ここでのストレージサービスとは、個人利用者を対象として、写真や動画などのファイルをサーバで保管したり、他人と共有したりするサービスとする。そのうち、Webページ、ブログページ、電子メールのログなど、SNS関連のサービスは除く(参照:「ドメイン名、IPアドレスの歴史」、「ブログ、SNS、Twitterの歴史」)。
統合ストレージサービス
ポータル系の統合ストレージサービス
テキスト、写真、動画など多様なデータをバックアップする保管サービス、それを他人の閲覧に供する共有サービス、電子メールサービスとともにログを保管するサービスなど、多様なサービスを統合したものを、ここでは統合ストレージサービスという。
- 1999年 Yahoo! Briefcase
- 2007年 Yafoo! Photos
- 2011年 Yahoo! Box
Yahoo! Briefcaseはオンラインストレージで、当初は単にパソコンのファイルのバックアップ用あるいはモバイル環境で入力したファイルをデスクトップに転送する手段(またはその逆)として用いられていた。
Yafoo! Photosは、写真共有サービス。
Yahoo! Boxは、Yahoo! BriefcaseやYafoo! Photosを統合したもので、写真、動画、音声ファイルなどすべての形式で保存・共有(招待制)ができ、それらのファイルのURL公開(一般公開)ができる。これへの移行後、Yahoo! BriefcaseとYafoo! Photosは閉鎖される。
- 2007年 Windows Live
- 2012年 App
サービス Windows Live等 App等
アカウント Windows Live ID Microsoftアカウント
Passport
ストレージ Windows Live SkyDrive SkyDrive Desktop
FolderShare SkyDrive app
電子メール Windows Live Mail Mail app
Outlook, Hotmail Outlook.com
メッセージ MSN Messenger Messaging app
写真 Windows Live Photo Gallery Photos app, Photo Gallery
動画 Windows Live Movie Maker Movie Maker
Windows Vistaの頃までは、Windowsはクラウド環境を想定していなかった。それを補うために、また個々のサービスの統合へのステップとして、OS標準装備ではなく無料ダウンロードの形式で、Windows Liveシリーズとして提供した。
その間に、スマートフォンWindows Phoneのためのアプリも提供してきたが、Windows Liveをそのまま使うのには限界があり、独自のアプリになってしまった。
Windows 8の発表に合わせて、Windows Liveでの統合路線をパソコン、タブレット、スマートフォンなども含めた統合を図り、アプリとして提供することになった。
以降のサービスの内容は、上記のサービスとほとんど同じなので特徴だけを示す。また、煩わしいので2010年代初頭の状況だけに絞る。
- 2011 apple iCloud
iPhone、iPad、iPod touch、MACパソコンだけでなく、Windowsパソコンも含む機種を対象にしている。
デジタルカメラなどから、iCloudを用いてWi-Fi経由でiPhoneなどに送信できる。Apple TVによりテレビ画面に放映できる。
iCloudは、Keynote、Pages、Numbersなど他社アプリが豊富に組み込まれている。
- 2012年 Google Drive
Google Driveは、GmailやGoogle+など、Googleのサービスとの連携を強化した統合ストレージサービスである。オープンソースなプラットフォームとして開発しており、多数の社外開発者との共同作業による機能拡大を図っている。
専業系のストレージサービス(同期サービス)
ポータル系とは別に、ストレージサービスを主事業とする専業系のサービスもある。ここでの特徴は、モバイル環境の進展により、複数のパソコンでの同期をとるために、Web上で一時的な保管を行う同期サービスが主流である。それを応用すれば、他人との共有をすることもできる。
2008年に一斉に有名なストレージサービスが開始された。
- 2008年 Dropbox
2007年、MITの学生ドリュー・ヒューストン(Andrew W. Houston )とアラッシュ・ファードーシー( Arash Ferdowsi)は Dropbox社を設立。2008年にDropboxサービスを開始した。
Dropboxは、同期サービスである。パソコンの専用フォルダにデータを保存すれば自動的にDropbox社のサーバにある自分用の同期スペースが更新される。この機能を介して、複数のパソコンやスマートフォン間での同期をとることができる。シンプルで簡便なのが特徴である。
この分野で最大のシェアをもつ。2011年に日本語対応した。
- 2008年 SugarSync
