スタートページ> (主張・講演Web教材歴史通信の歴史

LANの歴史


参考URL

本サイトの関連ページ


LANの歴史

全体の流れ

年代LAN利用状況LAN関連規格・標準等LAN接続機器・ケーブル
1970年代 各社個別仕様の時代    
1980年代 TSSの普及 TCP/IPとOSI参照モデル
1982年 TCP/IPがARPANETでの通信プロトコルに採用
1984年 OSI参照モデルの仕様、ほぼ完成
イーサーネット、トークンリング・FDDI
1973年 米ゼロックス、Ethernet開発
1984年 IBM、トークンリング開発
1987年 FDDI開発
同軸ケーブル(10base5/2)、リピータ
1983年 10BASE-5
1984年 10BASE-2
ルータの始まり
1976年 世界初のルータ「IMP」
1986年 世界初の商用ルータ「ProNET p4200」と「AGS」
1990年代
前半
ダウンサイジング
1992年 パソコンの生産高、汎用コンピュータを抜く
個別NOS(ネットワークOS)
1987年 NOVELL、NetWare(DOS版)
1987年 Microsoft、LAN Manager(MS OS/2版)
1994年 Windows NT
より対線とハブ/ブリッジ
1990年 10BASE-T規格
1990年代
後半
LANとインターネットの統合
1995年 TSSの急激な普及始まる
無線LAN
1991年 米モトローラ、無線イーサネット「Altair」
1999年 IEEE 802.11b(10Mbps)
LAN高速化とスイッチングハブ
1990年 最初のスイッチングハブ「EtherSwitch」
1995年 100Base-T、Fast Ethernet
1998年 1000Base-T、Gigabit Ethernet
1998年 メルコ、高速低価格スイッチングハブ販売

1970年代末まで:各社個別仕様の時代

1970年代末頃の汎用コンピュータを中心としたシステムでは、事業所のコンピュータ間でのデータ伝送やTSSによるコンピュータと端末の接続が行われていた。そして、それらの多様な機器との接続を円滑にするために、統合的なネットワークアーキテクチャ(体系)が策定されていた。その代表的なものが、1974年にIBMが策定したSNA (Systems Network Architecture) である。これにならって、富士通はFNA、NECはDNA、日立はHNAというように同様なアーキテクチャを策定した。
 しかし、これらのネットワークアーキテクチャは各社独自仕様なので、例えばIBMの汎用コンピュータにNECのパソコンを接続するためには、それぞれ個別の接続機器やソフトウェアが必要であった。

TSSでは、汎用コンピュータと多数のパソコンの間を通信回線で接続している。また、2台のパソコンを接続して、相手のパソコンとデータやソフトウェアを共有することも行われていた。しかし、これらをLANと呼ぶのはオーバーであろう。

それに対して、ミニコンピュータの分野では、標準OSであるUNIXが普及しており、しかもUNIX搭載機種間での接続機能も進んでいた。また、UNIXの通信方式によったLAN(らしきもの)も使われていた。しかし、当時は(特に日本では)、ミニコンピュータの用途は科学技術分野に限定されており、全社的な用途には使われていなかった。


1980年代:標準化が進む

【利用】TSSの普及

1980年代になると、エンドユーザがTSSを利用して、汎用コンピュータにアクセスするようになった。パソコンがビジネスで広く用いられるようになった。次第にパソコンをTSS端末としても利用するようになった。そのため、汎用コンピュータとパソコン間、パソコン同士をネットワークで結ぶ必要が高まった。
 これらの機器を単一メーカー製品で統一するのは現実的ではない。それで、異機種間接続の標準化が求められるようになった。
参照:「TSS(タイムシェアリングシステム)」「EUCの発展」

【標準】異機種接続のための標準プロトコル
TCP/IPとOSI参照モデル

  • 1974年 TCPの仕様を発表
  • 1978年 TCPをTCPとIPに分割
  • 1982年 ARPANETでの通信プロトコルに採用
  • 1983年 IEEE 802.3規格になる

TCP(Transmission Control Protocol)は、ネットワーク相互間の伝送制御手順。
参照:「TCP/IPの概要」

  • 1977年 OSI参照モデルの検討開始
  • 1982年 OSI参照モデルの基本仕様確定
  • 1984年 ほぼ完成(その後も逐次制定)
    OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルとは、ISO(国際標準化機構)が制定した開放型システム(機種などによらない通信システム)の相互接続のモデル。異機種間のデータ通信を実現するための通信機能を7つの階層構造に分割して定義したもの
    参照:「OSI参照モデルの7階層」

