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運用・保守


運用保守の位置づけ

運用・保守の対象はシステム全般であり、ハードウェアとソフトウェアがありますが、ソフトウェアのほうが全体の費用に占める割合が大きく、考慮すべき事項も多いので、ここでは主にソフトウェアを対象にします。ここでの保守とはソフトウェア保守とほぼ同じです。

システム開発が完了し引き渡しが行われる(導入)と、運用保守のプロセスになります。「運用」は平常時にシステムを円滑に稼働させるプロセスであり、「保守」とは故障や環境変更など何らかの事態が発生したときに、それに適応すべく解決することです。
 事態の解決には「改訂」という用語もあります。保守と改訂の区分は明確ではありません。一般に小規模な変更を保守、大規模な変更(作り直し)を改訂ということが多いのですが、全体を保守ということもあります。保守が必要になる理由を掲げます。

システム運用・保守のライフサイクルは、次のようになります(参照:「バスタブ曲線」)。

システムの移行

従来の手作業あるいは旧システムから新システムへの移行には、一斉移行と順次移行があり、それぞれ長所・短所があります。対象システムの特徴や環境を考慮して、適切な方法を選択することが大切です。

外注によりシステム開発をするのが通常ですが、運用保守プロセスでも外部委託が広く行われています。そのサービスをITサービスといいます。ITサービス提供者は、システム開発受託者と同じこともありますが、異なることもあります。ユーザ企業とITサービス提供企業との間で契約をするとき、サービスのレベルについて合意することが必要ですが、それをSLA(Service Level Agreement)といいます(参照:「SLA/SLM」)。

入力データ管理

運用プロセスで重要なのが入力データの管理です。システム自体は正常であっても、誤ったデータが入力されたことに起因するトラブルが発生します。
 誤りデータが入力されないように、システムとして入力時にフォーマットチェックやのリミットチェックなどチェックを厳重にする機能が必要ですが、万全を期することはできません。ここでは、誤ったデータが発見されたときの対処を対象にします。

データを保管しているファイルや記憶媒体の管理(保管,機密保護,不正使用防止など)はシステム部門(運用部門)の任務です。しかし、データの内容については業務部門(ユーザ部門)が責任をもちます。
 運用部門が、入力されたデータに誤りがあることに気付いた場合、運用部門が独断で修正してはいけません。誤りデータに関する情報をユーザ部門に伝え、ユーザ部門が定められた方法により修正するようにする必要があります。
 ユーザ部門から渡された伝票を運用部門が入力する場合では、入力原票1件ごとの入力結果の確認は,処理結果リストをユーザ部門に送付し,ユーザ部門が行うのが適切です。
 これらは不正防止の観点からも重要です。

保守の発生

保守は次のような理由により発生します。

(注)バージョンアップが実務的に深刻な問題になっています。
 現状のOSやERPパッケージなどで一応満足しているのに、ベンダがバージョンアップを行い、現行のバージョンのサポート打切りをすることがあります。
 ベンダは、最新のバージョンのほうが優れているし、あまり古いバージョンまでもサポートするのは費用がかかるといいます。しかし、ユーザとしては、これらへの対処には、膨大な量の既存アプリケーションが新バージョンで正常に稼働するかどうかの点検が必要になります。また、現行バージョンのサポートが打ち切られると、誤りが発見されても修正してくれないし、最新のセキュリティへの対処も受けられません。バージョンアップをすべきかどうかの判断が経営問題にすらなっているのです。

ハードウェアの保守

保守の種類

設備や機器などのハードウェアを対象とした保守は、故障した個所の修理や取替が主になります。

故障発生と保守のタイミングによる区分

  事後保全(故障が発生してから対応)
    緊急保全(人命や財産、広社会に影響を与える故障。最優先で対応)
    通常事後保全(緊急性はなく通常の保守基準による対応)
  予防保全(故障が発生する前に対応して、故障を防ぐ)
    時間計画保全(TBM:Time Based Maintenance)
      定期保全(「毎月15日」など、予定の時間間隔で行う)
      経時保全(「稼働累積時間が1000時間ごと」のように累積時間により行う)
    状態監視保全(CBM:Condition Based Maintenance、予知保全ともいう)
      (定常的な運転状態を計測し、故障発生の前兆を察知して行う)

事後保守では、被害が大きくなるし、稼働が停止するので、予防保全により故障を防ぐことが重要です。しかし、時間計画保全は、無駄が生じるし、保全ミスによりかえって故障を招く(いじりこわし)ことがあります。状態監視保全は、それらの欠点を減らす効果があります。それには定常的な運転状態の計測と分析が必要で、それを設備診断技術といいます。

ハードウェアの保守は、メーカーや代理店と保守契約を結ぶのが通常です。保守契約には個々の障害の事後保守を対象とした個別契約と、障害の発生に関係なく月額固定料金を支払う定期契約があります。定期契約では予防保守や定期保守が含まれます。

ハードウェアのライフサイクルによる区分

製品の故障発生頻度は使用期間により、右図のように変化します。これをバスタブ曲線(浴槽のこと)といい、このような確率分布をワイブル分布といいます。

保守の方法

故障の発生を少なくすること、故障したときの復旧時間を短くすることが重要です。これについては、別章「RAS,MTBF,MTTR」を参照してください。

ユーザ企業でのハードの保守では、メーカーから保守担当者が来て修理するのが通常ですが、それには時間がかかります。パソコンのような共通品の場合は、あらかじめ予備機を用意しておき、故障が発生したときは予備機を使用し、その間に故障機を修理することも考えられます。
 重要な機器は二重化することが望まれます。これについては、別章「システム構成」を参照してください。

異常が発生した場合,現場から離れた保守センターからネットワークを通して障害状況の調査をすることをリモート保守といいます。主にソフトウェアの保守で使われますが、ハードウェア保守でもこれを行うことにより、適切な担当者や必要な部品などを判断して修理時間を短縮できます。
 サーバなどの故障時でもユーザ自身で対処できること、あるいは、保守担当者の作業を短縮することが望まれます。例えばサーバ内部の各筐体をモジュール化して取外付けの作業に工具を必要としないようにすることをツールレス保守といいます。

運用保守管理

運用保守管理のポイント

保守を正しく効率的に行うためのポイントを列挙します。本来は、システム設計の段階から保守の容易性を高める工夫が必要なのですが、それに関しては別章「保守改訂を考慮したシステム設計」で扱いますので、ここでは既存システムの保守を対象にします。

保守の優先順位

保守を要する案件は、数多く発生します。対応する優先順位は、3つの観点で決定します。

「重要性>緊急性>他との関係」で重視します。通常は、重要性と緊急性は一致することが多いのですが、他との関係では一致しないことが多くあります。Aの重要性、緊急性が高い場合、二度手間になってもBの解決を待たずにAを行うことを考えるべきです。

保守のマネジメント基準とアウトソーシング

運用保守の重要性が高まりマネジメントとして認識されるようになりました。それに伴い、マネジメントの基準がISOなどの規格になり、管理実務を請け負うサービスも出現してきました。


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