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パソコン用記憶装置(HDD、FDDなど)の歴史


パソコンの外部記憶装置は、磁気ディスク(HDD)のようにパソコンに必須で通常は内蔵されているものと、CD-ROMやUSBメモリのように装置(ドライブ)と媒体(デバイス)が別になっているもの(リムーバブルデバイス)に大別できる。

現在のパソコンでは、HDDが故障するとパソコン全体が使えなくなってしまう。それはOSや基本的なソフトウェアが磁気ディスクに入っているからだ。これは汎用コンピュータでも同じである。ところが初期のパソコンでは、OSなどの規模が小さかったし、パソコンに使うような安価なHDDが開発されていなかったので、OSなどをROMに書き込んでいたのである。すなわち、HDDがなくもパソコンが使えた。
 それが、1980年代になると、MS-DOSのようにOSが大きくなったこと、HDDが安価になったことから、現在の方式に移行したのである。その後、HDDは小型化、大容量化、高速化が進んだ。しかし、HDDは回転機構をもつことから限界がある。2000年代末頃から、その限界がいわれるようになり、半導体素子を用いたSSDが注目されるようになった。

データやプログラムの保管や他人への配布のためには、リムーバブルデバイスが必要である。大きな流れとして、カセットテープ→フロッピー→光ディスク(CD-ROM→CD-R→DVD)→USBメモリへと大容量化、利便化が進み、2000年後半には新しい光ディスクであるブルーレイディスクが出現した。


磁気ディスク(ハードディスク、Hard Disk Drive、HDD)

HDDの小型化

HDDは、汎用コンピュータやオフコンでは以前から一般的に使用されており、大容量化、高速度化競争の時代になっていた。しかし、パソコンでは小型化と低廉化が必要なため、実用化した製品が出現したのは、1980年代前半である。この分野では国産メーカー、特にノートパソコンのトップメーカーである東芝がリーダーシップをもっていた。

1980年代前半:5インチ・5.25インチHDD

  • 1973年、IBMはIBM3340を開発した(開発コード名:ウィンチェスター)。これはパソコン用ではないが、ディスクは固定型で筐体は完全密閉、ヘッドは浮上式であり、現在のパソコン用HDDは、基本的にウィンチェスター型になっている。
  • 1980年、シーゲイト・テクノロジーは最初のパソコン用5.25インチHDDであるST-506(5MB)を開発した。ウィンチェスター型である。
  • 日本では、1981年に三菱電機がM4863シリーズ(5.25インチ、最大10MB)を開発。同社の16ビットパソコンMULTI 16に外付けで接続できた。
  • 1982年、富士通パソコンFM-11、1983年、NECパソコンPC-98H31などが、外付けHDDが接続可能に。
  • 1983年、国産各社が5/5.25インチHDDを発売。富士通:M2235、東芝:MK-50FB、日立:DK511-5など。
    それにより、多くのパソコンが外付HDD接続を可能にした。

当時はHDDは高価だった(定かではないが40万円程度だったと記憶している。庶民には高根の花だった)ので、販売政策上もそれを内蔵するのは不適切であり、外付けのためのコネクタがあり、それをアクセスするOSを搭載しているだけだった。1981年には、「ディスク」をベースとするOS(MS-DOS)が開発されていたが、この「ディスク」はフロッピーディスクでもよかったのである。

HDD内蔵した(標準装備した)パソコンが出現したのは、1984にIBMがAT/PC機を発売してからである。この初代機では、フロッピーを装備したものと、10MBのHDDを内蔵した機種があった。
日本では、AT互換機は少なかったが、この動向からHDDを内蔵する機種が増加した。HDDの価格も急速に安価になった。

1980年代後半:3.5インチHDD

デスクトップパソコンに内蔵されるHDDは、3.5インチが主流になった。

  • 1985年、NEC:D3116/D3126
  • 1987年、富士通:M2225(Picobird-1)
  • 1988年、東芝:MK-130FAシリーズ
  • 1989年、日立:DK312C
    ヘッド位置決めサーボに、初めてエンベッディッドセクタサーボ方式を採用し大幅な高精度化が図られた。本方式は,その後現在に至るまで全てのHDDで採用されている。

