スタートページ主張・講演 マーフィーの法則(vol.2)はじめに・目次

Murphyology on Information Technology (vol.2) 2000s

07 IT投資の費用対効果

「IT投資は儲かるのか?」は、大企業がコンピュータを導入しはじめた1960年代から現在まで問われてきた「古くて新しい問題」であり「永遠の課題」である。その根本原因を突き止めることが解決の糸口になる。


経営者にITの費用対効果を説明するのは難しい(2008/04/30)

多くのIT部門が、経営者にIT投資の費用や効果を示すのに苦労している。次の事項を適切に説明できれば、IT部門への大きな福音になるのだが。

パソコンのリプレイスの必要性を納得させるのは困難だ
 古いパソコンを使っていても、販売システムが動かなくなるわけではない。Windows Vistaにバージョンアップして画面が半透明になってももうかるわけではない。メーカーが古いOSをサポートしなくなったとしても、これまでも受ける側がサポートを受けていなかったのだから、状況が変わるわけでもあるまい。
ハードは限界以上の稼働をしてもソフトに助けられる。しかし、そのツケは数倍になって戻ってくる
 「データ量が増えて、ハードが限界になってきました。期末処理がパンクしそうです。早急に増強してください」といっても、IT部門からの要請に慣れている経営者は無視する。それでも、請求書が発行されなかったとか、決算ができなかった例はない。
 それは、ベテラン技術者が、データベースの正規化やプログラムの構造化などを壊すことにより、数倍のデータ処理ができるようにするからである。そうすると、「乗り切れたね。キミたちの能力を信じていたよ」と経営者にいわれるが、それが2000年や2007年に大問題になった元凶であることを彼らは理解していない。
なぜ複数の見本から選ぶことができないのか
 ハードですら分かりにくいのだから、ソフトウェアのシステム開発が分かりくいのは当然だ。
 自動車には多くの車種があるし、家でも予算に応じて幾つかの代替案を作るのが常識だ。それなのに、システム開発では1つの案だけを示して決断を迫ってくる。これでは返答のしようもない。
 自動車を買うときには、現物があるし試乗もできる。家を新築するときには見取り図があるし、気の利いた工務店なら模型や3D画面を見せてくれる。それなのに、システム開発では、当初の企画書では見本がない。それを見せろというと、そのための作業をするのにかなりの費用と時間がかかるという。
システム開発費用の妥当性はLOC法ではわからない。FP法でもわからない
 「このシステムに○○人月掛かる」といわれても、どうしてそれだけの工数になるのか分からない。プログラム全体で○○ステップになるといわれても、どうしてそれだけのステップ数になるのか分からない。
 FPが○○個になるといっても、1ポイント当たりの価格が妥当かどうかが分からない。FPの数を半分にすれば費用も半分になるのかと聞けば、データベースに関連したものが多いので大して費用は下がらないという。それならばデータベースをやめてしまえといえば、それにはシステム全体を再検討する必要があるという。
 最も理解しやすいのは、過去例による類推法であるが、その過去例が適切だったのかどうかも分からない。
グループウェアは、具体例を示すと導入の必要性はなくなる
 情報の共有化を図るためにグループウェアの導入を提案したとする。
 ところが「誰と誰が何の情報を共有化するのか」といわれてもとっさに出てこない。「営業部が得た顧客のニーズを生産部と共有する」といえば、電話やFAXでもできるし、営業部と生産部の机を並べればよいといわれれば、グループウェアを導入する必要はなくなる。
 さらに「どのような顧客のニーズがあるのか」と聞かれて、「○○得意先が△△製品の□□改良を希望している」といえば、「私から生産部長にいっておく」で解決してしまう。このような具体例を数十~数百列挙しても、それぞれの対応方法があり、グループウェア導入の必然性は消えてしまう。
ITの常識は部外者の非常識
 IT業界の慣例は、日本的な慣例になじんできた経営者には受け入れがたいことが多い。「IT部門がベンダのいいなりになっているのではないか?」という疑問が残るからだ。
・どうして、自社製品の使い方を覚えてもらうのにカネを取るのか?
・どうして、欠陥ソフトを売っておいて保守料を取るのか?
・どうして、客である当社の業務を教えてもらうのに現状分析と称してカネを取るのか(しかも、この業種に詳しいとの触れ込みだった)?
・どうして、カネを取っておきながら、当社の人間をこき使うのか?
・どうして、納入時にミスがあることを前提にしたSLAが必要なのか?
・どうして、当社がカネを払うのに著作権はベンダにあるのか?
・どうして、ベンダはソリューションを謳い文句にしているのに、当社の課題が解決しないのか?

