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電子マネーとポイント
キーワード
電子マネー、IC型電子マネー、非接触ICカード、サーバ型電子マネー、資金決済法、前払式支払手段、前払式支払手段発行者、自家型電子マネー、第三者電子マネー、ポイント、マイレージ、自社ポイント、共通ポイント
電子マネー
電子マネーの概要
電子マネーは電子式プリペイドカードです。
プリペイドとは前払いのことで、利用者が事前にチャージした金銭を支払に使えます。
代表的なプリペイドカードにテレフォンカードがありました。NTT発行、公衆電話で利用、紙製で利用すると料金に応じた穴が開き、残金がなくなるまで使えます。街頭で購入できますが、企業などの広告媒体としてプレゼントされることも多くありました。
代表的な電子マネーに Suica や nanako などがあります。電子マネーはテレフォンカードと比べて次の特徴があります。
- 非接触ICカード(RFID)です。PayPay や LINEpay などスマートフォンに機能を内蔵したものもあります。
- チャージができます。
- 発行者と契約した多くの店舗で商品・サービスの支払に使えます。
電子マネーには、QUICPayなどポストペイタイプ(クレジットカードのような後払い方式)のものもありますが、ここでは前払い方式のものに限定します。
近年は、プリペイドカードも磁気カードになり、利用店舗も多様になるなど、プリペイドカードと電子マネーの境界は曖昧になっています。
資金決済法では電子マネーをプリペイドカードや商品券とともに「前払式支払手段」としています。
電子マネーの種類
- IC型(媒体型)
非接触ICカード(RFID)のように残高がカード自体に記録されるものです。
- サーバ型(ネットワーク型)
残高が電子マネー発行会社が管理するサーバーに記録されていものです。ID番号が振られ、スマートフォンからID番号を入力してサーバの認証を受けて支払います。
電子マネーの発行者
店舗やネットショップなどが自ら発行し、自社店舗のみで利用できる自家型と、利用店舗を広く募って利用する第三者型があります。代表的な第三者型の発行者を掲げます。
- 交通系
Suica(JR東日本)、PASMO(関東私鉄)など。IC型。当初は乗車券用でしたが、その後多くの店舗で利用できるようになりました。
- 流通系
nanaco(7&i)、WAON(イオン)など。IC型。主として系列店舗で利用するもの。キャッシュバックやポイントを付与して、顧客の囲い込みを目的にしています。
楽天Edyなどなど、インターネットでのサイバーモールや多数の加盟店での利用を目的としたものもあります。
- Web系ギフトカード
Amazonギフト券、Google Playギフトカードなど。サーバ型。インターネットやコンビニなどで購入し、インターネットショップでの支払や、スマートフォンのアプリやゲームなどの支払に利用します。
電子マネーと法律
電子マネーの法的性格
円は法定通貨であり、日銀や政府が発行し、万人が国への信用により価値を認め、取引に利用されています。それに対して、電子マネーは企業が発行した通貨であり、支払に用いることは法律で認められていますが、通貨としての価値を保証するのは発行企業です。
しかも、電子マネーは利用者が円で前払いしたものですから、発行者はその価値を保証する責任があります。発行した後でサービスをやめるようなことがあれば、利用者は不当に財産を失うことになります。
資金決済法
電子マネーなど前払式支払手段での利用者保護と円滑な利用を目的とし、発行者の規制を定めた法律が資金決済法です(詳細:資金決済法)。
- 前払式支払手段の対象
電子マネー、プリペイドカード、商品券、前売チケットなど、前払いするものは原則として資金決済法の前払式支払手段として規制の対象になります。電子マネーはID型でのサーバ型でも対象になります。
しかし、電子マネーでも後払いのものは対象になりません(割賦販売法が適用されます)。
乗車券、美術館等の入場券、社員食堂の食券等は対象になりません。
- 前払式支払手段発行者
自家型発行者:届出制。3月末・9月末で総発行額が1,000万円を超えたら報告義務
第三者型発行者:登録制。3月末・9月末で未使用残高が1,000万円を超えたら未使用残高の1/2を発行保証金として供託義務。
- 電子マネーの現金化は不可
ATMのように現金(円)を引き出すことは、電子マネー発行者自体が行うのは「払戻」に該当し原則不可です。しかし、金券ショップなど発行者以外であれば規制はありません。
- 電子マネーでの送金は可能
インターネットでの決済など送金が必要になることがあります。従来は銀行振込やクレジット支払でしたが、100万円未満であれば資金移動業者を介することで、電子マネーで送金ができるようになりました。資金移動業者は登録制で、利用者から預かった資金と同額以上の額を供託等によって保全する義務があります。
ポイント
ポイントの概要
以前から、理髪店やクリーニング店では、来店のたびに認印を押し、一定回数たまると割引サービスをするというポイントカードがありました。
近年では、TポイントやPontaなど大規模なポイントサービスが普及してきました。多くの店舗が加入しており、どの加入店でも支払いに利用できます。また、航空会社や有料道路ではマイレージサービスを行っており、これも多くの店舗でポイントと同様に使えます。