1990年代前半:2.5インチHDD

1990年代になると、ノートパソコンが普及するようになった(参照:「ノートパソコンの歴史 1990年代」)。それに伴い、HDDの小型化が要求され、2.5インチになった。1990年代中頃からは、その薄型軽量化、大容量化の競争になった。

  • 1990年 東芝:MK1122FC
    世界初の2.5インチHDD、ガラス基板メディアを採用
  • 1991年 東芝:MK2124FC
    2.5インチで130MBを実現
  • 1993年 国内各社2.5インチHDD発売
    東芝:MK2428FB/MK2428FC(520MB)、富士通: M2637、日立:DK211A-51/211C-51、1994年、NEC:D2713など
    1995年、東芝はMK2720FB/MK2720FCで1.35GB。このサイズで1GBを達成
  • 東芝、1996年に8.45mmのMK0200MAT、1998年に6.35mmのMK2109MAF
    いずれも2.5インチで世界最薄型であり、ノートパソコン本体とともに薄型化競争が行われるようになった。

なお、2000年代になると、ネットブックなどの小型パソコン用に、さらに小型化が求められ、1.8インチ、0.85インチなども出現した。

HDDの大容量化、高速度化

新ヘッド方式の開発

HDDのヘッドの感度がよくなれば(微細な磁気を読み取ることができれば)、ディスクの記録密度を高くすることができ、記憶容量を大きくすることができる。1990年代後半から2000年代にかけて、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッドなどが開発され(簡単な説明)、急速に記録密度が増加した。

  • 1992年 MR技術
    1994年 富士通:M2915、1996年 NEC:DVF4400S、日立:DK224A-14など
  • 1996年 GMR技術
    1998年 東芝:MK3207MAT(世界初)、日立:DK228A-65、1999年 富士通:MAF3364/MAG3182/MAG3091など
  • 2004年 TMR技術
    2005年 東芝:MK2035GSS(世界初)、2007年 日立:Travestar5k160など
  • MRヘッド(Magneto Resistive Head)
    それ以前の磁気ヘッドには、電磁石の要領で磁性体から発生する磁力を読み取る電磁誘導型ヘッドが使用されていた。 導体に外部磁界を加えるとそれに応じて電気抵抗値が変化する現象を磁気抵抗効果というが、MRヘッドは、磁気抵抗効果を利用することによって感度を高めたものである。
  • GMRヘッド(Giant Magneto Resistive Head)
    非磁性金属層を2枚の強磁性層で挟んだ磁性金属多層膜において、強磁性層の磁性の向きが平行なときと反平行なときで薄膜の電気抵抗が変化する現象を巨大磁気抵抗効果よいう。GMRヘッドでは、その現象を利用して、MRヘッドよりもさらに高感度にした。
  • TMRヘッド(Tunneling Magneto Resistive Head)
    MRヘッドやGMRヘッドが磁化の向きから生じる電流の差からデータを読み出すので、記録密度は100Gb/inch2が限界だとされていた。それに対して、TMRヘッドは、本来必要なエネルギーが足りないのにもかかわらず電流が流れるというトンネル効果を利用しており、微弱な磁界変化で電流差を検出できるので、垂直磁気記録方式を利用した高密度化が可能になった。

HDDの回転速度の向上

回転速度が大ならば、サーチ時間や転送時間が短くなる。そのため、モータなどの改善により、回転速度の向上が図られてきた(回転速度は、1分間の回転数rpmで表示される)。
 1990年代初頭までは、すべてのサイズで3600rpmが一般的であった。1990年代中頃から3.5インチでは、7200rpmが主流となり、現在に至っている。高回転のものでは、15000rpmのものもある(2005年、Maxtor製のAtlas 15KII SAS)。2.5インチでは、1990年代中頃から現在まで4200rpmが多い。

 しかし、高速回転させると(特に周辺部分では)線速度が大になる。また、記録密度を向上させるには、ヘッドとディスクの浮上すき間を低減する必要がある。現在この浮上すき間は10nm(1nmは10億分の1m)のレベルになっている。高速にすると、そのすきまの距離を安定させるのが困難になる。そのため、HDDの回転速度をあげることによる高速化には限界がある。それで、2000年代末頃から、回転機構をもたない半導体のSSD(後述)が注目されるようになった。

