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資金決済法


2009年に 「資金決済法」(「資金決済に関する法律」)が成立しました。これは、前払式証票規制法を拡大して、サーバ型電子マネーを含む電子マネー全般を対象としたものです。なお、資金決済法により、前払式証票規制法は廃止されました。

資金決済法の背景

電子マネーの残高は利用者の財産です。その総額は800億円を超えています。発行者の倒産、勝手な条件の変更、再発行の拒否などに対して、法的な財産の保証が求められます。
 また、電子マネーの利便性向上のためには、送金(為替取引)を認める必要があります。為替取引は銀行のみに限られています。安全で確実ですが、送金手数料が高いことや営業時間が限られている不満があります。しかし、単純に電子マネーにも認めると、不正行為やマネーロンダリングなどに使われる懸念もありますので、少額取引に限定するなどの制限も必要です。
 このような観点から、電子マネーに関する法律の制定が求められてきました。

これまでにも、商品券、ギフト券、プリペイドカード等(商品券等という)の発行に関して規制を行う法律に前払式証票規制法(正式名「前払式証票の規制等に関する法律」、俗に「プリカ法」ともいう)がありました。商品券等の発行に関して規制を行う法律です。発行者の登録、使用期間や残高確認の方法などの表示、未使用残高の2分の1以上の発行保証金、金融機関等との保全契約などが定められています。
 電子マネーにも暫定的にこれを適用してきましたが、特にサーバ型電子マネーに関しては無理があり適用する法律がありませんでした。

このような状況を解決するために、金融庁は、電子マネーに関して検討してきました。そして、金融庁「資金決済に関する制度整備について ―イノベーションの促進と利用者保護―」2009年を発表しました。資金決済法は、これをベースにしています。

2019年の改正資金決済法では、仮想通貨に関する条項が追加されました。仮想通貨を暗号資産として、その定義や取引所などの仮想通貨交換業者の登録や義務などを定めています。

資金決済法の概要

前払式支払手段とは

大雑把には、前もって代金を支払い、その残高内で支払をするものです。
  紙型:商品券、ギフト券など
  磁気カード型:クオカード、テレホンカードなど
  ICカード型:Suica、nanaco、WAON など
  QRコード型:PayPay、LINE Payなど
  サーバ型:Amazonギフト、Google Play ギフトなど

資金決済法では、次の4条件を満たすものを払式支払手段と定義しています。

次の場合は前払式支払手段に該当しません。

発行者の区分と義務

資金移動業者

従来は、為替取引(現金以外の方法で資金を移動する取引)業務は、銀行等の金融機関に限定されていました。それが、資金決済法により、100万円以下であれば登録業者に限り、コンビニや旅行代理店の窓口、インターネット、携帯電話などで、国内だけでなく海外へも振込や送金ができるようになりました。その登録業者を資金移動業者といいます。

2021年の改正により、次の3区分になりましたが、ここでは第二種資金移動業者に限定しています。
  第一種資金移動業者:送金額の上限なし
  第二種資金移動業者:100万円以下
  第三種資金移動業者:5万円以下

資金移動業の登録要件

登録後の規制

暗号資産(仮想通貨)に関する事項

仮想通貨での利用者保護

仮想通貨には、仮想通貨交換業者の管理不十分による仮想通貨の盗難や紛失、仮想通貨交換業者の倒産、投機的取引に伴う暴落による第三者利用者の資産低下などが頻発しており、利用者の救済措置が求められます。
しかし、仮想通貨は通常の取引決済用の通貨としての利用よりも、投機対象としての目的が多いことから、自己責任であり、どこまで法的救済が必要かという意見もあり、今後の検討事項になっています。

マネーロンダリング

麻薬取引、振り込め詐欺、テロ支援、贈収賄などの犯罪によって得られた資金(汚れたお金)を、資金の出所をわからなくするために、架空または他人名義の金融機関口座などを利用して、転々と送金を繰り返したり、株や債券の購入、大口寄付などを行う行為をマネーロンダリング(Money Laundering:資金洗浄)といいます。
 特に近年では仮想通貨を用いた国際的なマネーロンダリングが横行しています。

マネーロンダリングへの対策をAML(Anti-Money Laundering)といいます。これには国際的協調が重要ですが、わが国では、以前から本人確認法(金融機関等による顧客の本人確認及び預金口座等の不正利用の防止に関する法律)がありましたが、2008年より「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に拡充・統合されました。

資金決済法により、資金移動業が認められ、為替取引がより容易になると共に、マネーロンダリングの温床となるリスクも生じます。それを防ぐために、資金移動業の認可や義務を明確にしようとするのが、資金決済法の大きな目的の一つだといえます。

資金決済法で見送られた事項

小口決算手段として、「ポイント」と「代行サービス」がありますが、資金決済法では、これらに関しては、資金決済法に取り入れることは見送られました。

ポイントへの対応
ポイントが前払式支払手段と同様の機能をもつので消費者保護の観点から規制すべきだともいえますが、 の議論がある。これに対して、ポイントは基本的に景品・おまけなのだから、あえて法律で消費者保護を図る必要はないという意見があります。それで、将来の課題とすることが適当として、資金決済法には取り込みませんでした。
 経済産業省では、ポイントが経済発展に寄与しており、その健全な発展のためには消費者保護の観点が必要だという立場で検討を進めてきました。
  経済産業省「企業ポイントのさらなる発展と活用に向けて」2007年では、消費者向けの企業ポイントを中心に、小売業とサービス業の融合や付加価値向上、小売業における生産性向上或いは顧客満足の向上の観点から、ポイント利用の適正化に向けた課題を整理しました。
 また、その健全な発展のためには、消費者保護対策が求められます。それに関して、 「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方」2009年において、問題点と関連法令との関連を示した 報告書と、ポイント発行企業へのガイドラインを示しています。
収納代行サービス・代金引換サービス
収納代行サービスとは、通信販売で購入した商品をコンビニなどで現金支払で受け取るサービスです。代金引換サービスとは、宅配業者から商品を受け取るときに商品代金を現金支払するサービスです。コンビニや宅配業者が資金移動業者になっていると考えられるので、サービス提供者の破綻や詐欺的行為を防ぐための措置が必要だと考えられます。
 これに対して、規制を厳しくすると利用者の利便性を損なうことがあること、現実に重要なトラブルが生じていないことから、あえて法的規制をする必要はないという意見もあり、資金決済法では見送られました。