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プロジェクタの歴史


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プロジェクタ光源の歴史

~1800年代 白熱電球以前の時代

1700年代 石油ランプ

当初は、種油や胡麻油などの植物油たロウソクが用いられたが、より明るい石油ランプに移行した。

ガス灯(gas lamp)

石炭から得たガスの炎を火口に装着したマントルという丸い発光体に入れて照明。主に街路灯として使用され、プロジェクタ光源にはあまり使われなかった。


アーク灯(arc lamp)

電気を用いた初の照明。炭素棒間に直流電流を流し、放電により加熱された炭素棒の先端が気化し、発生した炭素蒸気が両極間のアークにより白熱して強い光を発することを利用。弧光灯ともいう。主に街灯に使用されたが、これを光源とするプロジェクタ(幻灯機)もあった。


1900年代 白熱電球の普及

白熱電球

キセノンランプ(xenon lamp)


拡大図

キセノンガスを封入したガラス管の中に電圧をかけ放電させて発光。プロジェクタ用には、高圧キセノンガスを封入したショートアークキセノンランプが用いられる。

ハロゲンランプ(halogen lamp)

キセノンガスの代わりにハロゲンガスと不活性ガスを封入。形状はキセノンランプとほぼ同じ。高温での黒体放射による発光。高輝度、高耐熱性、長寿命などの特徴をもつ。
 プロジェクタ用に広く用いられた。

2000年~ 高輝度光源の出現

ランプ種類 稼働寿命 「日約3時間使用」で
換算した寿命
ランプ交換
可能or不可
特徴
水銀ランプ 約4,900~9,900時間
(輝度により変動)
約4.5年~約9年 可能 高輝度な映像。発熱量が多いので、消費電力は高め
LEDランプ 約20,000時間 約18年 不可 消費電力低め。本体の小型化がしやすい
レーザーランプ 約20,000時間 約18年 不可 高輝度。本体の小型化がしやすい

出典:Aladdin X「違い比較|LED、レーザー、水銀ランプ|プロジェクター光源」
https://www.aladdinx.jp/blogs/popin-owned/led-kougen-projector

超高圧水銀ランプ(HIDランプ)

HIDランプ(High Intensity Discharge Lamp)、ハロゲンランプと同様、ガスを封入して発光する。発光材料によって水銀が発光する高圧水銀ランプ,各種の金属が発光するメタルハライドランプ,ナトリウムが発光する高圧ナトリウムランプなどがある。
 プロジェクタに用いられるのは、水銀を用いたメタルハライドランプであり、超高圧水銀ランプと通称する。形状はキセノンランプとほぼ同じ。

LED光源

LED(Light Emission Diode、発光ダイオード)は、p-n接合に電流を流して発光させる半導体発光素子。一般的なランプ光源を持たず、LEDチップにあるLEDが発光する。
 小型化が容易なので、小型プロジェクタ(ピコ・プロジェクタ)が可能になった。

レーザー光源

レーザー発振器が光源ランプの役割になる。


往年のプロジェクタ

幻灯機(magic lantern)

透過型と反射型がある。
 透過型は、暗箱の中に光源を置き、前方に透明な画像(イラストや写真)をはさみ、先端に取り付けたレンズを通してスクリーンに映写する。
 反射型は、画像を暗箱後方あるいは上部に置き、鏡で反射した光をレンズを通してスクリーンに映写する。


日本への幻灯機伝来と普及(1880年代)


スライドプロジェクタ(slide projector )

スライドとは「滑る」意味だが、枠に入れたポジフィルムを順に動かして表示することを指す。複数の画像を準備しておき、順に表示する機能は、以前からの幻灯機でも行われており、スライド機能で新プロジェクタとするのは不適切である。むしろ、幻灯機の高度化とするのが適切であり、両者の間は連続的である。

スライドプロジェクタは、1900年代の中頃以降から普及した。通常は単にプロジェクタ(あるいは幻灯機と呼ばれていた。

スライドプロジェクタは、ホームシアターとして使われるようになった。
 家庭用でカラー写真フィルムは、かなり以前からあったが、日常的に使われるようになったのは1970年代である。
  1941年 小西六(現コニカ) 「さくら天然色フヰイルム」発売
  1958年 富士フォルム 「フジカラーネガティブフィルム」「フジカラーペーパー」発売

OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)

スライドプロジェクタと同じ頃、高光源の普及に伴い、OHPが普及した。OHPは光源の位置により二つの型がある。

反射型OHP

実物投影機ともいう。光源から提示物を照らし、その反射光を反射鏡とレンズにより投影する。

透視型OHP

単にOHPというとこの型を指すのが通常である。提示位置の直下にレンズがあり底部に光源がある。光源からの光は、透明シートに描かれた資料を透視して反射鏡を通してスクリーンに焦点を結ぶ。

OHPの歴史


CRTプロジェクタ

日本では1953年にテレビ放送(モノクロ)開始。その受信機がCRTテレビ(ブラウン管テレビ)であった。
 テレビの電気信号をパソコンのVRAMからの信号に置きかえればパソコンのディスプレイになる。最初のパソコンは1973年にAlto発表、1980年代に普及が進んだが、そのディスプレイにはCRTが用いられた。
(参考)ディスプレイの歴史
 CRTプロジェクタは、パソコンとプロジェクタを接続し、ディスプレイ画面への情報をプロジェクタに送り、大画面スクリーンに映写することにより実現できる。CRTプロジェクタはパソコンと共に1980年代に普及が進んだ。

CRTテレビ(ブラウン管テレビ)


拡大図

放送局ではテレビカメラで撮影した画像を、525本の線(縦の走査線)に分割する。さらに1走査線の横の画素単位に分割して、電気信号(横の位置、色彩、光の強弱)に変換して放送する。

受信側(テレビ)は、アンテナその電気信号を受信して、次のステップにより、発光面に映像を表示する。

パソコンのCRTディスプレイ

パソコンでは、ディスプレイの縦・横の各画素に対応した、明るさの強弱情報をVRAMというメモリに作成する。明るさの強弱情報とは、
  モノクロのとき、強弱のレベルを例えば126段階(1バイト)で記録
  カラーのとき、R・G・Bのそれぞれについて126段階(全体で3バイト)で記録
である。
 このVRAM情報をディスプレイに渡す。これ以降はCRTテレビと同じ。

CRTプロジェクタ

CRTプロジェクタでは、3管式が多く採用された。パソコンから受け取ったVRAM情報をR・G・Bに分割、それぞれに対応した3個の電子銃を用いた光にして、電子銃の前に置いたレンズでスクリーンに映写する。
 スクリーンでの位置合わせに微妙な調整が必要なので、プロジェクタとスクリーン位置を固定するために、プロジェクタとスクリーンを一体にするとか、プロジェクタうぃ天井に固定するのが通常だった。

カラーCRTディスプレイの蛍光面を小さいミラーにして、一つのレンズでスクリーンに映写する方式もあったが、すぐに液晶プロジェクタへ移行した。



現在のプロジェクタ

プロジェクタシステムへの進化

2000年になると、超高圧水銀ランプ、LED光源、レーザー光源など高輝度光源が出現し、大講堂でも通常の明るさの室内でプロジェクタが使われるようになった。

プロジェクタ自体の性能向上だけでなく、パソコンと連動させることにより、システムとしての発展が進んでいる。
 パソコンのモニタに表示できるすべての画面は、プロジェクタを介してスクリーンに投影できる。これはCRTプロジェクタ時代でも実現していたが、常識的な利用になったのは、パソコン利用環境が劇的に変化した2000年以降である。

高輝度プロジェクタの歴史

普及が始まった年代
  超高圧水銀ランプによるLSD方式、LSOS方式は1990年代初頭
  DLP方式は2000年代初頭
  LEDプロジェクタ、レーザープロジェクタは2010年代初頭

代表的な投映方法

当初は1枚パネルのプロジェクタがあった。液晶テレビや液晶ディスプレイの液晶面をそのままプロジェクタに取り込み、光源を当て、レンズでスクリーンに投映すれば簡単である。
 しかしそれでは、電源が完全な白色ではなく、投影画像の色が正確でないこと、1枚の液晶パネルでフルカラーを表示するので、明るさや品質が犠牲になることなどの理由で普及しなった。

現在での代表的な方式には、LSD、LSOS、DLPがある。
 ここでは、光源を超高圧水銀ランプにしているが、レーザーやLEDでもランプ発光部分が異なるだけで、それ以降はほぼ同じである。

