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レジスターの歴史

金銭登録機(キャッシュレジスター)からPOSレジスターへ


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レジスターとは

ここでは、レジスターを、現在、スーパーやコンビニで用いられているPOSレジスターと、POS普及以前に用いられていた金銭登録機(キャッシュレジスター)に区分する。POSレジスターと金銭登録機を比較すると次のような違いがある。


金銭登録機の時代

レジスターの発明と普及(第1次世界大戦開戦まで)

最初のレジスター


Ritty's Incorruptible Cashier(1878) (拡大図)

Detail Adder(1883) (拡大図)
出典: 日本NCR「レジスター博物館 1878-1901」

初期のレジスター

電動レジスター

最初の電動レジスターは、1906年にケタリング(Charles F. Kettering)が製作した。数年後に製造された「National Cash Register Class 1000 Autographic」はベストセラーになったという。しかし、当時は電動式と手動式は共存しており、電動レジスターが本格的に普及するのは、第1次世界大戦後となる。

第1次世界大戦後から第2次世界大戦まで

第1次世界大戦後の発展

1914年に第1次世界大戦が起こり、真鍮や白銅が軍用に重要であり民用には使えなくなった。また、低価格のレジスターが求められるようになった。それで、現在のようなスチール製になった。
 その後、レジスターは多様な機能をもつようになった。NCR社製品を例とする。

日本のレジスター産業


第2次世界大戦後のレジスターメーカー

米国NCRの浮沈

戦後もレジスター市場でのNCRの独占的地位は変化せず、時代をリードする新製品を開発していた。コンピュータ(汎用機)やパソコンの分野にも進出。高性能機に特徴があり、特に金融業界でのシェアを高めた。寺データとの統合により、超並列プロセッサ分野でのシェアも高めた。ところが、汎用機市場ではIBM、パソコン市場ではコンバック(現HP)などとの競争に敗れてしまった。  また、1970年代からレジスターは電子化され、機械的な工作のノウハウが重視されなくなり、電卓メーカーなどの参入が容易になった。さらに1980年代後半からは、POSシステムが情報システムの主要な一部となり、レジスターはPOSレジスターへと移行する。それにより、コンピュータメーカーやパソコンメーカーの参入が多くなってきた。現在の米国のPOS市場では、NCRは善戦しているが、IBMが首位になっている。

日本NCRの経緯

米NCRは、コンピュータ業界、さらにパソコン業界に参入したが、その後の競争で低迷。1990年代に入ると急速に業績悪化して、パソコン・汎用機の製造から撤退した。
 日本NCRは、1970年代までは米NCRレジスター日本版の生産・販売で、レジスター業界のトップ企業であったが、レジスターの電子化に伴う国産勢の進出により、次第に劣勢になり、現在ではレジスター生産は海外に移転してしまった。

東芝テックの経緯

日本NCRとくらべて、本格的な生産は遅かった。しかし、電子時代になると急速に発展し、POSレジスターの時代になると、トップ企業になった。

レジスターメーカーとしては、東芝テック、シャープ、カシオなどがシェアをもっていたが、現在での、POSレジスターメーカーとしては、東芝テックが50%、NECインフロンティアが25%近いシェアをもっている。


第2次世界大戦後~1960年代

金銭登録機の完成段階

入出力装置との連携


1970年代:ECRの出現

1970年代になると、レジスターはECR(Electronic Cash Register)へと変化した。ECRとは、電子式レジスターのこと。従来の機械式レジスター、電動レジスターが歯車装置などで動作するのに対して、ECRは、ICなどの電子回路により動作し、データはメモリに記憶される。プログラムによる機能変更も可能になる。すなわち、コンピュータ的な機器に変化したのである。
 そのため、従来のような機械機構が少なくなり、その技術をもたない企業が参入しやすくなった。むしろ電卓やコンピュータなどの業種が有利になってきたのである。
 NCRは、すでにコンピュータ業界に参入していたため、このような変化にも対応できたが、新たな競争者を迎えることになった。特に日本では、シャープやカシオなど電卓メーカーが参入するし、東芝テックが強力な競争者になり、NCRの次第に日本でのシェアは低下していく。逆に、国産メーカーは、輸出産業としても急成長するようになる。


POSレジスターの時代

POSレジスターへの移行

POS(Point of Sale)システムとは、通商産業省(現経済産業省)は、「POSシステムは、光学式自動読取方式のレジスターにより、単品別に収集した販売情報や仕入れ、配送などの段階で発生する各種の情報をコンピューターに送り、各部門がそれぞれの目的に応じて有効活用できるような情報に処理・加工し伝送するシステム」と定義している。

日本全体でのJANコード対応POSの導入は、セブンイレブンよりもかなり遅れている。離陸期は1980年代中頃で、急速に普及したのは1990年代中頃である。


JANコード対応POS導入店舗数の推移
出典: 流通システム開発センター「流開センターニュース(2010年11月号)」より作図

オープンPOS

オープンPOSとは、オープン環境、すなわち端的にはWindowsをOSとするPOSのことである。それまでのPOSレジスターのソフトや周辺機器との接続仕様は、個々のメーカーあるいは機器により独自の仕様を採用した「専用型POS」であった。それが、1990年代になるとダウンサイジングが進み、パソコンが情報システムの中核機器になり、その大多数がWindowsをOSとしていた。POSもそれに合わせたほうが開発コストを格段に抑えられ、機器間の互換性が向上する。それを「オープンPOS」という。この普及により、レジスターメーカーではないソフトウェア会社がアプリケーション・プログラムを開発するようになった。

その後、OSをLinuxとするオープンPOSも普及するようになった。現在のPOSはほとんどがオープンPOSになっている。

WebPOS

2000年代にブロードバンドによるインターネット利用が普及すると、店舗のPOSレジスターと本部のサーバーをインターネットで接続したWebPOSが出現した。サーバーに全てのマスタやデータを保持して、POSレジスタには基本的にはWebブラウザだけを搭載する。通常のPOSに比べて安価になり、小規模なサービス業でも利用ができる。

セルフPOSの動向

セルフPOSとは、客が自らPOSレジスターを操作して商品をスキャンして支払をする仕組みである。支払方法は現金だけでなく、カードや電子マネーを用いることができる。客が操作するため、わかりやすさが重要になる。また、現在では、個々の商品のバーコードをスキャナーで読み取る方式であるが、将来は商品に添付されたRFID(無線チップ)により自動的にスキャンできるようになろう。


セルフPOSの構造(NCR SelfServ Checkout 2Bag) (拡大図)
出典: NCR「セルフレジ NCR SelfServ Checkout」

米国では、セルフレジ導入が盛んで、2001年には19%、2002年には29%になり、2005年には過半数に達したと推定される。米国でのセルフPOSシェアは,NCRが過半数を占め、富士通とIBMがそれに次ぎ、3社の寡占状態になっている。
 日本では、2003年頃から実証実験目的で導入され、2008年頃から実務的に使われるようになってきたが、POS全体から見るとまだ本格的な普及段階になっていない。