企業活動のポイントは顧客からの受注を増やすことです。それには,営業活動を支援したり,顧客との関係を維持向上させることが必要です。ここではそのための経営技法であるSFAとCRMの概念と,それを支援する情報利用技術を理解します。特に,多くの情報利用技術がSFAやCRMの要素になっていること,すなわち,これらは情報利用技術を総合的に活用したものであることを理解します。
SFA,SFAソフト,顧客満足,CRM,CRMソフト,フロントオフィス・システム,バックオフィス・システム
営業活動とは,新規顧客の獲得をしたり,既存顧客との関係を維持・拡大したりするための活動です。その内容は,業種業態により内容は異なりますが,およそ次のような活動があります(これらの用語を覚えてください)。これらの行動のうち,顧客と話し合うことを商談といいます。
このように,営業活動の大部分は人と人の関係が重要で,しかも業務が不定形だという特徴があります。それで,「勘・経験・根性」に頼った個人的活動になりやすく,システム化しにくい部門であるといわれてきました。しかし,それでは厳しい環境に対処できない状況になってきたのです。
SFA(Sales Force Automation)とは,営業部門の効率化,営業活動の展開,顧客サービス,売上・利益の増大を実現するために,営業活動を情報技術で支援する概念です。オートメーションとは自動化のことですが,営業活動の無人化などができるはずはありません。あくまでも人間の活動を支援するのが目的です。
また,企業は顧客があってこそ存在できるのですから,顧客との良好な関係を維持発展することが企業の基本です。それには営業部門だけではなく,顧客と接する機会のあるすべての部門で顧客に関する情報を共有・管理し,顧客満足を得るように常に最適な対応ができるようにすることが必要です。そのような概念をCRM(Customer Relationship Management)といいます。これにも情報技術の活用が求められます。
このように,一般的にはSFAは営業部門の人を直接に支援することを目的とし,CRMはSFAも含みマーケティング全体を支援するものだといえますが,その境界は不明確です。それで人によりSFAといったりCRMということもあります。
SFAにせよCRMにせよ,営業部門の活動やマーケティングの経営技法であり,情報技術のことではありません。しかし,それらを効果的に実現するには情報技術は不可欠でしょう。それで,「SFAソフト」や「CRMソフト」といわれるパッケージが多く販売されています。しかし営業活動は多様ですから,それを支援する機能も多様です。それでも,営業活動の全部をカバーするのではなく,それぞれある分野を重点にしているのが多いのです。むしろ特定のソフトウェアをSFAソフトとかCRMソフトというのでなく,以下に示すような多様なツールを組合わせて営業活動を支援する情報システムの全体をさすのだと考えるほうが適切です。 (SFA・CRMと各種技法)
SFA 営業プロセスの支援 グループウェア ナレッジ・マネジメント 営業効率向上への支援 ワークフロー管理システム インターネットの活用 モバイル・コンピューティング マーケティングオートメーション(MA) 質を高めるための支援 データウェアハウス プレゼンテーションツール 営業ノウハウの普及 ナレッジ・マネジメント CRM 営業活動拡大への支援 EC(電子商取引) コールセンター,CTI
また,SFAやCRMは顧客と営業という最前線の分野ですので,このようなシステムをフロントオフィス・システムといい,従来の販売システムや会計システムなどの基幹業務系システムのことをバックオフィス・システムということもあります。
コンタクトから成約までのプロセスを支援する機能です。具体的には,最初のコンタクトから,見込の状況,成約までに営業部員が行なった商談報告をデータベースに登録して,関係者が情報を共有できるようにします。それにより,次のようなことができます。
このような用途には,電子メールや電子掲示板などのグループウェアや,報告のルートを定めたワークフロー管理システム,文章情報をデータベースとして蓄積し検索加工するためのナレッジ・マネジメントなどが利用できます。
営業部員がより多くの顧客をより頻繁に訪問することが成約につながります。ところが現実には,それ以外に時間をとられることが多いのです。それを削減して効率を高める必要があります。
出張などでは,訪問先の地図,時刻表,切符の購入,ホテルの予約,出張手続き,出張費仮払いなどの作業が面倒です。最近はそれらの市販ツールやインターネットのページなどがあります。それらを自社環境に特化したワークフロー管理システムの構築が普及してきました。
朝,出社して準備をして顧客訪問に出かけ,それが終わったら帰社して報告書を作成するのでは,自宅と会社の往復時間が無駄になります。自宅から直接に顧客訪問して直接に自宅に帰る直行直帰が望まれます。それには,自宅や顧客先あるいは訪問途中でも,オフィスにいるのと同様な環境で仕事ができるようにする必要があります。そのためには モバイル・コンピューティングが活用されます。
また,訪問先では各種のプレゼンテーションが必要ですが,それには,プロジェクタによるプレゼンテーションが広く利用されています。
顧客に適切なな情報を、適切なタイミングと方法で提供することが重要です。MAは、マーケティング活動を自動化する仕組みです。従来は営業担当者が行っていた、メールやSNSなどの配信や反応の分析などを、MAツールを活用して自動化します。
BtoCでは、対象者が多く、販売チャネルや顧客接点が多様なので、それに特化したツールをCCCM(Cross-channel campaign management)ということもあります。
MAの効果を上げるためには、SFAやCRMなどとのシームレスな連携が必要です。そのため、MAツールの導入には、大がかりなシステム改訂を伴うことがあります。
新人の営業担当者や担当商品や担当顧客を替えたときに早期に戦力化することが必要です。それには,ベテランの成功・失敗事例を整理しておき,必要に応じて検索できたり,それを用いて教育することが効果的です。また,実際に商談件数を増やしたり,受注確率を高めるには,優秀な営業担当者の行動パターンを分析して、最も成功率が高いと思われる標準的な営業プロセスを作ることも必要です。それには,情報の共有化や知識の収集整理が必要でありグループウェアやナレッジ・マネジメントが利用できます。
営業活動を営業部員が行なうのはコストがかかりますし,その範囲も限定されます。それで,インターネットの利用によるEC(Electronic Commerce:電子商取引)やコールセンターが普及してきました。