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情報倫理

キーワード

倫理、情報倫理、職業倫理


ITの急激な発展は、IT革命といわれるように、身の回りの生活から国家経済に至るまで、広い範囲に急激な変化をもたらし、大きな影響を与えています。
 さらにユビキタス社会といわれるように、いつでも、どこでも、誰もが情報機器の存在を意識せずに、ITを利用する社会になってきました。現在の社会はITの上に構築されているといえます。
 そのため、ITのトラブルは、あらゆる局面で社会に大きな被害を与えます。インターネットでは反社会的な情報が氾濫しています。病院の情報システムにトラブルが発生すれば人命に影響します。災害時にネットワークが使えないと、罹災者救援に支障をきたします。社会問題になっている未払い年金は、不適切なデータ入力が生んだ結果だということもできます。
 このように、健全で安全・安心な社会を維持・発展するためには、ITが健全に用いられ、情報システムが正常に稼働することが重要な課題となります。

社会の行動を律するものに法律があります。しかし、法律に従っていただけでは、円滑な社会にはなりません。マナーとかエチケットなどが社会通念として共有されることが必要です。社会正義や信念なども重要な要素です。このように、公権力による制約ではなく、社会や個人としての行動規範のことを倫理といいます。
 情報倫理とは、ITを利用するときの行動規範です。ITが社会に広く深く関係しているため、ITに特有な倫理が求められます。情報倫理には、一般のIT利用者としての倫理、IT技術者が持つべき職業倫理、企業などの組織としての倫理などに区分できます。

一般利用者の情報倫理

例えば、電子メールやWebページで、他人を誹謗・中傷しない、プライバシーを侵害しない、反社会的な情報を流さないなどの倫理です。ネットワークでのエチケットでネチケットともいいます。また、ウイルスの伝染や第三者攻撃の踏み台にされないように、情報セキュリティに配慮することも倫理の一つです。

IT技術者の職業倫理

医師や弁護士は、その職業が人命、財産、プライバシーなどに関係するため、その業務を誠実に行うこと、業務上知り得た情報を第三者に漏洩しないことなどが、法律だけではなく、職業倫理として行動規範になっています。ITが広い分野に大きな影響を与えるため、IT技術者も職業倫理を持つことが求められます。IT技術者の育成にあたっては、職業倫理としての情報倫理を理解させることが重要です。
 IT技術者の業務は、ハードウェアの開発、ネットワークの構築、情報システムの企画・開発・運用など広い分野にわたっており、対象とする情報システムも、一般企業のビジネス、交通機関や工場の制御システム、情報家電の組込みソフトなど多様です。そのため、一律の職業倫理ではなく、それぞれの状況に応じた職業倫理になります。
 たとえば、ビジネス用の情報システム開発者として持つべき倫理には、次のような事項があります。

一般にはIT技術者とは呼ばれない人たちが、ITに深く関係するようになりました。例えば、証券会社の株売買の担当者が、60万円の株を1株売るのを誤って、1株1円で60万株売ると入力したために大混乱が生じたことがあります 。また、業務担当者が、コンピュータから個人情報をUSBメモリ等にコピーして、自宅のパソコンで業務をしたところ、ウイルスによって個人情報が流出した例は多くあります。すなわち、エンドユーザ(IT部門以外の利用者)にも、IT技術者のような職業倫理が求められるのです。

組織の情報倫理

組織としてコンプライアンスを遵守する義務があるのは当然です。多くの組織構成員がITに関係しているため、組織として、情報取り扱いの行動規範を明確にする必要があります。それには、次のようなことがあります。

さらには、これらの規程類で構成員の行動を律するだけでなく、構成員が自律的に情報倫理を守るような組織文化を作りだすことが大切です。


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