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IT関連資格

キーワード

技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ、資格の価値


主なIT関連資格

国家資格

国家資格とは、法律に基づいて国が実施する試験により、知識や技術が一定水準以上に達していることを国が認定する資格です。

情報処理技術者 [IPA(情報処理推進機構)
情報処理に関する多様な分野およびレベルにより12の試験があります。詳細は別章「情報処理技術者試験」
技術士(情報工学部門)[日本技術士会
技術士法に基づく技術コンサルタントの国家資格。20の技術部門に区分されるなかに情報工学部門がある。IT技術者として最高の資格だといえます。

建設部門は、技術士資格が受注に大きく影響するので、登録者が多い。2000年当時、全部門の登録者は約4万人で、その半数が建設部門。情報工学の技術士はわずか1千人である。

中小企業診断士[中小企業診断協会]
中小企業支援法に基づく中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行うコンサルタントの国家資格。ITの資格ではないが、試験で経営情報システム科目があります。

公的資格(IT関連団体資格)

公的資格とは、ISO規格での認証業務や国の認定機関が行っている認定資格のことですが、 ここでは、IT関連の協会等が行っている国内・国際的に広く認知されている権威のある資格のこととします。
 これらの多くは、指定された講習会があり(かなり高額)最終日に試験があります。試験そのものは講習会で学んだ内容なので比較的容易ですが、受験資格が厳しく、試験に合格しても実務経験がないと資格が与えられないなど、高度な資格です。

ITコーディネータ[ITコーディネータ協会
経営に役立つIT利活用に向け、経営者の立場に立った助言・支援を行うコンサルタント資格。経済産業省の推進資格になっている。ITに特化した中小企業診断士のような位置づけである。
CISA(Certified Information Systems Auditor、公認情報システム監査人) [米ISACA(the Infomation Systems Audit and Contorl Association)
情報システム監査およびコントロールの専門家資格としては最も長い歴史を持ち、かつ最も国際的に普及している資格。情報処理技術者のシステム監査技術者と比較すると、試験は多岐選択問題だけであるが、CISAに認定されるには5年以上の関連実務経験が必要。
ISMS審査員(Information Security Management System)
ISMSは、情報セキュリティに関する国際規格ISO27001、JIS Q 27001)。この審査に合格した企業は、ISMS認定の表示が許される。その審査員・審査員補になるための試験。実務経験により資格が与えられる。
PMP(Project Management Profesional) [米PMI(Project Management Institute)
PMIが策定したPMBOK(Project Management Body of Knowledge)に基づく。プロジェクトマネジメントの資格として国際的に認知されている。
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)
ITILはITサービス(運用・保守)に関する国際規格(ISO20000)。それに関する理解を保証する認定資格。「ファンデーション」「プラクティショナ」「マネージャ」の3種類がある。

ベンダ資格

マイクロソフトやオラクルなどのメーカーが,自社製品の活用知識を認定する資格です。特定製品に偏ってはいますが,実務即戦力としての知識能力が認定されるので企業では重視されています。

MCPプログラム [マイクロソフト
マイクロソフトのOSや各種ソフト(ミドルウエア)に関して、次のような認定資格がある。
 MCTS(テクノロジー スペシャリスト)
   MCITP(ITプロフェッショナル)≒旧MSDST
   MCPD(プロフェッショナル デベロッパー)≒旧MCSD
 MCP(マイクロソフト認定プロフェッショナル)
   MCSA(システムアドミニストレータ)
     MCSE(システムエンジニア)
これらのうち、評価が高いのはMCPD(MCSD)とMCSEである。
MCPD:システム開発のエキスパート
MCSE:インフラの設計や実装のエキスパート
オラクルマスター [オラクル
いくつかの分野があるが、オラクルの主要製品であるデータベースがポピュラーである。Bronze(基礎)、Silver(中級)、Gold(上級)、Platinum(最上級)のレベルがある。Gold以上は実機試験があり、高い評価を得ている。
Sun技術者認定資格
サン・マイクロシステムズは、1990年代でのUNIX機のトップメーカーでありJavaの開発・推進メーカーであったが、2010年にオラクルに買収され、オラクルの認定になった。JavaとSolaris(UNIX全般)の認定資格がポピュラーである。
シスコ技術者認定資格 [シスコ
シスコは世界最大手のネットワーク機器メーカー。ネットワークエンジニアの即戦力を証明する資格として認められている。「ルーティング&スイッチング」や「ネットワークセキュリティ」など8つの分野で、エントリーレベル、アソシエイト、プロフェッショナル、エキスパート、アーキテクトのレベルがあるが、エキスパートのCCIE(ネットワーク全般)、CCDE(ネットワーク設計 )がある。

