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近年は電話もインターネット技術(TCP/IP)を利用するようになりました。それをIP電話といいます。電話では音声を伝えること、連続して通信するなど、Webページ閲覧や電子メールのような利用とは異なる仕組みがあります。ここでは、IP電話のしくについて学習します。/p>
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スマートフォンのような移動する電話に対して、家庭やオフィス内に固定的に設置した電話を固定電話といいます。
従来からの固定電話は、主にNTT東日本やNTT西日本(総称としてNTTといいます)などが敷設した公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)を利用する電話サービスに加入しています。これを加入電話といいます。
加入電話にはNTTのISDNを用いるデジタル電話もありますが、ここでは省略します。
公衆交換電話網はアナログ回線で、加入電話では、音声のアナログ信号のまま伝送しています。 音声をアナログの電流信号に変換する方式は多様ですがAM(振幅変調)方式だと図のようになります。基になる一定の周波数をもつ搬送波を、音声の振幅(強さ)に変えた変調波が、回線を流れる電気信号になるのです。この変換はアナログ電話機の中で行われます。
加入電話は回線交換方式です。中継線は多重化していますが、論理的には多数の回線があり、通話中はその1回線を独占していることになります。
近距離通話では加入者交換機での折り返しですので、中継線は使いません。遠距離通話では多数の交換機を経由し、長い中継線を使います。
そのため、通話時間と遠近距離による料金体系になります。
また、NTTとの加入電話回線を契約には、電話加入権を得る必要があります。NTTの施設設置費用などを基本料の前払い的な位置付けで支払うのです。
近年はスマートフォンの普及により、固定電話設置数が減少しています。また、インターネットの普及により、固定電話がインターネットを利用したIP電話への移行が進み、すでにIP電話が過半数になっています。
(注)IP電話は、VoIP(Voice over Internet Protocol)という技術で実現しています。また、主にキャリアが運営する「光電話」(0ABJ型IP電話)とISPが運営する(狭義の)「IP電話」(050型IP電話)に区分できます(後述)。
しかし、VoIP電話というのも不自然だし、双方の区分は曖昧で特に技術的には共通事項が多いことから、ここでは総称して「IP電話」ということにします。広義・狭義の区分は文脈で判断してください。
IP電話は、インターネットを使うことにより、電話料金が大幅に削減できます。
NTTは、自社が運営している光電話への移行により加入者減少が進み、公衆交換電話網の維持管理費用が負担になってきました。将来の動向も考慮して、NTTは公衆交換電話網サービスの終了を予定してます。
(注)ここではインターネットとしましたが、正確にはキャリアやISPが設置したVoIP基盤網(後述)です。他のインターネットとは隔離したネットワークですが、不特定の加入者が共同で利用するネットワーク形態であり、基本的なプロトコルがTCP/IPであることから、インターネットと表現しました。
IP電話は、相手先を呼び出して接続する電話の機能と、アナログ信号である音声を、IPパケットにして送信することが特徴です。
IP電話全般にわたる技術規格です。IP電話のことをVoIPということもあります。
電話で話し聞くのは音声のアナログ情報です。それをTCP/IPで伝送するには、デジタル情報に変換すること、デジタル情報をアナログ情報に復元することが必要です。それをA/D変換といいます。
A/D変換は、標本化、量子化、符号化のステップになります。→参照:デジタル化
A/D変換を行う機器あるいはソフトウェアをコーデックといいます。
デジタル化された音声データがそのまま伝送されるのではありません。RTPがそれを行います。
実際に通話をする(RTPパケットの交換をする)ための、トランスポート層(TCP層)のUDPに属するプロトコルです。
VoIPゲートウェイあるいはIP電話機に搭載されています。
音声情報をIPフレームにする機能とそのフレームを伝送する機能があります。
パケット交換方式で複雑な回線網により伝送する環境では、パケットの伝送時間にばらつきがあります。また、符号化処理や復元処理に時間(原理遅延) 0.がかかります。