ITの評価(2008/06/19)

多くの経営者が費用対効果を気にしている。
 費用対効果は、コンピュータが導入され始めた1960年代から、すでに大きな問題だった。それなのに、約半世紀が過ぎたいまでも、これに対する適切な評価基準を持っている企業は少ない。
 CIOやIT部門が無能なのか、IT業界がサボッているのか、それともそもそも不可知問題を追っているだけなのだろうか。少なくともまだ答えは見つかっていない。

経営者にとって最も重要なIT知識は、IT投資の費用対効果に関する知識である
 電子メールや表計算ソフトが使えることをもって、「自分はITに詳しい」と思っている経営者がいる。このような知識があってもよいが、なくてもせいぜい秘書の人件費程度の効果だ。
 新聞や雑誌をよく読み、講習会にも出席して、SaaSやWeb 2.0といった最新のIT活用動向をよく知っていることは、それなりに役立つだろうが、IT部門やコンサルタントを利用することで補うこともできる。
 それに対して、IT投資案件について認否の決断をすることは、経営者にとって「他人に任せられない専決事項」である。決断する際の最大の要素は、投資の費用対効果だ。
 マウスのクリックができなくてもよいし、NASとSANの区別がつかなくてもよいが、ITの費用や効果が発生するメカニズムに関しては、十分な知識を持つべきである。
成功事例は、やる気をなくすのに役立つ
 マスコミには、ITの成功事例が氾濫(はんらん)している。それをヒントにして頑張れというのだろうが、むしろその反対になることが多い。
 事例の大部分は、トップの英断、献身的なプロモータ、利用部門の協力、困難への挑戦意欲などが底流になっている。読者は「トップは頼りないし、自分もスーパーマンにはなれない。ウチとはあまりにも環境が違い過ぎる……」と感じるのがオチである。「平凡な会社でもできた成功事例」があればよいのだが。
インフラ投資こそ利益の源泉
 実は成功企業はそれほど苦労していないのだ。
 連中は、ハード、ソフト、ネットワークなどだけでなく、データの整備、ITリテラシーの涵(かん)養、IT成熟度の向上なども含むITインフラの整備がすでに十分に進んでいるのだ。それで個別アプリの構築に、われわれならば100の費用・労力がかかるものを、連中は80や50で実現しているのだ。
 ITインフラの投資は、それだけでは利益を生じない。その上に乗る個別アプリが利益をもたらすのだが、インフラ投資の段階でも乗せるべきアプリケーションは不明だし、インフラのどの要素がどれだけ効果を生むのかも未知数である。さらには、先行したインフラと異なるものが業界標準となり、無駄どころか負債になることもある。
 このような投資への判断能力こそ、経営者に求められるIT知識なのだ。
IT計画が実現するのは奇跡である(Many If現象)
 システム開発では、「予定した2倍の費用と2倍の時間が掛かり、1/2の機能しか実現しない」という「222の法則」が存在する。とかくIT投資では、計画時と実施時との乖離(かいり)が大きく、経営者がIT部門に不信感を持つことが多い。
 システムが効果を上げるには「要求事項が適切に実装され」「(社外を含む)組織や業務の変更が実現し」「(顧客を含む)利用者が期待した行動をする」ことが前提となる。
 1つの要因が実現する確率を90%とすれば、2つの要因では81%、3つでは73%になる。システムを取り巻く環境は複雑だから要因の個数は多く、実現確率は限りなく0に近づく。ところが、計画時にはすべて実現するという仮定をするのが一般的である。これを「Many If現象」あるいは「たぬきの皮算用」という。
KGIがなければ、成功も失敗もない
 費用対効果は事前評価だが、事後評価も重要である。
 最も単純な評価方法は、利用者にアンケートすることである。しかし、利用者は開発費用を知らないので、過剰サービスをしたシステムの評価が高くなる。もし、開発費用を示してシステムを提供するのと、提供せずにその費用を給与として分配するのとどちらがよいかをアンケートすると結果はどうなるだろうか?
 KGI(Key Goal Indicator)を知らないで評価することもある。業務革新を目的としたはずのERPパッケージが、データ入力が面倒だと低い評価をされたり、単に帳票出力が容易になったことで高い評価を得たりする。評価は、適切な評価軸の設定なしに行うことはできないのである。