現在の代表的HDDメーカー

世界でのパソコン用HDDメーカーを出荷台数シェア順に列挙する。

  • シーゲイト(Seagate、2005年Maxtorを買収)
    世界最大のHDD専業メーカー。デスクトップやサーバ向けの3.5インチ型に強い。Maxtorは高速回転技術に強い。
  • ウェスタン・デジタル(Western Digital)
    チャレンジャーとしての存在。HDDのコントローラであるATAの開発で有名。
  • 日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST:Hitachi Global Storage Technologies)
    2003年に日立とIBMのHDD事業部門が統合して誕生。当時は2.5インチで高いシェアをもっていたが、最近は低下している。
  • 東芝(2009年富士通のHDD部門を買収)
    東芝は、HDDの小型化技術に優れ、その分野で世界初の機種を発表し続けてきた。富士通は、国内パソコンでNECとならぶシェアをもっており、相乗効果を狙っている。なお、パナソニック四国エレクトロニクス(旧松下寿電子工業)へOEM生産委託が多い。
  • サムスン電子(Samsung Electronics、韓国)
    2000年代に入り、低価格製品を中心に急速に拡大している。外付けHDDとして日本ではアイ・オー・データ機器やバッファローなどが採用している。1.8インチの生産は、サムスン電子と東芝だけになっている。

リムーバブルデバイス

パソコン初期の記憶装置:カセットテープ、フロッピー

カセットテープ

初期のパソコンが出現した1970年代後半には、下左図のような音声録音用のカセットテープは既に普及していた。フロッピーディスクも開発されていたのだが高価だったため、当初では記憶装置としてカセットテープを使うのが一般的であった。音声用のカセットレコーダをそのままパソコンに接続して用いることもできたが、品質向上のため、専用のカセットデータレコーダもあった。下右図は専用レコーダを搭載したパソコンの例(MZ-80)である。

カセットテープは安価であったが使いにくいものだった。そのため、1980年代中頃になると、フロッピーディスクの低価格化と普及に伴って利用されなくなった。

  • ランダム呼び出しができない
    磁気テープなのだから当然である。テープの先頭から探すので、終りのほうに保存してあるデータやプログラムを呼び出すには時間がかかる。そのため、15分用の安価なテープを購入し、一つのデープには一つのファイルしか記憶しないようにしたが、テープの量が多くなって整理に困ったものだった。
  • 低品質・不安定
    特に音声用カセットレコーダでは、デジタルデータをアナログ音声として記録し、その逆変換により読み込むのだから変換エラーが発生するし、保存や読み込みでテープが伸びたりしてエラーが発生する。「Device I/O Error」が頻繁に発生し、仕方なく専用カセットデータレコーダを購入する羽目になるのが多かった。

フロッピーディスク(Floppy Disk Drive、FDD)

フロッピーディスクの媒体自体は、円盤の薄い磁気シートであり、そのサイズは、歴史的に8インチ→5インチ(5.25インチ)→3.5インチと変遷してきた(用途によりさらに小さいサイズもあるが)。8インチと5インチは紙のカバー、3.5インチはプラスチックの密閉容器に納められている。


左より8インチ、5インチ、3.5インチ
出典:null「日々「お」と思ったこと フロッピーディスク」

8インチフロッピーとドライブ
出典:白馬「飛行缶 フロッピーディスクの台頭」

外付け3.5インチフロッピーディスクドライブ
出典:SONY「商品情報 VGP-UFD1」

8インチ(フロッピーディスク)1971年、IBM開発、容量128kB。
5.25インチ(ミニフロッピーディスク)1976年、米シュガートアソシエイツ開発。容量が80kB。

円状の磁気シートが紙の保護ケースに包まれていた。ペラペラなので磁気ディスクとの対比からフロッピーディスクと呼ばれるようになった(IBMは、フレキシブルディスクと命名したのだが、特に日本では定着しなかった)。
当時の定番的笑話。フロッピーからプログラムを読み込むのに、初心者に「フロッピーを開いて~」といったら、紙のカバーを破って磁気シートを取り出してしまい「何も書いてないけど?」

3.5インチ(マイクロフロッピーディスク)
  1980年、ソニー開発。当初は360kB。1984年にISO規格になる。
  プラスチックの容器に納められるようになったが、「フロッピー」の名称は残った。

