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財務諸表

キーワード

財務諸表、貸借対照表,損益計算書,キャッシュフロー計算書,決算時期,連結決算


財務諸表

会計、簿記、複式簿記

「会計」とは企業などの活動を数字で表し、社内外に示して活用するための方法論です。各社がばらばらな考え方や形式で報告するのではではなく、広く受入れらている標準に合致している必要があります。それには、基本的前提である「会計公準」と、それに立脚した具体的な行為規範である「一般原則」、それを財務諸表に適用した「損益計算書原則」や「貸借対照表原則」があります。
 「簿記」とは、財務活動を数字で表わすためのルールです。「物品を購入した」活動は「資産の増加」に仕訳して記録するというようなことです。
 なお、「物品を購入した」のは同時に「買掛金が増加した」が発生します。このように、一つの活動に対となる2つの記録をとる方式を「複式簿記金融商品取引法 税法等  会社法」といいます。そして、物品購入は貸借対照表での借方(資産の部)、買掛金増加は貸方(負債の部)にまとめるというように、借方と貸方に同じ金額が記録されます。それで、貸借対照表での資産合計と負債・資本合計が一致するのです。

財務諸表とは

企業の財政的な状態を公表することは重要です。その関係者は多様です。
 ・株主・投資家:この企業の株を取得すべきか売るべきかの指標になります。
 ・取引先・金融機関:取引や融資に当たり、支払や回収の信用度を確認できます。
 ・税務署:適切な課税をするための基礎になります。
 ・社会:この企業が健全な活動をしているかの指標になります。
 その公表する書類を財務諸表といいます。

関係者は、財務諸表を分析して、信用度や発展性を計量的に把握します(スコアリングシートといいます)。そのため、財務諸表は正確でなければならないのは当然です(金融商品取引法、会社法、税法等)。
 それだけでなく、誤解を招かないこと、他の企業との比較が容易なことなどが求められます。
 財務諸表では「売上高」とか「売上原価」などの勘定科目名があります。会社によりまちまちな名称を用いたり定義が異なっていると誤解を生じます。記載順序も同様です。法律での定めはありませんが、原則や慣行に従うことが必要です。

財務諸表関連用語

財務諸表と似たような用語に決算書や計算書類があります。
              財務諸表  決算書  計算書類
            金融商品取引法 税法等  会社法
   貸借対照表        ○    ○    ○
   損益計算書        ○    ○    ○
   株主資本等変動計算書   ○    ○    ○
   キャッシュフロー計算書  ○
   附属明細表        ○         ○
   勘定科目内訳明細書         ○
   営業報告書                  ○
   注記表                    ○

 なお、金融商品取引法では、決算時に内部統制報告書と有価証券報告書の提出が必要です。

報告の電子化

EDINET(Electronic Disclosure for Investors NETwork、開示用電子情報処理組織)

金融商品取引法で定められた電子情報開示システムです。提出会社の使用するコンピュータと内閣府・金融商品取引所(及び金融商品取引業協会)のコンピュータを結んだネットワークで、金融庁が所管しています。上場企業(一部の非上場企業を含む)は、金融庁への提出財務書類をEDINETにより提出することが義務付けられています。
 その目的は、デジタル化することによる書類作成の容易化、より標準化の徹底による正確性・透明性の向上などがあります。従来は、決算公告を各社のWebサイトに掲載していましたが、現在では多くの企業がEDINETのサイトに変更しています。

XBRL(eXtensible Business Reporting Language:拡張可能な事業報告言語)

貸借対照表や損益計算書などの財務諸表をXML文書として記述する言語です。EDINETでは、文書をXBRLで記述することになっています。
 財務諸表は、多くの分野で参照されます。電子文書化することでそれらの作成の効率化や比較・分析などの二次利用が容易になります。その効果をあげるには標準化が必要です。XBRLは、XBRLインターナショナル(XII)により策定され、JIS X 7206になっています。
 XBRLでは、XMLのタグに相当する勘定科目とその定義をしています。日本では &li;売上高> や &li;売上原価> のように金融庁が定めています。XBRLのひな形に合わせて作成すれば、事実上の標準化になります。

