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パソコンの外部記憶装置は、磁気ディスク(HDD)のようにパソコンに必須で通常は内蔵されているものと、CD-ROMやUSBメモリのように装置(ドライブ)と媒体(デバイス)が別になっているもの(リムーバブルデバイス)に大別できる。
現在のパソコンでは、HDDが故障するとパソコン全体が使えなくなってしまう。それはOSや基本的なソフトウェアが磁気ディスクに入っているからだ。これは汎用コンピュータでも同じである。ところが初期のパソコンでは、OSなどの規模が小さかったし、パソコンに使うような安価なHDDが開発されていなかったので、OSなどをROMに書き込んでいたのである。すなわち、HDDがなくもパソコンが使えた。
それが、1980年代になると、MS-DOSのようにOSが大きくなったこと、HDDが安価になったことから、現在の方式に移行したのである。その後、HDDは小型化、大容量化、高速化が進んだ。しかし、HDDは回転機構をもつことから限界がある。2000年代末頃から、その限界がいわれるようになり、半導体素子を用いたSSDが注目されるようになった。
データやプログラムの保管や他人への配布のためには、リムーバブルデバイスが必要である。大きな流れとして、カセットテープ→フロッピー→光ディスク(CD-ROM→CD-R→DVD)→USBメモリへと大容量化、利便化が進み、2000年後半には新しい光ディスクであるブルーレイディスクが出現した。
HDDは、汎用コンピュータやオフコンでは以前から一般的に使用されており、大容量化、高速度化競争の時代になっていた。しかし、パソコンでは小型化と低廉化が必要なため、実用化した製品が出現したのは、1980年代前半である。この分野では国産メーカー、特にノートパソコンのトップメーカーである東芝がリーダーシップをもっていた。
当時はHDDは高価だった(定かではないが40万円程度だったと記憶している。庶民には高根の花だった)ので、販売政策上もそれを内蔵するのは不適切であり、外付けのためのコネクタがあり、それをアクセスするOSを搭載しているだけだった。1981年には、「ディスク」をベースとするOS(MS-DOS)が開発されていたが、この「ディスク」はフロッピーディスクでもよかったのである。
HDD内蔵した(標準装備した)パソコンが出現したのは、1984にIBMがAT/PC機を発売してからである。この初代機では、フロッピーを装備したものと、10MBのHDDを内蔵した機種があった。
日本では、AT互換機は少なかったが、この動向からHDDを内蔵する機種が増加した。HDDの価格も急速に安価になった。
デスクトップパソコンに内蔵されるHDDは、3.5インチが主流になった。
1990年代になると、ノートパソコンが普及するようになった(参照:「ノートパソコンの歴史 1990年代」)。それに伴い、HDDの小型化が要求され、2.5インチになった。1990年代中頃からは、その薄型軽量化、大容量化の競争になった。
なお、2000年代になると、ネットブックなどの小型パソコン用に、さらに小型化が求められ、1.8インチ、0.85インチなども出現した。
HDDのヘッドの感度がよくなれば(微細な磁気を読み取ることができれば)、ディスクの記録密度を高くすることができ、記憶容量を大きくすることができる。1990年代後半から2000年代にかけて、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッドなどが開発され(簡単な説明)、急速に記録密度が増加した。
回転速度が大ならば、サーチ時間や転送時間が短くなる。そのため、モータなどの改善により、回転速度の向上が図られてきた(回転速度は、1分間の回転数rpmで表示される)。
1990年代初頭までは、すべてのサイズで3600rpmが一般的であった。1990年代中頃から3.5インチでは、7200rpmが主流となり、現在に至っている。高回転のものでは、15000rpmのものもある(2005年、Maxtor製のAtlas 15KII SAS)。2.5インチでは、1990年代中頃から現在まで4200rpmが多い。
世界でのパソコン用HDDメーカーを出荷台数シェア順に列挙する。
初期のパソコンが出現した1970年代後半には、下左図のような音声録音用のカセットテープは既に普及していた。フロッピーディスクも開発されていたのだが高価だったため、当初では記憶装置としてカセットテープを使うのが一般的であった。音声用のカセットレコーダをそのままパソコンに接続して用いることもできたが、品質向上のため、専用のカセットデータレコーダもあった。下右図は専用レコーダを搭載したパソコンの例(MZ-80)である。
カセットテープは安価であったが使いにくいものだった。そのため、1980年代中頃になると、フロッピーディスクの低価格化と普及に伴って利用されなくなった。
フロッピーディスクの媒体自体は、円盤の薄い磁気シートであり、そのサイズは、歴史的に8インチ→5インチ(5.25インチ)→3.5インチと変遷してきた(用途によりさらに小さいサイズもあるが)。8インチと5インチは紙のカバー、3.5インチはプラスチックの密閉容器に納められている。
8インチ(フロッピーディスク)1971年、IBM開発、容量128kB。
