主張・講演情報システム部門の戦略部門化とアウトソーシング

準備なしで情報システム部門を戦略部門にする危険

情報システム部門は戦略企画部門として育成されてきませんでした。そのままの状況でDP業務をアウトソーシングをすると,名前だけは戦略部門になっても,有効な業務を行うとは限りません。アウトソーシングが先か育成が先かはニワトリとタマゴの議論になってしまいますが,次のような危険があることを認識して,それを回避しなければなりません。


ユーザとの関係がぎくしゃくする
いままで情報システム部門はユーザに従順でした。戦略部門の自覚がないために,単に各部門のニーズのまとめ役になる危険があります。あるいは経験がないために,過剰にトップの代行役を自認して,各部門のニーズを無視して,自分の意見を押し付けたりしがちです。
評論家的観念論が横行する
いままで存在理由であったハードウェアやシステムがなくなると,現実的な関心が薄くなり知識も時代遅れになってきます。それで,現在では通用しない時代遅れの知識を振り回したり,ベンダやマスコミから得た最新の技術を自社の状況を無視して導入を主張するなど,観念論を振り回すことになります。あるいは情報を得ようとして,ベンダ(子会社も含む。以下同じ)に過剰な調査や報告を要求し,ベンダの労力を増大させてしまう危険があります。
過剰戦略論者になる
経営戦略と情報技術動向の統合化を図るのが任務のはずです。ところが,現実的な情報技術の知識が不足しているために,経営戦略を制限するようなことをいうと「古い知識に拘泥している」「古い情報システム部門から脱却できていない」といわれるのが怖いので,現実の情報技術の限界や自社の情報活用成熟度を無視した空想的な戦略実現を主張する危険があります。これでは情報技術の素人でも務まりますね。
ベンダのコスト監視者になる
戦略的アウトソーシングでは,ベンダとの関係はビジネスパートナーであり,相互信頼の上に成り立つはずです。ところがトップがコストに関心を持つと,あるいはベンダにうまくやられているのでないかと思われることを気にして,それに過剰に反応して,過剰にベンダのコスト監視をするようになります。その結果,ベンダは改善をしてもそのメリットをすべて吸い上げられてしまうので,創意工夫や提案をしなくなる危険があります。
人材が集まらない
このような状況になると,社内でも重要な部門とは思われなくなります。少なくとも情報技術者は避けるようになるでしょう。それで,本来の「情報技術を持った企画部門」が有名無実になってしまいます。