A/D変換では、8kHz=1/8(ミリ秒)でデータが発生しますが、あまりにも短時間であり、次のパケットが到着するまでに前のパケットの処理が終了しないことになります。
そのため、いくつかのデータをまとめてパケットにする必要が生じます。
逆に、送出周期を長くしすぎると、前のパケットによる音声と次のパケットによる音声の間に無音の時間が発生します。
RTPでは、適切な送出周期(20ミリ秒程度)になるように、コーデックによるデジタルデータを、いくつかまとめて、フレームを作成します。その音声データの部分をボイスペイロードといいます。
その方式はITU-Tが多様な規格を勧告してますが、IP電話に関係が深いものに、G.711とG.729があります。これらはRTPの規格でもあり、コーデックの規格でもあります。
ITU-T勧告 G.711 G.729
符号化方式 PCM CS-ACELP
標本化周波数 8kHz 8kHz
パケット送出間隔 20ミリ秒 20ミリ秒
ペイロード長 160バイト 20バイト
回線必要帯域 64bps 8bps
原理遅延 0.125ミリ秒 15ミリ秒
音質 良い やや良い
圧縮率 低い 高い
主な用途 回線交換 VoIP
RTPパケットは、次のような構成になっています。
RTPヘッダには、
シーケンス番号(パケット化された順番)
タイムスタンプ(パケットの送信間隔)
ペイロード種別(コーデック種別)
などの情報があります。
到着したパケットがシーケンス番号の順でないときは、欠けた番号のパケットがくるまで一定時間待ちます。そのとき、タイムスタンプから計算した時刻までに到着しないときは、そのパケットがなかったものとします。→UDP
RTPの伝送はUDPを用いています。
電話は、データ通信と比較して、大きな特徴があります。
TCPは、コネクション型通信といい、データの送受信や誤り制御に複雑な処理をしています。それに対してUDPはコネクションレス型通信です。一方的に送りつける方式で,エラーがあってもチェックしません。
上記のA/D変換からパケット送出までの一連の処理(コーデックやRTPの機能)を行う装置をVoIPゲートウエイ(VoIPアダプタ)といいます。
電話機が加入電話機のときは、電話機の出口にVoIPゲートウエイを設置します。また、この機能をを内蔵した電話機をIP電話機といいます。
光電話を契約すると事業者からONUを買取/レンタルで提供されます。
外部接続端子:これがあるので別にルータを用意する必要はありません。
LAN接続端子:パソコンなどと接続できます。パソコンのインタネット利用もできます。
電話機接続端子:2回線あり2台の電話機が接続できます。
電話の発信、着信、応答、切断の機能をシグナリング(呼制御)といいます。SIPは、シグナリングのプロトコルでトランスポート層・セッション層(TCP)に属します。IETFにより標準化されました。
同様のシグナリングプロトコルに、H.323やMGCP(Media Gateway Control Protocol)がありますが、インターネットなどとの親和性がよいことからSIPが広く用いられています。
SIP機能を搭載した局側のサーバです。中継ルータから参照されます。
呼制御を行うために、次のサーバ機能をもっています。
公衆交換電話網の収容交換機、中継交換機に相当します(それらの名称を使うこともあります)。
電話機からダイアルアップがあると収容ルータに集められ、中継ルータに転送されます。
電話機からは、相手先を電話番号で指定しています。中継ルータは、SIPサーバに問い合わせて相手先電話番号に対応するIPアドレスなどを得て、相手先に関係する中継ルータに転送します。
このプロセスは、0ABJ型IP電話と050型IP電話により異なるのですが、ここでは省略します。
オフィスでは多数の電話があります。PBXは収納交換機を社内に設置したようなもので、次の機能をもっています。
各事業所のPBX間を専用回線などWANで接続すれば、他の事業所も内線番号で接続できます。
PBXは、公衆電話回線網の時代の交換機です。これをIP通信網で使うときには、PBXにVoIPゲートウェイを接続する必要があります。
VoIP環境でのPBXをIP-PBXといいます。電話機とLANを構築し、イーサーネットやインターネットを活用した通話を可能とする電話交換機です。機能はPBXとほぼ同じです。