貸借対照表

貸借対照表は,決算時における資産や負債・資本を示すものです。単純にいえば,この時点で会社を整理したら,簿記上どれだけのお金が残るのかを示すものです。
貸借対照表ひな型 貸借対照表構造

資産=負債+資本

貸借対照表と仕訳は密接な関係があります。貸借対照表の左側項目(資産)の増加、右側項目(負債、資本)の減少は借方勘定、その反対は貸方勘定になります。
 例えば、得意先から売掛金を現金で受け取ったときは、
  現金(資産)の増加(左側の増加)→借方勘定
  売掛金(資産)の減少(左側の減少)→貸方勘定
となります。
 取引では、すべて貸方/借方がペアで発生するので、「資産合計」と「負債・資本合計」が一致するのです。

資産・純資産・資本

違いをよく理解する必要があります。
 ・資産:会社が現在所有する財産のことです。財産は会計用語ではありません。
 ・負債:支払義務があるものです。
 ・資本:資産-負債です。資産=負債+資本でもあります。貸借対照表はこの関係で成立します。
 ・純資産;資本と同義語です。資本金の関係では資本、実際の財産という意味では純資産というのでしょう。

流動・固定・繰延資産

流動とは短期(正常営業循環基準、通常は1年以内)のこと。流動資産とは1年以内で現金化できるもの、流動負債とは1年以内に返済する必要があるものです。1年以上のものは固定になります。
貸借対照表では、資産の部も負債の部も、流動性が大きい(短期)順に記載することになっています。それを流動性配列法といいます。

創立費や開発費などは、当初に支出したものが将来利益になって戻ってくる性格のものです。それを繰延資産といいます。 繰延資産は、各期間に対応してその費用を配分します。株式交付費、社債発行費、創立費、開業費、開発費の5項目に限定されています。

株主資本・自己資本

上の表にはありませんが、両者とも純資産(資本)の構成要素です。純資産は次の4つから構成されます。
 ・株主資本:資本金、資本剰余金、利益剰余金など
 ・その他の包括利益累計額:その他有価証券評価差額金、為替換算調整勘定など。いわゆる「含み損益」
 ・新株予約権
 ・非支配株主持分(連結財務諸表のみ)
そして、自己資本=株主資本+その他の包括利益累計額 の関係があります。

損益計算書

損益計算書は,先の決算から今回の決算までの期間(通常は1年間)での収入や支出を集計して,損益を明らかにするものです。
損益計算書ひな型 損益計算書構造

費用・原価・損失

費用とは広義には、利益を下げる要因の総称であり、原価、(狭義の)費用、損失に区分できます。
 ・原価:売上原価のように個々の商品に対応する費用です。
 ・(狭義の)費用:販売費、一般管理費、営業外費用のように、売上に個別対応できない費用です。
 ・損失:特別損失のように、売上に関係しない費用です。
損益計算書での費用とは、狭義の費用を指します。

収益・利益・粗利益・収入

これらも間違いやすい概念です。
 ・収益:売上高や営業外収益のように、所定の会計期間で、資本金取引以外営業活動で生じた資産増加です。
 ・利益:売上総利益、営業利益、経常利益のように、収益から(広義の)費用を差し引いた額です。
 ・粗利益:売上総利益のことです。会計用語ではありません。
 ・収入:収益は現金以外も含みますが、収入は現金などの貨幣の受け取りです。支出の反対語です。
     キャッシュフローでは、収入と支出が主要要素になります。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフローとは現金の流れのことです。現時点で利益が出ていても、買掛金の支払いが迫っているのに売掛金が現金化される期日が遅いと、現金(銀行預金)が不足し、支払いができません。

キャッシュフロー計算書とは、一会計期間における現金収支の状況を表示したものです。会計期間における資金(現金及び現金同等物)の増減,つまり収入と支出を
 ・営業活動:会社の本業(主要な活動)によるお金の増減
    商品販売による収入(増),仕入や管理による支出(減)など
    売掛金の増加(減:現金が債権になる)、在庫の増加(減)
 ・投資活動:設備投資や,余剰資金の運用によるお金の増減
    固定資産の取得(減)・売却(増),減価償却費の増加(増)、有価証券の取得(減)売却(増)など
 ・財務活動:資金調達や,借入金返済などによるお金の増減
    株式や社債の発行(増),自己株式の取得(減),社債の償還(減)、借入金の返済(減)など
ごとに区分して表示します。( )はキャッシュフローの増・減です。
 なお,フリーキャッシュフローとは,純粋な現金の出入りを示すもので,
   営業利益×(1-税率)+減価償却費-設備投資+運転資本
で計算されます。

