Webマーケティング
EC、特にBtoCにおいては、自社Webサイトにアクセスしてもらい、販売など目的のページまで到達して、発注してもらうことが重要です。その対策をWebマーケティングといいます。
Webだけでなく、テレビ、新聞、雑誌などのメディア全般を介したマーケティングをメディアマーケティングといいます。まら、これらを組み合わせて消費者に多角的アプローチをすることをクロスメディアマーケティングといいます。
サブスクリプション
近年、Webマーケティングの分野でサブスクリプションが注目されています。
サブスクリプションとは、もともと「定期購読」という意味で、消費者が製品やサービスごとにお金を支払うのではなく、それを一定期間利用できる「権利」に対してお金を支払うビジネスモデルです。
支払の面では、月額定額制と同じですが、サブスクリプションでは、無料お試し期間の設定、サービスの内容によるいくつかの料金プランの設定、休止期間の可能化など、顧客の必要性や顧客満足度に注目したモデルだとされています。
ネット系のビジネスでは以前から普及が進んでいました。従来は購入してPCにインストールしていたアプリをクラウドでサービスし、小規模利用は無料にして利用者を増大し、利用度の増大に伴い、使用頻度、保管容量、オプション機能などに応じた料金を課金します。また、電子書籍や音楽、映画なども、個々のコンテンツではなく、会費によって上限を設定した定額制サービスなどです。
近年では、家電や洋服などモノの分野でも普及してきました。定額制で必要なときにいろいろな商品を試用することができ、気に入ったら購入することもできます。
これらのサービスは、近年のネットワーク利用技術の発展や、ネットワークを活用した企業間連携の普及などにより、急速に拡大してきました。
チャーンレート(Churn Rate)
顧客離脱率や退会率ともいいます。全てのユーザのうち、解約したユーザーの割合を示す指標です。
通常のメールマガジンやSNSでも、この推移に注目する必要がありますが、特にサブスクリプションでは、退会だけでなく、低いサービスレベルへの移行なども把握して、新サービスの提供を迅速に行うことが重要になります。
Webページ訪問者数の増大手段
自社サイトでの誘致手段
電子メールやSNSなどの活用
電子メールやSNSなど、企業と消費者間の双方向コミュニケーション環境を活用して、自社サイトへ誘致する手段に関しては、別章「電子メール・Webページの双方向化」を参照してください。
自社サイト内での広告
主に、販売サイトが自ら、閲覧者の履歴などを分析してサイト内で購入促進するための広告です。電子メールで紹介してサイト閲覧を促すこともあります。
- レコメンデーション(Recommendation)
- いわゆる「おすすめリスト」。個人がアクセスしたWebページの閲覧履歴や商品の購入履歴を分析し,関心のありそうな情報を表示して別商品の購入を促す広告
- フラッシュマーケティング(Flash Marketing)
- 数日程度の短期間限定(それでフラッシュという)で、インターネット販売に割引価格や特典をつける手法。単に販売促進のためだけでなく、自サイトへのアクセスの増加が見込まれる。また、twitter、mixi、facebookなどのSNSと連携して共同で割引クーポンを提供するサイトも増加している。
エンゲージメント率
Webマーケティングでは、販売サイトだけでなく、SNSなども利用した多様な情報発信をしています。それらに対応して、共感アクション機能として設置されている「いいね」「シェア」「リツイート」を調べることにより、消費者の興味関心度を知ることができます。
それを数値化したものをエンゲージメント率といいます。
精度の良いエンゲージメント率を得るために、あえて直接には広告とは無関係の情報発信をすることもあります。
自社以外のWebページでの広告
検索エンジンから自社サイトへの訪問者を増やすマーケティング手法をSEM(Search Engine Marketing)といいます。これには、以下の検索連動型広告やSEOなどがあります。
広告の形態による区分
- バナー(Banner)広告
- 他人のWebページに画像広告を表示してもらう。それだけで広告になるだけでなく、クリックすると自社ページへジャンプする。
クリック率=クリックによる到達回数/広告掲載ページの表示回数
