですが、10dB 上がると音は10倍になります。静か(夜の郊外):30㏈、普通(住宅地やオフィス):50dB、うるさい(幹線道路):70dB、とてもうるさい(ガード下):100dB
- 超低周波音(infrasound)、~20Hz
人間には聞き取れない低周波音で、低周波空気振動ともいわれます。不定愁訴の原因の1つとして、健康に悪影響があるともいわれています。
用途別周波数帯
周波数帯は、放送用やスマートフォン用など用途により配分されています。それには、4Gや5Gのように通信規格により定まっているものもありますが、国の通信行政の大きな任務として、限定されている周波数帯を有効に活用するため、用途や事業者に公平に配分するために、適切に設定しています。
また、一つの用途に連続した一つの周波数帯を配分するのではなく、一つの用途に複数の周波数帯を割り当てたり、周波数帯を細切れにして、異なる用途に配分しています。これも用途や事業者に公平に配分するためです。
参照:電波割当:総務省「我が国の電波の使用状況」2021年
4G・5Gの利用周波数帯
現在のモバイル通信は4G(LTE)が主流ですが、急速に5Gへと移行が進んでいます。総務省は5G推進の準備として、主としてミリ波帯に広い周波数帯を割り当てています。
4Gと地域
一般に大都市では大容量回線が求められ、高周波数帯が主流になります。しかし、基地局からの到達距離が短いので、多くの基地を設置する必要があります。また、高周波数帯の1.7GHz帯(バンド3)は4G専用であり、3G対応機では使えません。そのため、4G機器利用者の絶対数が大きい地域が優先されます。
それに対して、人口密度が小さい地域では、少ない基地局で広大なエリアをカバーすることが求められます。そのため、低周波数の800mHz帯(バンド19/バンド6)や、新たに携帯電話用として認可された700MHz帯(バンド28)が主になりました。
4G/5Gの比較
従来の4Gはマイクロ波で合計1GHz程度でしたが、5Gでは3GHzが割り当てられ、その大部分がミリ波帯です。
ミリ波はマイクロ波と比較して、超高速通信、超低遅延、多数同時接続の長所があり、反面、電波の届く範囲が狭い、障害物の影響を受けやすいの欠点があります。そのために多数のアクセスポイントが必要があります。また、4Gと5Gでは通信方式が異なるため、スマートフォンも買い替える必要があります。そのため、純粋な5G(フル5G)に移行するには、壁があり、時間もかかります。
その対応策として、「sub6」という周波数帯を設けました。これは4Gに隣接したマイクロ波で、ミリ波の長所は得られませんが、4Gと互換性が保たれます。4G・5G双方に対応したスマートフォンならば、とりあえず4G環境で利用し、5G環境が整えば5Gを利用することができます。
無線LAN(Wi-Fi)が使用する電波の周波数は大きく分けて、極超短波(UHF)の2.4GHz帯とマイクロ波(SHF)の5GHz帯があります(参照:標準規格 IEEE 802.11)。
Wi-Fi 規格 最大通信速度 周波数帯
IEEE 802.11a 54Mbps 5GHz
IEEE 802.11b 11Mbps 2.4GHz
IEEE 802.11g 54Mbps 2.4GHz
IEEE 802.11n 300Mbps 2.4GHz/5GHz
IEEE 802.11ac 6.9Gbps 5GHz
屋内ではどの周波数帯が利用できますが、屋外では5GHz帯は人工衛星や気象レーダに影響を与えないように、いくつかの制約があります。
2.4GHz帯は、Wi-Fiだけでなく、ワイヤレスマウス・キーボード、Bluetooth、家電やなど、ほかの機器も利用する周波数帯です。
5GHz帯のメリットは、Wi-Fi専用の電波なので、他の電波と干渉せず、安定的に通信を行うことができます。しかし、直進性が強く、壁などの障害物があると弱まる(通信速度が下がる、つながらない)ので、無線ルータの設置位置の工夫が必要なことがあります。
放送と周波数帯
テレビ放送
テレビ放送(2k)
は主に300MHzから3000MHzのUHFが用いれらます(4k8k放送では一部マイクロ波にかかります)。
・地上波放送:470MHz~770MHz
・BS放送:1032-1489MHz
・CS放送:1595-2071MHz
・4k8k衛星放送:2224-3224MHz
衛星放送では、「右旋(右旋円偏波)」、「左旋(左旋円偏波)」という2つの電波帯域があり、NHKや民放(主に無料放送)では右旋、有料放送では主に左旋を採用しています。
ラジオ放送は、変調方式により、
・AM(Amplitude Modulation、振幅変調)放送
・FM(Frequency Modulationn、周波数変調)放送
があります。現在、AM放送を廃止してFM放送だけにする動向があります。
AM放送 FM放送
電波種類 中波(MF) 短波(HF)
周波数 526~1600kHz 76~100MHz
波長 200~600m 3~4m
到達範囲 広い(海外まで) 中程度(数10km~100km程度)
放送音範囲 100Hz~7,500Hz 50Hz~15,000Hz
放送音範囲とは、ラジオで聞こえる音の周波数帯です。人間の可聴域は20Hz~20kHzですが、FM放送のほうがそれに近く、低音や高音まで放送できます。また、雑音対策や混信対策として、AM放送は何の対策しないのに対して、FM放送では周波数変調により雑音や混信なあどのノイズが除去しやすく、音質がよくなります。
防災行政無線
県及び市町村が「地域防災計画」に基づき、それぞれの地域における防災、応急救助、災害復旧に関する業務に使用することを主な目的として、併せて、平常時には一般行政事務に使用できる無線局です。
用途上、常に周波数帯が確保されていることが重要です。固定系は60MHz帯(短波)、移動系は260MHz帯(超短波)が、総務省より市町村ごとに指定の周波数が割り振られます。
その他
- GPSの衛星信号
- L1帯(1575.42 MHz)とL2帯(1227.6 MHz)の2波で送信されています。
- RFID(非接触ICカード)
- 周波数により電波到達距離が決まるので、種類により異なります。
到達距離 周波数
密着型 <1mm 4.9MHz
近接型 <10cm 13.6MHz
遠隔型 <1m 2.45GHz