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ERPパッケージの発展経緯と最近動向

キーワード

個別業務パッケージ、MRP、小規模ERPパッケージ、SOA/SaaS


ERPパッケージの発展経緯

ERPパッケージには,個別パッケージから発展したものと,製造業におけるMRPから発展したものがあります。

個別業務パッケージの発展
以前は会計パッケージとか給与計算パッケージなどのように,個別業務を対象とした個別パッケージでしたが,互いに異なる設計思想のパッケージをバラバラに導入したのでは,パッケージ間でのデータの交換が円滑にできません。また,ベンダとしては多様な個別業務パッケージを販売するには,それらをセットにして販売することが効果的ですが,それには個々のパッケージの連携が容易であることをアッピールする必要があります。
 個別業務パッケージでは,大規模企業を対象にしたものもありましたが,その多くは中小企業での中小規模のオフコンを対象にしたものでした。そのような企業の対象業務が拡大してきたことと,オフコンからオープンシステムへの移行が進んできたことから,オープン環境環境で稼動する統合パッケージを提供する必要が出てきたのです。
MRPからの発展
ERPパッケージは,ERP(Enterprise Resouce Planning)を実現するためのシステムです。ERPとは,文字通りには「企業資源計画」ですが,企業全体での経営資源の最適計画を構築するための経営技法です。すなわちBPR(Business Process Reengineering:リエンジニアリング-業務革新)とほぼ同じ概念といえます。

製造業では,1960年代から,製品生産に必要な資材調達を計算するソフトウェアとしてMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)が利用されていました。それが,生産設備計画や人員配置計画も含んだCRP(Capacity Requirements Planning),財務計画も取り込んだBRP(Business Requirements Planning),物流業務へも適用したDRP(Distribution Requirements Planning)へと機能を拡大してきて,それがERPへと発展したのです。

パソコンソフトからの発展
中小企業でも給与計算や会計処理をパソコンで行っていますが、その多くは安価なパソコンソフトを用いています。当初は個別業務での利用でしたが、次第に業務間の連携が求められるようになりました。また、パソコンソフトのベンダも、各種業務のソフトを開発してきましたが、それらのソフト間で連携が便利なようにすることが、販売促進に役立ちます。
 それで、従来のパソコンソフトを連携した一連のパッケージをERPパッケージというようになりました。

海外ERPパッケージと国産ERPパッケージ

1990年代前半のERPパッケージは、ドイツのSAP社や米国のオラクル社などの製品が主流でした。欧米の先進企業をベースに開発したものですから、製造業の進捗管理での製番管理や大量受注における分割納入など、日本独特の機能に欠けていました(当然、その後サポートされるようになりましたが)。
 ERPパッケージの普及に注目して、富士通や日立などもERPパッケージを提供するようになりました。海外のものと比較すると、
  ・日本独自の方式や慣行を取り入れたこと
  ・比較的、カスタマイズを容易にしたこと
  ・海外のものに比較して、安価な製品にしたこと
などにより急成長しました。

最近の動向

小規模ERPパッケージ
2000年中頃になると、大企業でのERPパッケージは、導入を検討していた企業の導入が一段落して、飽和状態になりました。
 一般に、中堅・中小企業を対象とした場合、ERPパッケージは年商の1%程度で構築できることが目安だといわれていますが、そのような安価なERPパッケージが提供されるようになりました。また、従来からのパソコンソフトからの発展したERPパッケージは、さらに多様な機能を付け加えたり、性能をあげることにより、本来のERPパッケージに近くなってきました。
SOA/SaaSとの融合→2層ERP
「受注」とか「在庫更新」というような、業務で意味をもつ小さい単位をサービスといいます。サービス単位でのソフトウェアを部品として使えるようにすれば、それらのサービスの部品を組み合わせることにより、販売システムのような情報システムを構築することができます。このようなシステム開発の方法をSOAといいます。
 また、インターネットでのデータ交換に関する標準化が進み、これらのサービス部品をインターネットで利用するのが容易になりました。このような計算センターのことをSaaSやクラウドコンピューティングといいます。

これまでERPパッケージは、全業務をカバーすることを重視してきましたが、その全体をパッケージとして提供するのでは、どうしても高価になります。
 それをSOAやクラウドと融合する「2層ERP」という概念が取り入れられるようになりました。
 2000年代後半から、ERPパッケージのコンポーネント(アプリケーション)群を1層とし、その前に、サービス単位とコンポーネントを結びつける2層を置きます。これにより、利用者からは、ERPパッケージをSOAの単位で利用することができ、SaaSのような取扱いができます。
 ERPパッケージをサービスごとに部品として提供し、利用者は必要なサービス部品だけを、インターネットを用いて利用し、その利用頻度に応じて費用を払うようにすれば、安価でシステムを構築し運用することができます。