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人材育成

キーワード

人材育成、モチベーション、リーダーシップ、CDP、HRM、OJT/OffJT、e-ラーニング、ゲーミフィケーション、情報リテラシー、ITSS、ETSS、UISS、共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)、知識体系(BOK)、人材モデル、スキル、iCD(i コンピテンシ ディクショナリ)、情報処理技術者試験


モチベーションとリーダーシップ

「人材育成」の前提として、人はなぜ働くのか、進んで積極的に仕事をしてもらうにはどうするかなどを考えます。

モチベーション論

人が働くのは、その仕事をしようという意欲があるからです。その意欲を高めるために動機づけることをモチベーションといいます。各人の意欲を高めることは、組織にとって重要ですので、かなり以前から研究されてきました。

●黎明期

テイラーの「科学的管理法」
熟練者の作業を観察して、適切な作業方法(動作研究)や所要時間(時間研究)を見出し、作業の「見える化」「標準化」「マニュアル化」を行いました。そして、「差別出来高給」などの「課業管理」を導入しました。
 これは「科学的管理法」と呼ばれ,、その後の「職能別組織」た「IE」の基礎になりました。
メイヨーのホーソン実験
実験に参加した作業者は、選ばれたことの喜びと、少人数チームの連帯感により、優れた作業量を実現しただけでなく、進んで作業改善も行いました。これから、動機付けは給与だけではなく、環境や心理が大きく影響を与えることが注目され、非公式組織(インフォーマル組織)→人間関係論につながります。

●古典的モチベーション論

マズローの「欲求五段階説」
第3段階までを欠乏欲求、第4・5段階を成長欲求としています。
  1. 生理的欲求:生命を維持するための収入を必要とする原始的欲求
  2. 安全欲求:安全・安心な生活生活をするための収入、危険の少ない労働環境への欲求
  3. 社会的欲求:組織に属し孤独感から避けたい帰属欲求。職場の人間関係で仲間とされたい欲求
  4. 承認欲求:他人からに認められたいという欲求
        注目されたい、名声を得たいなどの表面的(低次)な欲求
        自己肯定や自律性などの内心的(高次)な欲求
  5. 自己実現欲求:自分の持つ能力を最大限発揮し、なすべきことをなし遂げたいという欲求
この理論のポイントは、人の欲求が全員同じものではなく、各人の環境により異なることにあります。
欠乏欲求の段階にいる人に、仕事の社会的意義などを説いても、賃金が安ければ、やる気を引き出すのは困難でしょうし、成長欲求に達している人は、仕事が社会的にも意義があり、自分の成長にも役立つことが大きな魅力になりましょう。
ハーズバーグの二要因理論(MH理論)
職務満足・職務不満足を引き起こす要因には、「動機付け要因(Motivator Factors)」と「衛生要因(Hygiene Factors)」の2種類があり、この2つに分けて考えるべきだ主張しました。
衛生要因は、「給与、心身の健康状態、会社での人間関係、職場環境」など生存や職場に関するもので、「欲求五段階説」の2.5段階未満とほぼ一致します。不足・悪化すると不満が溜まる原因となる要素ですが、求める水準を超えて改善してもあまり影響がなくなります。
動機付け要因は、「高業績・功績の達成、他者からの評価、仕事内容の満足感、責任、昇進、成長」などで、精神的に成長したい、外部から認められたいという欲求に基づくものですから、それを満足させる仕事の内容、適切な評価の仕組みなどが必要になります。
マクレガーのX理論・Y理論
「仕事嫌いなX部分が強い者」と、「自己実現をしたいというY部分が強い者」に分けて捉え、それぞれに適したマネジメントが必要だという理論です。上の2つの理論と同じような指摘ですが、管理者の対応を重視しています。
X理論による管理:「アメとムチ」によってモチベーションを引き出す独裁的なマネジメントが求められる。
Y理論による管理:従業員との間で協力関係を構築する、各従業員の望むものが目標が企業の目標と一致するよう努力することが求められる。
これらを適切に使いわけることが必要だと提唱しています。
アージリスの「未成熟-成熟理論」
最初は未成熟な人材が次第に成熟していく人間的な変化があります。
    未成熟段階   成熟段階
    受動的     能動的
    依存的     独立的
    単純な行動   多様な行動
    浅い興味    深い興味 への変化
    短期的な展望  長期的な展望
    従属的な立場  対等・優越的な立場
    自己認識が欠如 自覚と自己統制

