液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、解像度、ピクセル、SXGA、光の3原色、加法混色、フルカラー、プログレッシブ方式、インターレース方式
事前知識
画素(ピクセル)
ディスプレイやテレビ画面は全体に連続的に色がついているのではなりません。小さな点が縦横にぎっしり並んでいて、その点に色が発光しているのです。断続的な光点なのに、人間の目の錯覚で連続しているように見えるのです。この光点を画素(ピクセル)といいます。
表示色
赤・緑・青を光の3原色といいます。光は混色すると明るくなります(加法混色という)。赤と緑を混ぜると黄,赤と青を混ぜるとマゼンタ,緑と青を混ぜるとシアンになります。また,すべての3原色を混ぜると白になり,すべての光をあてないと黒になります。この赤・緑・青を3原色とする色の指定方式を、その頭文字をとってRGB方式といいます。
赤・緑・青のそれぞれについて、強度(明るさ)を段階的に示すことを階調といいます1バイト(8ビット)、28=256階調に分け、その色成分がないのを0、最大の明るさを255とします。それをR,G,Bの形式で色を指定します。
純粋色の赤は 255,0,0,緑は 0,255,0,白は 255,255,255、黒は 0,0,0、灰色は 126,126,126
このように,一つのピクセルに3バイト(24ビット)を与えると1,670万色になります。これをフルカラーといいます。データ量を減らすために,1ピクセルを1バイトにして256色にするものもあります。
走査
ディスプレイの全画素を同時に表示するのではなく、ピクセルを左上→右上→左下→右下の順で一つづつ表示しています。この繰り返しですので、動画では上の部分が次の画面になり上下で違う画面になりますが、表示速度が速ければ、残像効果により不自然さがありません。この1行を走査線といいます。
ディスプレイでは、このように上から下に1行づつ表示します。これをプログレッシブ方式といいます。テレビ画面では、さらに不自然さを減らすために、1行おきの表示を2回行って1画面にするインターレース方式といいます。
ディスプレイ
ディスプレイの仕様
ディスプレイの仕様では,画面サイズ,解像度,表示色数が重要です。
- 画面サイズ
- 表示画面の対角線の長さをインチで表示。15~19インチが多い。
- 解像度
- 画面はピクセルという点の集まりで表示され,その個数をドットといいます。解像度は横・縦のピクセル数により
VGA: 640× 480ピクセル(4:3)
XGA: 1024× 768ピクセル(4:3)
SXGA: 1280×1024ピクセル(5:4)
QWXGA:2048×1152ピクセル(16:9)
WQXGA:2560×1600ピクセル(16:10)
などがあります。数字の大きいほうがきめ細かい画面になります。
- アスペクト比
- アスペクト比とは、横ドット数と縦ドット数の比率です。従来のディスプレイでは、4:3や5:4が主流でした(スクエア型)。近年のワイド型の液晶ディスプレイは16:9や16:10が主流になっています。
例えば、16:9のワイド画面に4:3の解像度を指定すると、横長い表示になってしまいます。それを調整する機能をスケーリング機能といいます。
- 色温度
- 黒体を熱すると温度により放射する光の色が変わります。それを色温度といいます。色温度が低いと赤い光、高いと青い光になります。
太陽光で見る白色と蛍光灯で見る白色は、物理的には異なるので、人間の感覚に合わせるためには、基準となる白色を調整する必要があります。それをホワイトバランスといいます。
テレビ、ディスプレイ、写真などでは、色温度調整としてホワイトバランスを調整したり、全体の色を青色方向あるいは赤色方向に調整することが行われています。
ディスプレイの種類
モニタともいいます。代表的な種類として,次のものがあります。
- CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ
- 電子銃から陰極線ビームを画面の蛍光体に当てて表示する方式。いわゆるブラウン管です。省スペース化,省電力化の動向により,現在ではほとんど使われなくなりました。
- 液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)
- 2枚のガラス板の間に液晶を封入します。液晶自体は発光しませんが,反射光やバックライトなどからの光を,液晶に電圧をかけて光の透過率を増減させることにより表示します。CRTと比較して,省スペース,省電力等の長所,視野角が狭い,発光点が欠けるなどの短所があります。現在,最も広く用いられています。
なお,液晶ディスプレイは,安価で低品質なSTNと高価で高品質なTFTがありますが,現在ではほとんどTFTになっています。
- プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)
- 2枚のガラス板の間に蛍光体と希ガスを封入して,電極間に電圧をかけてガスを放電させ蛍光体を光らせて表示をします。自ら発光する型のディスプレイで,液晶ディスプレイと比較して,視野角が広い,応答速度が速い,色純度がよい,大型化が容易などの利点,コントラストが低い、高精細化が困難、消費電力が高いなどといった欠点があります。
