中小企業が大企業と全面的な競争をしたら負けるのに決まっています。経営戦略を策定するには,その業界における自社の位置づけを認識することが必要です。自社の位置づけと採用するべき戦略を検討するのがポジショニング分析です。
ポジショニング分析,リーダー,チャレンジャー,ニッチャー,フォロワー
たとえば,社員5名程度の部品メーカーが大メーカーと同じ経営戦略をとることは不適切なように,自社がその業界において,どのような立場にあるのかを認識して,それに合致した戦略を考えることが必要です。それをポジショニング分析といいます。
業界でのポジションは,リーダー,チャレンジャー,ニッチャー,フォロアーに区分されます。
その分野において,市場シェアも大きく経営資源も高い企業です。自社がこのポジションにあるならば,次のような戦略が有効です。
自社製品にこだわらずに,同様な製品の市場全体の拡大を図ることが必要です。その市場が成長すれば,シェアが高いのですから自然と自社製品の売上が増大します。
売上が増大すれば大量生産やノウハウの蓄積によりコストが低下します。コスト的に他社より有利なのですから,価格競争をすれば簡単に他社をこの業界から抹殺できます。しかし,それは得策ではありません。高コストの企業があるので価格が高く維持できます。リーダーはそれにより大きな利益を得ることができます。他社を生かしておいたほうが有利なのです。「金持ち喧嘩せず」といいますが,競争を回避するのが戦略になります。
それでも他社がシェアを高めてくるのを防衛することは必要です。それには価格ではなく,リーダーの製品が業界標準なのであり,ころがホンモノなのだという高イメージを作り出すのが効果的です。
業界で2位・3位のシェアを持つが,全面的な経営資源ではリーダーに及ばない企業です。全分野でリーダーと競争したのでは負けてしまいます。しかし,自社の得意な分野に限定して,そこに経営資源を集中すれば,その分野だけではリーダーよりも強いので,競争に勝つことができ,その分野ではリーダーになれます。それをバネにして,将来は全面的なリーダーになることを目指すのが戦略になります。
●参照:「キリンとアサヒ」
経営資源の乏しい中小企業やベンチャー企業では、リーダーやチャレンジャーがあまり興味を持たない分野に経営資源を集中させるのが戦略になります。それには、限られた狭い分野では非常に優れた技術をもつこと、大企業では発想しないようなビジネスモデルを追求することが必要です。優秀な中小企業は、この戦略で成功しているのです。
大企業でも、他社が気づいていない分野や他社が参入しにくい特定の市場で専門化し,その分野でのオンリーワン企業となって、無競争状態をつくり高利益率を図る戦略がとられます。
リーダーやチャレンジャーが成功した路線を模倣することにより,おこぼれをいただこうという戦略です。
リーダーにもなれる大企業が,戦略的にフォロアー戦略をとることがあります。大企業であっても新製品開発や新市場開拓でのリスクは避けたがります。それらはチャレンジャーあるいはニッチャーにやらせ,それが成功しそうになるとみるや,高度な技術力,強い販売力,豊富な資金力をもって参入し,市場を席捲してしまうのです。
この戦略が成功するには、
・どの分野が成長しているかをウオッチする情報能力
・特許などを回避して迅速に模倣できる技術力
・市場に参入しシェアを奪うコストダウン力,マーケティング力
が求められます。
それに対して、このような能力をもたない中小企業が、大企業のフォロアーになっていたのでは成長は望めません。
最近の環境変化は,従来のポジションに大きな影響を与えています。いくつかの例を示します。