ＯＳの歴史（汎用コンピュータ）

• アルテシード「「メインフレーム・コンピュータ」で遊ぼう」
  http://www.arteceed.net/
• Wikipedia「オペレーティングシステム」
  http://ja.wikipedia.org/wiki/オペレーティングシステム
• 宝剱純一郎「ＯＳの歴史」
  http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/lecture/20070423/269171/

ＯＳ（Operating System）とは、コンピュータのハードウェアやソフトウェア（データも含む）を管理するソフトウェアであり、人間とコンピュータの間に存在するインタフェースを実現するソフトウェアでもある。パソコンでの代表的なＯＳには Windows や MacOS などがあるが、ここでは汎用コンピュータでのＯＳを対象にする。

当然、現在のオープン系ＯＳは汎用コンピュータＯＳの発展の上に存在するのであるが、歴史的背景により、異なる性格をもつ面もある。
　オープン系ＯＳが個々のメーカーが必要に応じて発展させてきたが、汎用コンピュータＯＳが発展した１９６０年代中頃から１９７０年代までは、ＩＢＭがほぼ独占的なリーダーであった。ＩＢＭは、マイクロソフトやアップルなどと比較して、体系的整然性を重視する文化があり、しかも環境変化が現在と比較すればゆっくりとしていたため、「ＯＳ」が明確に定義されていた。
　オープン系ＯＳでは、初心者を含む多様な利用者が多様な処理を行うことを前提としているので、「使いやすさ」が最大の目的になっている。汎用コンピュータ時代では、一定のレベルの知識をもつ技術者が利用し、定例的・定型的な業務処理が多く、その効率性が重視された。 　オープン系ではサーバ以外では１台のコンピュータを同時に多数の人が使うことはないが、汎用コンピュータでは１台のコンピュータを多目的の多数のジョブを同時に処理するのが通常である。すなわち、現在の多数のサーバを１台のコンピュータで処理するためのＯＳが必要だったのである。

ここでは、特に汎用コンピュータで重視されたＯＳ機能を列挙する。これらはオープン系でも必要であり、近年は実現しているが、汎用コンピュータでは１９７０年代中頃に既に完成していたのである。

• マルチタスク
  ある処理がデータを読み込んでいる間に、他の処理でＣＰＵを利用すれば、全体としての効率が向上する。このような技術をマルチタスクという。オープン系ＯＳでは、処理の切り替えだけでのマルチタスクであるが、汎用コンピュータＯＳでは、各々の処理が独立したアドレス空間で動くので、一方のトラブルが他方に影響することが少なく安定するという特徴がある。
• ＴＳＳ機能
  ＴＳＳ（Time Sharing System, 時分割方式) とは、マルチタスクの一つで一定時間（ミリ秒の単位）で処理を切り替える方式である。一般には、多数の端末から１台のコンピュータを共同利用するときに用いられる。
• 仮想記憶方式
  プログラムを実行処理するには、プログラムがメモリに入っている必要がある。ところが、メモリは高価であり容量に限界がある（汎用コンピュータでは超大型機ですら２０ＭＢ程度、通常は１ＭＢ程度だった）。そのため、メモリに入りきらない巨大なプログラムの場合、ＯＳがプログラムを細分して、プログラムの実行個所だけをメモリにおき、それ以外は磁気ディスクに退避させておく。これを仮想記憶方式という。
  マルチタスクやＴＳＳの場合、個々のプログラムは小さくても、多数のプログラムを同時にメモリに入れるので、大きなサイズになる。そのため、仮想記憶方式であることが必要なのである。
• データ管理
  どのファイルがどこにあるかを知ること、すなわち、ファイル名と実際の格納場所を対応させることをデータ管理という。オープン系ではディレクトリがそれにあたる。
  月次処理のように毎月同じ処理をする場合、プログラムでは論理的に「売上ファイル」と一つの名称にするが、実際のデータは、１月の売上ファイル、２月の売上ファイルというように別々に格納されている。汎用コンピュータでは、このような物理的なファイルをデータセットといい、論理的なファイルと区別している。しかも、当月のデータセットは磁気ディスクに、過去のデータセットは磁気テープに保管されている場合もある。さらに極端には、今月のデータセットは順編成にしているが、過去のものは区分編成にしていることもある。そのような場合でも、プログラムでは、単に売上ファイルとしておきたいのである。このような発想は、現在仮想化として重視されているが、汎用コンピュータＯＳでは
• 上位互換性
  業務は継続している。上位機種や新機種に変更するたびに、ソフトウェアやデータを書き換えることはできない。そのため、汎用コンピュータＯＳでは、以前のＯＳ環境が上位機種・新機種のＯＳでも引き継がれれることが重要である。それを保証する概念が上位互換性である。
• ＶＭ（Virtual Machine）、ゲストＯＳ
  マルチタスクや上位互換性の必要性が発展すると、あるＯＳの下で異なるコンピュータのＯＳ（ゲストＯＳという）を稼働させることが求められるようになる。そのように設計されたＯＳをＶＭという。
  ＶＭの機能は、コンピュータ販売での有力なセールスポイントになることから、かなり初期から特定のＯＳ間では実現されていた。それを総合的に実現したＯＳがＭＶＳである。

黎明期のＯＳ

１９６４年　ＯＳ／３６０

１９７４年　ＭＶＳ

ＯＳへの指示言語