費用対効果追及の費用対効果(2008/06/19)

IT化の効果を厳密に表せない理由は、4万5328個ある(トム・デマルコ/ティモシー・リスター著『熊とワルツを』)というが、それをすべて理解するための費用対効果を考えると諦めざるを得ない。

分からないものを無理に分かろうとすると、かえって分からなくなる
 省力化などの定量的な効果は、人件費やそれに関係する費用から比較的容易に算出できる。ところがグループウェアなどの効果は、「情報共有が進む」「ペーパーレスになる」「会議が不要になる」などの効果があるにせよ、それを金銭的に評価するのは難しい。
 誰と誰が何の情報を共有すべきなのかが明確になれば、机を隣り合わせにするとか、ホワイトボードに書くルールを作ればよいかもしれない。共有すべき事項が多いとしても、事前に思い付くのは、せいぜい数十事項程度だろうから大したことではない。
 紙が1枚削減できるとしても、その効果は総額いくらになるだろうか。紙の購入費用なら1円程度だし、印刷費用を入れても十数円である。ところが、その配布費用、保管費用、さらには検索費用なども考慮に入れると数百円になるかもしれない。1円から数百円までの違いがあるのでは、金額換算したとはいえない。
 あえて金額換算しなくても、紙の枚数や会議の人・時間などで定量的に把握すればよいというかもしれない。その場合も、紙と会議だけでよいのか、決裁の時間はどうかなど、何を検討項目に加えるのかで評価は大きく変化する。
 まして、「競争相手が自社カード発行をしたので、対抗上自社も発行する」というような戦略的活動では定量効果はもちろん、定性的効果にブレイクダウンすることさえ困難になる。
 このような困難があるのに、無理に金額的あるいは物理量的に把握しようとすると、かなり恣意(しい)的なでっち上げになり、意味のない数字になってしまう。
精度より制度(あるいは正確度)
 紙節減の効果での「1円」を、過去の購入記録を調べて「いや、1.21円だ」といったところで何の意味もない。それよりも、効果として保管費用や検索費用を加えるのかどうかを明確にすることが必要だ。
 毎回の評価の都度、このような議論を繰り返すのは面倒だ。紙節減、会議減少などの原単位を定める制度を作ろう。そして、「誰かがエイヤッと決めたら、それについてはそれ以上論議しない」という制度を作った方がよい。どうせ意味がないのだから。
変数値があいまいな事象に複雑な数学を使うな
 長期にわたる採算計算に関しては、現在価値法、DCF法、ROI法など多様な技法がある。基本的には、使用期間(n)中に得られる毎年の効用(Ri)と、毎年の維持費用(Ci)の差(利益)の合計が、初期の投資額(P)より大きいか小さいかで判断する。