SugarSyncはSharpcast社がサービスしている同期サービス。複数フォルダの選択同期、他パソコンから開けるマジックブリーフケース、保管するだけで同期しないウェブアーカイブなど、多彩な機能をもつ。Dropboxと比較して簡便さよりも機能を重視している。2010年に日本語対応した。
- 2008年 Evernote
2007年、フィル・リービン(Phil Libin)が設立したEvernote社によるストレージサービス。共有機能や同期機能もあるが、それよりもメモ(画像や音声も含む)を保管して検索することを主目的にしている。Evernoteを開くとメモを取る画面が表示され、入力したメモは自動的にアップロードされ保管される。保管データは、ノートブック(仮想フォルダのような分類)やタグ機能により整理され、それらと全文検索(画像中の文も対象)により多様な検索ができる。2010年に日本語対応した。
写真共有サービス
純粋に写真だけを対象にするのではなく、動画も対象にしたり、SNSと組み合わせていたりするのが通常であるが、写真を主にするものを掲げた。
当初は、写真の加工・編集・整理などを目的として開発したソフトウェアが、ポータル運営者に買い取られ、通信機能を付加して共有サービスへ進化したものが多いのが特徴である。
世界での写真共有サービス
- Windowsの写真共有サービス
・2007年 Windows Photo Gallery
Windows Vistaを対象に開発されたが、Windows XPにも対応。Windows 7ではWindows Liveの一つとなり、Windows 8ではブランドが廃止された。パソコン内での画像管理ソフトであるが、そのなかに画像投稿機能があり、統合ストレージサービスMicrosoft SkyDriveで保管共有される。
- Yahoo!の写真共有サービス
・2000年 Yahoo! Photos
・2004年 Flickr
Yahoo! Photosは、Yahoo!ID所有者への写真共有サービス。
Flickrは、カナダのルディコープ(Ludicorp)社が開設した写真共有サービス。写真共有機能APIが提供されており、他のアプリとの連携、ソーシャルタギングによるフォークソノミーなどによって、爆発的な人気を得た。現在、最も代表的な写真共有サービスである。
2005年に、Yahoo!により買収され、Yahoo! PhotosはFlickrに置き換えられた。
- Googleの写真共有サービス
・2005年 Panoramio
・2006年 Picasa Web Albums
・2011年 Photovine
Picasaは、Picasa社が開発したデジタル写真管理ソフト。2004年にGoogleがPicasa社を買収し無料公開している。Picasa Web Albumsは、Picasa」と連携してパソコン内の画像をGoogleのサーバにアップロードして、保存・共有をするサービスである。
Panoramioは、2005年にスペインのJoaquín Cuenca AbelaとEduardo Manchón Aguilarにより開設された風景写真に特化した写真共有サービスである。2007年にGoogleに買収され、投稿された写真は、審査を経てoogleマップやGoogle Earth上に掲載されることがある。
Photovineは、スマートフォン向けの写真共有サービスである。Googleなのに対象機器はiPhoneである。2010年にGoogleはSlide社を買収し一部門としたが、その活動への介入を抑えたのだという。
- Facebookの写真共有サービス
・2010年 Instagram
・2012年 Facebook Camera
2010年、ケヴィン・シストロム(Kevin Systrom)とマイク・クリーガー(Michel Krieger)は、画像共有ソフトを開発。iPhoneアプリ用としてAppleのApp Storeに登録された。
投稿画像を多様なフィルタでエフェクト追加する機能があり、Twitter、Flickr、Facebookといった他のソーシャルサービスに投稿することも簡単にできるという特徴があり人気を得た。
2012年、InstagramはFacebookに買収された。
Facebookは、これと並行して、2012年に画像共有サービスFacebook Cameraを開始した。AppleのiOS(iPhoneやiPadなどのOS)に限定されている。すなわち、Facebook CameraとInstagramが併存する状態になっている。
日本での写真共有サービス
「世界の写真共有サービス」で取り上げたサービスのほとんどは日本語でのサービスをしており、日本でも主流になっている。それでここではシェアの大小ではなく「有名な」(話題になった)ものをいくつか掲げる。
- 2000年 PhotoHighway Japan
2000年に祖山博史はフォトハイウェイ・ジャパンを創立、オンラインアルバムサイト「PhotoHighway Japan」を開設した。このシステムは、インフォシークやニコンに提供された。日本で初期の代表的写真共有サービスである。
- 2005年 フォト蔵
2001年に山田進太郎はウノウを創業。当時はユーザ参加型の映画のサービスサイトなどをしていたが、2005年に写真共有サービス「フォト蔵」を開設した。急速に成長し、ウノウはベンチャー企業の優等生、フォト蔵はweb2.0の代表例として注目された。