「未成熟-成熟理論」では、企業組織において人材のモチベーションを高めるためには、各人の成長過程を見定め、 その成熟段階に応じて職務や責任、権限を拡大し、より高い成熟段階に向上させるマネジメントを行う必要があると提唱しました。

●行動科学的モチベーション論

期待理論
期待理論とは、仕事に関する本人の期待が動機の程度に結び付く」という理論です。ロビンス、ブルーム、ポーター、ローラーなど多くの研究者が期待の要因を挙げていますが、ここでは、ロビンスの理論を例にします。
ロビンスによれば、モチベーションの高さは次の式で与えられます。
   努力 × 成果 × 魅力
 (足し算ではなく掛け算であることに留意。一つの要因が低いと高いモチベーションは得られない)

  • 努力が成果へと結びつくことが期待できる
    その業務にどの程度努力すれば成果に結びつくか。途方もない努力が必要だとモチベーションは上がりにくい
  • 成果が報酬へと結びつくことが期待できる
    どの程度のレベルの仕事で、望む成果が得られるか。最終的に得られる報酬に結びつく可能性がどれだけか
  • 報酬が魅力的である
    報酬か金銭的なものだけでなく、上司の評価や仕事の達成感など、欲求段階により異なる
目標設定理論
多くの企業で、仕事の達成評価に「目標管理」が行われています。例えば期首に当期内で達成すべき目標を定量的に定め、期末にその実績により評価します。
 ロックやレイサムは、定める目標の内容によって、従業員のモチベーションが左右されることを示しました。このようなモチベーション論を目標設定理論といいます。
人はある環境の中で決められた行動を成し遂げられるという確信が強いほど、たとえ困難な状況であってもそれを続けようと努力し、高い業績を残す傾向があります。それを自己効力感といいます。
  • 目標の困難度:困難であるものの達成可能な目標がより自己効力感を発揮させやすい
  • 目標の具体性:数値や期間などで具体的に示される
  • 目標の受容:自ら率先して目標に関わる要件 自己効力感が高まる
  • フィードバック:達成度を適切にフィードバックすることで、 目標に対するモチベーションが継続的に維持される
関係理論(ピグマリオン効果)
ピグマリオン効果とは、例えば、上司から期待されることがわかるとやる気が出てくるというように、 他人の期待によって仕事や作業の成果が高まる心理的効果です。
を大きく左右することを研究するのを関係理論といいます。
コンピテンシー理論
コンピテンシーとは、ある職務や役割において優秀な成果を発揮する高業績者に共通してみられる行動特性です。
優秀な人材の観察やインタビューにより行動特性を抽出し、企業の戦略や目標とすり合わせることにより、「何をどのレベルで達成するか」、そのために「何をどのレベルで習得するか」などのリストを作成します。
コンピテンシー評価のポイントは、あくまで行動部分での評価を行うことであり、その基準が明文化されていることから、評価項目が明確で、面接者ごとの評価ブレを防ぐことにも効果があると期待されます。

リーダーシップ論

リーダーとは、組織をある目的のために統率する人のことであり、リーダーシップとはリーダーがその任務を達成するための能力のことです。「共通の仕事や課題を達成するために、他人の協力を得ることができる社会的な影響力」という定義もあります。
 リーダーシップに欠けるリーダーもいますし、特定の環境下ではリーダーでなくてもリーダーシップを発揮することがあります。
 「モチベーション」とは、各人のやる気ですが、リーダーシップとは他人のモチベーションを高めることだともいえます。

●行動科学的リーダーシップ論

古典的には、リーダーは生まれながらにして持っている特性によってリーダーシップを発揮しているという特性理論がありましたが、近代では、リーダーシップは天性のものではなく、行動によって発揮されるという行動科学的リーダーシップ論が主流です。
 行動科学的リーダーシップ論は、優れたリーダーと非リーダーの行動に注目し、両者の違いを研究することにより、リーダーシップの行動を類型化しようとした理論であり、優れたリーダーの行動を非リーダーに模倣させることにより、リーダーを育て上げるための理論でもあります。