拡大図
 
LCD方式(透過型液晶方式)
LCD=Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ
  • ライトの光を、ダイクロイックミラーにより三原色の単色光に分解する
  • それぞれの単色光を透過型液晶パネルにあてる。
  • パネルは、画素に対応するLSDがあり、パソコンから送られてきた個々の色強度に応じた強度の光を透過させる。
  • クロスダイクロイックプリズムにより一つの色(元の色)に合成、投影レンズもよりスクリーンに投映される。
三原色に分解することから3LCD方式ともいう。
ホームシアタ用のプロジェクターとして主流の投影方式
LCoS方式(反射型液晶方式)<.dt>
LCoS=Liquid Crystal On Silicon シリコン基板
液晶パネルの液晶層の背後に反射板を置き、ランプの光を反射させ投写する。
カラー再現性、解像度、コントラストが優れた高画質が得られる。
構造が複雑なので、サイズが大きく高価格。ハイエンドユーザー向け
DLP方式
DLP=Digital LightProcessing
  • 光源からの光を回転するカラーホイールを通すことにより、微小時間で切り替わるR・G・Bの単色光にする。
  • それぞれの単色光はDMDで反射される。DMDは画素に対応した微小な鏡からなり、個々の鏡はパソコンのVRAM情報により角度を制御して、反射光の強弱にする。
  • スクリーンにはR・G・Bの単色光が微小時間で投映されるが、人間には重なって見える。
コントラスト比が高く、メリハリのある映像が得られる。
部品数があまり多くないため、小型化しやすい。
  • 3チップDLP方式(3板方式)
    映画館などで使われる業務用プロジェクタに使われる。
  • 1チップDLP方式(単板式)
    部品数があまり多くないため、小型化しやすい特徴があります。持ち運びが簡単なモバイルプロジェクターに使われることがほとんどである。
  • レインボーノイズ(映像には含まれていない虹色のような模様が見える現象)が発生することがある。

光源による区分と比較

下表は、比較のため、3者間の差をあえて強調している。同一光源内でも大きなばらつきがあるが、あえて一つにしている。

  光源   方式  価格 輝度 消費電力 小型化 寿命 点灯時間
  水銀   LSD  〇  △   ×   ×   ×   ×
  レーザー DLP  △  〇   △   △   〇   〇
  LED  DLP  ×  ×   〇   〇   〇   〇

超高圧水銀ランププロジェクタ

上述の「代表的な投映方法(LSD、LSOS、DLP)は、暗黙に超高圧水銀ランププロジェクタを想定しているので省略。最も多いのがLSD方式。

超高圧水銀ランププロジェクタの特徴

レーザープロジェクタ

光源はレーザーダイオードである。レーザー発振器は、を組み合わせた構造。
   レーザー媒質:励起源の光を吸収する元素を含有した物質
   光共振器:特定の波長の光を反射するミラーで囲んだ発振器
   励起源:レーザー媒質にエネルギーを与えるための光源

レーザー光源の方式

投映の仕組み

1レーザー方式、DLP方式での投映は次のステップで行われる。

レーザープロジェクタの特徴

LEDプロジェクタ

ここでは、3原色LEDによるバックライト型のプロジェクタとする。
 プロジェクターの光源として、RGBの3個の光源装置に多数のLED素子(LEDランプ)を用いた光源装置を用いる。それぞれの光源装置からの単色光は、透過ミラーを通すことにより白色光になる。
 それ以降は、この白色光を水銀ランプ光源と見立てて、LSD方式などを用いればよい。

(注)
白色LEDを用いて光源装置1個を用いるものがある。
バックライト型ではなく、パソコンからの画像情報を光源装置に伝え、画素に応じた強弱の光を発光する輝度制御型(後述)もある。

LEDプロジェクタの特徴

輝度制御型

通常のLED素子は直径1mm程度だが、100μm〜200μm程度のminiLED、100μm未満のマイクロLEDが開発されている。
 これらを用いれば、画素数に対応した個数のLED素子をパソコンからの画像情報パソコンからの画像情報におき、パソコンからの各画像の画像情報により、画像全体の光をパソコンからの画像情報を出すことができる。この仕組みを輝度制御という。
 画素数に応じた個数のLED素子を実装できないときは、画像を幾つかの画素にまとめて、画素群とすることもある。それを局所輝度制御という。