主張・講演エンドユーザ・コンピューティング(EUC)の光と影

業務統合部門にEUC支援グループを

営業本部とか本社経理部などのように業務を統合している部門のことを,ここでは業務統合部門といいます。エンドユーザを支援するグループをここではIC(インフォメーション・センター)といいます。ICを情報システム部門内と利用部門に置くことは当然ですが,それを業務統合部門にも設置することが望まれます。


業務統合部門ICの重要性と任務

情報システム部門ICの任務は,ハードや通信の整備,データの整備,利用技術の普及など全社的なEUC推進のインフラ整備を行うのに適した部門です。しかし,個別のユーザ業務に密着したEUCの活用を指導・支援するのには,あまりにも相手が多様であることから適切ではありません。また現場部門ICは,業務にマッチした支援をするのには適していますが,個々の部門で独自に支援したのでは,全体として非効率になりますし統合のとれない方向に進む危険もあります。

それに対して営業本部や本社経理部は,経営戦略に基づいて営業や経理の部門方針を設定して各部門を指導する立場にありますので,業務にマッチした統合した推進をするのに適した部門です。ここにICを設置することにより,次のような利点があります。

情報システム部門ICの効率化
業務統合部門ICは重要ですが,そこに多人数を配置したのでは人材の有効活用ができません。少人数で業務を行うには,情報システム部門が業務統合部門ICの活動を容易にするために,利用しやすいデータベースやソフトウェアを提供する必要があります。逆にいえば,情報システム部門ICをそのような整備業務につかせるために,業務に特化した個別な業務を業務統合部門ICへ移管するほうが適切なのです。
個別帳票メニューの提供
先に「個別帳票メニュー提供方式は,情報システム部門の負荷が増大するので危険だ」といいましたが,この方式は便利なものですし,それが経営に役立つものであれば,負荷が増大してもサポートするべきでしょう。これが問題なのは,とかく情報システム部門はユーザに要求されると拒否しにくい立場にあり,必要以上に多様なメニューを作らされることにあります。
 業務統合部門では,ユーザからの要求が方針に一致するものであれば,さらに役立つように発展させて普及に努めるでしょうし,一致しない要求は業務の仕方を変更するべきだとして拒否するでしょう。業務統合部門にICを設置することにより,より適切な推進ができるでしょう。
データマートへのデータ転送
セントラル・データウェアハウスの構築は,基幹業務系システムとの関係が深いので情報システム部門が行うべきですが,利用部門のデータマートはユーザが担当するのが適切です。特にデータウェアハウスからデータマートにデータを転送する業務は,ある程度の技術が必要になりますし管理も必要になるので,現場部門ICが直接行うよりも業務統合部門ICが行うのが適切です。

ローテーション・バッファとしての業務統合部門IC

EUCにかぎらず情報システム全般の発展のために,情報システム部門と利用部門の間で活発なローテーションを行う必要があります。ところが,直接のローテーションでは,業務知識や文化の違いがあるので,一定期間は戦力ダウンになります。業務統合部門ICを介してローテーションをすることにより,それを緩和することができます。

情報システム部門→現場部門
業務統合部門ICは,ある程度の情報技術知識や基幹業務系システムの知識が要求されます。情報システム部門から定期的にそこへ転出することにより,そのレベルを維持することができます。また,ここでユーザ支援をすることにより,その部門での業務知識や問題認識を高めることができます。
現場部門→情報システム部門
情報技術を習得しながら全社的な視点で考える訓練ができます。ここでは情報システム部門との連携が密ですので,情報システム部門の事情を理解することができますし,トップを支援する立場にありますので,トップと話し合う機会も多く経営戦略をよく理解できます。


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