三隅二不二の「PM理論」
行動科学的リーダーシップ論に基づく先駆的な理論です。
リーダーシップを、
 P:課題達成機能(Performance)
 M:人間関係・集団維持機能(Maintenance) の2つ能力のマトリックスで定義し、その高い人を大文字、低い人を小文字で示します。
この両方の機能に長けている人はPM型となり、理想的なリーダーシップを発揮できる人ということになります。
Pm型やpM型の人には、低い方の機能を教育によって補い、理想のリーダーに育てるための教育が行われました。これが「リーダーシップ教育」の始まりです。
また、Pm型とpM型の人材を組ませることでお互いを補完してPM型リーダーシップを実現するといった工夫も行われました。
リッカートの「システム4理論」
リッカートは、組織をシステムとして捉え、リーダーシップに関わる管理システムを4つに分類し、この中で民主主義型のシステム4を採用している経営組織の業績が最も高いと主張しました。
  • システム1 権威主義・専制型 → 徹底した課題志向
    リーダーは部下を信頼せず意思決定に参加させない。「アメとムチ」による管理
  • システム2 温情・専制型 → 課題志向>弱い人間関係志向
    リーダーと部下の相互関係はあるが、恩着せがましい。多くの意思決定・目標設定はトップが行う。
  • システム3 参画協調型 → 課題志向=人間関係志向
    基本的方針や全般的決定権はトップにあるが、個別問題は部下に権限委譲される
  • システム4 民主主義型 → 課題志向 < 人間関係志向
  • リーダーは部下を全面的に信頼し、部下は全面的に参画が認められ、動機付けられ、広範な相互作用が確保される。
●条件適合リーダーシップ理論

全ての組織に適したリーダーシップなどは存在せず、組織が置かれた環境条件により適切なリーダシップは異なるという理論です。

ハーシーとブランチャードの「SL理論」
SL理論(Situational Leadership Theory:条件適合理論)は、
 指示的行動:仕事志向、業務指示の必要性
 支援的行動:人間志向、コミュニケーションの必要性
のマトリクスで、求められるリーダーシップを部下の成熟度から次の4つのカテゴリーに分類しました。
  • 教示型(部下の成熟度:未成熟な場合に適用)
    部下に対して目標達成に至るまでの道順を具体的に指示をし、行動を促す
  • 説得型(部下の成熟度:やや未成熟な場合に適用)
    部下に積極的に組織の目指すビジョンを伝えたり、部下からの質問にも時間を割いて応えるといった、より踏み込んだコミュニケーションも必要になってきます。
  • 参加型(部下の成熟度:やや成熟な場合に適用)
    部下が仕事において更に完成度を高めてきた段階でリーダーがとるべきスタイルです。人間関係を良好に保つことも重んじることも必要です。
  • 委任型(部下の成熟度:成熟な場合に適用)
    目標達成においての権限や責任を部下に委ね、下手に干渉などはせず、仕事の過程を見守るのが有効的です。
コンセプト理論
コンセプト(concept)とは、概念とか方向付けという意味ですが、ここでは「環境に応じた方法」と理解してください。
条件適合理論を元に、集団やビジネス環境に応じて適切なリーダーの行動を研究したものです。現在のリーダーシップ論の主流になっています。
通常、以下のようにカテゴリ化され、それぞれに理論が展開されています。
  • カリスマ型リーダーシップ
    未成熟の組織のときには、リーダーは組織の管理と課題達成に重点をおき、報酬と罰を与えることで、部下を管理・統率します。
  • 変革型リーダーシップ
    組織を変革的に発展させる場合のリーダー行動に焦点をあてた理論です。経営危機に陥った際などに重要になります。方向付けを明確にして、やや強引にも組織をまとめます。かなり成熟している組織で説得による能力が求められます。
  • サーバント型リーダーシップ
    リーダーは部下に奉仕し、支援する者であるという理論です。そのための環境整備や関係者との調整などが仕事になります。サーバント・リーダーの特徴として、「自身を支援者として認識する」「部下を信頼して傾聴する」「説得と対話を通じて業務を進める」「組織のコミュニティを形成しようとする」などが必要です。
  • オーセンティック・リーダーシップ(EQ型リーダーシップ)
    オーセンティックとは「本物の」などの意味、EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは「こころの知能指数」というような意味です。
    「人間の感情は本来知性よりも強いものであり、自分と他人の感情を深く理解した上でそれを管理し組織運営に反映させていく」という考え方です。感情面の知性、つまり「この人なら信頼できる」「この人と一緒に働きたい」と思わせる人間性がリーダーに求められる特性といえます。
  • ファシリテーション型リーダーシップ
    ファシリテーションとは、会議でメンバの発言や参加を促し、まとめて生産性をあげることです。教えるのではなく、本人が考えて正解に近づくを手伝うことでもあります。
    リーダーは、自分の意見を主張するのではなく、メンバに問いかけることで、メンバは組織に参加している意識が高まり、モチベーションの高い組織になります。

