スタートページ主張・講演経営者・利用部門のためのIT入門第1章 ITへの期待の変化

ITの利用形態とEUC


利用者からみたとき、ITの利用形態は次の4つに区分できます。出現した歴史順に掲げます。なお、これらの名称は、明確に定義されておらず、人により異なります。

基幹業務系システム
販売システムや会計システムなど、全社的な大量データを定例的・定型的に処理する利用形態です。全社的にオーソライズして構築され運用される情報システムであり、業務はこれに従って行うことが義務づけられます。逆にいえば、業務革新を行うときは、それに合致した基幹業務系システムを構築する必要があります。また、情報検索系システムに正確なデータを提供する位置づけでもあります。
コンピュータが導入された当初では、基幹業務系システムの対象業務を拡大することが急務でした。現在でも、業務革新を行うため、内部統制や会計制度などへの対処のために、全面的な再構築が行われています。
情報検索系システム
実務では、日常業務でも計画企画業務でも、非定例的(アドホックに)・非定型的(多様な切り口で集計・分析する)な情報が必要になります。「必要な人が、必要なときに、必要な情報を容易に得られる」ようにするために、基幹業務系システムで収集蓄積したデータを、エンドユーザが使いやすい形式に整理して公開し、使いやすいツールを提供する利用形態です。業務改善、業務革新への活用に大きな効果をもっています。
 このような利用形態は、1970年代にDSS(Decision Support System:意思決定支援システム)として始まり、1980年代を通して情報検索系システムとして普及し、1990年代のデータウェアハウス、2000年代のビジネスインテリジェンスへと発展してきました。
パソコンの利用
パソコンは以前から個人のホビー用として普及してきましたが、1980年代になるとビジネスで利用されるようになりました。オフィス業務の生産性向上のためにITを活用すべきだというOA(Office Automation)の概念もあり、急速に普及しました。情報検索系システムでのクライアント(端末)としても利用され、汎用コンピュータからから取り出したデータを使いやすいパソコンソフトで二次加工するようにもなりました。
 もはや、パソコンの利用は、日常生活の中に溶け込んでおり、あえて情報システムとして取り扱う必要がないといえましょう。
コミュニケーションシステム
ダウンサイジング環境において、急速に普及したのが電子メールや電子掲示板などのグループウェアです。その後、インターネットの普及により、電子メールやWebページ閲覧などが日常的になりました。また、グループウェアは、個人の知識を組織の知識として組織の創造性向上を目的としたナレッジマネジメント、電子稟議や電子伝票などのワークフロー管理システムへと発展しました。このような情報の伝達や共有化を目的とした利用を総称してコミュニケーションシステムといいます。
 この利用形態では、エンドユーザの自主的な利用が効果を左右します。そのため、自由に発言でき、部門外との交流が自由であり、相互に情報を提供し合うような企業文化が求められます。

●EUCについて
 エンドユーザ(IT部門以外の人)が、自主的にコンピュータを操作して、自分あるいは自部門の業務に役立てる利用形態をEUC(エンドユーザコンピューティング)といいます。
 情報検索系システムやパソコンの利用、ダウンサイジング環境で普及したグループウェア、インターネットの利用など、すなわち、基幹業務系システム以外の利用形態はすべてEUCだということができます。

歴史的な出現順序により、IT部門が行う基幹業務系システムに対して名づけられた用語ですが、現在ではむしろEUCのほうが大きな存在になっているので、むしろ、基幹業務系システムのほうが特殊な存在であるとするほうが適切かもしれません(参照:「情報システム利用形態の体系に関する考察」)。