概要
主要年表
↓IPアドレス、DNSなど
↓ドメイン名の種類など
↓管理組織など
↓ドメイン取得サービスなど
1974年 TCP/IP開発(ヴィントン・サーフ、ロバート・カーン)
1981年 IPv4仕様
1983年 DNSの概念(ポール・モカペトリス)
1985年 最初のドメイン名「nordu.net」
1985年 最初の申請登録ドメイン名「symbolics.com」(.com第1号)
1986年 .jp設定、村井純に権限委譲
1986年 DNSの実装仕様JEEVES発表(ポール・モカペトリス)
1986年 BIND開発(ポール・ヴィクシー)
1987年 ドメイン名の運用管理に関するRFC公開
1988年 商用インターネットが始まる
1988年 IANA設立、ドメイン名、IPアドレス、DNSの管理(ICANNの前身)
1989年 この頃のjp第2レベルドメイン ac.jp、ad.jp、co.jp、go.jp、or.jp
1991年 JNIC設立(JPNICの前身)
1992年 IRTF、IPアドレス枯渇を指摘
1993年 JNICを改組してJPNIC設立
1993年 InterNICプロジェクト開始(ICANNの前身)
1993年 CIDR導入(IPアドレス割り当て単位の細分化)
1994年 GeoCities、Web用レンタルサーバ無料提供サービス開始
1995年 「歴史的PIアドレス」廃止
1995年 InterNICによるドメイン登録が有料化
1995年 インターキュー(GMOの前身)設立
1995年 IPv6の最初の仕様
1996年 プライベートアドレス導入
1996年 地域型ドメインの本格運用、ne.jp開始
1997年 JPNIC、社団法人に
1996年 アイル(後にGMOに買収)、日本最初のレンタルサーバ開始
1997年 ルートサーバが13になる(現在と同じ)
1997年 gr.jp(任意団体)
1998年 インターキュー(GMOの前身)、日本最初のレジストラに
1998年 米政府、インターネット管理を民間主導へ
1998年 ICANN設立
1998年 ed.jp(初等・中等教育)
1998年 IPv6仕様
1999年 レジストリ・レジストラ構成の導入
2000年 JPRS(日本レジストリサービス)設立
2000年 GMO、「お名前.com」設立
2001年 ファーストサーバ、ドメイン取得サービス開始
2001年 不正競争防止法改正。ドメイン名の不正取得等の禁止
2002年 汎用JPドメイン、日本語JPドメイン
2002年 JPNICからJPRSへドメイン名登録管理業務移管
2002年 ファーストサーバ、ドメイン取得サービスを「Doレジ」に改称
2004年 Yahoo!Japan、ファーストサーバを子会社化
2004年 JPNIC、歴史的PIアドレス回収開始
2008年 IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース設立
2010年 総務省、「ISPのIPv4アドレス在庫枯渇対応に関する情報開示ガイドライン」
2011年 IPv4アドレスの枯渇
2011年 都道府県型JPドメイン名
全体の概要
Webページを閲覧するには、https://www.google.com/ や http://www.yahoo.co.jp/ などのURL(注)を指定する。その「google.com」や「yahoo.co.jp」の部分をドメイン名という。そして、「com」「jp」をトップレベルドメイン(TLD)、「google」「co」を第2レベルドメインというように右からレベルが付けられている。
(注)実はURL(Uniform Resource Locator)は古い用語で、現在ではURI(Uniform Resource Identifiers)が正式名称になっている。URLはWWW上にある情報の「場所」を示していたが、URIでは、WWWにあるかないかは区別せず、情報の「名称」だとされている。すなわち、URLはURIの一部分である。でも、URLのほうが広く使われているので・・・
一方、インターネット上のコンピュータは「123.45.67.89」のような数字列で通信相手を特定している。この数字列をIPアドレスという。ドメイン名とIPアドレスを対応づける仕組みをDNSといい、それを行うサーバをDNSサーバという。
IPアドレスは、従来IPv4という方式を採用していたが、既に枯渇状況にあり、新方式IPv6への移行が緊急課題になっている。
有限のIPアドレスを適切に割り当てたりドメイン名の重複を防ぐための管理組織が必要になる。世界全体を統括する組織がICANNである、IPアドレスは州レベルでの地域NIC→国レベルでのローカルNIC、ドメイン名ではレジストリ→レジストラ→リセラーの階層構造になっている。リセラーは「ドメイン取得サービス」業者で、「レンタルサーバーサービス」もしていることが多い。
現在のドメイン名体系
- トップレベルドメイン(TLD)
TLDのうち、よく使われているものにgTLDとccTLDがある。
- gTLD(generic TLD)