LANやインターネットでは、必然的に多くのメーカーの機器を接続するので標準化が必要である。それには、国際標準化機構であるISOで決定するのが望ましい。ところが国際機関であるために、かえって各国の調整をするのに手間がかかる。その間にインターネットの分野ではTCP/IPが現実的に普及し、それに準拠した機器が多くなってしまい、OSI準拠製品は普及しなかった。しかも、1990年代中頃からのインターネットの展開により、LANもインターネットに合わせるようになってきた。
 しかし、当然ながらTCP/IPとOSI参照モデルは大まかには類似している。そして、論理的体系としてはOSI参照モデルのほうがすぐれている。そのため、論理的な面ではOSI参照モデルを用い、実装的な面ではTCP/IPを用いるように使い分けていることが多い。

【標準】IEEE 802委員会

LAN分野では「IEEE 802.xx」のような名称の規格が多い。これはIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers、米国電気電子学会)の802委員会が策定したからである。IEEEは米国の学会であるが日本など他国からの参加も多く、この規格は国際規格とみなされることが多い。なお、「802委員会」の名称は、1980年2月に発足したからだとのこと。

【標準】代表的なLAN規格

  • 1973年 米ゼロックスのパロアルト研究所、イーサネット(Ethernet)特許登録
  • 1980年 ゼロックス、DEC、インテルの3社による仕様が「Ethernet 1.0規格」に
  • 1983年 現在のイーサネットの基本的仕様、「IEEE 802.3 CSMA/CD」
  • 1992年 Fast Ethernet
  • 1998年 Gigabit Ethernet
    イーサネットは、現在最も広く使われているLANの規格。
               通信速度  ケーブル・規格
      当初のEthernet   10Mbps  同軸ケーブル(10BASE-2など)
      Fast Ethernet   100Mbps  より対線(100BASE-TX)、光ファイバー(100BASE-FX)
      Gigabit Ethernet 1000Mbps  光ファイバー(1000BASE-SX、1000BASE-LX)

ところで、Ether(エーテル)は、19世紀までの物理学で、光が伝播するために必要となる真空中に詰まっているとされた仮想媒体のこと。LANを「情報を伝える空間」としてとらえたのであろう。

  • 1984年 IBM、トークンリング(Token Ring)開発
  • 1987年 FDDI(Fiber-Distributed Data Interface)
    トークンリングは、機器をリング状に接続する形式。通信速度は4Mbpsおよび16Mbps。
    FDDIは、トークンリンをベースにしており、次の特長を持つ。
      光ファイバを使い高速化(100Mbps)した
      光ファイバを二重リング型構造にして保守運用を容易にした

FDDIは、当時としては高速であり、例えば、ビルの各階や各フロア内はイーサーネットで配線し、それらのイーサーネットを幹線であるFDDIで接続するという構成が流行った時代もあった。しかし、FDDIは高価だったので、Fast EthernetやGigabit Ethernetなどイーサネットの高速化に伴い特長を失い、1990年代末には姿を消した。

【機器】同軸ケーブル

同軸ケーブル
  • 1983年 10BASE-5
  • 1984年 10BASE-2
先頭の「10」は通信速度「10Mbps」、最後の「5」や「2」はケーブルの最大長「500m」「200m」を示す。これらは同軸ケーブルである。10BASE-5は、ケーブルの被膜が黄色なので、イエローケーブルと呼ばれた。直径10mmもあり、重いだけでなく、曲がりにくく、配線工事は大変だった。
リピータ
ケーブルの長さを延長する機器である。通信ケーブルの中で減衰した信号波形を元に戻して再び通信ケーブルに送り出す機能を搭載している。この仕様は、1983年に10BASE-5とともに規格化され、1985年に改良された。

【機器】ルータの始まり

ルータは、インターネットで相手先機器との接続を行うための機器であり、LAN間接続で必要になる機器であるが、現在ではLAN内においてもルータ接続が行われていることが多いのでここで記述する、

  • 1976年 世界初のルータ「IMP」
    米BBN社は、インターネットの前身であるARPANET用に、ルータの機能を持ったパケット交換機IMP(Interface Message Processor)を開発した。ここで培われた基礎技術が,後のルータに引き継がれ、本機がルータの最初だとされている。しかし、IMPでは、異なる仕様のネットワークをつなぐマルチプロトコル機能はなかった。
  • 1981年 最初のマルチプロトコルルータ
    マルチプロトコルは「IP」というプロトコルを前提とする。スタンフォード大学では「Blue Box」と呼ばれるマルチプロトコルルータを開発した。彼らはその後シスコシステムズ社を設立する。
  • 1986年 世界初の商用ルータ「ProNET p4200」と「AGS」
    「ProNET p4200」は米プロテオン社、「AGS」はシスコシステム社によるマルチプロトコルルータ。これらにより、ルータは一気に普及していった

