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サイモンの意思決定論

キーワード

サイモン、構造的問題、半構造的問題、非構造的問題、探索活動→設計活動→選択活動→検討活動、満足化原理、経済人


意思決定の区分

サイモンは,「経営とは意思決定である」として,意思決定の問題を構造的問題,半構造的問題,非構造的問題に区分しました。特に、半構造的問題が重要だと指摘しています。

構造的問題
問題を解決するロジックが明確な問題です。たとえば最適な資材調達量の決定とは発注費用と在庫保持費用の合計を最小にすることだと仮定できるならば,数学的な定式化ができますので,コンピュータで計算することができます。定例的・定型的な業務的意思決定の問題は構造的な問題が多いといえます。
半構造的問題
構造的問題と非構造的問題の中間です。そのものズバリの解法はないが,人間とコンピュータが協力することにより解答が見出せるというような問題です。たとえば,中期計画の策定をするとき,販売の伸び,価格動向,設備投資など多様で不確定なな要因が多いので,最適な資源配分を求めることは無理ですが,「もし,~だとしたら,どうなるか」というような問題にすり替えることにより,考えるのは人間,計算するのはコンピュータにさせて,机上実験を試行錯誤することにより,適切な解を探すことができます。
 DSSは、半構造的問題へのIT活用分野です。そして、サイモンの理論はDSSの理論的根拠になりました。
非構造的問題
新規事業や企業合併など戦略的意思決定の多くは,場合により目的も環境も大きく異なりますので,解決するロジックは存在しないといってよいでしょう。このような問題を非構造的問題といいます。この解決には,直接的には情報システムは無力です。しかし,半構造的な問題にできれば,それなりの利用はできますし,関連した情報を入手するには情報システムが役にたちます。

意思決定プロセス

サイモンは意思決定の手順を探索活動→設計活動→選択活動→検討活動のサイクルになるとしました。

探索活動
経営目標と現実とのギャップを認識して,それを埋めるための方法を探索する活動。
設計活動
ギャップ認識や探索結果により,具体的にどのようにすればよいかをいくつかの案(代替案)としてまとめる活動。
選択活動
代替案を比較評価して,ある特定の案を選択する活動。
検討活動
選択案を実施したら経営目標が達成されるかどうかを確認する活動。もし不十分ならば,さらに探索活動を行う。

満足化原理

上記のプロセスにおいて,すべての代替案が網羅され,その代替案が実行されたときの状況が完全に予測でき,合理的な方法により比較ができれば理想的です。これを追求することを最適化原理といい,そのように行動する人を経済人といいます。
 ところが現実の経営では,このような完全性は期待できません。探索活動ですべての代替案が見つけることはできないし,予測も不確実なら比較評価する基準もあいまいです。このような環境で意思決定する人を経営人といいます。経営人は,例えば目標が収益改善にあるならば,収益が最大にならなくても目標が達成すれば満足して,他の目標に眼を向けます。このような行動を満足化原理といいます。
 当然ながら,ある目標が達成されたときには,また新しい目標を掲げて上記の活動を行います。満足化原理とは,満足したら行動を止めるというのではなく,まず当面の目標を掲げ,それが達成できたら次の目標に向かって行動するというように,逐次的な行動をとることだと考えるのが妥当です。


理解度チェック: 正誤問題選択問題