グローバル化の発展とともに、IT技術者のグローバル化が求められています。 (参照:「ソフトウェアの輸入超過とオフショア開発」)
ベンダ企業でのオフショア開発は、中小企業では未だわずかですが、大企業では広く行われています。 (図表)
ベンダ企業間でのオフショア開発の最大目的はコストダウンです
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が、オフショア開発では、国内開発とは本質的に異なる多様な障壁があります。
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ここではシステム開発に直接関係する事項に絞りますが、それでもオフショア開発に特有な対応のために費用がかかり、予期した成果が得られないこともあります。
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ユーザ企業でもオフショア開発をしています。海外拠点システムが主ですが、大企業では国内システムもコストダウンの観点からオフショア開発をする場合があります。中小企業は海外ベンダとの直接取引の経験が浅いことから、国内の日系ベンダへの発注が多いのですが、大企業は、現地の日系ベンダへの発注が増え、さらに日系も外資系も区分しないようになってきました。 (図表)
日系ベンダに発注すれば海外拠点システム特有の問題が解決するわけではありません。海外拠点システムでは、法律や商慣行など拠点現地の事情に合致したシステムにする必要があります。また、本社のIT戦略に合致させること、本社システムとの統合をすることも必要です。そのため、ベンダ以外に現地の多様な関係者との折衝や共同作業が必要です。 (図表)
部品生産、製品組立て、販売などを国際分業しているならば、一つの拠点システムが多数の地域に展開している拠点のシステムに影響するので、関係者はさらに増大し、複雑になります。従来は、海外拠点が個別にシステムを開発・管理することが多かったのですが、特に大企業では、グローバル戦略の観点から、本社が統轄する方向へ進んでいます。本社のIT技術者のグローバル対応が求めれます。 (図表)
これらの困難を減少させるためには、発注側でのIT技術者の能力を高める必要があります。 (図表)
社内語での英語化
英語が事実上の国際共通語になっています。日本企業でも経営陣に外国人が多数いる日産自動車などだけでなく、ユニクロ(ファーストリテイリング)や楽天が社内公用語を英語にしました。
公用語にはしなくても、新規採用の際に英語力を評価する企業が増大しています。
そもそも「仕様・要件の明確化」などは、オフショア開発だけでなく、国内ベンダへの発注でも求められることですし、社内開発でも利用部門とIT部門の間でも求められることなのです。これまで、それが不十分なままに行われてきたこと自体が問題なのです。
ところで、IT技術者はグローバル化の進展についてどう認識しているのでしょうか?
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多くのIT技術者はグローバル化を身近に感じていますが、企業規模が大きくなるほど、年代が上がるほど、職種が上流工程ほどグローバル化を身近に感じることが多いにつれて強く感じています。
その動向が自分にとって有利(機会)か、不利(脅威)かについては、従業員5000人以上か以下かで大きく異なります。5000人以上の企業のIT技術者は有利ととらえている人が5割程度なのに対して、それ以下の場合には、不利だとしている人が大半を占めています。
問題なのは、20歳代のIT技術者がグローバル化への関心が低いことです。近年、若年者層では海外留学や海外勤務を避ける傾向がありますが、それと同じ理由でしょう。これがチャレンジ精神の欠乏でなければよいのですが・・・
ブリッジSEの大半はオフショア側の人材です。
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その理由として、日本側にグローバル人材が乏しいからで、その育成が望まれますが、それとともに、オフショア側人材の育成も必要です。
IT技術者に限らず、海外人材の採用は活発です (事例) 。IT技術者のビザ発給資格の大幅緩和やIT資格試験相互認証により、IT企業での外国人IT技術者採用も盛んです。特に大規模IT企業では、ほとんどが採用しています。 (図表)
パナソニックの2011年度新卒採用1,300人のうち、「グローバル採用枠」が1,100人だったそうです。
その理由として以前は「安価で優秀な人が得られる」ことが多かったのですが、現在では「安価」理由は減っています。中小企業はオフショア開発への対応目的が多いのですが、大企業では自社事業のグローバル化への対応のために、国籍にかかわらず優秀な人材を確保することを主な目的にしています。