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現価・終価・年価(採算計算の数学的基礎)

学習のポイント

設備投資の採算計算での基礎である現価・終価・年価の換算を中心に,数学的な基礎知識を学習します。

キーワード

現価,終価,年価,現価係数,終価係数,資本回収係数,年金現価係数

参照:JavaScriptの計算プログラム


現価Pと終価Sの関係

現時点でP(100万円)を年利i(10%=0.1)で預金すると,1年後には100×1.1=110万円,2年後には110×1.1=121万円になり,n年後にはS=100×1.1万円になります。Pを現価(現在価値),Sを終価とすると,PとSの間には次の公式が成立します。
   S=P×(1+i)
ここで,(1+i)終価係数といい,[P→S]と表します。

逆に,1年後に100万円にするには現時点で100/1.1=90.9万円を預金する必要があり,2年後に100万円にするには100/1.1=82.6万円を預金することになります。このように,金利iでn年後に終価Sを得るために現時点で預金するべき現価Pは,次の公式で求められます。
   P=S/(1+i)=S×(1+i)-n
ここで,(1+i)-n現価係数といい,[S→P]と表します。

について

指数について復習しておきましょう。

現価Pと年価Mの関係

問題
年利i(10%=0.1)で預金して,毎年末にM(100万円)を3年間受け取るためには,現時点でいくら(現価P)を預金する必要がありますか。
解答
1年後に100万円を得るには,現時点で100/1.1=90.9万円の預金が必要です。2年後の100万円のためには100/1.1=82.6万円,3年後の100万円のためには,100/1.1=75.1万円が必要ですから,P=90.9+82.6+75.1=248.7万円となります。

このように毎年末に受け取る金額が一定のものを年価といいます。現価Pと年価Mとの関係をP=M×[M→P]と表現したとき,この[M→P]を年金現価係数といいます。その年金現価係数を求める公式は次のようにして得られます。

上の問題と解答から,PとMの関係を式で書くと,
   P=M/(1+i)+M/(1+i)+M/(1+i)+・・・+M/(1+i)  ①
となります。ここで,
   r=1/(1+i)
すなわち とすると,
   P/M=r+r+r+・・・+r
  ∴P/M=r{1+r+r+・・・+rn-1
となりますが,後述の等比級数の和の公式から,{   }は(1-r)/(1-r)となるので
   P/M={r/(1-r)}×(1-r
になり,さらにr=1/(1+i) からr/(1-r)=1/i,r=(1+i)-n ですから,
   P/M={1-(1+i)-n}/i
が得られます。

また,PからMを求める[P→M]を資本回収係数といいますが,資本回収係数は年金現価係数の逆数ですから,次の式で求められます。
   M/P=i/{1-(1+i)-n

計算例

 上の問題を公式を用いて計算してみます。i=0.1のときは,(1+i)-n=1.1-3=1/1.1=1/1.331=0.751ですから,それらとn=3を⑤に代入すると,
   [M→P]={1-(1+i)-n}/i
        ={1-0.751}/0.1=2.487
となります。
 従って求める現価Pは,
   P=M×[M→P]
    =100×2.487=248.7万円
となり,上の結果と一致します。

等比級数の和について

  A=1+r+r+・・・+rn-1    ①
を初期値1,公比rの等比級数の和といいます(n個の和)。
 ここでr=1のときは,A=1+1+・・・+1=n
となります。  ①の両辺をr倍すると,    rA=r+r+・・・+r   ②
となり,②-①から
   (1-r)A=1-r
となりますが,r≠1のときは両辺を(1-r)で割ると,
   A=(1-r)/(1-r)
となります。

以上をまとめると,次のようになります。
   A=1+r+r+・・・+rn-1
    r=1のとき   =n
    r≠1のとき   =(1-r)/(1-r)

なお,特に|r|<1のときは,r は非常に小さい値になるので,n→∞のときはr→0になります。ですから,無限級数の和A=1/(1-r)となります。

換算公式のまとめ

   終価係数  [P→S]=(1+i)
   現価係数  [S→P]=(1+i)-n
   年金現価係数[M→P]={1-(1+i)-n}/i
   資本回収係数[P→M]=i/{1-(1+i)-n

換算係数の数表や計算ツール

終価係数,現価係数,資本回収係数,年金現価係数などは,上の公式により計算できますが, or-dcf-programに計算プログラムがありますので,それを用いると便利です。なお,年利10%のときの各種係数の数表を下表に掲げます。

年利10%
  年  終価係数  現価係数  資本回収係数  年金現価係数
  n  [P→S] [S→P]  [P→M]   [M→P]
   1   1.1000   0.9091    1.1000     0.9091
   2   1.2100   0.8265    0.5762     1.7355
   3   1.3310   0.7513    0.4021     2.4869
   4   1.4610   0.6830    0.3155     3.1699
   5   1.6105   0.6209    0.2638     3.7908

   6   1.7716   0.5645    0.2296     4.3553
   7   1.9487   0.5132    0.2054     4.8684
   8   2.1436   0.4665    0.1874     5.3349
   9   2.3580   0.4241    0.1736     5.7590
  10   2.5837   0.3855    0.1628     6.1146

  15   4.1773   0.2394    0.1315     7.6061
  20   6.7275   0.1486    0.1175     8.5136
  25  10.8347   0.0923    0.1102     9.0770
  30  17.4494   0.0573    0.1061     9.4269
  ∞   ∞     0.0000    0.1000     10.0000


理解度チェック

第1問

  1. 100万円を年利10%で5年間預金するといくらになるか。
    上の表で,5年の終価係数は1.6105であるから,100×1.6105=161万円
  2. 年利10%で5年間毎年末に100万円ずつ得るには,いくら預金しておけばよいか。
    上の表で,5年の年金現価係数は3.7908であるから,100×3.7908=379万円
  3. 年利が10%より高いとき,5年の終価係数は1.6105より大になるか小になるか。
    大になる。金利の高い銀行に預けるほうが残高が大きくなることを考えよ。
  4. 年利が10%より高いとき,5年の資本回収係数は0.2638より大になるか小になるか。
    大になる。年利=0のときは,資本回収係数は「1/年数」になり5年では0.2になることは明らか。これは0.2638より小さい。逆に年利が資本回収係数は大になる。
  5. 年利=20%のときの5年の資本回収係数はいくつになるか。
    公式i/{1-(1+i)-n}にn=5,i=0.2(1.2-5=0.402)を代入すると,0.2/{1-0.598}=0.334。

計算プログラム