人材育成システム

CDP(Career Development Program、経歴開発計画)

IT技術者のキャリアアップは、IT技術者本人にとっても、企業にとっても重要な事項です。これはIT業界に限定せず、全業界に共通する経営課題です。それで、近年、CDPという概念が注目されています。

CDPとは、社員の自主的な能力開発に併せて教育や人員配置などを行い,人材の育成を図る技法です。社員と企業がよく話し合い、社員の希望、企業ニーズ、業界動向など多面的な観点から、長期的・短期的な目標を設定し、PDCAサイクルにより達成する仕組みです。
 IT業界は、環境変化が激しいので、適切なCDPを作成するのが困難なことが多いといえますが、逆にそれだからこそ、CDPを検討することが重要なのだともいえます。

HRM(Human Resource Management::人材管理)

社員の能力を最大限に引き出すためのキャリアパスの設定,教育・育成,スキル管理などを総合的にマネジメントする経営手法をHRMといいます。
 コンピュータ活用の初期段階から、「人事管理システム」は構築されていました。しかし、その内容は給与計算や履歴記録など単なる事務的な処理が主でした。それが、人材活用が重視されるとともに、戦略的な分野に活用されるようになりました。

HRTech

HRTechとは、人事・人材(Human Resources)とテクノロジー(Technology)とを組み合わせた造語で、人材採用や人材育成、人事評価といった人事領域に活用できる主にデジタル技術という意味です。
 非常に漠然とした広い概念で、勤怠管理や給与計算などにコンピュータを利用することまで含みますが、注目されているのは社員のスキル管理や育成システムなどの分野でビッグデータを構築したり、それをAIを活用したりするような分野です。


育成方法

OJT/OffJT

知識やスキルを習得させる方法は、大きく2つに区分されます。

OJT(On-the-Job Training)
職場内訓練。現在担当している業務の実践を通じて,業務の遂行に必要な技術や知識を習得させる教育訓練の手法です。
上司や先輩が,計画的に業務上の仕事を通して必要な知識や技術を修得させます。
OffJT
職場を離れての訓練。研修会,講演会,学習会など。 e-ラーニングもその一つ。

ケーススタディ(事例研究)

複数の事例を取り上げて、理論が当てはまるか検証したり、問題点を発見して対処法を検討すること。
Off-JT においては、OJTのような具体例での訓練をするために、受講者全員が理解できる程度に、ある程度簡潔化した事例を材料にして演習させることがよく行われます。

OJTの類型

上司が部下を教育するには、いくつかの類型があります。

ジョブローテーション

人事異動や担当業務変更などのことです。企業の環境変化に伴う不要部門から必要部門への異動、同一業務に長くいることの弊害を防ぐ目的もありますが、スキルアップの観点から、関連業務を習得するために行うことが多いのです。
 社員の現在のスキルとそのレベル、企業が必要とするスキル人材の人数、本人のキャリアアップ計画などを検討して行うのが理想的です。無計画なローテーションは、企業の戦力低下を招いたり、本人の不満を増大させる危険性があります。

e-ラーニング

コンピュータを使用した学習支援をCAI(Computer Assisted Instruction)といいます。
 CAIを基礎にして、インターネットなどの環境により学習する形態をWBT(web-based training)といいます。
 e-ラーニングとは、WBTのこと、あるいはWBTを発展させた学習システムで、

簿記やプログラミングなど汎用的な分野の教材は、教材作成業者が開発したものがあります。自社独自の分野に関しては、学習教材のデジタル化、インターネットでの学習方法の作成、学習・成績管理を行う機能などを統合化したe-ラーニング開発ツールがあります。

e-ラーニングは、企業でのOffJTとしてだけでなく、生涯教育での有用な手段とされています。高等教育(大学等)では、授業の教材一式をWebページで公開するOCW(オープンコースウェア)が広まってきました。

アダプティブ・ラーニング(適応学習)

学習者各人に最適な学習内容を提供することで、より効率的、効果的な学習を実現する方法です。従来のような教育者の経験ではなく、生徒の学習状況を蓄積し、AIなどを活用した客観的な分析をして習熟状況や不得意分野を明らかにして、適した教材を提供します。e-ラーニングの効果的な活用として注目されています。

