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無線通信

学習のポイント

本章では、以前の携帯電話(フューチャーフォン)やスマートフォンなどモバイル端末を総称して携帯電話といいます。携帯電話での通信には、主に屋内での無線LANと、モバイル環境での3G/LTEがあります。本章では、後者について学習します。

キーワード

電気通信事業者、キャリア、MNO、MVNO、MVNE、SIM、SIMカード、3G、4G、WiMAX、LTE、5G、回線交換方式、パケット交換方式、SMS、RCS、VoIP、IP電話、VoLTE、090、050、無線基地局、eNode B、セル、マクロセル、スモールセル、チャネル、位置登録、ハンドオフ、ハンドオーバー、ローミング、CSFB、コアネットワーク、EPC、RNC、無線ネットワーク制御局、HSS、PDN、PDNコネクション、MME、S-GW、P-GW


携帯電話の契約

電気通信事業者(キャリア)

携帯電話を利用するには、ドコモ、ソフトバンク、auのようなキャリアなどと加入契約しますが、キャリアとは、正式には電気通信事業者といいます。→参照:電気通信事業法

MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)
キャリアともいいます。通信事業者のうち、モバイル用の回線網、無線基地局や多様な通信設備をもっている事業者です。
MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)
自社で回線網を持たずに、MNOから回線網を借りて通信サービスを提供する事業者です。数百社のMVNOがあります。
  • 単純再販型MVNO
    回線設備を全く持たないMVNOです。MNOの通信サービスと全く同じものを、料金だけ変えて販売する形態です。
  • レイヤー2接続型MVNO
    無線基地局より向こうのLTEの機能群をEPC(後述)といいます。これらはMNOが運営していますが、そのうち、P-GWを自分がもつMVNOです。LANのデータリンク層を自分が管理するので、通信速度の制御、料金の設定などのサービスをMVNOが行うことができます。
    P-GWだけでなくS-GWまでも持つMVNOをレイヤー3接続型MVNOといいます。
MVNE(Mobile Virtual Network Enabler:仮想移動体サービス提供者)
主としてレイヤー2接続型MVNOの運営を支援する事業者です。技術的な対策、利用者への課金・請求業務、MNOとの橋渡しなどを行います。

SIM(Subscriber Identity Module)カード

3G/LTEにより通信するために携帯電話機に装着するICカードです。SIMカードには契約情報や電話番号が記録されています。いうなれば、SIMカードとは携帯電話の利用証明書だといえます。MNOやMVNOと契約したときにSIMードが渡されます。

SIMフリー
従来は、キャリアが独自のSIMカードを設定していたため、他のキャリアの携帯電話機に乗り換えると、新規のSIMカードが必要になり、電話番号も変更することになっていました。
このような抱え込みは消費者の不利益になることが指摘され、SIMカードの仕様を統一して、どのキャリアに乗り換えても、携帯電話機を変えても、前のSIMカードが使えるようになりました。それをSIMフリーといい、それができる携帯電話機をSIMフリー端末といいます。
格安SIM
MVOでは回線や設備の設置や維持に多大な費用をかけています。携帯電話機の販売会社としての店舗も必要です。ハードウェアの携帯電話機はメーカーが生産しますが、自社戦略に合致する仕様をメーカーに求めるので、開発コストもかかります。
それに対して、(単純再販型)MVNOは、SIMフリー端末とSIMカードをネット販売し、ネット上でサービス展開できます。回線の借用料を支払いますが、全体として少ない費用で運営できます。
それにより、安価で大手キャリア対応のSIMを提供することができます。それを格安SIMといいます。MVNO各社で通信品質や価格は多様です。キャリアとは別会社なので、キャリアが提供する特別なサービスが使えないし、音声通話のない「データ通信専用プラン」もあります。
プリペイドSIM
一定料金を前払し、残高があれば使えるSIMカードです。携帯電話機と一体になったプリペイド携帯もあります。通常は期間限定があり、再チャージができます。
通常は基本料金がないので、利用回数が少ないときは低額ですみます。海外旅行者などに便利です。また、子供が使いすぎないようにプリペイドにするケースもあります。

懸案事項


携帯電話の通信方式

携帯電話の通信方式の発展

参照:携帯通信端末の歴史

3GPP(3rd Generation Partnership Project)

