基幹業務系システムは、企業活動を規制します。経営環境の激変に即応するためには、改訂を容易にできることが求められます。それには、システム開発段階から、改訂を容易にできるように工夫することが必要です。
改訂を容易にするには、次のような手段が考えられます。
システムを作るから改訂が必要になるのですから、システムを作らなければよいのです。これは暴論のように聞こえるかもしれません。ところが、仕事の仕方を変更すればシステムを作る必要がないのに、それを変えないでシステムにより解決しようとしていることも多いのです。
「そもそもこの業務を自社で行う必要があるか?」を問う必要があります。撤退すべき事業の業務をシステム化するのは、システム化により、ある程度は合理化できるとしても、それによって構造的に不採算な事業の延命策を講じると、かえって撤退の時期を誤ることになります。
また、組織間の情報伝達を円滑にするためにシステム化をすることがありますが、組織を統合するとか、分業を止めて1人で多くの業務を担当することにより、伝達そのものを不要にすることができます。
仕事の仕方を抜本的に見直して業務改革をすることをBPR(Business Process Reengineering)といいますが、システム化はBPRとともに行なうこと、BPRを行なうための手段としてシステム化をとらえることが必要なのです。
特に重要ではないのに、以前から提供していたとの理由で、システム化するのにあたっても、それを要求していることがあります。現在コンピュータで作成している帳票類を見直すと、かなりのものが不要なことが発見することも多いのです。
また、情報検索系システムやデータウェアハウスを普及させることにより、基幹業務系システムとしてサポートする必要がないこともあります。
開発当初から将来起こるべき変更を見込んでおけば、改訂が容易になります。ところが、経営環境が激変しており、将来のことは予想できない状態では、実際の効果を期待することはできません。むしろ、必要以上にシステムを巨大化・複雑化する危険性があります。
ERPパッケージやSaaSなどを利用していれば、給与の年末調整や消費税率の改定など、多くの企業に共通する保守・改訂の場合は、パッケージの作成元がそれに対応したソフトウェアを提供するので、自社で改訂作業をする必要がありません。
また、減価償却を定額法から定率法に変換するなど、パッケージ作成時に想定した事項ならば、パラメタの設定を変更するだけでよい場合もあります。
自社仕様のシステムを個別に作る場合でも、その構築や改訂の作業をアウトソーシングすることにより、自社では作業をしないようにできます。その費用はかかるにしても、自社の社員をそのような業務よりも付加価値の高い業務につけることができれば有利になります。
経営環境が変化しても、既存の情報システムへの影響を少なくする工夫が必要です。
個々の帳票作成を基幹業務系システムで行うのではなく、情報検索系システムとして、EUCで行うことにすれば、事務処理システムの大半を占める帳票出力プログラム数を非常に減らすことができます。それによって、改訂の対象となる基幹業務系システムの規模を数分の1にすることができます。情報検索系システムを普及することは、改訂を少なくするのに効果的です。(→参照:「情報検索系システムによる基幹業務系システムの簡素化」)
データ中心アプローチにより、プログラムを変更するのではなく、データを変更するだけで対処できる場合が多くなります(→参照:「データ中心アプローチ」)。また、オブジェクト指向アプローチにより、既存のプログラムやデータに影響を与えることを少なくすることができます(→参照:「オブジェクト指向」)。
プログラムを部品化することにより、改訂を行う個所を少なくできます(→参照:「部品化と再利用」)。特にSOAのように粒度の大きな部品を再利用できるようにすれば、大規模な改訂にも対応できます(→参照:「SOA」)。
過去問題: 「保守・改訂容易化の手段」