1990年代前半

【利用】ダウンサイジング

  • 1989年 汎用コンピュータ生産高の伸び止まり、パソコンが伸びる
  • 1991年 汎用コンピュータ生産高ピーク。以降、急速な減少に
  • 1992年 パソコンの生産高、汎用コンピュータを抜く

1980年代にパソコンの価格性能比が急速に向上した。1980年代末頃になると、汎用コンピュータによる集中処理と比較して、多数のパソコンをLANで接続した分散処理の優位性が強く認識されるようになり、それへの移行、すなわちダウンサイジングが進んだ。
 一般的なLANの構成は、利用者の机の上にあるパソコン(クライアント)から要求に応じて処理をするパソコン(サーバ)を利用するクライアントサーバシステムであった。
 このような動向により、LANの敷設が急速に進んだ。特に大規模オフィスでは、LANの規模も大きくなった。
参照: 「ダウンサイジング}

【機器】より対線とハブ/ブリッジ

より対線(Twisted pair cable)10BASE-T
  • 1990年 10BASE-T
  • 1991年 10BASE-Tリピータ
1990年になると、安価で細い「より対線」のケーブルである10BASE-Tが規格化された。当初は同軸ケーブルを幹線として各室間を結び、そこからハブを介して、室内の機器を10BASE-Tでスター型に接続する構成であったが、その後は幹線部分の同軸ケーブルも、より対線や光ファイバーケーブルに移行するようになった。
10BASE-Tは、電話線に似た外観だが、電話線は4本の電線が入っているのに対して、10BASE-Tでは通常8本なので、直径5mm程度の太さになる。同軸ケーブルと比べれば、かなり取り扱いやすくなる。また、ケーブルのコネクタは電話と同様のモジュラジャックであり、接続が電話機並みに簡単になった。
(リピート)ハブ
ハブとは集線装置のことである。ハブからパソコン等の機器に10BASE-Tをスター型に接続する。
 リピータが1対1の接続であるのに対して、ハブは複数の伝送路に接続するので、リピータの拡張機能(マルチポートリピータ)だといえる。また、選択(スイッチ)機能がなくすべての接続先に送るリピート機能だけのハブだともいえる。それで、リモートハブということもある。  ハブに接続した10BASE-Tをさらにハブに接続して、そのハブから複数の10BASE-Tを接続する(カスケード接続)ことにより、多数の機器をスター型に接続することも可能である。しかし、その場合、非常に大量のデータ(トラフィック)がすべての回線に流れるので、高速化が必要になる。
ブリッジ
ブリッジはOSIのデータリンク層(レイヤ2)レベルで中継を行う装置で、リピータ機能に、イーサネットフレームの送信先アドレス(MACアドレス)をチェックして必要なフレームだけを中継し、不要なフレームは破棄する機能を加えたものである。これにより、中継するトラフィックを抑えることができる。

【標準】NOS

  • 1987年 NOVELL、NetWare(DOS版)
  • 1987年 Microsoft、LAN Manager(MS OS/2版)
  • 1988年 3Com、3+オープンLANマネージャ

現在では、UNIXやWindowサーバOSがLANの管理機能を持っているが、1994年にWindowsNTが出るまでは、パソコンのOSはそのような機能はなく、NOS(Network OS)と呼ばれる専用ソフトを利用していた。
 通常のOSがLAN機能を持っていないことから、パソコンのアプリケーションソフトは、単独利用とLAN対応の2種類があり、LAN対応ではNOSに互換性がないことから、それぞれの対応NOSにより異なっていた。市販ソフトでは「LAN(NetWare)対応」などと表示されていた。
 1990年代初頭では上記のNOSが有名であったが、そのうち、NetWareが多くのOSの下で稼働できることから優勢になり、一時は独占的なシェアを誇った。
 しかし、1994年に発売されたWindows NTがネットワーク管理機能を標準装備していたので、数年の間に利用者のほとんどがNTに切り替えて、NOS市場全体が急速に低下してしまった。


1990年代後半

【利用】LANとインターネットの統合

1995年頃からインターネットが急激に普及した。LANとインターネットとは共通の要素が多い。それで、LANをインターネット技術により再構築するようになった。それを当時はイントラネットといった(現在では、ほとんどのLANがイントラネットになっているので、死語になったといえる)。