外付け装置ならば、パソコンに関係なく古い大サイズのものが使えるが、内蔵の場合はそれに規制される。1982年頃に発表されたパソコンでは、5.25インチを内蔵したものと3.5インチを内蔵したものの両方があったが、急速に3.5インチになり、その後長い間、3.5インチフロッピーディスク内蔵がパソコンの標準仕様になった。

3.5インチフロッピーは、記憶容量から次の3モードがある。最終的には2HDになった。
・2D(両面倍密度)320 - 360kB
・2DD(両面倍密度倍トラック)640 - 720kB
・2HD(両面高密度):1.44MB、最も普及した規格
フロッピー装置は、この3規格を読み書きできる3モードが一般的で、NECがPC-9821で最初に採用した。

3.5インチフロッピーは、安価なデータ交換・配布用、小型の記録媒体として広く使用されていた。パソコン雑誌の付録にも使われていた。しかし、データ交換・配布では、1990年代初頭になるとCD-ROMが普及し、さらに中頃からインターネットが普及すると、それらによって代替されるようになった。小型媒体でもMOやCD/DVDなどに代替され、さらにUSBメモリの普及により、ほとんど姿を消すようになった。
 2000年代中頃からは、フロッピーディスク内蔵するパソコンが少なくなった。そして、2009年に日立マクセルと三菱化学メディアがフロッピーの生産を終了し、国内最大手のソニーも2011年3月末で終了した。これにより、実質的にフロッピーは消滅したことになる。


フロッピーディスクの国内生産量推移
出典: 経済産業省「フレキシブルディスク国内生産推移」より加工作図

光磁気ディスク(MO:Magneto-Optical disk)

  • 1962年 Conger,Tomlinson、光磁気メモリを提案
  • 1971年 ハネウェル、1972年IBM、MOディスク試作
  • 1988年 国内各社、5インチMOディスク(両面650MB)発売
  • 1889年 国内各社、3.5インチMOディスク((片面128MB))発売
    パソコン用では3.5インチが主流になる。ほとんどがSCSIによる外付け接続
  • 1995年頃 3.5インチ、640MBが主流に
  • 1998年 富士通他、GIGAMO(3.5”片面1.3GB)発売
    記憶方式に新技術を採用して大容量化した。従来のMOとは区別するのが適当

1980年代では、リムーバブルメディアとしてフロッピーが普及していたが、記憶容量は1.44MBしかなく、大容量の媒体が求められていた。また、1980年代末にはCD-ROMが出現したが、読み込み専用であり、利用者がデータを書き出して保管するには特殊な機器が必要であった。このようなニーズに応えたのがMOである。

同様な機能をもつものにZipドライブがあり、世界的にはこれが普及していた。日本でのMOの普及は独特の現象であった。おそらく、国民機であったPC-9800シリーズではデバイスドライバを必要とせずにSCSI接続できたこと、それにより、他社パソコンも追従し、各社がMOドライブ、MOディスクを生産したことによるものと思われる。

1990年中頃には、ドライブもディスクも大容量(640MB)低価格になり、データ保管やバックアップ用に普及した。しかし、CR-R/RW、USBメモリの出現、USBコネクタの普及によるSCSI標準装備パソコンの減少などにより、次第に普及度が下がり、2000年代には通常用途では消えてしまった。
 MOドライブの生産メーカーは、2000年代後半からは富士通とコニカミノルタのみになってしまった。MOディスクは、2009年に日立マクセル、三菱化学が生産を終了、国内ではソニーだけになってしまった。


光ディスク

CD-ROM

  • 1981年 ソニーとPhilips、音楽用CD開発
  • 1987年 アップル、MacintoshにオプションでCR-ROMを搭載
  • 1988年 NEC、CR-ROMドライブを発売
  • 1989年 富士通:FM-TOWNS、NEC:PC-8801M CD-ROMドライブ標準搭載

当時の読み取り速度は音楽用CDと同じ150kB/秒であった。これを1倍速あるいは等速という。その後次第に2倍速、4倍速となり、2000年代後半では48倍速が通常になった。

CD-R/RW

  • 1988年 太陽誘電、CD-Rを開発
  • 1996年 パソコン用のCD-Rドライブ商品化
  • 1996年 CD-RW規格
    リコー、三菱化学メディア、ソニー、フィリップス、ヒューレット・パッカードの共同開発
  • 1997年 CD-RWドライブ商品化
    CD-ROM、CD-R/RW対応ドライブが多くなり、低価格化、高速化が進んだ。

