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保守・改訂容易化の手段


基幹業務系システムは、企業活動を規制します。経営環境の激変に即応するためには、改訂を容易にできることが求められます。それには、システム開発段階から、改訂を容易にできるように工夫することが必要です。

改訂を容易にするには、次のような手段が考えられます。

  1. 改訂を必要とするシステムを作らない
  2. 将来の改訂を見込んだシステムにする
  3. システムを作るが自分では改訂作業をしない
  4. 経営環境の変化が既存システムに与える影響を小さくする
  5. 部品化することにより、改訂を行う個所を少なくする

システムを作らない

システムを作るから改訂が必要になるのですから、システムを作らなければよいのです。これは暴論のように聞こえるかもしれません。ところが、仕事の仕方を変更すればシステムを作る必要がないのに、それを変えないでシステムにより解決しようとしていることも多いのです。
 「そもそもこの業務を自社で行う必要があるか?」を問う必要があります。撤退すべき事業の業務をシステム化するのは、システム化により、ある程度は合理化できるとしても、それによって構造的に不採算な事業の延命策を講じると、かえって撤退の時期を誤ることになります。
 また、組織間の情報伝達を円滑にするためにシステム化をすることがありますが、組織を統合するとか、分業を止めて1人で多くの業務を担当することにより、伝達そのものを不要にすることができます。
 仕事の仕方を抜本的に見直して業務改革をすることをBPR(Business Process Reengineering)といいますが、システム化はBPRとともに行なうこと、BPRを行なうための手段としてシステム化をとらえることが必要なのです。

特に重要ではないのに、以前から提供していたとの理由で、システム化するのにあたっても、それを要求していることがあります。現在コンピュータで作成している帳票類を見直すと、かなりのものが不要なことが発見することも多いのです。
 また、情報検索系システムデータウェアハウスを普及させることにより、基幹業務系システムとしてサポートする必要がないこともあります。

将来の改訂を見込んだシステムにする

開発当初から将来起こるべき変更を見込んでおけば、改訂が容易になります。ところが、経営環境が激変しており、将来のことは予想できない状態では、実際の効果を期待することはできません。むしろ、必要以上にシステムを巨大化・複雑化する危険性があります。

システムを作るが自社では改訂作業をしない

ERPパッケージやSaaSなどを利用していれば、給与の年末調整や消費税率の改定など、多くの企業に共通する保守・改訂の場合は、パッケージの作成元がそれに対応したソフトウェアを提供するので、自社で改訂作業をする必要がありません。
 また、減価償却を定額法から定率法に変換するなど、パッケージ作成時に想定した事項ならば、パラメタの設定を変更するだけでよい場合もあります。

自社仕様のシステムを個別に作る場合でも、その構築や改訂の作業をアウトソーシングすることにより、自社では作業をしないようにできます。その費用はかかるにしても、自社の社員をそのような業務よりも付加価値の高い業務につけることができれば有利になります。

経営環境の変化が既存システムに与える影響を小さくする

経営環境が変化しても、既存の情報システムへの影響を少なくする工夫が必要です。
 個々の帳票作成を基幹業務系システムで行うのではなく、情報検索系システムとして、EUCで行うことにすれば、事務処理システムの大半を占める帳票出力プログラム数を非常に減らすことができます。それによって、改訂の対象となる基幹業務系システムの規模を数分の1にすることができます。情報検索系システムを普及することは、改訂を少なくするのに効果的です。(→参照:「情報検索系システムによる基幹業務系システムの簡素化」

改訂個所を局所化する

データ中心アプローチにより、プログラムを変更するのではなく、データを変更するだけで対処できる場合が多くなります(→参照:「データ中心アプローチ」)。また、オブジェクト指向アプローチにより、既存のプログラムやデータに影響を与えることを少なくすることができます(→参照:「オブジェクト指向」)。

プログラムを部品化することにより、改訂を行う個所を少なくできます(→参照:「部品化と再利用」)。特にSOAのように粒度の大きな部品を再利用できるようにすれば、大規模な改訂にも対応できます(→参照:「SOA」)。


