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IT技術者の勤労観

キーワード

やりがいの要因、悩み、自信、満足度


IT技術者は、何に仕事へのモチベーションや喜びを感じているのか、仕事の上でどのようなことに悩んでいるのかなどについて検討します。このような調査は、個人を対象にした任意調査(しかもWeb調査が多い)なので回答者の母集団が異なりますし、回答者の主観による回答ですから、調査により結果が異なることがあります。

全般的な満足度

IT業務に従事している人は、その仕事や業界に満足しているのでしょうか?
 自分の業界のほうが他業界よりも良いとしている人の割合は、IT業界のほうが非IT業界よりもやや多いという調査があります。 (図表)
 現在の職業に不満かどうかを調べる尺度として転職率があります。IT技術者は流動性が高く、IT業界は中途採用・中途退職が多いのですが、その場合も、IT業界の他社に移るとか独立することが多く、IT業界から離れたいと考えている人は比較的少ないのです。 (図表)
 これらから、IT技術者はITの仕事に満足している人が多いといえます。

IT関連の仕事を選んだ理由

「満足/不満足」は、「期待」との一致度だといえます。IT技術者は、なぜその仕事を選んだのでしょうか?
 ユーザ技術者の場合は、職種に関係なく就職してからIT部門に配属になったり、人事異動で(たまたま)IT部門に異動したのが大半です (図表) から、ここではベンダ技術者を対象にします。
 就職時にベンダ企業を選んだ理由として「給与が高い」「一生働ける」というような一般的な理由は相対的に低く、「仕事がおもしろそうだ」「技術やスキルが身に付く」ことをあげる割合が多いのが特徴です。 (図表)
 そのため、何をもって「おもしろい」と思うか、技術やスキルが身に付く「環境」であるかどうかが満足/不満足のポイントになると考えられます。  また、期待したことと異なる要因が現実の満足/不満足になることもありましょう。

IT技術者が満足を感じる要因

給与が上がることは、「やりがい」や「やる気」を向上させるでしょう。でも、その差が歴然になるのは給与がかなり高いときで、安いときにはたいした違いはありません。
 残業が長いのは、「やりがい」や「やる気」を阻害すると思われるのですが、むしろ、統計上では、残業の多い人のほうが「やる気」が高い調査結果になることが多いのです。 (図表)
 だからといって、「給与はやりがいに無関係だ」とか「残業が多いとやる気が出る」と結論するのは不適切です。これは、「原因と結果」が逆の関係にあるからです。やる気が高ければ、仕事を任され責任のある立場になる機会が多いし、高い給与を得ている人は、そのような立場になっているでしょう。残業も増えますし、それだけに成功したときの達成感が高く「やりがい」を感じるようになるのだと解釈するのが適切です。

仕事に「やりがい」があれば、「やる気」(モチベーション、動機づけ)が高くなるので、仕事が成功することが多く、「達成感」を味わえます。それが「やりがい」を高めることにもなります。楽しく仕事をして成功するには、この正のスパイラルをまわすことが重要です。 (図表)
 「やりがい」を高める要因には、これまでの仕事の達成感、給与など会社からの評価、業務遂行過程で得られた「能力向上」などがあります。

「顧客から感謝される」とか「好きな仕事ができる」などが、給与と同程度あるいはそれ以上に「やりがい」に影響しているのです。それに対して、会社の業績向上、昇進・昇格に関しては相対的に冷めています。 (図表)

逆に「昇進・昇格への関心は高い」という調査もあります。しかし、その内容はプロジェクトマネージャなどの「地位」「職種」になりたいということで部課長のような職位ではないようです。IT技術者は「部下をもちたい」割合が低いという別の調査もあります。

また、「自分の好きな仕事ができ能力も上がる」のがよいと感じている割合が、IT業界の人のほうが他業種の人よりも多いという調査があります。 (図表)
 すなわち、IT技術者は「会社人間」よりもプロフェッショナルの傾向があるといってよいでしょう。

やりがいが「顧客の満足」「仕事の達成」にあることは、従事している仕事の内容や責任権限に大きく関係することが考えられます。コンサルタント、ITアーキテクト、プロジェクトマネジメントなど、情報システム構築の上流工程を担当したり、システム全体の成否に与える影響が大きな職種の人はやりがいを感じることが多く、システム設計やプログラム作成など下流工程を担当している職種、顧客と直接に接する機会が少ない職種の人は、やりがいを感じることが少ないという傾向があります。また、同様な理由により、スキルレベルの高いほうが、やりがいを多く感じています。 (図表)

不満や不安を感じる要因

誰もがもつ最大の不安は「業界や会社の将来性」「自分の職種や自分のスキルの将来性」への不安でしょう。IT分野は発展が急激ですので、「新技術についていけない」し「現在の知識やスキルは通用しなくなる」のではないかという不安が高いと思われます。 (図表)
 しかし、業界や会社の将来性への不安は他業界でも同様で、特にIT業界だけの不安とはいえないようです。 (図表・再掲)

日常業務における不満や不安では、ベンダ技術者とユーザ技術者では異なる要因があります。 (図表)
 ベンダ技術者は、他社の求めにより情報システムを構築します。ベンダ技術者は、「コスト削減の圧力が増している」「短納期への圧力が増している」などを上位にあげています。客先であるユーザ企業の要請が、そのままIT技術者への圧力となっているのです。
 ユーザ技術者は、自社の情報システムに関して自らシステム構築にあたることもあるでしょうが、むしろ、IT戦略の策定や個々の情報システムの仕様策定が主任務です。ユーザ技術者もベンダ技術者と同様な悩みを抱えていますが、「技術の変化が早すぎてキャッチアップできない」ことをトップにあげています。ユーザ技術者は、ベンダ技術者と比較して必要とされる技術が多様で、しかも習得する機会が少ないことが理由でしょう。さらに、既存の技術も「バージョンアップのサイクルが早すぎる」ために、その対応が大変なことに悩みを感じています。

いつかの誤解

IT技術者の実態を知らない人は、事実と異なるイメージをもっています。それが誤解であることを説明します。

まとめ

IT技術者の満足(やりがい、喜び)・不満(不安)は、次のようにまとめられます。これは、プロフェッショナルな職種に共通な傾向であり、IT技術者は、自分をサラリーマンではなくプロの技術者であると認識しているようです。


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