- 有機EL(Erectronic Luminescence)ディスプレイ
- 電圧をかけると発光する有機物質をガラス基板に蒸着したものです。液晶ディスプレイよりも低電力,応答速度が速い,色純度がよいなどの利点があり,注目されています。
液晶ディスプレイの評価尺度
- 透過率と視野角
- 画面を左右もしくは上下から見たときに表示内容が正確に見える角度を視野角といいます。以前のCRTや近年の有機ELと比較して、液晶ディスプレイでは、視野角が狭い欠点があります。
透過率とは、光源の光の強さに対する画面表面での光の強さの比率です。液晶ディスプレイでは、電荷を与えて液晶の並びを変化させることで光の透過率を変えているので、正面以外の角度から見ると正しい色や輝度が表現できず画面が見にくい傾向があるのです。
- 輝度
- 輝度とは画面の明るさのことです。cd/m2(cd=カンデラ)で表示されます。テレビと異なり近距離で使うパソコンでは、高輝度だとかえって目が疲れることもあります。
- コントラスト比
- 画面の白の部分(最大輝度)と黒の部分(最小輝度)の輝度比です。コントラスト比が高いとくっきりした画面が得られます。しかし、過度に高くすると、ギラギラした画面になります。
- 応答速度
- ここでの応答速度とは、画面の色変化に要する時間です。動画やゲームに利用するときには、高い応答速度が求められます。中間階調の応答速度を高速化する技術をオーバードライブといいます。
- ノングレア液晶と光沢液晶
- 従来のパソコン用ディスプレイはノングレア液晶でしたが、近年は画面表面処理を施して乱反射を低減した光沢液晶が主流になってきました。
光沢液晶は、画面の色が鮮やかでコントラストが高く、画像がきれいに見えるメリットがあります。反面、周囲の光が画面に映りやすく目が疲れやすいこと、表面にキズが付きやすいことなどのデメリットがあります。
駆動方式による液晶ディスプレイの種類
液晶ディスプレイの原理は、ある方式で配置した液晶分子に電圧をかけて液晶分子を駆動して、バックライト光量を制御するのですが、その方式には大きく、TN方式、VA方式、IPS方式があります。ここではその駆動原理は省略して、利用者からみた各方式の長所・短所を掲げます。
コスト:安=TN<VA<IPS=高
画質: 低=TN<VA<IPS=高
普及度:低=IPS<VA<TN=高
- TN(Twisted Nematic)方式
- 液晶分子の角度でバックライト光量を調整する方式です。
構造がシンプルなこと、駆動電圧が低いことによる低コストのメリットがあります。反面、視野角が狭い、応答速度が低いなどのデメリットがあります。そのため、画質を重視する用途には向いていません(当然、これらを改良するオーバードライブ技術も進んでいます)。
- VA(Virtical Alignment)方式
- VA方式では、液晶分子配列を最大電圧で水平、電圧OFFで垂直にする方式です。
電圧OFFのときはバックライト光が完全に遮断されるので、純粋な黒が得られるので、高いコントラスト比が得られます。視野角や応答速度はTN方式とほぼ同じです。視野角改善にマルチドメイン技術が採られます。
- IPS(In-Place-Switching)方式
- 水平に寝かせた液晶分子を横方向に回転させることでバックライト光量を制御する方式です。
視野角による輝度変化/色変化が少ない、階調全域で応答速度のバラつきが少ないメリットがありますが、全体として輝度、コントラスト比、応答速度を高くしにくいデメリットがあります。グラフィックデザイナーや医療分野で利用されています。
パソコン側の機能
VRAMの容量
ディスプレイの画像を表示するには、ビデオカードにあるVRAM(Video Random Access Memory)というメモリに情報を保持しておく必要があります。VRAMは高速で高価ですが、VRAMの容量により、色数や解像度が決まります。
フルカラーでSXGAの情報をもつためのVRAMの容量は、次の計算で求めることができます。
・フルカラー=24[ビット/画素]=3[バイト/画素]
・SXGA=1280×1024[画素]
・VRAM容量=3[バイト/画素]×1280×1024[画素]=3,932,160[バイト]
=3.75[Mバイト](1M=1024×1024として計算)
GPU
三次元グラフィックスの画像処理など、パソコンの画像表示を高速化するために、専用機構を用いるのが通常になっています。CPUとVRAMの間に置かれた集積回路チップで、高速な画像処理演算を担当します。
従来はグラフィックアクセラレータといわれましたが、現在はGPU(Graphics Processing Unit)やVPU(Visual Processing Unit)と呼ばれるようになりました。そのボードをグラフィックボードやビデオカードともいいます。
描画に必要となる強力な並列演算能力が、科学技術演算など汎用的な用途に適していることが認められるようになり、AIの基本となる機械学習やニューラルネットワークの分野でのGPUの利用が注目されています。
