従来の電子メールは、発信者から受信者への一方的な送受信、Webページは作成者が決まっており他者は閲覧するだけの一方的な開示でした。それが次第にグループ内で双方的に投稿・閲覧できるようになり、現在ではブログやSNSがむしろ主流になってきました。ここでは、その技術的な基礎事項を理解するのが目的です。
CGM、メーリングリスト、BSS(電子掲示板)、NNTP、フィード、RSS、ブログ、SNS、口コミサイト
広義には、個人や組織の結びつきを意味する用語ですが、IT分野では、インターネットを利用した双方向コミュニケーションの形態を指します。SNSと同義語とされることもありますが、後述の双方向電子メールや双方向Webページも含む総称として使われることもあります。
CGMとは、消費者がインターネットでデジタルコンテンツ(UGC:User Generated Content)を制作し発表するメディアです。
CGMの定義はあいまい(人により異なる)です。Consumerを「個人」と解釈すれば、
個人が制作したディジタルコンテンツの閲覧者・視聴者への配信や利用者同士の共有を可能とするものであり、一般のブログ、SNS、動画共有サイトなども含みます。
マルチメディアのコンテンツを対象にして、コンテンツ制作支援ツールをもつものに限定して使うこともあります。
Consumerを企業に対する「消費者」と解釈すれば、個人が,自らが使用した商品などの評価に関する情報を,不特定多数に向けて発信する、プログやSNS、口コミサイトなどのWebサイトを指します。また、以下の企業と消費者、消費者間の双方向意見交換の総称として使うこともあります。
メールマガジンは「一方向のコミュニケーション」です。ここのテーマではありませんが、次のメーリングリストとの対比として掲げます。
メールマガジンとは、「店舗が顧客に」、「趣味の会の幹事が会員に」など、多数の読者に継続的に一斉配信をするものです。店舗や幹事など発信者と顧客や会員などの読者が明確に分かれており、発信者が一方的に読者に電子メールを送り付けるだけで、読者からの発信はできない一方向のコミュニケーションです。
多数の読者に同じメールを配信する仕組みは、アドレス帳のグループ指定による一斉配信がありますが、読者数が多いと、効率的ではありませんし、アドレス帳の管理も面倒です。
メールマガジン配信システムが開発されており、自営のサーバで運営することもできますし、そのサービスを有料・無料で提供する事業者があります(「まぐまぐ」など)。
メーリングリスト(Mailing List)とは、複数の人(グループ全員)に同じメールを双方向で配信する仕組みです。
メールマガジンとは異なり、誰もが読者全員に電子メールを送ることができる「双方向コミュニケーション」です。GoogleやFacebookなど多くのポータルサイトがメーリングリストの無料サービスをしていますし、多くのインターネットプロバイダが加入者に無料サービスをしています。店舗や幹事はそれらに自分たちのメーリングリストを登録して、それの運営者(主催者)になります。それをここでは「メーリングポスト」と呼ぶことにします。
メーリングポストは、電子メールのアドレスが与えられています。読者(発信者)が他の読者全員に同報メールを送るとき、相手のメールアドレスを知る必要はありません。メーリングポストに1通のメールを送れば、ポストが全員に転送する仕組みになっています。
すなわち、個々のメールでは、送信者・受信者とメールポストの間では、(一斉通信ではない)1:1の関係になります。そのため、メールには cc などのような他会員の情報は入っていません。
メーリングリストの創設、入会・脱退(リストの追加・削除)などの管理が容易なことなどから、広い目的に用いられています。
個人的な利用では、趣味の会、同窓会など限定したグループが盛んです。
企業内では、プロジェクトチームなど臨時的なグループでの情報共有に使われます。
BtoCでは、新商品の紹介や購入者の感想など、店舗と消費者をつなぐ手段として利用されます。
メーリングリストが電子メールの双方向化であるのに対して、BBS(Bulletin Board System、電子掲示板)とは、Webページの双方性化といえるようなものです。