ウノウは、2010年にジンガ(Zynga)に買収され、ジンガジャパンになった。Zyngaは米国のソーシャルゲームの大手である。なお、2012年にフォト蔵の事業はデジタルガレージに譲渡された。デジタルガレージは、
1995年に林郁が設立したは、インターネットやモバイル等の関連事業を行っている。
- カメラメーカー等の写真共有サービス
・my Picturetown、Nikon Online Gallery(ニコン)
・CANON iMAGE GATEWAY(キヤノン)
・Fotonoma(富士フィルム)
カメラメーカーは、古くから写真コンテストを開催し、応募作品の展示(オンラインも含む)をしてきた。また、写真の加工や整理のためのソフトウェアを提供してきた。それらの延長として,、2000年代中頃から写真共有サービスを行っている。現在では、自社製品購入者以外にも開放しており、スマートフォン対応もしている。
動画共有サービス
動画共有サービスには、運営者が収録した動画を公開する放映サービスと、個人の作成した動画(音楽なども含む)を保管して、それをインデクス付けして、他人からのアクセスにより検索し視聴できる仕組みを提供するサービスがある。ここでは後者を対象にする。
世界的にはYouTUbe、日本ではニコニコ動画などが有名である。
YouTube
- YouTubeの設立
YouTubeは、2005年、チャド・ハーリー(Chad Meredith Hurley)、スティーブ・チェン(Steve Shih-chun Chen)、ジョード・カリム(Jawed Karim)により設立された。
閲覧(配信受信)は誰でもできるが、メンバー登録をしないと閲覧できない動画もある。動画の投稿や動画への評価・コメントは登録メンバーであることが条件。
米最大TV局CBSがYouTubeで無料動画配信を始め、NBCユニバーサルと提携するなど動画配信の分野で発展した。
2006年、Googleにより買収され、そのグループ会社になる。しかし、ブランド名やサービスなどはそのまま引き継がれた。
- YouTubeの日本上陸
2007年 日本語対応。
2008年 FOMA 904iシリーズ以降の端末で視聴可能
2007~2011年 日本の民放各社とパートナー契約を締結して公式チャンネルを開設
この頃、高速な光回線が主流となった。それが利用を容易にして、2008年の日本の利用者は3200万人に達した。
ニコニコ動画
- ニコニコ動画の経緯
日本の動画共有サイトではニコニコ動画が有名である。2006年に、川上量生、戀塚昭彦のの2人が設立、川上が経営していたニワンゴ社が運営した。2006年に実験サービスを開始し、その後、バージョンを重ねて発展した。
動画は膨大な記憶容量と高速な通信回線が必要なので多大な投資が必要であるが、2010年には利用者が100万人を超え、通期黒字化を達成した。
- ニコニコ動画の特徴
ニコニコ動画は独特の仕組みをもっており、投稿者と閲覧者、閲覧者間の仲間意識を高めたり、他人の作品を参考にした自作品の作成を容易にしたりしている。
- コメント機能
閲覧者は、再生中の動画に対して画面上にコメントを書き込むことができる。そのコメントは、他の閲覧者も読むことができる。
- タグ機能
動画の内容を指し示す検索用キーワードをタグという。このタグは投稿者だけでなく閲覧者もつけられるのだが、各動画のタグの最大個数は10個に制限されており、先についているタグを削除して新規タグをつけることができる。その仕組みにより、自分のタグを主張する「タグ争奪戦」が起こり、視聴回数を高める効果がある。それとともに、より適切なタグにすることができる。ビジネス目的の場合には、この経過を調べることにより、思わぬ発見が得られるという。
- 派生作品
ニコニコ動画上の動画作品は、派生作品(二次創作)を認めそれを奨励する仕組みになっている。そのため、多様な発展が生じ「N次創作」ともいうべき現象がみられる。
- N次創作と著作権
2000年、ヤマハは歌声合成ソフトウェア「VOCALOID」を発表した。音符を入力して曲を作り、それに歌声サンプルを載せることにより新しい歌曲を作るソフトである。
2007年、クリプトン・フューチャー・メディアは、VOCALOIDに女性アイドルのバーチャルキャラクターを組み合わせた「初音ミク」を発売した。楽曲やキャラクターイメージを用いた動画を容易に作成できるようになった。
このような分野では著作権が問題になる。それを円滑にするため、初音ミクでは「キャラクター利用のガイドライン」を作成した。また、作成者と利用者のコミュニケーションの場として投稿サイト「ピアプロ」を開設し、利用者が作者に連絡する手順の標準化を図るとともに、「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」を作成、非商用、公序良俗、権利侵害などの要件に抵触しないかぎり「利用の原則OK」とした。
また、「初音ミク」では作品をニコニコ動画に投稿することを勧め便宜を図ったのである。このような協調行動により、ニコニコ動画が日本での創作活動に役立っているのである。
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