 ところが、Pは222の法則により、2倍程度の超過は珍しいことではない。Rには、定量的効果だけでなく定性的効果や戦略的効果があり、紙1枚の節約効果は1円から数百円までのばらつきがある。Cに関しては、TCOという概念がある。例えばパソコンのTCOは、IT部門の管理費や利用部門の人件費などの「見えない」コストが購入価格の数倍になるという。
 さらに問題なのがnの値である。長期間使うのであれば、大抵の案件は有利になるだろうし、作った直後に廃棄あるいは大きな改訂が起こるのなら不利になる。ところが、その期間は経営環境やIT技術動向により決まるのだから、ほとんど予測できない。
 変数が不確定ならば、いろいろなケースを与えて、確率的に評価すればよいという。ところが、数倍~数百倍の違いがあるのだから、その計算結果もばらつきが大きく使いものにならないのだ。あるいは、高度な金融工学を援用すればよいという意見があるかもしれない。それは、さらに物事を複雑にするだけである。
ミソとクソをごっちゃにするな
 数式が役立たないならば、多数の効果項目を挙げて、それぞれに重みや評価点数を与えて評価すればよいという考え方が多い。バランスト・スコアカードも同じような考え方である。
 ところが、項目の列挙、重みの配分などはかなり恣意的なものであり、推進派は評価点数が高くなる項目を多く挙げ、その重みを大にする。反対派は逆の表を作る。すなわち、事前に有利・不利を決めておき、それを満足する評価表をでっち上げるのである。
 なお、バランスト・スコアカードは、誰(どの部門)が何をしたいのか(したくないのか)、誰が誰と協調関係(対立関係)にあるのかを明確にする手法であり、ここでのバランスとはパワーバランスの意味だという説もある。
費用対効果を追求することの費用対効果を考えよ
系:ないものねだりとでっち上げ報告
 経営者は、IT投資の費用対効果の把握に熱心なあまり、IT部門にその明確な検討と報告を要求する。ここまで述べてきたように、分からないことだらけなのであるが、IT部長は「分かりません」とはいえない。そこで、適当な評価項目や適当な数値をでっち上げて報告する。
 経営者はバカではない。でっち上げた個所を直ちに発見して指摘する。IT部長はさらなるでっち上げをする。この繰り返しが、一方(あるいは双方)があきらめるまで続く。あるIT部長が、友人の他社のIT部長にこぼした。「仕事の7割が不毛な報告書作りだ」。しかし、その友人は羨んだ。「それはすごい。オレは8割を超えている」……。
 このような悲劇は、ないものねだりをする経営者が無能だからではない。経営者も、ないものねだりであることは知っている。しかし、費用対効果を口にした途端に、この無限サイクルが自動的に発生するのである。そして、時間という最大の経営資源を浪費する。その意味では喜劇かもしれない。
 賢明な経営者は、これを高度な人事技術として活用することがある。延期という最大の反対表明をしているのに、それに気付かない無能なIT部長を不毛作業に従事させて、本来のIT業務に関与するのを封じ、自主的な退職を期待しているのである。