通常のWebページは、そのサイトの所有者だけが投稿し、他の人は閲覧するだけの一方的なものです。それに対してBBSでは、閲覧者がそのページについて投稿すると、Webサーバのデータベースに蓄積され、Webページに投稿した内容も表示される仕組みになっています。
その表示方法は、単に時系列的に表示するものと、特定の話題(どの投稿への発言か)ごとにツリー状に表示するものがあります。
個人のWebページにBSS機能をつけただけのもの、企業内に限定したものなど小規模BSSから、「2ちゃんねる」のような大規模BBSまで、多様なBBSが存在します。
インターネット上で記事の投稿や配信、閲覧などを行うためのプロトコルです。
現在では、同様な機能を持つメーリングリストやSNSなどに移行してしまいました。
Webサイトやブログなどの、更新情報の日付やタイトル、内容要約などを配信するための技術、あるいは、配信情報の記述形式のことです。
発信者としては「更新のお知らせ」を広く知らせる手段になりますし、閲覧者としては関心のあるサイトの最新情報を簡単に得る手段になります。
このサービスをしているWebページには、のフィードアイコンが表示されています。
要約情報発信の代表的なプロトコルにRSSとAtomがあります。フィードはその総称です。
以下、知名度が高いRSSを例にしますが、Atomもほぼ同様です。
単純にいえば、ブログ(blog:「web log」の略)とは、簡易に作成でき閲覧者から投稿できるWebサイトです。ブログの作成者(管理者)をブロガーといいます。
ブログは、Webページに比較して、作成・管理が容易です。ポータルサイトやインターネットプロバイダの多くがブログのサービスをしています。
SNSとは、会員制のブログのことです。ブログの機能はSNSでも備えていますし、ブログでも閲覧者や投稿者を制限できるので、両者の違いは不明確です。一般にSNSは閉鎖性(会員になる手続きが必要)が高いもの、あるいは大規模なものが多いようです。
大規模SNS(億単位の利用者)には、次のような運営者者があり、それぞれ特徴があります。
2021年5月の国内MAU(月間アクティブユーザ数)は、LINEは86(百万人)で、Twitter(45)、Instagram(33)を大きく超えています。
LINEは、インターネット回線に接続したLINEの該当機能をもつアプリをインストールした機器(スマートフォンやパソコンなど)の間で、多様なサービスを行うアプリケーションです。
インスタントメッセンジャーIDとして、電話番号を利用しており、新規登録・ログイン時に、SNS認証で電話番号が確認されます。
交信する相手先の電話帳を「友だち」リストといいます。利用開始時にそれを読込み、「友だち」と交信することになります。
LINEによる電話は、通常の電話回線ではなくインターネット回線を用います。そのため、通常の電話料金は発生しません。しかし、データ通信量(ギガ)が発生するので、それに制限がある場合は、その超過料金が発生することがあります。それも避けるには、宅内はWi-Fiでルータと接続し、ルータ間はパソコンでのインターネットの(使い放題の)契約の回線を用いることができます。
いづれにせよ、送信側と着信側のスマートフォンがLINEでのプロトコルを用いたネットワークを形成する必要があります。そのため、送信側と着信側のスマートフォンにLINEアプリをインストールして、互いに相手を「友だち」として登録していることが必要です。スマートフォンの機種や加入キャリアは問いません。
1対1の対話でなく、グループでの対話も可能ですし、ビデオ通話も可能です。これにり観点なオンライン会議を行うことができます。
LINE Out
LINEが提供しているIP電話機能です。着信側がLINEを使っていない、友だち登録をしていないスマートフォン、固定電話、国際電話などができます。発信して会話をすることはできますが、先方からの通常の電話にLINE Outで受けることはできません。
