共通キャリア・スキルフレームワークは、次のITSS、ETSS、UTSS(ここでは「3標準」といいます)および情報処理技術者試験などを共通した参照モデルにしたものです。
・ITSS(IT Skill Standards):主にベンダ企業のIT技術者を対象
・ETSS(Embedded Technology SS):組み込みソフトウェアの分野での技術者を対象
・UISS(Users’ Information Systems SS):主にユーザ企業のIT部門技術者を対象
共通キャリア・スキルフレームワークの目的は、異なるIT業種を横断した各職種に求められるスキル・知識やレベルの異同を明確にして、
・IT人材の学習や成長の目標
・IT人材評価の標準化
・自社IT人材の育成計画
に役立てることを目的にしています。
産業構造審議会報告書
『高度IT人材の育成をめざして』2007年により客観的な人材評価が必要性が提言され、これに基づいて経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が連携して2008年に『共通キャリア・スキルフレームワーク第一版』、2012年に『第一版・増補版』が公開されました。
共通キャリア・スキルフレームワークは、3つのモデルを示しています。
- タスクモデル
- 「仕事の定義」です。3標準でのITに関連して求められる機能や役割を、「共通フレーム」との整合性を図り、統合的に体系化したものです。
- 人材モデル
- 「役割分担の例示」です。3標準での職種や人材像を体系化しました。ここでは、これを中心に取り扱います。
- スキルモデル
- 「タスク」を担う「人材像」に求められる能力を定義した「スキルセット」です。これと、「知識体系(BOK)」との対応付けを整理し、スキル標準と情報処理技術者試験(午前)との対応をより具体化にしています。
人材類型と人材像
共通キャリア・スキルフレームワークは、IT技術者を次のような人材類型・人材像に区分しています(図示)。
- 基本戦略系人材
- ストラテジスト
- 経営の各種課題をITにより解決するための基本戦略を立案する人材
- ソリューション系人材
- 情報システムの設計、開発、運用を担当する人材で、次の人材像に区分されます。
- システムアーキテクト
- ビジネス戦略に対して最適なシステムをデザインする人材
- サービスマネジャー
- 継続的な高い信頼性を確保しつつ、システムを維持する人材
- プロジェクトマネジャー
- 与えられた制約条件(品質、コスト、納期など)のもとで、信頼性の高いシステム構築を総括する人材
- テクニカルスペシャリスト
- データベースやネットワークなどの特定分野の技術を持つ人材
- クリエーション系人材
- クリエーター
- 新たな要素技術の創造等により社会・経済にイノベーションをもたらす人材
- その他
- エデュケーション
- IT教育に従事する人材など
スキルのレベル
共通キャリア・スキルフレームワークは、人材像ごとに経験やスキルにより7つのレベルにランクづけして、同一レベルなら他の類型でも同等の価値があるように、スキル内容を設定しています。
(図表)
- レベル7
「高度な知識・スキルを有する世界に通用するハイエンドプレーヤ」
業界全体から見ても先進的なサービスの開拓や事業改革、市場化などをリードした経験と実績を有し、世界レベルでも広く認知される。
- レベル6
「高度な知識・スキルを有する国内のハイエンドプレーヤ」
社内だけでなく業界においても、プロフェッショナルとしての経験と実績を有し、社内外で広く認知される。
- レベル5
「高度な知識・スキルを有する企業内のハイエンドプレーヤ」
プロフェッショナルとして豊富な経験と実績を有し、社内をリードできる。
- レベル4
高度な知識・スキルを有し、プロフェッショナルとして業務を遂行でき、経験や実績に基づいて作業指示ができる。またプロフェッショナルとして求められる経験を形式知化し、後進育成に応用できる。
- レベル3
応用的知識・スキルを有し、要求された作業についてすべて独力で遂行できる。
- レベル2
基本的知識・スキルを有し、一定程度の難易度又は要求された作業について、その一部を独力で遂行できる。
- レベル1
情報技術に携わる者に必要な最低限の基礎的知識を有し、要求された作業について、指導を受けて遂行できる。
共通キャリア・スキルフレームワークのレベルは情報処理技術者試験と関係しています。