com(商業組織)、edu(教育機関)、gov(米国政府機関)など、分野区分によるTLDである。
インターネットが世界中に普及する以前に、米国を中心にして策定されていた。ccTLDができたときに、米国専用にするという動きもあったが、現在では、com、biz、infoなど他国でも使えるようになっている。また、これらの区分での制限は緩やかになっている(このページの管理者は日本の個人であるが、comを使用している。単にドメイン取得・更新費用がjpなどよりも安価だという理由にすぎないが)。
- ccTLD(country code TLD)
jp(日本)、uk(英国)、cn(中国)、kr(韓国)など、国・地域を英2文字にしている。
米国はusなのだが、ほとんど使われず、gTLDを用いている。
本来、ccTLDは申請者の国籍あるいはサーバの設置国で区分するはずであったが、to(トンガ)やtv (ツバル)などは、国内よりも国外の利用者が多い場合もある。
- jpの第2レベルドメイン
- 属性型(組織種別型)JPドメイン名
co.jp(一般企業)、ac.jp(大学等)、go.jp(中央官庁)など、組織の分野による区分
- 地域型JPドメイン名
www.metro.tokyo.jp(東京都庁)、www.city.ota.tokyo.jp(東京都大田区役所)など地方公共団体だけでなく、kosure-megane.oota.tokyo.jpのような民間企業も利用できる。
- 汎用JPドメイン名
kogure.jp、木暮.jp などのように日本語を含む自由な名称がつけられる。
ルールとしての第2レベルドメインをもたない型であり、jpの前には何をつけてもよいことになる。例えば「最もうまいラーメン.jp」なども可能である。
- 規定以外のドメインレベル
ドメイン名でのgTLDでの第2レベル、ccTLDでの第3レベル以降、すなわちgoogle.comやyahoo.co.jpでの「google」や「yahoo」の部分は、既に同一名が登録されていない限り、申請者が自由につけられる。すなわち「早い者勝ち」である。
それを悪用して、著名な企業名や商品名あるいはそれらに類似したドメイン名を取得し、その名称によりアクセス数の増加や信頼度の向上を図ったり、その企業に高額で買い取らせたりする不当行為が続出した。2001年の不正競争防止法改正により、ドメイン名の不正取得等が禁止されている。
現在のIPアドレス・ドメイン名の管理組織
- IPアドレス・ドメイン名の管理はICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が総合的に管理している。IPアドレス管理は、先の組織IANA(Internet Assigned Numbers Authority)の名称をそのまま使っていることが多い。
- IPアドレス割り当てをする組織をNIC(Network Information Center)という。地域(州)レベルのNIC、国レベルのNICがある。日本のNICはJPNICで、これが日本でのIPアドレスの割り当てを担当している。
- ドメイン名は、TLD別にICANNの認定を受けたレジストリが管理している。jpはJPRS(日本レジストリサービス)、comはVeriSignが担当している。
- 実際のドメイン名申請の受け付けは、レジストラが行う。レジストラは、取り扱うTLDがccTLDの場合はその国のレジストリ(jpならJPRS)。gTLDの場合は直接ICANNの認定を得る必要がある。複数のTLDを取り扱うこともできる。
- レジストラがアドレス名申請者から直接に申請を受け付けることもあるが、リセラーという代行業者を介するのが一般的である。リセラーはインターネットプロバイダなどが、「ドメイン取得サービス」や「レンタルサーバ」(ホスティングサービスともいう)を兼業しており、ドメイン名とIPアドレスの取得や更新業務だけでなく、Webサイト立ち上げやサーバの管理などのサービスまで行っているのが通常である(レジストラも同様)。
- jpの第2レベルドメインの拡充
・1989年 この頃のjp第2レベルドメイン ac.jp、ad.jp、co.jp、go.jp、or.jp
・1996年 地域型ドメイン、ne.jp(ネットワークサービス)
・1997年 gr.jp(任意団体)
・1998年 ed.jp(初等・中等教育)
・2002年 汎用JPドメイン、日本語JPドメイン、lg.jp(地方公共団体向)
米国での歴史
ドメイン名の周辺環境の確立
インターネット運営の民間化
- 1993年 InterNICプロジェクト開始
1985年、全米科学財団(NSF)は、学術研究用に大学や研究所のスーパーコンピュータを相互接続するネットワークNSFNetを運営していた。その運用管理を民間組織に委託するため、1993年にInterNICプロジェクトを開始し、次のように分担委託した。
・ディレクトリ・サービス:米AT&T
・情報サービス:General Atomics(後にAT&Tが担当)
・ドメイン名登録サービス:Network Solutions(現在はVeriSignの子会社)
