スタートページ主張・講演経営者・利用部門のためのIT入門第6章 IT推進組織とその運営

EUC運営での留意事項


情報検索系システムの普及は、必要な人が必要なときに必要な情報が得られる(参照:「DSSと情報検索系システム」)だけでなく、基幹業務系システムの簡素化による経営環境への即応(参照:「情報検索系システムによる基幹業務系システムの規模縮小」)、IT部門の負荷削減による高付加価値業務への傾注など、大きな利点があります。パソコンの活用は、ローカル業務の生産性向上に役立ちます。

このように、EUCの普及は重要なのですが、運用を誤ると、期待した利点が得られないばかりか、期待とは逆の結果になることがあります。

IT部門への過度依存症

IT部門が情報検索系システム用のデータベースを提供し、エンドユーザが簡易ツールを用いて情報を検索加工する「公開ファイル提供方式」ならば、IT部門の負荷は減ります。ところが、そのような方法は面倒だとして「1をクリックしたら○○集計表、2ならば△△分析表」というような「個別メニュー提供方式」を要求することが多いのです。そのメニューはIT部門が作成するのですが、エンドユーザは多数でそれぞれ異なるメニューを要求します。その結果、情報検索系システムの導入により、IT部門の負荷は増大してしまいます。また、エンドユーザは「頼んでも、いつになってもやってくれない」と不満をもちます。
参照:「ユーザの過度依存症」

過度体裁愛好症

エンドユーザは、単に情報を得るだけでは満足せず、グラフ化など体裁をよくすることを求めます。次第に凝った体裁にしたがります。エンドユーザがパソコンを操作している時間の大部分が、情報入手ではなく体裁を良くするためだということにもなこともあります。しかも、この風潮は伝染しやすいのです。
 エンドユーザの生産性向上を阻害するだけではありません。そのための機能をもつソフトウェアを標準装備せよといいます。自分で凝った体裁にできない人は、IT部門に作ってくれと要求します。
参照:「過度体裁愛好症」

過度自作愛好症

Excelなどを駆使して活用することは結構なのですが、それが高じると、本来は基幹業務系システムとして構築すべき分野まで作成します。基幹業務系システムとして要求するのでは、面倒な手続きが必要だし、自分の「趣味」を反映できない。自分で作ったほうが簡単だという理由です。この症状にかかる人は、業務に熱心で、高いIT知識をもっているので、少なくとも自分や自部門にとっては、優れた情報システムになります。
 このようにして作成した情報システムのうち、財務に関係する場合は内部統制の対象になりますが、全社的なオーソライズが得られていないし、プログラム内部や操作に関するマニュアルがないのが通常で、改めて作りなおす必要があります。これが大きな作業になり「レガシーExcel対策」として問題になっています。
 内部統制の対象にならない場合でも、人事異動により他人がこの情報システムを引き継ぎ、改訂が必要になったときに問題が起こります。IT部門が改訂しようとしても、マニュアルもなく、長年にわたり、パッチあてを繰り返してきたマクロ命令を解読するのは不可能です。作りなおすにしても、エンドユーザから現行と同じ操作手順で入出力画面も同じにせよといわれたら、どうしようもありません。
参照:「過度自作愛好症」