マルチディスプレイ(デュアルディスプレイ)
多くの画面を開いて同時に見たいときがあります。1台のディスプレイでは重なり合ってしまいます。それを解決するために、複数のディスプレイを1台のパソコンから同時に操作する技術があります。一つの画面を2つのディスプレイに分割して表示させることもできます。
パソコンとの接続
テレビと同様の接続方式です。下図の端子がありますが、現在ではDVI、HDMIが広く用いられています。
プロジェクタ
ここでは、パソコンのディスプレイと同じ画面を大きなスクリーンに投射するタイプのプロジェクタに限定します。
プロジェクタは、単純にいえば、ディスプレイと同様にパソコンから送られてきた画像情報を、光の三原色である赤色、緑色、青色に分解、プリズムを通して再現し、強力な光源とレンズによりスクリーンに投射する機器です。
前述の「ディスプレイ」の事項は、プロジェクタにもほとんどあてはまりますが、注意する点があります。
・両者の解像度が同じなのが最適です。
・異なる場合は低いほうの解像度になります。そのとき画質が落ちることがあります。
アスペクト比が異なると上下が空く、あるいは、左右が切れることがあります。
以降、プロジェクタ特有の事項に限定します。
プロジェクタの方式
- LCD方式(Liquid Crystal Display、透過型液晶方式)
- 映像を映し出す原理は、LCD(液晶ディスプレイ)とほぼ似ています。
・光源の光を、いったん赤色、緑色、青色に分解
・透過型液晶パネルで各色の映像を液晶のフィルターで通し
・プリズムで合成した元の色にして
・投影レンズから投写する。
液晶に存在する画素のツブツブまで映してしまうこと、黒の表現が苦手、コントラスト比も悪いなど品質の面で欠点がありますが、安価であり、並級プロジェクターの主流になっています。
- LCOS方式(Liquid crystal on silicon、反射型液晶方式)
- LCD形式が液晶のフィルターを使っているのに対して、LCOS(反射型液晶)を用いた方式です。
各画素を駆動するための配線が、画素の裏面に配置し、画素間の隙間を狭くして、画素のツブツブが目立たず滑らかな映像が得られ、コントラスト比や黒の表現も優れています。また、高解像度化も行いやすい(4k対応機器も登場)利点もあります。
しかし、部品点数の多く、高価格になり、筐体が大型になりやすい欠点があります。
そのため、高級機で採用されています。
- DLP方式(Digital Light Processing)
- DLP方式は、DMD(Digital Micromirror Device)を用いた方式です。
DMDとは、半導体の上に多数の微小鏡面を平面に配列した、表示素子の一種です。個々の画素に対応するミラーの方向をマイクロ秒単位で変えることにより、光源からの光をオンとオフをコントロールして映像を生成します。
後発の方式ですが、次第に主流になりつつあります。
〇3板方式
投影する画素数ごとに3原色用のミラーをもつDMDを用います。それらのミラーにより、光源からの光をオンとオフにすることにより、生成した映像を放映します。多くの画素(画面全体)を同時に放映できます。
画像品質は非常に良いのですが、多数のミラーをもつDMDが必要になるので高価格になり、シアターなどに用いられます。
〇単板方式
光源とミラーの間に3色に塗り分けた円盤状のカラーフィルター(カラーホイール)をおきます。円盤の回転に応じて3原色にわけ、それに応じたミラーにより、光をオン・オフします。この形式では1画素ごとに投影をする形式にすれば、DMDのミラー数は少なくなり、低価格になります。
しかし、この方式では切り分けに時間がかかるので、激しい動きのある映像などでは投影する映像にズレが生じるなどの欠点があります。
また近年は、光源のLEB化により、赤色、緑色、青色のLEBを高速で切り替えることにより、カラーホイールを廃したことで、コンパクト、低価格、高品質などが実現してきました。
lm(ルーメン)
明るさの尺度です。スクリーンでの明るさは、プロジェクタとスクリーンまでの距離の2乗に反比例します。次の目安があります。
大会議室 50~100人 5,000~7,000lm
中会議室 20~50人 3,000~5,000lm
小会議室 ~20人 ~3,000lm程度
プロジェクタの光源
- 超高圧水銀灯
- 一般に水銀ランプともいいます。以前から用いられ、技術的に安定しており、価格も安価なので、現在一番普及しているプロジェクター光源です。
水銀ランプの欠点は、電源をONにした後映像が出てくるまでに時間がかかること、OFFにした時もランプを冷やす必要があること、寿命が短いこと、発熱量が多く消費電力は高めなどです。
- LED
- 低消費電力、起動・終了の短時間、長寿命、軽量などの利点がありますが、3,000ルーメン以下の明るさ、高価格などの欠点があります。モバイル環境、少人数の会合などに用いられます。
- レーザ
- LEDと同様、低消費電力、起動・終了の短時間、長寿命、軽量に加えて、水銀ランプより高輝度化が可能です。しかし、高価です。普及には今後の技術という段階です。