既に1988年には商用インターネットが始まっており、1989年にはNSFNetと商用インターネットの接続が行われた。そのような動向に合わせて、InterNICの規模が拡大された。
そして、1999年のICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)設立とともに、InterNICの業務はICANNに移管された。
- 1998年 米政府の民間化宣言
インターネットが米国の国防戦略として始まった経緯から、米国政府はインターネットを自分の管理下におくことを前提としていた。しかし、インターネットがビジネスで広く利用されるようになったこと、全世界に広まったことなどから、民間主導にすべきだとの意見が強くなった。
米国政府はそれへの対処をすすめてきたが、1998年に「インターネットの名前およびアドレスの管理」 (通称ホワイトペーパー)を発表、これで民間組織への移行が明確になった。
- 1998年 ICANN 設立
民間主導の政策を受けて、1998年に非営利団体ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が設立された。民間主導で全世界的に、ドメイン名・IPアドレスの管理、DNSルートサーバー運用、技術的業務関連ポリシー策定などをIANAから引き継いだ(現在、IANAはICANNにおける資源管理・調整機能の名称として使われている)。
ICANNは、理事会と支持組織および諮問委員会で運営されている。理事会は、広範な地域・分野からの代表によって構成されている。そのメンバーには支援組織・諮問委員会から推薦された者と、世界のICANN会員(以前は「会員登録した者」だったが近年はドメインネーム保有者に限定するなどの動きがある)の直接選挙で選ばれたメンバーがある。
このように開かれた組織ではあるが、法的には米国のカリフォルニア州法に基づく民間団体に過ぎないこと、ルートサーバの多くが米国政府の影響下にあることから、米国以外から反発もある。
日本での管理組織
NICとレジストリ
現在では、IPアドレスの割当(日本のローカルNIC)はJPNIC、ドメイン名管理(jpのレジストリ)はJPRSが行っている。
- 村井 純の活躍
村井 純(現兼慶應義塾大学教授)は、日本におけるインターネット黎明期からインターネットに携わり多くの功績をあげてきた。1984年に東京工業大学と慶應義塾大学を接続するJUNETを構築、1986年、アメリカのUSENETと接続した。
1986年にIANAより、.jp ccTLDの権限を村井個人に委任された。これが日本でのNICの始まりである。
- 1993年 JPNIC発足
JPドメイン名登録管理業務を組織化するため、1991年にJNIC(Japan Network Information Center)が設立され、1993年にJPNIC(Japan Network Information Center)に改組され、jpでのDNSサーバ運営を行い、1994年に、JPNICからIPアドレスの割り当てを開始した。
これにより、日本での管理組織が確立したといえる。
その後、2002年にJPドメイン名登録管理業務をJPRS(日本レジストリサービス)へ移管し、JPNICはICANN(IANA)のローカルNICの位置づけになる。
- 2002年 JPRSがレジストリに
現在TLDjpのレジストリはJPRS(日本レジストリサービス)である。
・2000年、株式会社日本レジストリサービス設立
・2002年、ICANNとの間でccTLDスポンサ契約締結、レジストリになる。
・2002年、JPドメイン名登録管理業務をJPNICから移管
レンタルサーバ、ドメイン取得サービス
- GeoCities:最初のWebページ用レンタルサーバ
1994年、米GeoCitiesはWebサイト用サーバ資源の無料提供を開始した。これが「レンタルサーバー」分野の先駆けである。
1997年にソフトバンクが出資して日本法人ジオシティーズが設立された。
、2000年に日本のジオシティーズはYahoo! JAPANと合併し解散。サービス名は「Yahoo!ジオシティーズ」となる。Yahoo! JAPAN IDを得ると、最大50MBの容量が利用できるので人気が高まった。
米国のGeoCitiesサービスは2009年に終了・閉鎖された。
- GMO:日本最大のレジストラ
・1996年 最初のレンタルサーバサービスを開始
レンタルサーバは、1996年にアイルがレンタルサーバサービスを開始したのが日本での最初だといわれている。アイルは2001年にGMOに買収され子会社になる。
・1998年 最初のレジストラ
1998年、インターキュー(GMOの前身)は日本商用で最初のレジストラ(ドメイン名登録機関)になった。1999年にはICANN認定のレジストラになった。
・2000年 お名前.com
2000年にインターキューとマイクロソフトは共同で「お名前.com」を設立。現在日本での最大のレジストラになる。
・2001年 GMOに改称