IP電話ですから、無料での通話はできませんが、通常の電話よりも格安になります。制限内である場合は無料になる契約もあります。
モバイルメッセンジャーアプリケーション、いわゆるメールやチャットのことです。
通常のメールと異なり、次のような特徴をもっています。
このような環境から、LINEは日本のモバイル通信インフラだとみなされるようになり、国や地方公共団体の民間向けサービスの多くがLINEを用いるようになりました。
ここでは次の3文書を総称して「SNS規程」ということにします。
社外対象 ソーシャルメディアポリシー → コミュニティガイドライン
↓ 社内対応 より具体化
社内対象 ソーシャルメディアガイドライン
自社が運営するSNSに関して、基本的なスタンスや考え方を利用者および社内に表明するものです。具体的な事項は、ソーシャルメディアガイドライン、コミュニティガイドラインで扱い、ここでは基本方針だけに絞ります。
自社が運営するソーシャルメディアやオンラインコミュニティの利用者を対象に、利用条件、免責、削除方針、禁止事項、調停などの規約を厳格で具体的な表現で明示するものです。主に、利用者の行動に対する運営者の対応に関するトラブルを未然に防ぐことが目的になります。
運営者が利用者に「推奨する行動」と「禁止する行動」を記載し、利用規約と同様に、このガイドラインの内容を確認・同意した上での利用を求めるものです。次の分野に関して具体的に列挙します。
ソーシャルメディアの運営や利用に関して、社内を対象に作成する、行動指針と禁止規則、トラブル発生時の対処方法について、詳細な内容を示したものです。
大きく3つの観点が求められます。
国はSNSやスマートフォンなどの健全な利用に関する教育を重視しており、学校等でのソーシャルメディアガイドラインの普及促進をしています。その中で「ガイドラインの中で忘れずに伝えたいこと」として、次の10項目を挙げています。
口コミサイトとは、形式はSNSに似たものですが、商品や企業に関する話題が主になっているものです。消費者が立ち上げたサイトもありますし、企業が立ち上げたものもあります。後者では、消費者の生の声を聴く手段とするために、不利な発言も歓迎し、企業側の主張は抑えるために企業社員も個人メンバの一員として発言していることが多いようです。
個人の生活(life)をデジタルデータで記録する(log)ことです。Web訪問先やアクセス記録、電子商取引の決済履歴、移動場所や移動距離、健康管理や備忘録、ダイエットなど、自己管理など個人の多様な情報を蓄積する機能です。
ライフログサービスの多くは、インターネット上のサイトに接続し、過去のデータを簡単に閲覧でき、それらを、グラフ化したり頻度を抽出したりする加工もできます。
このような自分情報の整理だけでなく、ユーザ同士が情報共有するSNSとしての利用もできます。共通のテーマをもつユーザ同士が、興味を持ったWebサイトのURLを共有したり、ダイエットに興味を持つ同士が各人のデータを公開して、互いに励まし合うような利用です。反面、プライバシー情報が流出する危険性もあります。
複数のユーザーがリアルタイムにメッセージを送信するためのシステムです。チャットサーバに接続すると、参加者が入力したテキストのメッセージがリアルタイムにすべての参加者に送信される仕組みになっています。
電子メールやメッセンジャーは、相手の接続状態に関係なく、メッセージを送るが、チャットでは相手が接続状態でチャットに参加している相手だけに送信されます。
近年は、SNSにチャット機能がついており、SNS経由でチャットを行うのが通常になってきました。
チャットが人間同士の会話なのに対して、チャットボット(=チャット*ロボット)は、人工知能を活用した「自動会話プログラム」の相手とのチャットです。
急速な人工知能の発展と自然言語処理技術により、単に会話をするだけでなく、高度な質問に回答したり、予約の代行をするなど、教師や秘書のように振る舞うことができます。
ユーザがWeb上の入力エリアに問合せを入力すると、システムが会話形式で自動的に問合せに応じる仕組みが構築できます。これに音声認識機能を加えれば、コールセンター業務の自動化につながると期待されています。