キャッシュフロー経営

キャッシュフローを管理することを資金管理、俗に資金繰りといいます。その計画を立てることを資金計画といいます。キャッシュフローの改善をする(現金流入を早め現金流出を遅らせる)ことは、資金繰りを安定させるために必要です。
 資金管理を経営の観点からマネジメントすることを、キャッシュフローマネジメント、それに基づく経営をキャッシュフロー経営といいます。変化の激しい環境で財政的に安定した経営を行うにはキャッシュフロー経営が必要です。

資金管理と資産管理

資金管理が現金を対象にした比較的短期の管理であるのに対して、資産管理とは長期的に富を増大させることを目的としています。現金そのものが利益を生み出すのではなく、現金を技術開発や販路開拓などの経営資源に変えることにより利益を生じるのですし、不要な資産は廃棄・売却するのが適切です。このように、資金管理と資産管理は車の両輪といえるでしょう。

その他の報告書

株主資本等変動計算書

貸借対照表の純資産の変動状況を示したものです。純資産を株主資本,評価・換算差額,新株予約権,少数株主持分(連結株主資本等変動計算書においてのみ作成)の4つに分けて掲載し,株主資本の期中の変動額については変動した事由ごとに区分して表示します。

内部統制報告書

決算では,財務にかかる計算が適切に行われる仕組みになっていることを内部統制する必要があります。経営者が内部統制を行っていることを報告するのが,内部統制報告書です。これは金融商品取引法の内部統制の条項により定められました。

有価証券報告書

有価証券とは,株券や債券のことです。有価証券報告書とは,自社が発行している株等について,株式総数,発行済株数,大株主,株主層別持株比率などを報告するもので,金融商品取引法により提出が義務付けられています。

決算短信

これは、法律に基づくものではなく、証券取引所が自主規制で上場企業に課した制度です。年次報告、四半期決算の法的報告の前に、決算情報を共通の形式で速報する制度です。速報であることから、投資者やマスメディアが注目しています。

関連事項

●決算時期について

決算は,年1回の本決算と半期の中間決算があります。さらに,金融商品取引法により,上場企業には中間報告的な役割で四半期決算の開示が義務付けられました。

●連結決算

親会社と子会社の間で内部取引するとき、価格を調整することにより、実質以上に利益を少なくして税金逃れをしたり、帳簿上赤字にならないように粉飾したりできます。そのような操作を防ぐために、親会社と子会社のような支配関係がある場合は、子会社を含めた企業グループを1つの企業として決算することになっています。それを連結決算といいます。

親会社、子会社は持株比率ではなく「実質支配力基準」に基づきます。連結対象になる子会社を連結子会社といいます。子会社の子会社である孫会社も対象になります。しかし、すべての子会社を連結するには事務作業が面倒になるので、重要性の原則の観点から、連結の売上、利益、純資産に占める割合が小さい子会社は連結子会社から除外できます。

連結財務諸表の作成は、親会社と連結子会社の決算書を合算した合算決算書を作成し、合算決算書から、グループ内で行った内部取引で実質的に売上が発生していない取引や、連結会社間の投資と資本、連結会社間の債権と債務といった内部取引や内部利益(未実現損益)を消去します。
 100%子会社でない場合、例えば親会社の持分比率が80%ならば、剰余金のうち20%については「少数株主持分」として、連結貸借対照表において純資産の部に計上します。

実質支配力が及ぶが持株会社の持分比率が小さい会社を関係会社といいます。関係会社に関しては持分法が適用されます。持株会社が有する関連会社の株式の取得原価に、関連会社の損益のうち投資会社の持分相当額を加減算することにより、関連会社の損益の影響を連結財務諸表に示す方法です。