各国の無線通信標準化団体・組織が参加した標準化団体。3G携帯電話の標準規格W-CDMA関連の仕様策定を目的として結成されました。その後のLTEや5Gなどの規格に関しても中心的な役割をもっています。

WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)

固定端末(自宅のパソコンなど)から直接に離れた無線基地局を接続する規格(IEEE 802.16)でもあり、それに準拠している端末機のことです。→参照:「
 その後、広帯域の無線データ通信サービスとして、モバイル環境での利用も普及しました。それをモバイルWiMAXといいます。さらに、WiMAX 2(IEEE 802.16m)、WiMAX 2+へと発展していました。下り最高110Mbps、上り最高10Mbpsになり、WiMAX 2.1では一部の仕様がTD-LTE規格と互換性をもつようになりました。
 通信速度はLTEより高速ですが、主にデータ通信に限定されること、対応する無線基地局が少なくサービスエリアが限定されるなどの欠点があります。

LTE(Long Term Evolution)

従来の3G(第3世代携帯電話)の新通信方式として策定されましたが、現在では、4Gやスマートフォンを対象とする高速通信方式になっています。3Gでは音声通話は回線交換方式を用いていましたが、LTEでは音声通話もデータ通信と同様にパケット交換方式でインターネットを使うことになりました。

5G(第5世代移動通信システム)

2020年からサービス開始される新方式です。6GHz以下の周波数帯でLTE方式と互換性を維持し、6GHz以下の周波数帯で新しい無線通信方式を導入します。

5Gの期待性能

5Gの必要性と対応


音声通話とデータ通信

回線交換方式とパケット交換方式

基本的には、音声通話は回線交換方式、データ通信はパケット回線交換方式を用いています(注)。

回線交換方式は、通話している間は回線上の一定の帯域幅を占有して通話をします。そのため、外からの影響がないので、音声品質が保証されています。反面、震災時や災害時などで電話が集中すると輻輳(混雑)が起こり、つながらない状態になります。それを回避するために、狭い帯域幅で通話できるようにする技術が進んでいます。
 NTTやKDDIなどのキャリアがそれぞれの公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Networks)を敷設しています。そして、異なるキャリア加入者とも通話ができるように、相互乗り入れをしています。
 固定電話と異なり、携帯電話では利用地域が特定できません。そのため、国内では090、080、070で始まる電話番号が付けられています。

インターネット利用時間のほとんどは画面を見たり入力したりする時間であり、データの転送時間は非常に短いので、利用時間中回線を独占するのは不適切です。パケット回線交換方式は、データをパケットという小さなサイズに分割して通信し、一つの回線に多数の人が相乗りします。パケットに付けられたヘッダにより宛先を判別します。
インターネット回線は特定のキャリアが存在しません。キャリアは携帯電話とインターネットを接続するだけの役割です。

(注)公衆交換電話網からIP網への移行

通常の固定電話は、公衆交換電話網(PSTN)を使用するアナログ通話です。しかし、インターネット環境、モバイル環境での利用が進むのに対して、固定電話の加入数の減少、設備の老朽化や無電柱化(地下ケーブル化)が進んでいます。それにより、順次PSTNを廃止してIP網(デジタル回線)へ移行する予定になっています。

SMS(Short Message Service:ショートメール)
携帯電話同士で相手先の電話番号だけで約70文字以下のテキストメッセージを送受信できる機能です。通常の電子メールがインターネットのパケット交換方式で通信するのと異なり、SMSは音声通話のように電話回線(回線交換方式)を使っています。
例えば、音声着信時に電話に出なかった場合「着信有り」の表示がなされますが、これもSMSの機能を応用したものです。
RCS(Rich Communication Services:+メッセージ)
SMSを進化させて、テキストメッセージだけでなく写真(画像)や動画も送受信できますし、コンテンツの共有もできるようにしたものです。
VoIP(IP電話)
インターネットを用いた(パケット交換方式による)音声通話です。050で始まる電話番号がそれです。固定電話やパソコンでも利用できますが、スマートフォンで広く使われています。
近年はインターネットの発展により、パケット交換方式でも回線交換方式とほぼ同等な通話品質が得られるようになりました。また、通話しながらインターネットが利用できます。
インターネット利用なので、通話コストはかなり低額になります。
VoLTE(Voice over LTE)
LTEで音声通話を行うことでIP電話とほぼ同じです。IP電話はベストエフォートで帯域保証をしていませんが、VoLTEは帯域を保証してから音声通話を行います。
人間の耳で聞こえる範囲は20Hz~20kHzです。これまで通話機能では300Hz~3.4kHzだったのが、VoLTEでは50Hz~7kHzに、さらにVoLTE(HD+)では50Hz~14.4kHzに拡大されたため、より高品質な再現が可能になりました。
通話する双方の携帯電話がVoLTE対応になっていないと効果がありませんが、最近の携帯電話機は対応機種になっています。

