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オープンデータ


ビッグデータとオープンデータ

ビッグデータ
オンラインショッピングサイトで蓄積される購入履歴、スマートフォンの発信履歴による災害時の行動分析、改札口での乗車・降車データ分析による交通状況の把握などには、数十テラバイトに及ぶ巨大なデータになります。このような巨大サイズのデータをビッグデータといいます。
近年は、IT能力の向上により、このようなビッグデータを扱えるようになってきました。また、AI(人工知能)などの分析技術が発展して、ビッグデータから有用な情報を得ることが盛んになってきました。
ビッグデータの活用効果を上げるには、多くのショッピングサイトが参加してビッグデータを構築したり、災害状況のデータと行動データを組み合わせるなど、多くのビッグデータを公開が求められます。
オープンデータ
行政や民間企業がもつデジタルデータを公開して、誰もが多様な分析が行えるようにすることです。従来から電子政府推進の一分野として、行政データの公開が行われてきましたが、さらに対象の拡大、原始データに近い詳細データの提供が求められています。
 さらにビッグデータの例のように、民間企業によるオープンデータの提供も求められています。

国のオープンデータ政策

国は、日本経済の発展に大きく寄与するとして、ITの高度活用を推進してきました。ここでは、行政のオープンデータ推進の分野を概観します。

IT基本法と電子政府(2001年)
高度情報通信ネットワーク社会への対処として、IT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)が成立し、その推進のために高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部、その後IT総合戦略本部と改称)を設置しました。IT総合戦略本部は、2005年までに世界最先端のIT国家となることを目標に,e-Japan戦略を策定しました。
 その重点の一つに、電子政府の実現があります。これには、
    行政(国・地方公共団体)内部の電子化
    官民接点のオンライン化,行政情報のインターネット公開・利用促進
があります。後者が行政のオープンデータ化につながります。
 その後、e-Japan戦略は、名称を変えて継続されてきましたが、オープンデータ化は一貫して重点施策の一つになってきました。
オープンデータ憲章(2013年)
オープンデータ活用は国際的な関心事です。2913年のG8サミットで「オープンデータ憲章」が国際公約として合意されました。
合意原則
  政府のデータすべてを,原則として公表する。
  時宜を得た,包括的且つ正確な質の高いオープンデータを公表する。
  幅広い用途のために,誰もが入手可能なオープンな形式でデータを公表する。
  技術的専門性や経験を公表し、データの収集,基準及び公表プロセスの透明性を確保する。
  オープンデータに携わる人材育成、将来世代のデータイノベーターの能力強化をする。
そして、各国がオープンデータ化背策を策定して推進すること、その状況を公表することを定めました。
世界最先端IT国家創造宣言(2013年)
e-Japan戦略の後継版のような位置づけです。ここで「IT総合戦略本部」に改称しました。 ここでも「オープンデータ・ビッグデータの活用の推進」が重点になっています。それに先立つ2012年に「IT戦略本部は「電子行政オープンデータ戦略に関する提言」を受けたものです。
マイナンバー法(2013年、2016年改正)
正式には「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」といいます。全国民にマイナンバー(個人番号)をつけ、身分証明書としてマイナンバーカード(個人番号カード)を交付しています。
 国民が統一した番号になるので、行政での横割りなデータ活用が進むだけでなく、将来的には民間での利用も想定されており、オープンデータ化の基盤になると思われます(オープン化には個人情報隠蔽等の加工が重要ですが)。
官民データ活用推進基本法(2016年)
行政や民間企業がもつデジタルデータを公開して活用するための基本方針を定めた法律です。
 同法では、情報の円滑な流通の確保、国際競争力の強化、新たな事業の創出、情報を根拠とする効果的かつ効率的な行政の推進などを基本理念としています。
 その推進のために、政府には活用推進基本計画の策定を求め、地方自治体には、地域における活用推進の施策についての基本的な計画を定めるよう努力義務を課しています。
 基本的施策としては、オンライン利用の原則化、コンテンツ流通の円滑化、利用機会の格差の是正、研究開発の推進、人材育成、教育の振興の他、情報システムに係る規格の整備と互換性の確保を挙げています。
 IT総合戦略本部に「官民データ活用推進戦略会議」を設置し、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進することとしています。そして、その会議の報告により、IT総合戦略本部は、2015年に「オープンデータ2.0」を策定しました。

オープンデータとセキュリティ

オープンデータとして公開するには、個人情報などの漏洩が心配です。高度情報通信ネットワーク社会の健全な実現のためにはセキュリティ対策が重要であり、国はそれに関する多数の法律や基準を制定してきました。ここでは、オープンデータに関係が深い2つを掲げます。

個人情報保護法の改正(2003年、2016年改正)
個人情報の保護は個人情報保護法で定められていますが、2003年当時はオープンデータの活用が緊急な認識が薄く、個人情報保護法がオープン化推進の足かせになることすらあると指摘されるようになりました。  2016年の改正では匿名加工情報に関する規則が定められました。特定の個人を識別することができないように個人情報を加工したものを匿名加工情報といい、個人情報ではないとして、個人情報保護法の適用を受けません。それで、匿名加工情報は本人の同意や通知なしに第三者に提供・受領することができます。しかし、その加工方法や取扱については厳格なルールが求められます。
サイバーセキュリティ基本法(2014年)
サイバー攻撃(サイバーテロ)とは、サーバーやパソコンなどのコンピューターシステムに対し、ネットワークを通じて破壊活動やデータの窃取、改ざんなどを行うことです。特に大規模なものを指すのが通常です。それへの対策がサイバーセキュリティであり、本法はサイバーセキュリティ推進の基本政策を定めたものです。
 オープンデータでサイバーセキュリティが重要なのは、オープンデータが削除や改ざんをされたときの影響が大きいだけではありません。サイバーテロは電力供給や交通網の社会インフラの管理・制御システムを標的にすることが多く、物理的に社会に打撃を与えますし、オープンデータの元になるデータの収集ができなくしたり、誤ったデータを与えることになってしまいます。