その他協会等の資格

多くの協会や企業が、それぞれの分野で資格認定をしています。省庁の後援を得ているので、広い意味での公的資格に入るものもあります。

パソコン検定試験(P検) [パソコン検定協会
主に高校生や中学生など初中級ユーザーを対象としたパソコン利用技能の試験。歴史が長く多数の受験者がいる。2012年から「NEW-P検」に改訂された。5級→4級→3級→準2級→2級→1級の6段階があり、5級では中学生(あるいは小学生)の初心者レベルで無料で受験できる。1級ではITCを活用した問題解決ができる能力が問われる。
ディジタル技術検定試験 [国際文化カレッジ
文部科学省後援。5級~3級では情報処理や制御に共通する基礎知識、2級と1級は情報部門と制御部門に区分され、情報部門ではプログラム開発など情報処理や情報通信に関する専門知識、制御部門では論理回路、計測、制御理論、計算機の知識から制御システムの設計や運用に関する専門知識が認定される。あまりポピュラーではないが、1・2級合格の評価は高い。
CG-ARTS検定 [画像情報教育振興協会
文部科学省後援。CG(コンピュータグラフィックス)に関する能力検定。次の5分野でベーシック(知識)とエキスパート(応用力)の2レベルがある。
マルチメディア検定:初心者対象、インターネットやマルチメディアに関する知識
Webデザイナー検定:Webシステムの構築などに携わるエンジニアを対象
画像処理エンジニア検定:画像処理分野の開発や設計を行うエンジニアを対象
CGエンジニア検定:CADやゲームなどのCG分野の開発や設計を行うエンジニアを対象
CGクリエータ検定:CGアニメータ、グラフィックデザイナーなどクリエータを対象
XMLマスター [XML技術者育成推進委員会
XMLおよびXML関連技術(XML Schema, XSLT, XPath, DTDなど)を認定する試験。次の3試験がある。
ベーシック:基礎技術を理解し業務に活用できる技術力を認定
プロフェッショナル:各職種の専門分野においての高度な技術力を認定
  アプリケーション開発:XMLデータ処理を行うアプリケーションの開発能力の認定
  データベース:XMLデータをデータベースに格納、管理、操作が行える能力の認定

資格の評価

排他性の少ないIT資格

資格には、医師や弁護士のように、資格を持つ者だけに業務を行うことが許されている業務独占資格や宅地建物取引主任者や危険物取扱主任者のように、特定の事業を行うのに資格保持者を必ず置かなければならないという必置資格があります。
 IT関連の資格は、業務独占資格でも必置資格でもありません。法的には、システム監査技術者やCISAの資格を持たなくてもシステム監査を行えますし、高度な資格をもつ技術者がいなくても、人命や社会に与える影響が大きいシステムの開発や運用をすることができます。
 IT資格の法的な特権は、資格取得者以外の者にその資格の呼称の利用が禁止されている名称独占資格である程度です。しかも、国家資格は法的に名称独占資格ですが、民間資格ではせいぜい商標法で保護される程度です。

資格取得の利点

IT関連資格は、業務を行うために必要なものではなく、知識や能力を第三者が認定するためのものだといえます。
個人が資格取得をするメリットには次のようなことがあります。

企業にとっても大きなメリットがあります。

資格のランキング

企業、特にベンダ企業は、社員の資格取得に積極的で、多くの企業が資格取得に便宜を図り、資格取得者に資格手当や一時報奨金を与える制度をとっている企業もあります。 (図表)

ここでは「ソフトウェア系技術者997人へのアンケート」なので、企業形態は不明ですが、ほとんどがベンダ技術者だと思われます。ユーザ企業でこのような制度をもつことは少ないので、この数値はベンダ企業での数値でしょう。ベンダ企業に絞れば、これよりもやや高くなるかもしれめせん。

報奨金の額は、企業の環境により多様ですが、最も高い(要求レベルも難易度も高い)資格には、技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ、情報処理技術者ではシステム監査技術者、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャなどがあります。
 中程度には、情報処理技術者の××スペシャリスト、ベンダ系の最上位資格が並んでいます。そして、それ以下に、応用情報技術者、基本情報技術者、ITパスポートなどがあげられています。
 一般に国家資格のほうがベンダ資格よりも高く評価される傾向があります。おそらく権威があること、広く知られていることなどが理由でしょう。 (図表)

報奨金の額は、調査によりまちまちですし、情報処理技術者資格以外は調査対象になっていない場合もあります。ここでは、いくつかの調査をもとに私の主観を加えた例を示します。

IT関連資格と報奨金

資格報奨金(万円)
 
20
18
16
システム監査技術者16
ITストラテジスト16
プロジェクトマネージャ16
14
 
システムアーキテクト12
シスコ(CCIE, CCDE)12
ネットワークスペシャリスト10
データベーススペシャリスト10
情報セキュリティスペシャリスト10
ITサービスマネージャ10
オラクルマスター(Platinum)10
Sun技術者(上位資格)10
 
マイクロソフト(MCPD,MCSE)
応用情報技術者
XMLマスター(プロ)
オラクルマスター(Gold)
 
基本情報技術者
ITパスポート

企業が取らせたい資格

企業が社員に取らせたい(目標にしている)資格は、必ずしも報奨金の額が高い(レベルが高い)資格とは一致しません。また、ベンダ企業とユーザ企業、ベンダ企業でもIT技術者と営業担当者では、大きな違いがあります。 (図表)


IT技術者:ベンダ企業の人事担当者が、IT技術者に取らせたい資格
営業担当者:ベンダ企業の人事担当者が、営業担当者に取らせたい資格
ユーザIT部門:ユーザ企業のIT部長が、IT部員に取らせたい資格
出典:「いる資格、いらない資格 2012年版」、日経コンピュータ、No.797, 2011/12/8号, pp.28-47

企業が取らせたい資格

ベンダのIT技術者でも、システムインテグレータや上流工程の受注が多い大企業と、システム開発の下流工程の受注が多い中小企業では異なります。 (図表)

出典: IPA「IT人材白書」 2011年(調査年:2010年度)データ編(ベンダ企業向け)(Q54)より抜粋加工

ベンダ企業が今後重要となる/強化すべきとする技術力

ベンダ企業にアンケートした結果です。「技術力やスキル」であり「資格」ではありませんが、かなり類似していると思われます。
 データベースやネットワークに関する技術力、プログラミングスキルなど、システム構築の下流工程に属する分野では、小規模ベンダでは高い必要性があるのに対して、大企業ではあまり必要としていません。逆に大企業では、IT全体の構成を統合的に設計するアーキテクチャ分野や分野横断の幅広い技術力など、大規模システムのシステムインテグレータとして必要な分野が重視されています。


理解度チェック: 正誤問題選択問題記述問題