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ロボット

ここでは、ロボットの種類や利用分野など、表面的な事項を対象とします。ロボットを構成するセンサやアクチュエータや制御システムなどに関しては、「組込みソフトウェアの特徴」、AI(人工知能)に関しては、「機械学習」を参照してください。また、ロボットはIoTの典型的な分野ですが、それに関しては、「IoT」を参照してください。

キーワード

ロボット、産業用ロボット、マニピュレーションロボット、協働ロボット、物流用ロボット、自動走行ロボット、介護ロボット、ロボットスーツ、コミュニケーションロボット、ヒューマノイドロボット


ロボットの定義

人の代わりに作業してくれる機械・装置のことですが、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、ロボットとは「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。

ロボットに関する技術を研究する学問をロボット工学(robotics)といいますが、その構成は、
  ・外界の情報を認識・知覚するためのセンサやセンシング手法に関する分野
  ・ロボットの手足などを構成するためのアクチュエータや機構に関する分野
  ・ロボットの運動や行動ロボットの制御に関する分野
  ・ロボットの知能など人工知能に関する分野
などに大別されます。

このような定義に従う機器や装置は急速に増大しています。自動運転機能が十分に実現すれば自動車もロボットといえるし、既にAI機能を取り込んだ自動販売機や炊飯器もあります。それまでロボットとすると際限がありません。ここでは「巷でロボットといっているものがロボットだ」という無責任な定義にします。

ロボットの種類

ロボット技術は急速に進むし、適用分野も急速に拡大しているので、ロボットの体系的分類には多様な切り口があります。

動作制御による区分

第2世代までは,ほとんどが産業用ロボットでした。第3世代になると、介助用や家庭用にまで広い分野でも利用されるようになり,人間の形をしたロボット(ヒューマノイド型2足歩行ロボット)も出現してきました。

用途による区分

   ロボット
      産業用ロボット
      業務用ロボット
         物流用ロボット
         医療用ロボット
         ロボットスーツ
              :
      コミュニケーションロボット
      家庭用ロボット
         掃除用ロボット
         愛玩用ロボット
            :         

産業用ロボット

自動車産業や電気電子産業など工場で、部品取出、組立て、溶接などの工程で稼働しているロボットです。多様なロボットが並び、FA(ファクトリーオートメーション)を実現します。ロボットのうち、最も使われている分野です(運搬用ロボットが急速に増加していますが、ここでは業務用ロボットに分類しておきます)。

ロボットの動作は人間の手に似ています。腕や指を、それをつなぐ関節をといいます。産業用ロボットは、位置決めの制御が重要ですので、軸がいくつあるか、各軸がどのような動きをするかで区分されます。

種類軸数主な作業特徴
直交座標型ロボット2-4部品、組立 水平と垂直の直線の動き動き。最も単純な動作
多関節ロボット4-7汎用 上図のように多様な動作。多様な作業に適用でき最も使われている
スカラロボット2-4部品、組立 水平回転動作と垂直直線動作。位置決めが重要な作業に適する
双腕型ロボット2-4部品、組立、検査 人間の両手のような動き。片手では難しい動作ができる
パラレルロボット4-7部品、仕分 同じ動きをする複数の腕。摘まみ上げて移動する作業
         
マニピュレーションロボット
         
マニピュレートとは、手で操作するという意味です。産業用ロボットは軸とアームで操作することが基本ですから、制御が単純な産業用ロボットをマニピュレーションロボットということもあります。マジックハンドもマニピュレータです。
         
協働ロボット
ロボットの使い方による区分です。流れ作業での生産工程で、部品の取出しや組立てはロボット、人手で検査、梱包や搬出はロボットというように、人の近くで作業をするロボットのことです。
近接作業のため、人とロボットの間に安全柵がないので、協働ロボットには人を感知し、接触しそうになると止まるなど、人を事故にあわせない機能が重要です。
         

物流用ロボット

部品の取出し、工場内移送、梱包、仕分、配送などの作業を行うロボットです。工場や物流倉庫では既に広く利用されていますが、病院やオフィスなどでの利用も進んでました。

ピックアップロボット
自動化された倉庫でどの部品がどの棚にあるかがデータベース化されています。必要部品リストにより、ピックアップロボットは棚を回り部品を取り出します。倉庫の構造にもよりますが、立体になっているときは、ロボットは棚の梁や柱に沿って左右上下に移動する動きをします。
自動走行ロボット
ピックアップした部品を集荷場所に運搬するには、ピックアップロボットで運搬したり、ベルトコンベアを用いることもありますが、倉庫内で自由に動き回る自動走行ロボットを用いることもあります。
工場や倉庫など決まったコースがあり、その走路には障害物がない場合は、走路にセンサを設置すれば比較的容易に走行できますが、病院やオフィスなどコースもまちまちで障害物もあれば人が歩いている場合もあります。そのときはロボットに障害物や人を認識してよけるためのセンサやAIシステムが必要になります。
仕分けロボット
部品や配送物がベルトコンベアを流れているとき、それらについているバーコードやICチップから行先を認識して、分岐器を切替たり、別のコンベアに移し替えるロボットです。
梱包ロボット
ビール工場などでは、ビール缶を段ボールに梱包しますが、この場合は比較的単純な設備で実現できます。それに対して、個々の注文により配送する場合には、多様な商品をコンパクトに梱包するために、高度な能力・機能を持つロボットが必要になります。

医療用ロボット

手術ロボット
手術を補助する機械装置で、医師がカメラの映像を見ながらリモートコントロールする。マニピュレーターの一種です。
患者ロボット
フライトシミュレータのような訓練用シミュレータですが、単なる練習用実験台だけではなく、治療の技術に応じた反応をすることにより、実務に近い訓練ができます。
介護ロボット
介護人の作業を支援するロボットです。その多くは、装着しているロボットのアームや軸で、患者を動かすときの労力を少なくするものです。
このような利用は重量物を扱う作業全般にわたります。それをロボットスーツといいます。

コミュニケーションロボット、ヒューマノイドロボット

コミュニケーションロボットとは、人との対話を目的としたロボットです。オフィスやイベント会場の受付や案内から家庭での愛玩ロボットやスマートスピーカなども含みます。
 ヒューマノイドロボット(Humanoid Robot)とは、人型ロボットのことですが、もっと広く二足歩行や車輪移動により、足場の悪い場所を移動するようなロボットまで含むこともあります。

受付ロボットや案内ロボットは、表情、身振り、音声などをできるだけ人間に合わせることが望まれます。人との会話による癒し効果を目的とした癒し系ロボットでは、かわいさを出すためにあれてデフォルメしたり動物の姿にすることもあります。

これらに共通した技術はAIです。音声認識や自然言語理解の技術だけでなく、人間の言葉は論理性や完全性に欠けますので、状況の把握や相手の特徴の理解など、学習機能が強化されている必要もあります。さらには、スマートスピーカのように情報検索をして適切な回答をするといった機能も求められます。

下図は「高齢者見守りシステム」でのコミュニケーションロボットの位置づけです。家庭内でのロボットをクラウド端末とすることにより、多様なサービスを実現する可能性があります。

(拡大図)