  • TCP/IP準拠
    LAN構成機器がすべてTCP/IP準拠になった。それによりLANとインターネットがシームレスに接続できるようになった。事業所間をインターネットで接続し、それぞれの事業所内のLANにある機器にアクセスできるので、全社があたかも一つの場所にあるような利用が可能になった(このような限定された事業所間(企業間)ネットワークでのインターネット技術利用のことをエクストラネットといった)。
  • Webブラウザ対応
    多くのアプリケーションは、アイコンやファンクションキーを利用する操作になっていたが、それらは、アプリケーションごとに異なっていた。そのため、利用者はアプリケーションごとに操作方法を覚えなければならず、混同による誤操作も多かった。
    それが多くのアプリケーションが、利用者とのインタフェースにWebブラウザを用いるようになった。それにより、基本的な操作が標準化され、習得も容易になり誤操作も少なくなった。
  • モバイルコンピューティング
    LANとインターネットがシームレスになると、社員がオフィスの外からLANとアクセスすることが可能になる。当初は自宅や訪問先から有線回線によりインターネットに接続していたが、任意な場所で利用するためには無線によるモバイルコンピューティングが必要になる。
  • セキュリティ対策
    LANとインターネットの接続は、LAN内部がウイルスや不正アクセスの攻撃にさらされることになる。セキュリティ対策が重要事項になった。

【機器】LAN高速化とスイッチングハブ

  • 1995年 100Base-T、Fast Ethernet
  • 1998年 1000Base-T、Gigabit Ethernet

スイッチングハブの出現

  • 1990年 米国のカルパナ社、最初のスイッチングハブ「EtherSwitch」
    リモートハブは接続されている機器すべてのトラフィックを中継するのに対して、スイッチングハブは、接続している機器のMACアドレスを知り、宛先機器にだけ中継するブリッジ機能を持つ。
  • 1994年 Bay Networks社、VLAN機能搭載「28115」
    VLAN(仮想LAN)とは、例えば、8ポートのLANスイッチを営業部4ポートと技術部4ポートに分けて、仮想的に2つの独立したLANとしてネットワークを構築することができるようにしたもの。LANの模様替えやパソコンの移動に便利。
  • 1998年 メルコ(BUFFALO)高速低価格スイッチングハブ「LSW10/100-8」
    当時のスイッチングハブは、8ポートモデルで約20万円もしていた。本機は4万円を切る価格により、100Mbpsへの移行を促進した。
  • 1995年 Cisco、最初のレイヤ3スイッチ「Catalyst 5000」
    レイヤ3スイッチングハブとは、レイヤ3(ネットワーク層)すなわちルータ機能を持つスイッチングハブ。IPルーティングを高速処理する。
    2000年頃のレイヤ3スイッチングハブ技術は、現在の家庭用のブロードバンドルータに使われている。
    2005年頃からのスイッチングハブは、Layer3スイッチが主になっている。

ルータの高速化

  • 1993年 IP処理のハードウェア化「Cisco7000」
  • 1997年 「Cisco12000」10Mパケット/秒
  • 1998年 日立「GR2000」40Mパケット/秒
  • 2004年 Cisco「CRS-1」100Mパケット/秒
    インターネットの普及に伴い、ルータの高速化が重要になってきた。さらにはNGN(Next Generation Network)対応が必要になってきた。

無線LAN

  • 1991年 米モトローラ、無線イーサネット「Altair」
  • 1993年 日本NCR、「Wave LAN」
  • 1993年 日本モトローラ、「AltairJ」
    1990年代前半に無線LANが開発されたが、低速(1Mbps)高価(10万円以上)で、メーカー間の互換性などの理由で普及しなかった。
  • 1997年 IEEE 802.11規格(2Mbps)
  • 1999年 IEEE 802.11b(10Mbps)
  • 1999年 IEEE 802.11a(54Mbps)
  • 2003年 IEEE 802.11g(54Mbps)
  • 2009年 IEEE 802.11n(100Mbps)
    1990年代後半から802.11規格が策定され、異なるメーカー間での通信が可能になった。
  • 1999年 WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)設立
  • 2002年 WECAがWi-Fi(Wireless Fidelity) Allianceに改称
    業界大手企業により設立した団体で、802.11規格の相互接続性を認証し、認定ロゴを表示させる。

パソコン台数が増大するのに伴い室内配線が多くなったこと、パソコンの移動が多くなったことから無線LANは魅力がある。標準化が進み、高速化したことから、1990年代末頃から急速に広まった。しかし、LAN全体を無線化するのは稀で、室内を無線でアクセスポイントに集め、アクセスポイント以降は有線のLANを用いるのが通常である。