理解度チェック

第1問

  1. 情報システムは企業のあらゆる分野に浸透している。また、情報システムは業務の仕方を[ 1 ]しているので、[ 2 ]に合致したものでなければならない。ところが[ 2 ]は激変しているので、情報システムをその変化に即応して改訂することが重要である。しかし、既にできあがったシステムを改訂しやすくするのは困難であるから、情報システムを設計・構築する段階で、将来の改訂が容易になるように工夫することが大切である。
    1 規制 2 経営環境
  2. それには、次のようなことを考える必要がある。最も重要なのは、システムを[ 3 ]ことである。組織を改訂することにより、不要になるシステムもあるし、情勢が変わって不要になった帳票をいつになっても出力していることもある。システムを作る前に仕事の仕方を見直すことが必要なのである。
    3 小規模
  3. システムを作るにしても、自分で改訂作業をしないことを考える。システムを作成したり改訂する業務を[ 4 ]することは、当然誰かが改訂するのではあるが、専門家に任せるほうが効率的であるといえる。しかも費用が明確になるので、不要なシステムや帳票をなくすことにつながる。自分でシステムを作るのではなく、既存の市販ソフトウェアである[ 5 ]を購入することも有効である。当然、新規に作成するよりも安価であるし、各社で共通した事項ならば、ベンダが改訂したものを提供してくれる。個別に改訂するにしても、ソースプログラムを修正するのではなく、パラメタの指定を変更すればよいようになっていることも多いので、修正が簡単になる。
    4 アウトソーシング 5 パッケージ
  4. 自分が作成する場合には、[ 2 ]が変化しても、システムにあまり影響を与えないようなしくみにすることが効果的である。業務の流れに立脚したシステムは、組織変更や業務が変われば、そのままシステムの改訂につながる。それに対して、業務に必要なデータに着眼し、その構造を明確にしてデータベースの構築を中心としたシステムは、かなりの変化があっても、その中核部分を改訂することは少なくて済む。そのようなシステム設計の方法を[ 6 ]アプローチという。
    6 データ中心
  5. ブルックスの法則は改訂作業にもあてはまる。システムの規模が大きくなると、それの改訂は急速に複雑になる。逆に言えば、改訂を容易にするには、システムを小規模にして簡素化することが効果がある。個々の帳票作成をするのではなく、その元になるデータをユーザが使いやすい形式に整理して公開し、ユーザが習得しやすい簡易言語ツールを用いて任意に検索加工できるようにする。それにより、プログラム数を非常に減らすことができる。このように情報システム部門以外の人が自主的にコンピュータを用いることを[ 7 ]といい、特にこのように任意な検索加工をする利用形態を[ 8 ]系システムという。
    7 EUC 8 情報検索
  6. また、共通の処理やデータを部品化することにより、修正する部分を少なくすることができる。そのような考え方を押し進めたのが[ 9 ]アプローチである。これらの手段を講じても、プログラムを作る必要がある。そのときには、プログラムの書き方を[ 10 ]することにより、誰が作ったプログラムでも同じような体裁にして、わかりやすいプログラムにすることができる。
    9 オブジェクト指向 10 標準化

第2問

  1. 経営環境の変化が激しいというが、最近5年間で情報システムに大きな影響を与えた環境変化にはどのようなものがあるだろうか。
  2. 既存システムの改訂が大変だと、経営戦略にどのような影響が出るだろうか。
  3. BPRを推進することにより、情報システムを簡素化できる例を列挙してみよう。
  4. アウトソーシングをすると、簡単な変更であっても費用がかかると思われる。それにもかかわらずアウトソーシングするメリットにはどのようなものがあるだろうか。
  5. EUC(情報検索系システム)を推進すると、基幹業務系システムにどのような影響を与えるであろうか。

過去問題: 「保守・改訂容易化の手段」


理解度チェック: 正誤問題選択問題