電話番号

携帯電話の通信料金

各キャリア、MVNOが多様な料金体系をもっています。また、一定量までは定額料金に含まれることが多く、明確に分離するのは困難です。

回線交換方式による音声通話やSMSでは、キャリアが保有する回線網を利用します。同一キャリア内での通話は安価(無料)、他キャリア間での通話は高価になります。

データ通信やIP電話などは、インターネットを使います。パケット交換方式ですので、一つの回線を多くの利用者が利用しています。そのため、利用時間ではなくパケット数(通信バイト数)により課金します。
 また、インターネットではプロバイダなどが加入者からの料金から分担してキャリアから回線を借りるので、個々の利用に関しての費用は発生しません。キャリアはインターネット回線に接続するだけのサービスになります。そのため、料金はかなり安くなります。通常の電話にくらべてIP電話は数分の一の費用になります。


携帯電話の通信の仕組み

携帯電話機と電話回線網やインターネットとの通信は、
 1 携帯電話機と無線基地局との間の無線通信
 2 無線基地局と諸通信設備(コアネットワーク)との間の通信
   3GやLTEなどの方式による回線
 3 コアネットワークと電話回線網やインターネット回線との接続
に分割されます。
 携帯電話は無線通信だとはいえ、それは1の部分だけで、それ以外は主に光回線などによる有線通信なのです。

携帯電話機と無線基地局の間の通信

無線基地局(eNode B)

屋外で(Wi-Fi接続ではなく)携帯電話で通信するには、街中に設置された無線基地局(無線アクセスポイント)との間を無線で接続します。
 携帯電話は、通話していない状態でも、自分の位置情報を発信しています。位置登録のときに該当する無線基地局の周波数(チャネル)を携帯電話に伝えています。それで、携帯電話を使うときに自動的に周波数を合わせるので、利用者は意識しなくても無線基地局と接続できるのです。
 LTEでは、無線基地局あるいはその機能をeNode Bといいます。

無線基地局の規模

一つの無線基地局がカバーする地域範囲をゾーンあるいはセルといいます。
 無線は地形や建造物の影響を受けやすく電波が届きにくい場所が生じます。狭いゾーンを対象にした無線基地局が必要になります。
 携帯電話機と無線基地局との間は同じ周波数(チャネル)で交信しますが、広範囲では携帯電話が多いので、チャネル不足になり通話できない状況(輻輳)が生じます。隣接したゾーンの無線基地局では混線を防ぐために異なるチャネルにする必要がありますが、遠隔地の無線基地局では小出力の無線が届かないので同じチェネルにしても混線しません。
 そのため、環境に応じて多様な規模の無線基地局があります。

携帯電話の特徴と仕組み

(注)携帯電話と無線基地局間の周波数帯

電波の周波数が近いと混信が発生します。また、周波数により
 ・伝送速度:周波数が大きいほど高速通信ができる
 ・到達距離:周波数が小さいほど遠くまで送れる
 ・通過性:途中に建物などの障害物があっても回り込める。周波数が小さいほど通過性が高い
などに違いがあり、それぞれの用途に適した周波数帯があります。
 無線利用は急増しており、周波数帯は有限ですので、国が用途により周波数帯を割り当てています。携帯電話などの移動体通信用には、700MHz~900MHz、1.5GHz~2.5GHz帯が飛び飛びに割り当てられています。さらに、これらの帯域を細分化して各キャリアに割り当てています。
 このうち、700MHz~900MHz帯の電波は、小型の設備で通信できる、到達距離が長く、通過性が高いことから、使い勝手がいい周波数帯なので、プラチナバンドといいます。