CD-R/RWともに記憶容量は650MB/700MB、サイズ12cm。
 CD-Rは追記型で、書き換える場合は以前の記録場所を使えなくして新規に書き込む。そのため、書き換えの少ない用途(データの配布など)に限定。
 CD-RWは全体を消去したうえで何度でも(1,000回程度)書き込みができる。

DVD

  • 1994年 DVDの基本仕様
    東芝+パイオニア、ソニー+フィリップスの2系統→1996年に統一規格に
  • 1996年 DVDドライブ CD-R/RWと互換性がなく、それぞれ別個のドライブ
  • 2000年 コンボドライブ DVD-ROM読み込みとCD-R/RW書き込みに対応
  • 2002年 スーパーマルチドライブ CD系/DVD系すべての読み込み書き出しに対応

DVD(Digital Versatile Disk)は赤色ビームを用いた記憶媒体で、主に次の種類がある。容量は片面4.7GB、両面9.4GB
・DVD-ROM(読み出し専用) CD-ROMに対応
・DVD-R(追記型)CD-Rに対応
・DVD-RW(書き換え可能、1000回程度) CD-RWに対応、パイオニアが開発
・DVD-RAM(書き換え可能、10万回程度)パナソニックが中心となって開発

CD-R/RWなどと比較して約6倍の記憶容量をもつため、長時間映像の記録ができるようになった。パソコンでの利用では、HDDの容量増大によるパックアップ量の増大、映像など大容量データ保存などのため、大容量のリムーバルデバイスが求められるようになってきた。また、2000年代前半から、パソコンにDVDもCDも使える内蔵ドライブが標準装備されることが多くなり、「大は小を兼ねる」ことからDVDを使う機会が増大した。
 しかし、2000年中頃からUSBメモリとブルーレイディクスが登場した。USBメモリが急激に大容量化したことからリムーバブル用途ではUSBメモリに、映像録画などではさらに大容量(50GB)のブルーレイディスクに押されるようになった。
 現在では、媒体の容量、価格、用途により切り分けられている状況である。


光ディスクの国内生産量推移
(書換型+追記型。MOも含む。この時点ではBDは含まれていない)
出典: 経済産業省「光ディスク国内生産推移」より加工作図

ブルーレイディスク(BD:Blu-ray Disc)

  • 1996年 中村修二(日亜化学工業)、青色半導体レーザ発明
    この発明に対して、企業が支払った金額があまりにも少額であったため、発明者が提訴して勝訴した。企業内発明者の報酬に関する話題が高まった事例としても有名。
  • 日経BP Tech-On!「中村裁判 スペシャル・レポート」
    http://techon.nikkeibp.co.jp/NEWS/nakamura/
  • パテントサロン「青色LED特許紛争 -中村修二 vs 日亜化学-」
    http://www.patentsalon.com/topics/blueled/nakamura.html
  • 2002年 BD/HD規格争いの始まり
  • 2008年 HD DVDプロモーショングループ解散。規格争いの終結
    次世代DVD規格として、日立、松下電器(現:パナソニック)ら海外メーカーも含めた9社は「Blu-ray Disc」規格、東芝とNECは「HD DVD」規格を提案。それぞれ、映画会社やソフトウェア会社を巻き込み勢力拡大を図るが、結果として、Blu-rayが勝利。これによりBlu-ray製品が続出。
  • Wikipedia「Blu-ray Disc」
    http://ja.wikipedia.org/wiki/Blu-ray_Disc
  • Wikipedia「HD DVD」
    http://ja.wikipedia.org/wiki/HD_DVD
  • Yomiuri Online「東芝「HDDVD」撤退、規格争いブルーレイに一本化」
    http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20080217nt06.htm

DVDは赤色、BDは青紫色レーザーを採用している。青紫色は波長が短いので記録密度を大きくすること、すなわちディスクの容量を大きく(2層で50GB)することができる。
 BDは、地デジのハイビジョン放送の録画や市販の映画などのコンテンツの再生など、AV系での利用が主であるが、パソコンのHDDが大容量になったのに伴い、そのバックアップにも便利である。そのため、各社が外付けのDBドライブを生産しているし、AV用途(映像をパソコンで見るなど)を重視したパソコンではBDを内蔵したものもある。これらのドライブの多くは、CD-RやDVDなども使えるようになっている。

