スタートページ主張・講演経営者・利用部門のためのIT入門第4章 個別システムの調達(2)

情報検索系システムによる基幹業務系システムの規模縮小


情報システム(基幹業務系システム)開発の短期化、改訂の容易化のための方法論や技術は多様ですが、最も基本的なことは、対象となる基幹業務系システムの規模を小さくすることです(基幹業務系システム、情報検索系システムについては、「ITの利用形態とEUC」を参照)。

利用部門はとかく過剰や要求をしがちで、それが情報システムを肥大化させています(参照:「要件定義の重要性と留意事項」)。情報システムの規模を小さくするには、利用部門の要求をふるいにかけて、優先順位の低い要求を無視することになります。しかし、ほしいものはほしいのですから、それらの要求を無視するのは不適切です。
 その機能を継続的にサポートする基幹業務系システムとして組み入れるのが困るのであり、必要に思った利用者が自分で取り出すのであれば、いっこうに差し支えないはずです。すなわち、情報検索系システムとして提供すればよいのです。
 それにより、基幹業務系システムの規模を大幅に小さくすることができます。
 基幹業務系システムは、おおざっぱにデータ入力処理、ファイル群を更新する中核処理、帳票や画面類の出力処理に区分できます(下図の数値には根拠はありません)。

情報検索系システムによる規模の縮小
入力処理
 当然、用途により異なりますが、多数の出力帳票があるので、情報システムの規模のうち出力処理が占める割合は大きいのが通常です。さらに出力処理は帳票体裁などのため、プログラムが複雑になります。 出力帳票には、請求書や財務諸表など外部に提出する基幹情報と、意思決定や管理などの用いられる管理情報があります。
 基幹情報は会計監査にも用いられ正確性が重要ですし、不正防止の観点から、ITの専門であり業務担当部門ではないIT部門が基幹業務系システムとして構築し運用するのが適切です。それに関して管理情報は、情報検索系システムとしてEUCで行うことができます。そうすれば、基幹業務系システムとしては、情報検索系システムのデータベースを提供するだけでよいことになります。
 利用部門からの要求のうち、管理情報の帳票出力に関するものが多くあります。基幹業務系システムへの要求で、優先順位の低いものは無視するのではなく、それらは情報検索系システムとして提供することにすれば、利用部門の合意が得られやすくなります。
入力処理
 次に多いのが入力処理です。入力処理も使いやすい画面にしたり、誤入力を防ぐためのチェック機能を組み込んだりするので、プログラムが複雑になります。
 これらをEUCにすることはデータの信頼性が損なわれるので不適切です。しかし、入力するデータの内容は、稟議や申請などにより承認を得るものが多くあります。従来はこの事前プロセスは紙を媒体として行われていました。近頃は電子稟議、電子申請などのワークフロー管理システムが普及してきました。最終承認が行われたら、そのデータを直接に基幹業務系システムに渡すことができます。そうすれば、基幹業務系システムのためにわざわざ入力をする必要はないし、データを人間の眼でチェックしているのですから、基幹業務系システムでのチェック機能を簡略化することができます。
 このような処理にするには、こんどはワークフロー管理システムの構築と運用が必要になりますが、基幹業務系システムと切り離すことにより、改訂を局所化する効果があります。
中核処理
 中核処理を削減することは困難ですが、入出力処理のようなヒューマンインタフェースの部分がなく、データベース間のロジックだけの処理になりますので、SQLのような簡単に記述できるプログラム言語で記述できます。プログラムステップ数が小さくなるので、開発や改訂の生産性が高くなります。

このように、情報検索系システムの普及を前提にすれば、基幹業務系システムの構築や改訂が容易になります。この観点からも、情報検索系システムの普及が望まれます。