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正規分布と推定・検定

キーワード

正規分布、区間推定、比率の検定、Z検定

参照:JavaScriptの計算プログラム


正規分布とは、平均を中心に左右対称の釣鐘型をした分布です。成人男子の身長、リンゴの重さ、製品の形状など、多くの物理量の分布は正規分布になることが知られています。
 正規分布による検定をz検定と呼ぶこともあります。

Xが、平均μ、標準偏差σの正規分布に従う母集団に属するとき、
  Z=(X-μ)/σ
の変換を行ったZは、平均0、標準偏差1の標準正規分布に従う。

(Excel関数:NORMDIST(値,平均,標準偏差,密度・累積)、逆関数 NORMDIST(確率,平均,標準偏差)
正規分布の説明数表計算プログラム

区間推定
● 例題n・1
ある大規模の試験の成績が、受験者全体の平均点μは50点で、その標準偏差σは10点であることが公表されている。このことから、受験者の95%は何点から何点の間にあると推定できるか(有意水準5%での信頼区間を求めよ)。
● 解答
平均μと標準偏差σのとき、点数Xを、
   Z=(X-μ)/σ
により正規化すると、Zは平均0、分散1の標準正規分布に従います。
図の黄色の部分の面積を95%にするZの値を求めたいのですから、一方の確率は2.5%になります。
正規分布表より、0.025となるZを求めると、1.96になります。
また、上の式を変形すると、X=μ+σZ になります。それで、推定される範囲は、
   μ-σZ≦X≦μ+σZ
となります。
これに、μ=50、σ=10、Z=1.96を代入すれば、求める区間は、
   30.4~69.6
となります。
点の検定
● 例題n・2
ある菓子の通常の重さは、平均μ=150グラム、標準偏差σ=2グラムである。たまたまX=145グラムの製品が見つかった。工程に菓子を小さくするような何らかの原因が発生したと考えるべきか。有意水準5%で検定せよ。
● 解答
この場合は、
  帰無仮説 H0:Xは平均μ、標準偏差σの母集団に属する
  対立仮説 H1:Xは母集団よりも軽い
になります。
0だとすれば、Z=(X-μ)/σにより正規化すると、Zは平均0、分散1の標準正規分布に従がいます。
P(≧Z)の値は正規分布表になっています。P(≧Z)=0.05になるZは
  Z0.05=1.64
です。
正規分布は左右対称であり、この場合は、小さいほうを検討しているので、棄却域の点は
  -Z0.05=-1.64
になります。
一方、145グラムからのZは、
  Z=(X-μ)/σ=(145-150)/2=-2.5
となります(A点)。 A点は棄却域に入っているので、H0は棄却されます。H0は棄却されたということは、H1が採用されるということです。すなわち、有意水準5%(信頼度95%)で、菓子を小さくするような何らかの原因が発生したといえることになります。
比率の検定
● 例題n・3
ある硬貨を100回投げたとき、表が56回出た。この硬貨は表が出やすいような原因があるのだろうか。
● 解答
この場合は、   帰無仮説 H0:μ=0.5(通常の硬貨である)
  対立仮説 H1:μ>0.5(表が出やすい)
になります。
試行回数nが少ないときは、2項分布によって計算できますが、試行回数が大きいときは困難です。
「2項分布は、n×pが大きいときは、平均np、標準偏差√np(1-p)の正規分布で近似できる。」という性質があります。
これを用いると、
  μ=np==100×0.5=50
  σ=√np(1-p)=√100×0.5×0.5=5 の正規分布で近似できるので、
  Z=(56-50)/5=1.2
  (厳密には、56ではなく、56-0.5とすべきだが、その理由は省略)
となります。 一方、正規分布表より上側5%点は1.645なので、「通常の硬貨である」との帰無仮説は棄却されません。すなわち、有意水準5%では、この硬貨に表が出やすい原因があるとはいえないのです。

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