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OSI(Open Source Initiative)は、OSD(The Open Source Definition)でオープンソースソフトウェアを次のように定義している(説明のために表現変更)。
参照:OSI(八田真行訳)「OSD(var.1.9)」
http://www.opensource.jp/osd/osd-japanese.html
これは、OSIの主張する定義であり、これに合致しなければオープンソースソフトウェアといってはならないという排他的なものではない。しかし、この定義は広く受けいられているので、これと相違する場合には、みだりにオープンソースソフトウェアを名乗るべきではない。
「フリー」には2つの意味がある。
・フリー=無料:利用権を無料で提供する
いわゆる(シェアソフトに対する)フリーソフトがこれに該当する
・フリー=自由:著作権に制約されない→著作権での「何が」フリーなのか多様
再頒布の自由? 改変(機能追加など)の自由? 二次著作物の頒布の自由?
OSDのオープンソースソフトウェアの定義では、「無料/有料」については規定していない。「著作権」は放棄せず、その適用を緩和しているだけである。また、フリーソフトはソースコードを提供しないのが通常である。
ところが、オープンソースソフトウェアの名称が一般化する以前に、フリーソフトウェアという名称が使われていたこともあり、混同されていることが多い。
また、ソースコードを公開しているのは、作成者の信念あるいはボランティア精神によるものだと認識されていることがあり、それが「フリー」との区別をあいまいにしていると思われる。そのような場合も多いが、ソースコードを公開することにより、他人にデバッグや改良をしてもらうこと、あるいは普及・発展することにより関連分野でのビジネス展開を期待する意図もある。
参照:IPA「OSSライセンスの比較および利用動向ならびに係争に関する調査報告書」2010年
http://ossipedia.ipa.go.jp/doc/203/
以下、代表的なオープンソースソフトウェアを年代順に列記する。特にWebシステムでの主要なソフトウェアがオープンソースソフトウェアとして提供されている。なお上述のように、これらのソフトウェアが、すべてODSの定義に合致しているわけではない。
自動車のコストの約半分は電子機器であり、それに組み込まれているソフトウェアの費用は大きな割合になるが、ソフトウェアだけを取り出して販売をすることはない。それと同様に、コンピュータが普及しはじめた1960年代では、ソフトウェアはハードウェアの付属的な存在であった。有料・無料以前に、価格がなかったのである。
当時開発された言語であるFORTRANやCOBOLは、IBMやCODACYLで開発されたが、そのソースコードは公開されなかったとはいえ、「コンパイラの作り方」のような図書は多く刊行されたし、多くのノウハウが広く知られていた。
OSは各メーカーの大きな資産であり機密情報になっていたが、他メーカーのコンピュータには搭載できなかったため、そのソースコードに関心を持つものは競合コンピュータメーカーであり、一般のユーザ企業は、ハードウェアを買えばOSがプレインストールされているので、不正コピーをする動機すらなかったのである。
それが大きく変化したのが>アンバウンドリングである。IBMは、1969年に司法省と独禁法をめぐる裁判で負けて、ハードとソフトのアンバンドリング(価格分離) 政策を発表した(日本のコンピュータメーカーがアンバンドリングしたのは1977年)。
また、この頃からソフトウェアの価値が認識され、サードパーティによる汎用ソフトウェアが開発されるようになった。そのため、ソフトウェアの販売は、利用権の売買になり、ソースコードは企業機密になったのである。
1980年代中頃になると、ソフトウェア開発者の権利が厳しいことが、ソフトウェアの発展を妨げているという意見が強くなった。
リチャード・ストールマン(Richard M. Stallman)は、「使用、学習、コピー、改変、再頒布を自由に行えるソフトウェア」が必要だと主張して、それをフリーソフトウェアと命名し、(商用の)UNIXではないが、同等なるソフトウェア開発プロジェクトであるGNU(GNU is not UNIX)プロジェクトを組織した。この運動は発展して、1985年にFSF(Free Software Foundation、フリーソフトウェア財団)が設立された。
GNUでは、フリーソフトウェアで問題とするのはいわゆる「自由」であり、ユーザがソフトウェアを実行、複製、頒布、研究、変更、そして改良する自由のことを指している。この自由を得るには、ソースコードが入手可能であることが前提条件になる。ここでは「無料」の概念はない。無料で入手したソフトウェアを有料で再頒布すること、その逆も認めている。
参照:GNU Operating System(八田真行約) 「フリーソフトウェアの定義」
http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.ja.html
これは著作権の放棄ではない。著作権を放棄すると、他の人が(ちょっとした変更を加えたりして)著作権を主張することが考えられる。それを回避するには、著作権を確保しつつ、上記の自由を与えるのが適切である。この概念をコピーレフト(Copyleft、著作権のCopyrightをもじった表現)という。
また、FSFは、フリーソフトウエアの概念を明確にしたライセンス契約書GPL(General Public License)を公表している。
参照:FSF「GPL」(第3版)
http://sourceforge.jp/projects/opensource/wiki/licenses%252FGNU_General_Public_License_version_3.0
GNUの活動は、主張が正しく伝わらずに、「フリー=無料」と誤解される傾向があった。また、GSLでのコピーレフトの概念にとらわれなくても、その主張が実現できるとの考えがでてきた。それで、フリーソフトの否定的なイメージを払拭するために、「オープンソース」という名称を用いる動きが出てきた。
1998年、Webブラウザ競争は、マイクロソフトのIE(Internet Explorer)が勝利し、ネットスケープコミュニケーションズのNetscape Navigatorはシェア低下していた。エリック・レイモンドらは、Navigatorの立て直しのプロジェクト(Mozillaプロジェクト)を推進し、誰でも開発に参加できることが有効だとして、後にOSI(Open Source Initiative)が具体的に定義したオープンソースソフトウェアの概念(前述)を提唱した。
2000年代前半において、オープン系のソフトウェアは Windows や Office などマイクロソフト製品が独占的なシェアをもっていた。それに対して、オープンソースソフトウェアを重視すべきだとの意見が強くなった。
参照:経済産業省、「オープンソースソフトウエアの利用状況調査/導入検討ガイドライン オープンソース・ソフトウエアの現状と今後の課題について」2004年
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004397/1/030815opensoft.pdf
比屋根一雄、飯尾 淳、谷田部智之「世界各国政府のオープンソース採用動向」2005年
http://thinkit.co.jp/free/trend/2/1/1.html