ITの効果とプロジェクトの効果(2008/08/14)

実は、ITの効果とはプロジェクトの効果なのだ。それに気付けば、IT化の費用対効果の判断は案外簡単なのだ。

プロジェクトの成果をIT化の成果だというなら、会議室や電話機にも同じ権利がある
 IT活用の効果といわれる多くの事例は、業務改革プロジェクトの効果である。
 そのプロジェクトには、情報システム構築のための「情報系活動」もあるし、関係者への説得、業務の改革などの「非情報系活動」もある。IT関係者は「ITがなければ、このプロジェクトは成功しない」というが、いかに立派な情報システムを構築しても、非情報系活動がなければ実現しない。
 プロジェクトの効果を「IT化の効果」だとするならば、非情報系活動の付加価値を認めないことになる。これは、ITに携わる者の我田引水、他人の成果を横取りすることでもある。
非情報系活動が、情報系活動を左右する
 自社カードのシステムを例にする。
 その目的は顧客の可視化と固定客化である。プロジェクトが発足し、カード発行計画を社内外に発表した。ところが、慣習により、いつになってもニーズが固まらない。仕方ないので見切り発車になり、「情報システムは、要求定義以前にコーディングが開始される」という状況になる。
 そのうち、顧客へのカード加入や小売店でのカード取り扱いの勧誘を始めるが、なかなか目標数値に達しない。「加入シートに個人特性の情報を求めるから加入者が少ないのだ」と指摘されて、クレジットに必要な項目だけになるし、加入者獲得のために多様な特典サービス機能を組み入れることが求められる。加盟店勧誘のためには、多様な情報提供を約束させられる。
 このようにして、「当初の機能の半分は放棄され、その2倍の新規機能が追加される」ことになる。当然、後戻りのために多大な費用と時間がかかる。
 このしわ寄せは、テスト期間の短縮につながる。そして、稼働になるとトラブルが続々と発生して、大騒ぎになる。「トラブル対処の時間はあるが、予防のための時間はない」というのが現状だ。
 そして、出来上がったシステムでは、特性情報がないので顧客の可視化は実現しないし、固定客化になったのは特典目当ての客ばかりで利益につながらない。もっとも、このようなつまらぬことに気付くことは珍しく、通常はシステムが安定して稼働したことで、プロジェクトが成功したと評価されるのである。
いくつかの代替案の中にIT化案があれば必ずIT化案が採用される
 顧客の可視化や固定客化のためには、店員の気付き帳もあるし、モニタ制度も考えられる。それなのに自社カードシステム構築だけが対象になるのは、関係者がその効果を信じているからではない。
 関係者の間に「IT化=善」という図式が刷り込まれているからである。ベテランならば、店舗で10分観察すれば的確な把握ができるだろうが、そのようなことは「カンに頼るのは非科学的で遅れたものだ」という暗黙の了解で話題にも上がらない。
情報系活動を含むプロジェクトでは、経営者は情報系活動だけに関心を持つ
 システム開発は、追加費用や納期の遅れ、処理トラブルが分かりやすい。それに対して、非情報系活動は予算も明確でなく、「目に見える」費用やトラブルが分かりにくい。それで、とかく情報系活動に関心が向く。
 ところが、プロジェクト成否のカギを握るのは非情報系活動であり、非情報系活動が情報系活動に重大な影響を及ぼすのだから、経営者は非情報系活動により高い関心を払うべきなのだ。
プロジェクト効果をIT化効果だとすり替えたい人は大勢いる
 ベンダはITサービスを売るのが商売だから、非情報系活動を含むプロジェクトの効果をIT化の効果だとすり替えるのは許されよう。しかし、このITサービスはあくまでも情報系活動でのサービスであり、加入者や加盟店の獲得のような非情報系活動にはノータッチである。どうもうさんくさい。
 IT部門は、他人の努力でも自部門の成果だといわれるのはうれしい。予算も通りやすくなる。コンサルタントは、IT化推進を進言すれば大きな費用と長い時間になるので、それだけ収入が確保される。マスコミは、その読者や広告主がIT業界なのだから、IT化推進の立場なのは当然である。中小企業のIT化推進では行政も重要なプレイヤーである。その担当者は、IT化助成の件数や助成金の額が成績になるのだから、これもIT推進派である。
 意図的にすり替えようとする連中がゴマンといるのに、それに反対する勢力が存在しない。それで「IT化=善」という図式が刷り込まれるのである。
すり替えに気付けば、IT投資の費用対効果が分かりやすくなる(松竹梅モデル)
 IT投資の効果ではなくプロジェクトの効果なのだと分かれば、経営者はITの特殊性などに惑わされずに判断できる。
 仮にIT投資がタダで実現することにする。プロジェクトによる効果と費用を算出し、それからしかるべき利益を差し引いた金額が、IT投資に許された最高額(松のレベル)である。
 「ITがなければ~」的な発言はナンセンスである。ある程度の規模のプロジェクトでITに無縁のプロジェクトはないのだから、最小限の機能を持つIT投資(梅のレベル)は必須であり、これは費用対効果以前の問題だ。
 IT投資の費用対効果とは、梅から竹や松にするかどうかの問題なのである。ここでは、プロジェクトが是か非かという本質的なものではない。「処理が速くなるか」「エラーが防止できるか」「使い勝手はどうか」などの付帯的機能とそれにかかる費用の問題なのだ。これならば、ITの素人でも判断できよう。

次へ進む