ゲーミフィケーション

コンピュータ・ゲームのゲームデザイン要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用することです。
 コンピュータ・ゲームは人々を熱中させます。コンピュータ・ゲームのノウハウをe-ラーニングに応用すれば、大きな動機付けになり、楽しく意欲的に学習できるようになります。

コンピュータ・ゲームでは、次のような仕組みにより参加意欲を高めています。


情報教育

情報リテラシー

一般利用者を対象したIT活用能力は、次の3段階に区分できます。

コンピュータリテラシー
ワープロソフトや表計算ソフトの利用、メール交換やWebページの閲覧、業務システムでのデータ入力などができる能力です。
これは「できないと困るが、できたといってもたいしたことではない」能力であり、企業が求めているのは、さらに進んだ能力です。
情報リテラシー
情報リテラシーとは、情報技術を利用して業務遂行のために情報を活用することのできる能力です。
情報システムに保存されている過去の営業実績データを分析して業務に活用するなど、社内のデータベースやインターネットの情報などを分析することにより、業務に役に立つ情報に加工できる能力です。
ビジネスリテラシー
ビジネスリテラシーとは、業務改善や業務改革を実現するために、ITをどのように適用すればよいかを示すことができる能力です。これも情報リテラシーに含めることもありますが、質的に異なるリテラシーです。

情報倫理

IT活用能力だけでなく、情報通信社会において必要とされる道徳やマナーを理解し遵守する教育が必要です。
 利用部門の人がSNSやWebサイトに投稿する機会が増大してきました。誹謗・中傷、プライバシ侵害、反社会的発言をしないこと、セキュリティに関心を持つことなどの教育が重要になります。
 IT適用分野が拡大し、システムの誤動作や脆弱性が人命や社会インフラに直接に影響するようになりました。IT技術者の育成にあたっては、職業倫理としての情報倫理を理解させることが重要です。

詳細:IT活用能力

情報技術者育成トピックス

ハッカソン(hackathon)

ハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語。ここでのハックとは、高度なプログラマのこと。
 ソフトウェア開発分野のプログラマやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャらが、特定の目的の達成や課題の解決をテーマとして、短期集中的にアイディアを出し合い、ソフトウェアの開発などの共同作業を行うこと。
 単に教育や社会的な目的を意図に開催することもあるし、チームを組んで成果を競い合うイベントとして開催することもあります。


スキル標準

IT技術者の育成や評価にあたっては、職種区分(対象人材)と、それに必要な知識経験の内容とレベルを明確にすることが必要です。しかも、個別企業に限定しない標準的な共通の物差しが求められます。

ITSS・ETSS・UISS

IT技術者の職種(業務)を分類して、必要なスキルを示した3基準があります。

ITSS(IT Skill Standards)
主にエンタプライズ系ソフトウェアのIT技術者を対象にしています。
主に、ベンダ企業での業務とシステム開発工程の分類に従って職種を設定し、それぞれに求められる知識・スキルとレベルを示したものです。
詳細:ITSS
ETSS(Embedded Technology SS)
組込みソフトウェアの分野での技術者を対象にしています。
組込みソフトウェア分野が急速に成長してきました。ここでの技術はエンタプライズ系とはかなり異なるため、新基準を策定したのです。「スキル基準」「キャリア基準」以外に人材育成を目的とした「教育研修基準」の3つの基準からなっています。
詳細:ETSS
UISS(Users' Information Systems SS)
主にユーザ企業のIT部門技術者を対象にしています。
ITSSの「職種」に相当する区分を「人材像」としており、その人材像とタスク(業務)を結び付け、人材像とスキルレベルを設定しています。
詳細:UISS

共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)

共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF:)は、これらの3基準を包括的に再編成して、異なるIT業種を横断した各職種に求められるスキル・知識やレベルの異同を明確にして、
  ・IT人材の学習や成長の目標
  ・IT人材評価の標準化
  ・自社IT人材の育成計画
に役立てることを目的にしています。
 共通キャリア・スキルフレームワークによりITSSなどがなくなるのではなく、ITSSの適用が適切な企業はITSSを使うことができます。逆に、企業内でIT部門やユーザ部門のIT技術者を流動的に育成したい場合などには、共通キャリア・スキルフレームワークを参照するのが適切です。

