テレビ放送、2k放送、フルハイビジョン放送、地上波放送、電波塔、衛星放送、BS放送、放送衛星、CS放送、通信衛星、ケーブルテレビ、CATV、トランスモジュレーション方式、パススルー方式、インターネット放送、IP放送、リアルタイム放送、ビデオ・オン・デマンド、VOD、ダウンロード方式、ストリーミング方式、周波数帯、ISDB-T方式、、直交周波数分割多重方式、MPEG-2TS、B-CASカード、ダビング10、コピーワンス
テレビ放送の種類
テレビ放送を通信の観点から区分すると次のようになります。
地上波放送(地デジ)
衛星放送
BS放送
CS放送
ケーブルテレビ
インターネット放送
地上波放送
地上波放送は、放送局と家庭などのテレビ受信機の間を地上の中継局を設けて電波を送る放送です。
- 放送局からマイクロ波(1~100GHz)無線などにより電波塔(親局送信所)に番組(放送コンテンツ)を送ります(注)。
- 電波塔から番組をデジタル信号に変換、マイクロ無線で送信します。
- 遠方あるいは電波が届きにくい地域には中継局を介して送信します。
- 家庭などでは、アンテナにより電波を受信して同軸ケーブルでテレビ受信機に送ります。
- テレビ受信機はデジタル信号を映像や音声に変換して表示します。
(注)代表的な親局送信所は東京スカイツリーですが、東京スカイツリーから直接受信できるのは関東平野一円だけです。他地域では、各放送局が親局送信設備を設置し、それぞれが独立して電波を出しています。
衛星放送
衛星放送は、放送局から衛星地上局へデジタル信号に変換した番組を、主に有線回線(光回線)で送ります。
衛星地上局は、赤道上空36,000kmにある放送衛星(地球自転と一致した静止衛星)に送り(アップリンク)、放送衛星は、地上に向けて送り返し(ダウンリンク)家庭に直接電波を送ります。
放送衛星からの電波は地上波放送に比べて弱いので、それに対応したパラボラアンテナが必要になります。また受信機にはチューナが必要になります。
衛星放送は、地上波放送に比べて、以下のような特徴があります。
・効率よく広域に放送ができ、地形の影響で乱れることがない
・大容量の情報伝達力がある
・災害時に強い
BS放送とCS放送
衛星放送には、BS放送とCS放送があります。日本では、
110°BSデジタル放送
110°CSデジタル放送
が使われています。この110°とは、衛星の位置が赤道上の東経110度のことです。
BS放送とCS放送の違いは、使用する人工衛星および使用周波数帯による違いです。
- BS放送
- BS放送(Broadcasting Satellites)は、ITU(国際電気通信連合)により放送衛星業務に優先的に割り当てられて軌道位置と周波数を用いる放送です。日本を含む地域では、12GHz帯については11.7 - 12.2GHzが割り当てられています。この衛星を放送衛星(Broadcasting Satellite)といいます。
NHK・大手民放のBSチャネルおよびWOWOWはBS放送です。
- CS放送
- CS放送(Communication Satellites)は、放送衛星業務に割り当てられた以外の周波数を用いる放送です。基本的には先着順で衛星の軌道位置と周波数の割り当てを受けます。日本のCS放送では12.2 - 12.75GHzを用いています。この衛星を通信衛星(Communications Satellite)といいます。
当初は、ケーブルテレビ、企業、集合住宅など特定の受信者を対象にしたものですが、一般の家庭でも視聴することが可能となりました。
代表的なCS放送にスカパーがあります。CS放送は電波の出力が小さのでBS放送受信用のアンテナでは受信できません。また、有料放送なので、スカパーに加入するときにCS放送受信用アンテナが提供されるのが通常です。
ケーブルテレビ(CATV)
ケーブルテレビは、ケーブルテレビ事業者(J:COMやJCN、地方自治体など)が、サービス提供地域に、光ケーブルや同軸ケーブルを敷設し、ケーブルテレビセンターと家庭間を高速回線で結び、放送サービスと通信サービス(インターネット接続)を提供しています。
一般には商用ですが、離島や山間部など視聴難地域・インターネット利用困難地域のために、地方自治体などがサービス提供をしていることもあります。
ケーブルテレビの放送受信
- ケーブルテレビセンターは、多数の放送局、放送衛星(BS)、通信衛星(CS)などからの放送番組を無線で受信します。ケーブルテレビ事業者が独自に番組を制作することもあります。
- ケーブルテレビセンターと家庭近くの電柱に置かれたタップオフまでを事業者が敷設した光ケーブルで接続します。