- オーバーレイ広告
-
- バナー広告と似ているが、Webページのコンテンツに重なるようにして表示される広告である。広告によりコンテンツの一部が見えなくなり閲覧の邪魔になるため、広告画面の一部に縮小・消去などのボタンを配置している。
- ポップアップ(PopUp)広告
- ポップアップウインドウとは、閲覧者がクリックをしたとき、あるいはブラウザを表示したとき自動的に表示される小さなウインドウで、それを利用した広告。セキュリティの観点から、多くのブラウザは、自動ポップアップは表示しないように標準設定している。
- 検索連動型広告(検索エンジン広告)
- 検索エンジンの検索結果画面の検索本文上部や(通常は)右側に表示される広告。
検索エンジン側が、広告主にターゲットとなるキーワードのリストと各キーワードの単価を提示し、広告主は特定のキーワードを契約する。閲覧者がそのキーワードで検索したとき、広告主の広告が表示される。そして、閲覧者がその広告をクリックした回数により、単価×回数の広告代金が支払われる。
クリック回数で支払金額が異なることから、PPC(Pay Per Click)広告ともいう。また、キーワードのリストで契約することから、キーワード広告あるいはリスティング広告ともいう。
アドワーズ(Adwords)、オーバーチュア(Overture)などが有名である。
- コンテンツターゲティング(Content Targeting)広告
- 広告代理店が一般のWebサイト経営者に広告スペースを借りておき、Webページに関係の深い広告を掲げる。例えば、アドセンス(Adsense)は、Googleのアドワーズ広告を一般のWebサイトに掲示したものだといえる。なお、検索エンジン広告をこれに含むこともある。
- 位置情報連動型広告
- ロケーションベース広告、エリアターゲティング広告ともいう。
スマートフォンの位置情報を利用して,周辺の店舗などから利用者に対して,リアルタイムに近傍店舗の紹介やクーポンの提供などを行う。
広告料による区分
- アフィリエイト(Affiliate)広告
- 成果報酬型広告。ECサイトが販売する商品を自分のWebページで紹介し,それを見た人がECサイトで商品を購入した場合、購入額に応じた報酬をECサイトから受け取る仕組みである。
- インプレッション保証型広告
- 広告の表示回数が契約回数に達成するまで掲載を続ける
- クリック保証型広告
- 広告のクリック回数が契約回数に達成するまで掲載を続ける
SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)
販売サイトでは、多くの場合は検索エンジンや他のWebページからのリンクによって、(たまたま)そのページに到達するのです。検索エンジンの上位に表示されるための工夫SEOといいます。
参照:SEO
目的達成率向上の手段
販売サイトに到着した来店者が実際に発注するまでのプロセスを改善する方法を列挙します。
- コンバージョン(conversion:CV)
- Webサイトにおける目標の達成のこと。販売サイトならば購買成約のことです。
- コンバージョン率=コンバージョン数(購買者数)/サイト訪問者数
- CPA(Cost Per Action/Cost Per Acquisition)=広告費用/コンバージョン数
- ROAS(Return On Advertising Spend)=コンバージョンによる売上高/広告費用
- リテンション率(Retention rate:CV)
一定期間後に再訪した新規ユーザーの割合。=継続顧客数÷新規顧客数
「新規顧客開拓コストは既存顧客の維持に比べて5倍のコストがかかる」という「1;5の法則」があります。リテンション率の向上によりコスト削減だけでなく、収益の安定が図れます。リテンション率の向上には、顧客体験の満足度すなわち、Webサイトの工夫が大きく影響します。-
アクセスログ解析
Webページを閲覧するには、閲覧者がWebサーバにHTTPコマンドで情報を送ります。その情報には、アクセス元(注)のIPアドレスとドメイン名、アクセス日時、そのページに滞在した時間、直前のWebページURL、閲覧者パソコンのOS名とブラウザ名などが含まれています。