共通キャリア・スキルフレームワークは、3つの側面を示しています。
 ・タスクモデル(仕事の定義)機能や役割no  ・人材モデル(役割分担の例示)職種や人材像の体系化
 ・スキルモデル(タスク人材像に求められる能力を定義)

人材モデル

基本戦略系人材
ストラテジスト
経営の各種課題をITにより解決するための基本戦略を立案する人材
ソリューション系人材
情報システムの設計、開発、運用を担当する人材で、次の人材像に区分されます。
システムアーキテクト
ビジネス戦略に対して最適なシステムをデザインする人材
サービスマネジャー
継続的な高い信頼性を確保しつつ、システムを維持する人材
プロジェクトマネジャー
与えられた制約条件(品質、コスト、納期など)のもとで、信頼性の高いシステム構築を総括する人材
テクニカルスペシャリスト
データベースやネットワークなどの特定分野の技術を持つ人材
クリエーション系人材
クリエーター
新たな要素技術の創造等により社会・経済にイノベーションをもたらす人材
その他
エデュケーション
IT教育に従事する人材など

スキルのレベル

共通キャリア・スキルフレームワークは、人材像ごとに経験やスキルにより7つのレベルにランクづけして、同一レベルなら他の類型でも同等の価値があるように、スキル内容を設定しています。

詳細:「共通キャリア・スキルフレームワーク」

共通キャリア・スキルフレームワーク第一版・追補版

CCSFは2008年公表でしたが、2012年に追補版が公表されました。
 セキュリティ関連の人材が重視されてきたこと、CCSFでの知識体系(BOK)が大幅な項目追加があったことなどがありますが、CCSFをもっと使いやすくするするためのツール提供が必要になったからです。

iCD(i コンピテンシ ディクショナリ)

CCSFを使いやすくするための手段はCCSF増補版でも行われましたが、iCDではそれをさらに抜本的に行うもんです。IT人材および人材育成者が活用できる人材育成関連ツールとして位置づけられます。
 企業においてITを利活用するビジネスに求められる業務(タスク)と、それを支えるIT人材の能力や素養(スキル)を「タスクディクショナリ」、「スキルディクショナリ」として、それぞれ辞書のように参照できる形で構成立てて体系化したものです。「タスクディクショナリ」は、タスク3階層と評価項目の計4階層、「スキルディクショナリ」はスキル3階層と知識項目の計4階層で構成されています。

iCDでは、CCSFに次の追加をしています。
 セキュリティやクラウド、データサイエンスなど新時代のビジネスモデルに求められるタスクやスキル、、職種が新たに追加されました。
 ITILやPMBOKなどの各種標準、CCSFの知識体系(BOK)との参照性を重視しています。

教育内容とスキル向上が具体的に結びつくことも目的にしています。
 学生などを含むIT技術者個人に対しては、スキル向上における目標を明らかにすることができるように、具体的なスキルやスキルと仕事の関係を明らかにしています。
 教育・研修サービス提供機関には、iCDで定義したスキルにもとづいた教育を提供できるような仕組みを提供しています。

情報処理技術者試験

スキルには、知識として持っていることと、実務に従事して得る経験があります。情報処理技術者試験は主に知識を判定するものです。例えば、高度情報技術者試験に合格すればレベル4に判定されますが、レベル5以上だと評価されるにはCCSFでのスキルレベルで評価することになります。

情報処理技術者試験の体系を、CCSFの人材モデルと対比して示します。
 情報処理技術者試験のうち午前の出題範囲は、CCSFの知識体系に準拠しています。各試験について、知識体系の各項目からの出題数が表示されています(知識体系では具体的な出題内容を示すものではありませんから、知識体系そのものを理解すれば合格するのではありません)。

  情報処理技術者試験                   CCSF人材
    高度情報技術者試験
      ITストラテジスト試験(ST)         ストラテジスト
      システムアーキテクト試験(SA)        システムアーキテクト
      プロジェクトマネジャー試験(PM)       プロジェクトマネジャー
      ネットワークスペシャリスト試験(NW)    (テクニカルスペシャリスト)
      データベーススペシャリスト試験(DB)    (テクニカルスペシャリスト)
      エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES) 
      ITサービスマネジャー試験(SM)       サービスマネジャー
      システム監査技術者試験(AU)
    応用情報技術者試験(AP)
    基本情報技術者試験(FE)
  (ITを利活用する者)
    ITパスポート試験(IP)
  情報処理安全確保支援士試験(SC)
                               クリエータ
                               エデュケーション