IP電話機にはパソコンと同様にMACアドレスが付番されており、LAN接続端子があります。すなわち、パソコンと同等なイーサーネットLANの接続機器なので、イーサーネットフレーム(RTMヘッダが付加されていますが)をLAN内に伝送します。
IP-PBXには、IP電話機だけでなく、パソコン、タブレット、スマートフォンなど電話機能をもつ機器を接続できます(無線の場合は、IP-PBXに無線機能をもたせるか、有線に変換して接続する必要がありますが)。逆に、加入電話機はそのままでは接続できません。
IP-PBXは、PBX機能をもつ以外は通常のサーバのような位置づけになります。それで、IP-PBX専用機ではなく、汎用サーバにソフトウェアをインストールして電話交換機能を持たせることもあります。
下図ではONUとルータが別になっていますが、ONUから直接に外部接続できるものもあります。
IP-PBXには、PBXの機能以外に次のような機能をもたせることができます。
クラウドコンピューティングのSaaS(Software as a Service)の一形態で、インターネット上にPBXを構築して共同利用サービスを行う形態です。
サービス内容や接続できる通信機器は、SaaS事業者や契約により多様です。
機器設置費用や運用担当者が不要ですので、小規模なPBXの利用やIP-PBX設置の準備段階を意図しているときに適切です。
IP電話サービスを提供する事業者をITSP (Internet Telephony Service Provider) といます。ITSPがキャリアかISPかにより、光電話と(狭義の)IP電話に区分されます。
電話番号が加入電話のときの0ABJ体系か、IP電話の出現により新設された050体系かによる区分ができます。
以前は、光電話=0ABJ、IP電話=050の関係でしたが、現在は、ISPが運営する場合でも、「光」電話になっていたり、0ABJでのサービスもするようになり、区分は曖昧になっています。
現在では、「光電話」「0ABJ」が主流になっています。
利用者としては、電話の相手が加入電話、光電話、IP電話に関係なく交信できることを求めます。そのため、異なる事業者間での相互接続が必要になります。
キャリアや大手ISPグループが設置した、VoIPでの中継用の回線です。
小規模ISPは有料でいずれかのVoIP基盤網を利用しています。また、複数のVoIP基盤網に参加しているISPもあります(インターネットでのAS(Autonomous System)に相当します)。
同一VoIP基盤網内での通話であれば、ISPが異なっても、相互接続が簡単で従量費用が発生しないので、安価あるいは無料の料金体系になります。
他のVoIP基盤網間の通話では、相互乗り入れの技術や契約が必要になります。契約してないISPに加入している電話には通話できません。
VoIP基盤網間あるいは事業者間で相互接続するための場所および設備のことです。
(公衆電話回線網では関門(ゲートウェイ)交換機といいます。インターネットでのIXP(Internet Exchange Point)に相当します)
大手事業者の通信局内に設置され、各社の通信機器同士を回線で結びます。POIが各社の責任分界点になり、POIを境にそれぞれの事業者が自社の設備を設置、運用、保守などを担当します。
これにより、公衆電話回線、NTTなどの光回線網、ISPのVoIP基盤網、さらに移動電話や国際通信の事業者も加わっています。
これにより、相手の電話を考慮せずに交信できるようになります。
(広義の)IP電話を対象としたた公衆交換電話網(加入電話網)です。NGNの仕様はITU-TのY.2000番台で標準化されています。
NGNは一般名称ですが、通常はNTTグループが構築・運用している新世代ネットワーク基盤を指します。KDDIでは「ウルトラ3G」、ソフトバンクテレコムでは「IRIS」の名称でサービスしています。
NTTは、単一のアクセス回線および基幹ネットワークを光ケーブルにして、電話、インターネット接続、テレビ放送を統合して提供することにより、現在のアナログ加入電話を対象にした公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Networks)を廃止しNGNで統一する予定です。
NGNは、技術的にはTCP/IPのネットワークですが、NTTが設置・運用する閉域網で、通常のインターネットとは隔離されており、高いQoS(Quality of Service:通信品質)を保証できるとしています。
NTT内でのNGNは進展しているのですが、他の事業者のNGNとの共通化や、接続方法についは現在まだ決定していない状態です。