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テレタイプの歴史

テレタイプとは、機械式あるいは電動タイプライタを用いて、有線あるいは無線での電信(参照:「(有線)電信の歴史」「無線の歴史」)を行う仕組みである。
 このときのタイプライタは、単にメッセージを送受信して印字するだけでなく、送信側・受信側で紙テープの読取や穿孔ができる機能をもっていることが多い。その後、テレタイプは用いられなくなったが、このタイプライタは、コンピュータの入力装置(紙テープ装置)へと発展する。その観点でテレタイプの歴史を展望する。


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テレタイプの歴史

1920年代:初期のテレタイプ

  • 1909年、クラム親子、初の実用的なテレタイプ装置の特許申請
  • 1910年 モークラム印刷電信機(Morkrum Printing Telegraph)
    いわば遠隔タイプライタのようなもの
  • 1919年 モークラム、「テレタイプ」
    商業的に成功したテレタイプ。送受信機が一体となった電信機。紙テープに印字する機構が付けられた。

テレタイプもタイプライタと同様、多数の技術者が改良を重ねて発展したものであり、単独の人物や機械を特定するするのは不適切である。その中でも、チャールス・クラム(Charles Lyon Krum)とその息子のホワード・クラム(Howard Krum)の功績は大きい。
 モークラム社(Morkrum)はモートン親子(Mark Morton、Sterling Morton)とチャールズ・クラムらにより設立(MORKRUM=MORton+and KRUM)され、1928年にTeletype社と社名変更、いくつかの合併後、最終的にはベル系列の子会社になり、タイプライタ式電子機製造を寡占化した。その過程において、「テレタイプ」が一般名称になった。1930年にウェスタン・エレクトリックの子会社になる。

1930年代:テレタイプの普及

1931年、AT&Tは電信サービスTWX(TeletypeWriter eXchange)を開始した。電話と同様に、手動交換機により、どのテレタイプとも送受信できる。
 このサービス方式は、その後テレックス(Telex:Teletype Exchange Service)といわれるようになり、1950年代には、通信社のニュース配信、気象通報、商取引など広く活用された。

1930年代は、米軍が通信を重視するようになった時代であり、テレタイプ社製Model 15は、第二次大戦中を通して軍用に約20万台が作られたという。

石油タンカーなど船舶との交信には、かなり後(1970年代)までテレックスが使われていた。当時、テレックス料金は文字数課金でかなり高く、文字を減らすことがコストダウンにつながった。それで、電文を略号に圧縮して送信、受け取った紙テープをコンピュータにかけて平文にするような工夫をしていた。

1960年代:コンピュータ端末としての利用

1963年 ASCIIコード制定、ASR-33(Teletype Model 33)発売
1967年 ASCIIに小文字が追加。Model 37

ASCII(American Standard Code for Information Interchange)コードは、コンピュータや通信で用いる文字コードを標準化したもの。現在広く用いられているシフトJISコードやUTFコードはASCIIコードをベースにしている。Teletype社は、ASCIIコード準拠した製品Teletype Model 33を開発、送受信兼用タイプをASR-33とした。CRとLFがテレタイプに導入されたのもModel 33からである。  また、ASCIIコードを策定するにあたり、寡占状態であるTeletype社の標準をかなり意識したといわれている。
 ASCIIコードは何度も改正されたが、Teletype社はそれぞれに準拠したテレタイプを発表した。その過程でキー配列も固定するようになった。


ASR-33(1963) (拡大図)
出典: Alan Bowker「KCBS-FM」

初期のコンピュータでは、入出力端末にテレタイプを利用することが多かった。初期のコンピュータEDSAC(1949年)の入出力装置としてテレタイプが採用されたという。ASR-33およびその後継機は、特に人気のあったDEC(Digital Equipment Corporation)社のミニコンPDP-8(1965年)やPDP-11(1970年)の端末として広く採用された。

テレタイプを用いることにより、タイプライタから直接入力するのではなく、あらかじめ紙テープに穿孔しておき読み込むことにより、作業効率を高めることができる。

TSSなどのオンライン形態は、テレタイプ通信の一方をコンピュータにしたものだといえる。現在ではパソコンが使われているが、1960年代~1970年代では、特化したテレタイプが用いられていた。
 プログラムやデータを作成するのに、現在ではディプレイのついたキーボードから入力しているが、以前は紙のカードやテープに穿孔したものを読み込ませていた。
 このときの紙テープは、テレタイプの紙テープを発展させたものである。テレタイプを紙テープの穿孔や読込に特化した機器を紙テープ穿孔装置、機器を紙テープ読取装置といい、総称あるいは両機能をもつものを紙テープ装置という。
 これについては、別章(紙テープ・カード装置)で詳述する。

1980年代:テレタイプの終焉

1970年代中頃になると、ディスプレイを装備したオンライン端末やパソコンが出現した。1980年代中頃からはパソコン通信がポピュラーになった。そのような理由により、通常の用途ではテレタイプの必要がなくなった。

1979年 Teletype Model43 これがTeletype社最後の機種
1984年 Teletype社、AT&Tに吸収
1985年 Teletype社、解散