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組織管理原則と情報システム

学習のポイント

経営管理の一つに組織管理があります。古典的な組織管理原則が情報システムの活用により,大きな影響を受けていることを説明します。

キーワード

組織管理原則,専門化の原則,階層化の原則,統制範囲の原則(管理スパンの原則),命令一元性の原則,権限責任一致の原則,ピラミッド型組織,文鎮型組織


組織管理の5原則

企業は組織で活動しますが,それを円滑に管理するには,古典的に次の5基本原則がいわれてきました(「階層化の原則」を「統制範囲の原則」や「命令一元化の原則」にまとめて「4原則」とすることもあります)。

専門化の原則(分業の原則)
 類似した職務に分割をすることにより,専門能力が向上して効率的に業務が遂行できます。部や課などの体系がこれにあたります。
階層化の原則
分業化を進めると,組織の構成員を明確な権限のもとに階層化する必要があります。これにより,部や課などの階層組織になり,ピラミッド型組織になります。
統制範囲の原則(管理スパンの原則)
1人の上司が直接管理できる部下の数には限界があります。大勢の部下がいる場合には,それを専門化の原則によりいくつかのグループに分割して,それぞれに管理者をおき,全体の管理者はそれらグループの管理者を管理することになります。これにより,組織が大きくなるにつれて,階層が深くなりピラミッドが高くなります。
命令一元性の原則
1人の部下に複数の上司がいると矛盾した命令が起こるので,上司は1人でなければなりません。ワンマン・ワンボスの原則ともいいます。
権限責任一致の原則
職務を遂行するには,権限が与えられるとともにその職務に責任を負いますが,権限と責任は相応しなければなりません。

組織管理原則への情報システムによる影響

情報システムの発展は,これらの管理原則を一面では支援しますが,一面では原則を崩すことにもなります。

分業の崩壊
分業が細分化されると、ある一連の業務を処理するのに多くの部署を経由することになり、関係する担当者数が多くなるし、書類の受け渡しなどに時間がかかります。
 業務に必要な知識や業務処理手順をシステム化すれば、一連の業務を一人で担当できるので、少人数で効率を向上させることができます。このように、ITを活用して抜本的な業務改革をするという考え方をBPRといいます。
 生産分野では、ベルトコンベアで代表されるように、極端な分業が行われていました。しかし、ITの活用や機器の自動化により、多くの工程を担当できるようになり、単能工から多単能工へと変えることができます。多くの工程を一人で担当するほうが、生産ラインの変更に即応できますし、製品に愛着をもち品質の向上になります。
ピラミッド型組織から文鎮型組織へ
ITを活用することにより、部下の活動状況や成果の把握をすることが容易になります。それにより管理スパンを大きくして、管理階層を小さくすることができます。それにより,組織がピラミッド型組織から文鎮型組織へ変化します(図示)
ピラミッド型組織から文鎮型組織へ
組織の壁が崩れる
グループウェアなどの普及により,組織の壁を超えて情報が伝達でき共有することが容易になります。ある問題が発生したときに電子掲示板で応援を依頼したり,離れている場所での共同作業が円滑になります。そうなると,各専門の要員を集めて組織を作る重要性が少なくなるので,専門化した部門間の境界が不明確になってきます(図示)
 このような環境では,部課に固定化した業務だけでなく,随時発生する課題解決のために,部課の組織にとらわれずに協力するプロジェクト体制がとられるようになります。そうなると,命令を受け報告する上司は,課題により変化しますので,従来の意味での命令一元化の原則が崩れます。
組織の壁の崩壊

理解度チェック: 正誤問題選択問題