インターキューはGMO(グローバルメディアオンライン)に改称 。アイルやラピッドサイトなど同業企業を買収して規模拡大。関連分野での多角化を進めてきた。
- ファーストサーバの「Doレジ」
ファーストサーバの「Doレジ」は「お名前.com」と比較して、価格は高いがサポートがよいと評価されている。
・1999年 クボタシステム開発、レンタルサーバーサービス「ファーストサーバ」を開始
・2000年 ファーストサーバ株式会社として独立、営業活動を開始
・2001年 ドメイン取得サービスを開始
・2002年 事業名を「Doレジ」に改称
・2003年 ICANNからレジストラ認定
・2004年 Yahoo!Japanの子会社となる
- リセラーの増大
2000年頃から個人のWebサイト開設が増加し、独自のドメイン名をもつことが流行した。それに伴い、多くのインターネットプロバイダがレンタルサーバ、ドメイン取得サービスに参入するようになった。
IPアドレスの枯渇
1981年にIPv4の仕様が公開されたが、この仕様ではIPアドレスは32ビット(4バイト)のため、最大42億になる。それが適切に配分しても現在の需要に不足するが、当初は無駄が多かったため、枯渇状況になっている。これは単なる技術問題ではなく、インターネット利用が限界に達する社会問題として認知されている。
IPv4での対策
- IPv4
1981年にIPv4の仕様が公開されたが、この仕様ではIPアドレスは32ビット(4バイト)のため、最大42億になる。それが適切に配分しても現在の需要に不足するが、当初は無駄が多かったため、枯渇状況になっている。
1992年にIETF(Internet Engineering Task Force )はIPアドレスの枯渇調査結果を発表、この頃から次世代IPアドレスに関する議論が始まった。
- 1993年 CIDR導入
従来は、IPアドレスをクラスという単位で割り当てていた。単純にはバイト単位で区切ったものである(クラスA:65,536個、クラスB:16,384個、クラスC:256個、クラスD:16個)。しかも、クラスB、Cで割り当てることが多く、無駄が生じていた。
それで、任意のビット数で区切ることにより、必要に応じた個数にすることが考えられた。それをCIDR(Classless Inter-Domain Routing)という。
- 1996年 プライベートアドレスの導入
電話番号での外線番号は一意でなければならないが、内線番号では外部と重複してもかまわない。それと同様に、IPアドレスに特定の範囲を設けて、その番号は内線番号として使うようにした。外線番号に相当するのがグローバルIPアドレス、内線番号に相当するのがプライベートIPアドレスである。
- 歴史的PIアドレスの回収
1995年までは、インターネットを利用する組織が少なかったため、IANAやInterNICなどから直接にIPアドレスを割り当ててもらうことが多かった。それを「歴史的PIアドレス」(provider independent address)という。
時代が経ち、管理者不明の歴史的PIアドレスが多いことが問題になり、1995年に歴史的PIアドレスは廃止になった。JPNICは2004年から歴史的PIアドレスの回収を進めてきている。
IPv6への移行
このような対策を講じても、IPv4では枯渇するのは免れない。抜本的対策として、新しい形式IPv6への移行が必然になった。
- 1998年 IPv6の仕様確定
IPv6ではIPアドレスの長さは128ビットになるので、2128=340兆の1兆倍の1兆倍個になる。これならば永久に枯渇しないだろう。
- 移行推進
IPv6に移行するには、ルータやDNSサーバの対応が必要になるし、既存アプリケーションの改訂が必要になることもある。そのため、以降には多くの関係者の協力が不可欠である。そのためのキャンペーンが行われてきた。日本では、
・2008年 IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース設立
・2010年 総務省「ISPのIPv4アドレス在庫枯渇対応に関する情報開示ガイドライン」
などが行われている。
- 枯渇の現実化
このような対処をしていたのであるが、実際にIPアドレスが枯渇してしまった。
2011年には、ICANN(IANA)にプールされていたIPv4アドレスは枯渇した。地域的にはインターネット利用者が急増しているアジア大洋州地域を担当するAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)が枯渇し割り振りを制限した。
2012年には、ヨーロッパ、中東、中央アジア地域、2013年には北米、及びカリブと北大西洋地域、2014年にはすべての地域で枯渇すると予測されている。
- 枯渇の社会的影響
IPv6への移行が進まないと、既得者以外にはインターネットの利用ができなくなる。インターネットはますます社会インフラとして重要になるが、膨大なIPアドレスが必要になるので、その実現が妨げられることになる。すなわち、IPv6への移行推進は大きな社会的緊急課題になったのである。
参考URL