コアネットワーク(EPC)

基地局以降の仕組みをコアネットワークといい、LTEでのコアネットワークをEPC(Evolved Packet Core)といいます。
 現在の代表的な方式は、以前から利用されてきた3Gと、近年主流になっているLTE(4G)です。それらのイメージを下図に示します。3Gでは音声通信は回線交換方式を用いていましたが、LTEでは音声通信もIP電話のようにパケット交換方式になりました。

現在の携帯電話機は3GとLTEの双方に対応しています。データ通信(インターネット利用)やIP電話を用いるときはLTEを用いればよいのですが、090などの電話番号で電話するときには3Gを用いることになります。
 3Gへの切り替えは、CSFB(Circuit Switched FallBack:回線交換フォールバック)という機能により自動的に行われます。利用者は、「電話をする」アイコンを操作するだけで、切り替えを意識する必要はありません。

 

3Gでのコアネットワーク

HLR(Home Location Register:ホームメモリ局)
携帯電話番号や端末識別番号などの利用者情報を管理するデータベースです。携帯電話の存在場所は変化するので、相手の電話番号で呼び出すとき、その携帯電話の位置情報(どの交換機のゾーンにいるか)が必要になります。
携帯電話のプロバイダに加入すると、携帯電話番号はホームメモリ局のHLRに登録され、その携帯電話機の現在の位置情報を記憶し更新しています。
RNC(Radio Network Controller:無線ネットワーク制御局)
複数の基地局を束ねてコントロールする中継基地。基地局が受けた通信を、データ通信と音声通話に識別し、それぞれSGSN、MSCへ渡します。
SGSN(Serving GPRS Support Node:パケット交換機)
データ通信のときは、SGSNを通してパケット交換方式でインターネットに接続します。
MSC(Mobile Switching Center:移動通信交換機)
音声通話のときは、MSCは公衆網(有線の通信回線)を通して相手側のMSCと接続します。相手の携帯電話との接続が確立したら、回線交換方式で通話をします。
POI(Point Of Interface:関門交換局、ゲートウエイ交換局)
モバイル通信事業者は独自の回線網をもっています。しかし、例えばドコモの契約者とソフトバンクの契約者の間で通信ができるようにするため、相互乗り入れが必要になります。その変換をするインタフェースをPOIといいます。
携帯電話から固定電話への(その逆も)接続を行うには、関門交換局を介して行います。

LTEでのコアネットワーク(EPC)

3Gでは〇〇局のように機能をハードウェアとして扱っていましたが、LTEでは機能として扱うようになり、コアネットワークの内部で実現することになりました。仮想化したといってもよいでしょう。
 LTEでは、音声もVoIP(Voice over IP)としてパケット交換方式に統合しました。回線の高速化や高多重度化により、パケット交換方式でも音声品質がよくなり回線交換方式にする必要がなくなったこと、モバイル環境での利用が急増することから、回線の利用効率が重視されるようになったからです。

HSS(Home Subscriber Server)
3GでのHLRとほぼ同じです。
PDN (Packet Data Network) コネクション
LTEでは携帯電話の電源が入ると同時にIPアドレスが付与されます。そして、携帯電話 ~eNode B~S-GW~P-GWの間にPDNコネクションというLAN経路が確立します。
MME(Mobility Management Entity)
Control-planeの窓口でコアネットワークの制御を行います。HSSを参照して利用者、端末、利用位置(基地局)などを確認したり、相手先までの通信経路の設定を要求したりします。そして、携帯電話~P-GW間のPDNコネクションを確立します。
S-GW(Serving Gateway)
eNode BとUser Planeを中継する機能と。MMEとControl Planeの通信に必要な信号を中継する機能をもっています。User Planeのうち、パケット方式で外部ネットワークに送られるデータをP-GWに渡します。
P-GW(PDN Gateway)
P-GWは、LTEでのPDNと外部ネットワークの接点です。パケット方式で外部のネットワークと通信するにはIPアドレスが必要ですが、そのIPアドレスを割り当てるのがP-GWです。