- タップオフから家庭内の保安器までを同軸ケーブルの引込線で接続します。
- 家庭内では分配器を介して、テレビ情報と通信情報にわけます。
- テレビ情報はSTB(セットトップボックス)というチューナを介してテレビ受信機と接続します。
このように、ケーブルテレビ放送ではケーブルテレビセンターからテレビ受信機までを有線で接続するのでアンテナは不要になります。
ケーブルテレビの放送方式
- トランスモジュレーション方式
通常はこの方式です。受信した電波をケーブルテレビに適した変調方式に変換して伝送する方式です。変調した電波を本来の放送電波に戻すためにSTBが必要になります。
- パススルー方式
ケーブルテレビセンターが受信したBS放送などの電波を変調方式を変えずに伝送する方式です。
BS放送の周波数のままでケーブルに再送信する「同一周波数パススルー方式」と、放送の周波数とは異なる周波数に変換して再送信する「周波数変換パススルー方式」があります。設備が単純なので、用途を限定したケーブルテレビサービスに用いられます。
インターネット放送(IP放送)
インターネット放送とは、インターネットを利用した放送サービスです。通常はパソコンで視聴することもできますが、テレビ受信機をインターネットにつないで、パソコンなしでも視聴することもできます。
近年のテレビ受信機は、有線のLANポートや無線LAN機能をもっています。それらを用いて自宅のLANルータと接続すればインターネットと接続できます。無線の場合はリモコンの操作だけで接続できます。
インターネット放送には、放送局が自社番組をアーカイブして提供するもの、ビデオ制作会社が提供するもの、小規模な放送局や個人がインターネットに投稿するものなど、多様な形態があります。
インターネットですから視聴者から放送者への通信がきるので、その特徴を生かした多様なサービス形態があり、また、期待されています。
インターネット放送の配信方法
放送番組をインターネットを介して受信者に送り付けるのには、二つの方法があります。
- リアルタイム放送
配信者が配信している映像を、複数の視聴者がリアルタイム受信する配信方法です。
- ビデオ・オン・デマンド(VOD)
配信者が完成した動画をビデオにして、あらかじめインターネット上にアップロードし、視聴者が動画のアップロード先にアクセスすることによって動画を配信します。放送番組の編成に左右されずに、自分が観たいたいときに観たいビデオを視聴できます。
インターネット放送の再生方法(受信方法)
- ダウンロード方式
視聴したいコンテンツを、端末にダウンロードしてから視聴する方法です。テレビで視聴せずに録画だけを行うようなものです。ダウンロードに時間がかかりますが、ダウンロード後は、インターネットに接続していなくても、いつでも何度でも視聴できます。一時停止や早送り、巻き戻しなどもできます。テレビ放送は大容量になるので、大容量の記憶装置が必要です。
- ストリーミング方式
受信と並行して再生し視聴する方式です。テレビで録画せずに視聴だけするようなものです。受信と同時に視聴できるので待ち時間がないこと、端末に保存しないので大容量記憶装置が不要なことなどの長所があります。パソコンで視聴するには、それに必要なネットワーク回線やパソコンの性能が必要です。
放送技術・規格
周波数帯
300MHzから3000MHzの周波数帯をUHF(Ultra High Frequency)といいます。
このうちテレビ放送には、次のように割り当てられています。
・地上波放送:470MHz~770MHz
・BS放送:1032-1489MHz
・CS放送:1595-2071MHz
・4k8k放送:2224-3224MHz
携帯電話などには700MHz~900MHz、1.5GHz~2.5GHzが割り当てられています。テレビ放送と同じ周波数帯がありましが、その周波数帯を細分化して割り当てて重複がないようにしています。
(注)通信と周波数帯
周波数の大小は通信実務に大きな関係があります。周波数が大のときの特徴を列挙します。
- 伝送速度:大
周波数が大の領域では、搬送波の周波数も大にできるので、伝送速度が大になります。また、一つの通信に使える周波数の範囲が広くできます。広周波数帯では多くのチェネルが使えるので、実質的な伝送速度が大になります。
- 到達距離:短
電波は、距離の2乗、周波数の2乗に比例して減衰します。そのため、同じ電力で放送したとき、周波数が大なほど受信できる地域が狭くなり、中継器が必要になります。また、性能の良いアンテナが必要になります。
- 通過率:小
周波数が大になるほど、直進性が高まり回り込みができなくなります。すなわち、通過率が小になります。途中に山や壁があると受信できなくなります。