- 自社ポイント
自社の取引での支払いの一部にのみ充てられるものです。発行者の商品等を減額するのですから、「値引」になります。
- 共通ポイント
自社だけでなく他社でも共通・同額で、取引での支払いの一部に充てられるものです。上記の大規模なポイントサービスはこれになります。他事業者のものも減額するため、「値引」ではなく「景品類」に該当するとされています。
ポイントと電子マネーとの類似点と相違点
類似点
- どちらも企業の発行する通貨で、法的にも支払いに利用できることが認められています。
相違点
- 入金者が違います。電子マネーは利用者、ポイントは発行者(加盟店)。そのため利用者によるチャージができません。
- 入金の性格が違います。電子マネーは決済手段、ポイントは値引(おまけ)
- 法律が違います。資金決済法は電子マネーや仮想通貨に関する規制がありますが、ポイントに関しては明確な条文はありません。現在ではポイントに関して直接的な法律はないのです。
ポイントと法律
- ポイントに直接適用される法律はありません。ポイントの発行は誰でもできます。
「ポイントは「おまけ」なので、失っても消費者に甚大な被害はない」といえるかもしれませんが、消費者はポイントも店舗選択や商品選択の重要な要因になっていることから、法的な消費者保護は必要です。そのための検討が進められていますが、現在は、いくつもの法律の解釈で適用している状況です。
- ポイント同士の交換は可能です。ポイントを電子マネーに交換することもできますが、そうするとポイントも電子マネーとみなされ、資金決済法の規制対象になります。
- ポイントの現金化や送金については現時点では規制がありません。
- ポイントの上限は景品表示法による規制があります。
- ポイントサービスは消費者に「利用規定」を開示する必要があります。消費者がそれに同意すれば成立します。
- しかし、あまりにも短い有効期限にしたり、一方的にポイントを失効させるなど、消費者の利益が害される場合は消費者契約法により無効になります。
- ポイントの加入時に住所氏名などの記入を求める場合は個人情報保護法個人情報保護法が適用されます。
電子マネー/ポイントの利点と問題点
消費者にとっての利点
- ポイントは、実質的な値下げですから、それだけで消費者のメリットになります。電子マネーでも加入時や取引実績に応じたポイントなどのメリットがあります。
- クレジットカードやキャッシュカードと同様に、レジでの支払いに便利です。
- 加入審査などのわずらわしさがなく、手軽に加入できます。
- 現金と同様に、使い込みの心配がありません。紛失や盗難の場合も損失が限定的です。
- 以前は店ごとに異なるカードを発行していたので、財布がカードでいっぱいになりましたが、近年は共通カードが普及して枚数が少なくなりました。スマートフォンが使えるようになりました。
発行者・店舗側のメリット
- 電子マネーは前払方式ですから、取りはぐれる心配がありませんし、資金運用にも有利です。
- ポイントカードは、従来は顧客囲い込みの目的が主でしたが、共通カード化が進んで、その目的は薄れてきました。しかし、ポイントレートは消費者の店舗選択での大きな関心事項です。
使われないまま期限切れになるポイントも多いので、現金値下げと比較すれば、全体として実質的な値引幅を小さくできます。
- クレジットカードやキャッシュカードと比べて手軽であることから、カード加入者は非常に多くなります。しかもポイントカードは提示率が非常に高い特徴があります。カード発行時に個人情報の記入がされているならば、個客ベースでの購買履歴は格段に多く得られるようになります。
以下の事項は、クレジットカードやキャッシュカードでも同じ効果があり、電子マネー/ポイント特有のものではありませんが、電子マネー/ポイントによりカード利用がますます増加し、効果の実現が加速されています。
- スーパーやコンビニでのキャッシュレス化が進む要因になります。レジの人手不足の解消、さらには無人店舗すら検討されるようになりました。
- 重視されるのは消費動向の収集と分析によるマーケティングです。特にポイントカードは提示されることが多いので、そのデータ量は他のカードと比較して大きなものになります。
- カードで買い物をするとWebページでの広告に反映するなど、発行者間やWeb広告業との連携が進んでいます。
- 個人が特定されない場合でも、近年のビッグデータやAIの発展により、マーケティング戦略に役立つ情報が得られるようになりました。
- このような情報の取集、分析、提供などを行う新しい業種が出現・発展しています。
消費者保護の問題点
- 個人情報の漏洩が問題です。電子マネーやポイントは手軽に加入できるので、大勢の人が持っています。また、クレジットカードやキャッシュカードに比べて管理が不十分な傾向があります。
銀行やクレジット会社に比べてセキュリティへの関心や能力の低い発行者もあるので、個人情報漏洩が起こりやすい環境です。
- 残高保証が問題です。電子マネーはもとより、ポイントも消費者の権利として得た財産です。発行者の倒産などで利用できなくなるリスクがありますが、法定通貨ではないので、国には救済責任はありません。事業者の経営状況や発行残高への保証などが求められます。
- 詐欺目的あるいは個人情報不正入手を目的とした発行者がいないとは限りません。