そのアクセスログはWebサーバで記録することができます。それを用いて、自社サイトへの訪問者が、「どこから訪れたか」「自社サイトのページをどのように移行したか」などを調べることをアクセスログ分析といいます。アクセスログ解析用のソフトもありますし、Webサーバ運営を外注している場合、解析サービスも提供されることが通常です。
(注)アクセス元は必ずしも閲覧者ではありません。プロバイダのサーバを通してアクセスされたときは、そのサーバがアクセス元となるのが通常です。個人を特定するために、クッキーを用いることもできますが、個人情報保護の観点から、クッキーの利用を警戒する閲覧者もいます。
アクセス解析ソフト
- アクセスログ型
- アクセスログ型は、上述のアクセスログを解析対象とします。単純ですが、Webサーバとブラウザの間にプロキシーサーバがある場合、ブラウザにキャッシュがある場合などは、再度同一ページをアクセスしても、プロキシーサーバやキャッシュからページが参照されるので、アクセスログはとられません。このように、アクセスログ型では精緻な解析はできません。
- Webビーコン型
- Webページにある仕組みを組み込んでおり、そのページが閲覧されるだびに情報を入手する方法です。その仕組みは多様ですが、例えばWebページに、閲覧者に気付かれないような小さな画像を埋め込んでおきます。その画像が表示されたときに、上述のHTTP情報を、HTMLメールによりサーバ側に送ります。
- パケットキャプチャ型
- 管理しているネットワークに流れているパケットを拾い、Webアクセスのものを取り込みます。負荷分散のために複数のサーバを利用している場合、それらをまとめて管理するのに適しています。
サイト内行動の分析と工夫
サイト内巡回解析
せっかく自社Webサイトへの訪問があっても、自社の目的(受注など)が達成できなければサイト運営の効果がありません。最終的成果を得る割合をコンバージョン(Conversion)率といいます。コンバージョン率を決定する要素に、直帰率と離脱率があります。
- 直帰率(Exit Rate)
Webサイトに来たが、他のページに移動せず、他サイトへ去ってしまった割合。
本サイトが目的のサイトでなかったのが原因
- 離脱率(Abandonment Rate)
いくつかのページを巡回したが、最終成果にまで至ることなくサイトを退出してしまった割合
次の理由が考えられる。
・ナビゲーションが不適切なため、閲覧者が目的のページに達成できなかった。
・目的のページに到達するまでに興味を失った。
・目的のページに到達したが、品揃え、価格、信用度などの理由により購買しなかった。
アクセスログを解析して閲覧者の心理状態を把握して、Webページの体裁やコンテンツを改善することが大切です。
ABテスト(A/B分析)
「AとBの比較分析」ですが、主にWebページ改善を対象にした分析方法です。
現行のページ(A)と、それに変更を加えたページ(B)を用意して、ユーザがAとBでどのような行動をするかを統計的に検証します。
それにより、
・ユーザビリティの観点から優れている要因は何か
・Webサイト内での巡回に差が生じる要因は何か
・広告の場合、どちらの広告がヒット率が高いか
などを調べ、より効果的なWebページにするためのプロセスです。
LPO(Landing Page Optimization、ランディングページ最適化)
ランディングページとは、サイト訪問者が最初に訪れるページです。コンバージョン率を高めるためにランディングページの体裁やコンテンツを工夫する方法です。
アクセスログ解析などにより、このページに到達した経路を調べ、そのページの性格や検索に用いたキーワードなどから分析します。それにより、ランディングページにあるキーワードが適切かどうかを検討します。SEOの技術が適用できます。
サイト内巡回解析により、コンバージョン率を高めるナビゲーションの見直しをします。
- 比較テスト:複数のランディングページを用意し実装することにより、どのページが効果があったかを測定します。
- 要因分析テスト:複数のランディングページに、デザインやナビゲーションの特徴となるいくつかのキー要素を配置しておき、コンバージョン率向上に効果のある組合せを探します。
- 全体テスト:ランディングページと他のページをセットしたケースを複数個用意してサイト内巡回解析を行い最適化を図ります。