  • 2006年 パナソニック LF-MB121JD
    パソコン用内蔵型Blu-rayディスクドライブ
  • 2006年 SONY VAIO type A
    ノートパソコンで、世界初にハイビジョン映像を視聴、編集、保存までを実現

著作権保護による制限

放送などの録画では著作権保護の問題がある。以下のことはDVDとBDに共通することであるが、ここではBDとして記述する。
 録画コンテンツをパソコンとディスプレイを接続して視聴する場合、デジタル接続の場合は、パソコンとディスプレイの両方が著作権保護技術に対応している必要がある。アナログ接続ではその必要はないが画質が低下してしまう。
また、BD媒体も「CPRM対応」とそうでないものに分かれている。記憶方式は全く同じだといわれているが、国内のデジタル放送には著作権保護機能が組み込まれているため、その録画にはCPRMに対応していることが必要である。バックアップなどのデータ用では、その必要はない。

雑談「Blu-ray Disc」の名称

「blue-ray Disk」ではない。
 「Blue-ray」とすると一般名称になるとの指摘があり、それを避けたのだそうだ。
 HDDやDVDは「disk」だ。一般用語のお皿は「dinc」し、昔のレコードは「disc」だった。「アナログはdisc、デジタルはdisk」だとの論もあったがいかがわしいし、BDで否定されてしまう。どうも音楽分野ではdisc、コンピュータ分野ではdiskという歴史的習慣によるものらしい。では、コンピュータ分野で誰がdiskと言い出したのか? 私は知らない。


半導体記憶:USBメモリとSSD

USBメモリ

USB(Universal Serial Bus)とは、パソコンに周辺機器を接続する規格の一つである。パソコンのUSBコネクタにケーブルで周辺機器を接続する。USBメモリとは、フラッシュメモリにUSBケーブルのコネクタを組み込んだもので、USBメモリをパソコンに直接差し込むことができる。

  • 1985年 舛岡富士雄(東芝)フラッシュメモリ発明
  • 1989年 モーラン(Dov Moran)USBメモリ発明
  • 1996年 USB1.0規格策定 転送速度12Mbps
  • 1996年 IBM、USB端子をもつパソコンを発売
  • 1998年 Windows98でUSBを標準仕様に加えた
  • 1999年 アップル、iMacでの接続端子をUSBに限定
  • 2000年 Trek2000社(シンガポール)16MB、32MB、64MB 日本で初めて発売
  • 2000年 USB2.0規格策定 転送速度480Mbps
  • 2002年 IBM 世界初のUSB2.0対応USBメモリ 1.5MB/s
  • 2006年 IOCELL社(韓国)8GB
  • 2007年 IOCELL社(韓国)16GB
  • 2008年 BUSlink社(米国)64GB
  • 2008年 Kingston Technology社(米国)128GB
  • 2008年 USB3.0規格策定 転送速度5Gbps
  • 2009年 Kingston Technology社(米国)256GB
  • 2009年 Super Talent 世界初のUSB3.0対応USBメモリ 320MB/s

USB接続やUSBメモリには、次のような長所があるため急速に普及した。
・回転機構がない:軽量小型化できる
・プラグアンドプレイ機能:ドライバが不要であり、挿入すればシステムが自動認識する
・ホットプラグ機能:パソコン稼働中に差し込み取り出しができる

フラッシュSSD(Flash Solid State Drive)

SSDは、フラッシュメモリを発展させた記憶媒体で、HDDの代替機器として2004年頃から注目されるようになり、2000年代後半には高級機に採用されるようになった。
 SSDでは、機械部分がないため、HDDと比較して、小型化や省電力化が重要なノートパソコンに適している。起動時間が短縮される、騒音がない、耐環境性が高いなどの利点もある。
 反面、HDDに比べて記憶容量あたりの単価が高く、記憶素子の書き換え回数に上限があることが欠点である(そのうちに解決されるとは思うが)。

  • 2004年 日立超LSIシステムズ Flash Memory Driveを発表
  • 2006年 ソニー、世界初パソコンにSSDを採用
    VAIO typeUモデルにサムソンの16GBのSSDを採用
  • 2007年 STEC 256/512GB、3.5インチ
  • 2009年 pureSillicon 1TB、2.5インチ