POSシステムを用いる目的の一つに単品管理がある。それには商品ごとに異なるバーコードが必要であり、企業をまたがる利用のためには、JANコードのような標準コードの制定が必要である。ここでは、スーパーやコンビニなどでの食品や日用品につけられたコードを対象にする。
なお、「シンボル」と「コード」という言葉が使われる。シンボルとは、「1」や「2」を表示する太い線と細い線の組み合わせの方法、線の間隔、線の太さなどのことである。それを標準化することにより、スキャナで読み取ることができる。コードとは、例えばJANコードでは、全体の桁数は13桁で、先頭の2桁は生産国コードで日本は49あるいは45であるというような数字列のルールづけのことである。しかし、ここでは混同して用いている個所もある。
標準コード以前の試行
- 1949年 ウッドランド、シルバー、円形シンボルの特許出願
Norman Joseph WoodlandとBernard Silverは、図のような円形シンボル("bull's eye" symbolと呼ばれた)を考案して、「Classifying Apparatus and Method」として特許申請、1952年に特許を取得した。実用的に普及はしなかったが、これが最初のバーコードだといわれている。
- 1968年 Identicon社、Two of Five Code
- 1972年、Intermec社、ITF(Interleaved Two of Five)
「2of5」とは、2本の太線と3本の細線の組み合わせのうち前4本の中の太線にウエイトづけして数値を表す方式。ITFでは、データの奇数桁を黒部分、偶数桁を白部分が独立して表現する。後に、物流標準シンボルとして使われるようになった。
- 1955年 米国商工会議所、POSシステムの原型構想
小売店の将来形態として、キャッシュレジスタと電子スキャナによる自動チェッキングシステムが重要になろうという構想報告。これが最初のPOSシステムの概念であるという。
- 1967年、クロガー、初のチェッキングシステム試行実験
- 1972年 ダイエーと三越百貨店、日本初のチェッキングシステム試行実験
クローガー(Kroger)は米国3位(現在)の大手スーパー
この頃は未だ共通商品コードがなく、実験のために個別にバーコードのマーキングをする必要があった。
共通商品コードの制定
- 1973年 UPCコード(Universal Product Code)制定
- 1977年 EANコード(European Article Number)制定
- 1978年 JANコード(Japanese Article Number)制定
これらは、食品や日用品にあらかじめ印刷されているバーコードである。
米国食品チェーン協会は、共通商品コードが必要だと考え、UPCコードを作成した。同協会の提案依頼に応じたIBMのものが原案になるが、IBMは特許権利行使をしないというパブリックドメイン宣言をした。
EANコードは、UPCと互換性をもたせており、JANコードは基本的にはEANコードの国コードが49および45のものである。
- 1987年 集合包装用商品コード(物流ITFシンボル)の制定
JANコードに包装用のコードを加えた14桁あるいは16桁(16桁は日本独自)のコード体系で、段ボールなどにも印刷しやすいようにITFシンボルを使用した。
- 1976年 OCR-A/Bフォント制定
衣服などではタグにつけられた印刷文字を文字を読み込んで利用してきた。その印刷文字のフォントの標準化も行われた。
1980年代になると、スーパーやコンビニでの電子化が進んだ。特にセブンイレブンはPOSシステムの高度利用に優れており、1982年にPOSシステムを導入するとともに、納入業者にソースマーキングを要求。これがJANコード普及に貢献したといわれている。
2次元コード(QRコード)
QRコードは、日本のデンソーが考案したものであるが、パブリックドメイン宣言をしており、1999年にJIS規格、2000年にISO規格になった。
GTIN(Global Trade Item Number)による商品識別コード統合化
GS1(Global Standard One)は流通情報の国際標準化機関組織。2005年に、欧州と米国の商品コード標準化組織(EANとUCC)の統合に伴いUPC/EANの商品識別コードおよび集合包装用商品コードを統合した国際取引商品番号GTINを制定した。当然、日本もそれに準拠することになった。
GTINでは14桁が標準になっている。JANコードは13桁のままでよいが、その処理段階で14桁にすることになる。日本独自の16桁の集合包装用商品コードは使えなくなった。