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官民データ活用推進基本法


官民データ活用推進基本法(2016年成立、2019年改正)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC1000000103

行政や民間企業がもつデジタルデータを公開して、誰もが多様な分析が行える(オープンデータ)ようにすれば、社会やビジネスが抱える多くの課題を解決するのに役立ちます。近年は、ITの発展により、膨大なデータ(ビッグデータ)が容易に取り扱えるようになり、AIなどそれを分析する技術も発展してきました。
 しかし、健全な活用をするには、個人情報保護などセキュリティ対策も必要です。
 官民データ活用推進基本法とは、行政や民間企業がもつデジタルデータを公開して活用するための基本方針を定めた法律です。

同法では、情報の円滑な流通の確保、国際競争力の強化、新たな事業の創出、情報を根拠とする効果的かつ効率的な行政の推進などを基本理念としています。
 その推進のために、政府には活用推進基本計画の策定を求め、地方自治体には、地域における活用推進の施策についての基本的な計画を定めるよう努力義務を課しています。
 基本的施策としては、オンライン利用の原則化、コンテンツ流通の円滑化、利用機会の格差の是正、研究開発の推進、人材育成、教育の振興の他、情報システムに係る規格の整備と互換性の確保を挙げています。
 そして、IT総合戦略本部官民データ活用推進戦略会議を設置し、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進することとしています。

構成

第一章 総則(第一条―第七条)
 第一条(目的)
 第二条(定義)
 第三条(基本理念)
 第四条(国の責務)
 第五条(地方公共団体の責務)
 第六条(事業者の責務)
 第七条(法制上の措置等)
第二章 官民データ活用推進基本計画等(第八条・第九条)
 第八条(官民データ活用推進基本計画)
 第九条(都道府県官民データ活用推進計画等)
第三章 基本的施策(第十条―第十九条)
 第十条(手続における情報通信の技術の利用等)
 第十一条(国及び地方公共団体等が保有する官民データの容易な利用等)
 第十二条(個人の関与の下での多様な主体による官民データの適正な活用)
 第十三条(個人番号カードの普及及び活用に関する計画の策定等)
 第十四条(利用の機会等の格差の是正)
 第十五条(情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保等)
 第十六条(研究開発の推進等)
 第十七条(人材の育成及び確保)
 第十八条(教育及び学習の振興、普及啓発等)
 第十九条(国の施策と地方公共団体の施策との整合性の確保等)
第四章 官民データ活用推進戦略会議(第二十条―第二十八条)
 省略
附則
 省略

目的(第一条)

 この法律は、

ことを目的とする。

基本理念(第三条)

  1. 官民データ活用の推進は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法サイバーセキュリティ基本法個人情報の保護に関する法律行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、その他の関係法律による施策と相まって、個人及び法人の権利利益を保護しつつ情報の円滑な流通の確保を図ることを旨として、行われなければならない。
  2. 官民データ活用の推進は、地域経済の活性化及び地域における就業の機会の創出を通じた自立的で個性豊かな地域社会の形成並びに新たな事業の創出並びに産業の健全な発展及び国際競争力の強化を図ることにより、活力ある日本社会の実現に寄与することを旨として、行われなければならない。
  3. 官民データ活用の推進は、国及び地方公共団体における施策の企画及び立案が官民データ活用により得られた情報を根拠として行われることにより、効果的かつ効率的な行政の推進に資することを旨として、行われなければならない。
  4. 官民データ活用の推進に当たっては、情報通信の技術の利用における安全性及び信頼性が確保されるとともに、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにされなければならない。
  5. 官民データ活用の推進に当たっては、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化及び効率化に資するよう、国民の利便性の向上に資する分野及び当該分野以外の行政分野において、情報通信の技術の更なる活用の促進が図られなければならない。
  6. 官民データ活用の推進に当たっては、個人及び法人の権利利益を保護しつつ、個人に関する官民データの適正な活用を図るために必要な基盤の整備がなされなければならない。
  7. 官民データ活用の推進に当たっては、官民データを活用する多様な主体の連携を確保するため、情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保その他の官民データの円滑な流通の確保を図るために必要な基盤の整備がなされなければならない。
  8. 官民データ活用の推進に当たっては、官民データの効果的かつ効率的な活用を図るため、人工知能関連技術、インターネット・オブ・シングス活用関連技術、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術の活用が促進されなければならない。

官民データ活用推進基本計画

関連事項

オープンデータ2.0

IT総合戦略本部は、2015年6月に「新たなオープンデータの展開に向けて」、2016年5月に、 「オープンデータ2.0」を発表しました。

オープンデータ2.0では、「官民一体となったデータ流通の促進」をテーマに、2020年までを集中取り組み期間と定め、行政でのオープンデータを対象にした取り組みを示しています。
 ここでは、「これまでのオープンデータの成果と課題」をふまえ、「今後のオープンデータの展開に向けた基本的考え方と重点的に取り組む事項」を掲げています。

「今後のオープンデータの展開に向けた基本的考え方」として、これまでの公開面を中心とした対応から、今後はニーズオリエンテッドな「課題解決型のオープンデータの推進」に発想を転換すべきだとしています。

重点的に取り組む事項:データ公開の推進

重点的に取り組む事項:データの利活用の推進

行政手続きとマイナンバー

IT活用による行政手続きの簡素化の典型的な例として、引越時でのワンストップ官民データ活用推進基本計画サービスの実現があります。多くの自治体がこのシステムを構築しているのですが、未だ改善すべき事項が多いようです。
 内閣官房IT総合戦略室「引越しワンストップサービスこれまでの取組と今後の方針」2020年によると、2020年になっても、改善すべき事項が多いようです。

多くのサービスが複雑に関係するシステムでは、個人情報の関連づけが重要ですが、それには関連するサービスがマイナンバーを使っていると便利です。「今後の方針」では、引越業者や電気・ガス・水道事業者のシステムとも連携することを視野にいれていますが、そうなると、民間企業でもマイナンバーの利用が期待されます。

マイナンバーの利用範囲は現在では、主に「社会保障」「税」「災害対策」に限定されていますが、「他の行政分野及び行政分野以外の国民の利便性の向上に資する分野への利用の可能性」が検討されています。しかし、マイナンバーの拡大利用は、個人情報の漏洩や行政による個人監視となるリスクも無視できません。最も効果がありそうな運転免許証や健康保険証への利用も未だ検討中の段階です。
 マイナンバーの利用拡大でのルールの整備は、官民データ活用推進基本法の大きな柱になっています。