放送方式:ISDB-T方式
日本の地上波放送は、ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial:統合デジタル放送サービス‐地上用)方式を採用しています。NHKが中心となって作成され、国際的な標準規格の一つになっています。米国や欧州にも放送規格がありますが、日本は山岳地帯が多いことから独自の方式にしたのです。
- チャネルのセグメント化
一つの放送チンネルを複数のセグメントに分割して利用する技術です。
固定テレビ用の高品質放送と携帯電話用のワンセグ放送(一つのセグメントだけを用いた放送)を同時に送れます。
- マルチキャリア(複数搬送波)
一つのチャネルに多数の搬送波(情報を伝える電波)を載せて送信する技術です。
これを用いることにより、建築物などで反射された電波が時間差を伴って本来の電波に重なってしまう障害を防ぎ安定した受信ができます。→(直交周波数分割多重方式)
- インターリーブ
雑音などによってデジタル信号が乱れたときに復元する技術です。
- データ放送・双方向放送
dボタンによる天気予報、災害情報、アンケート回答などの技術です。
- 緊急警報放送
災害等の発生時に、テレビが受信状態でなくても、放送波で起動し情報を伝達する技術です。
これはISDB-T方式独自の機能です。
伝送方式:直交周波数分割多重方式
OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)方式ともいいます。
一連のデータを約5千本の搬送波に分けて伝送します。複数の搬送波に振分けることにより1つのデータを送る時間を短く(間隔を長く)なるので、送信中に障害電波を受ける確率が小さくなります。
テレビ放送の伝送速度
- 圧縮前の必要伝送量
1秒間に伝送すべきデータ量は、想定するテレビ受信機の解像度(画素数)と、1秒間に表示する画面数(コマ数)により決まります。
理由は省略しますが、1画素あたり16ビットの信号が必要です。画素数1920x1080の画素で、コマ数は30とすると、1秒に必要なデータ量は
1920×1080×16×30=995,328,000ビット=約1Gビット
になり、1Gbpsの伝送速度が必要になります(4k放送ではその4倍、8k放送では16倍になります)。
- 圧縮方式:MPEG-2TS(Transport Stream)
これでは、データ量が多すぎるので、圧縮する必要があります。放送を対象にした圧縮技術にMPEG-2がありますが、それをデジタル放送に発展したのがMPEG-2TSです。複数の映像データを一本のストリームに多重化する技術などが加えられています。その結果1/50程度に圧縮できます。
- 圧縮後の伝送速度
圧縮後の地上波放送では15~17Mbps、BS放送では24Mbps程度になります。
関連事項
B-CASカード
B-CASカードは、DRM(Digital Rights Management:デジタル著作権管理)の一つで、テレビ受信でのCAS(Conditional Access System:限定受信機能)機能をもったICカードです。
テレビ受信機にこのカードを挿入しないと受信できません。カードごとに固有のID番号、暗号鍵、受信契約情報などが格納されており、契約以外の不正受信や不正コピーなどができないようになっています。
4k8k放送では、B-CASカードはACASチップになりました。
携帯電話での同様なカードにSIMカードがあります。
ダビング10
放送コンテンツには著作権があり、勝手にDVDなどにコピーすることはできません。また、個人使用のための録画は認められているのに、保管のために録画媒体を変更するにはコピーが必要です。このようなジレンマを解決することを目的とした制度です。
(コピー(複写):コピー先、コピー元両方に残る。ムーブ(移動):コピー元の記録が消去される。ダビング:ここではコピーとムーブの総称。)
- テレビに付属している録画機器からDVDなどに9回まではコピーできますが、10回目のコピーをしようとすると、コピーはできるのですが、元の録画が失われます(ムーブになります)。
- コピーした媒体から他の媒体に孫コピーすることはできません。
- テレビ付属の録画機器以外のDVDなどに直接録画すると、それからのコピーは孫コピーになるので許されません。
この制度は有料放送には適用されません。有料放送ではコピーワンス制度になります。
- 録画はテレビ付属の録画機器でもそれ以外のDVDなどに直接録画もできます。
- 録画媒体から他の媒体にコピーしようとするとムーブになり、元の録画が消去されます。