5.25インチ(ミニフロッピーディスク)1976年、米シュガートアソシエイツ開発。容量が80kB。
円状の磁気シートが紙の保護ケースに包まれていた。ペラペラなので磁気ディスクとの対比からフロッピーディスクと呼ばれるようになった(IBMは、フレキシブルディスクと命名したのだが、特に日本では定着しなかった)。
当時の定番的笑話。フロッピーからプログラムを読み込むのに、初心者に「フロッピーを開いて~」といったら、紙のカバーを破って磁気シートを取り出してしまい「何も書いてないけど?」
3.5インチ(マイクロフロッピーディスク)
1980年、ソニー開発。当初は360kB。1984年にISO規格になる。
プラスチックの容器に納められるようになったが、「フロッピー」の名称は残った。
外付け装置ならば、パソコンに関係なく古い大サイズのものが使えるが、内蔵の場合はそれに規制される。1982年頃に発表されたパソコンでは、5.25インチを内蔵したものと3.5インチを内蔵したものの両方があったが、急速に3.5インチになり、その後長い間、3.5インチフロッピーディスク内蔵がパソコンの標準仕様になった。
3.5インチフロッピーは、記憶容量から次の3モードがある。最終的には2HDになった。
・2D(両面倍密度)320 - 360kB
・2DD(両面倍密度倍トラック)640 - 720kB
・2HD(両面高密度):1.44MB、最も普及した規格
フロッピー装置は、この3規格を読み書きできる3モードが一般的で、NECがPC-9821で最初に採用した。
3.5インチフロッピーは、安価なデータ交換・配布用、小型の記録媒体として広く使用されていた。パソコン雑誌の付録にも使われていた。しかし、データ交換・配布では、1990年代初頭になるとCD-ROMが普及し、さらに中頃からインターネットが普及すると、それらによって代替されるようになった。小型媒体でもMOやCD/DVDなどに代替され、さらにUSBメモリの普及により、ほとんど姿を消すようになった。
2000年代中頃からは、フロッピーディスク内蔵するパソコンが少なくなった。そして、2009年に日立マクセルと三菱化学メディアがフロッピーの生産を終了し、国内最大手のソニーも2011年3月末で終了した。これにより、実質的にフロッピーは消滅したことになる。
1980年代では、リムーバブルメディアとしてフロッピーが普及していたが、記憶容量は1.44MBしかなく、大容量の媒体が求められていた。また、1980年代末にはCD-ROMが出現したが、読み込み専用であり、利用者がデータを書き出して保管するには特殊な機器が必要であった。このようなニーズに応えたのがMOである。
同様な機能をもつものにZipドライブがあり、世界的にはこれが普及していた。日本でのMOの普及は独特の現象であった。おそらく、国民機であったPC-9800シリーズではデバイスドライバを必要とせずにSCSI接続できたこと、それにより、他社パソコンも追従し、各社がMOドライブ、MOディスクを生産したことによるものと思われる。
1990年中頃には、ドライブもディスクも大容量(640MB)低価格になり、データ保管やバックアップ用に普及した。しかし、CR-R/RW、USBメモリの出現、USBコネクタの普及によるSCSI標準装備パソコンの減少などにより、次第に普及度が下がり、2000年代には通常用途では消えてしまった。
MOドライブの生産メーカーは、2000年代後半からは富士通とコニカミノルタのみになってしまった。MOディスクは、2009年に日立マクセル、三菱化学が生産を終了、国内ではソニーだけになってしまった。
当時の読み取り速度は音楽用CDと同じ150kB/秒であった。これを1倍速あるいは等速という。その後次第に2倍速、4倍速となり、2000年代後半では48倍速が通常になった。
CD-R/RWともに記憶容量は650MB/700MB、サイズ12cm。
CD-Rは追記型で、書き換える場合は以前の記録場所を使えなくして新規に書き込む。そのため、書き換えの少ない用途(データの配布など)に限定。
CD-RWは全体を消去したうえで何度でも(1,000回程度)書き込みができる。
DVD(Digital Versatile Disk)は赤色ビームを用いた記憶媒体で、主に次の種類がある。容量は片面4.7GB、両面9.4GB
・DVD-ROM(読み出し専用) CD-ROMに対応
・DVD-R(追記型)CD-Rに対応
・DVD-RW(書き換え可能、1000回程度) CD-RWに対応、パイオニアが開発
・DVD-RAM(書き換え可能、10万回程度)パナソニックが中心となって開発
CD-R/RWなどと比較して約6倍の記憶容量をもつため、長時間映像の記録ができるようになった。パソコンでの利用では、HDDの容量増大によるパックアップ量の増大、映像など大容量データ保存などのため、大容量のリムーバルデバイスが求められるようになってきた。また、2000年代前半から、パソコンにDVDもCDも使える内蔵ドライブが標準装備されることが多くなり、「大は小を兼ねる」ことからDVDを使う機会が増大した。
しかし、2000年中頃からUSBメモリとブルーレイディクスが登場した。USBメモリが急激に大容量化したことからリムーバブル用途ではUSBメモリに、映像録画などではさらに大容量(50GB)のブルーレイディスクに押されるようになった。
現在では、媒体の容量、価格、用途により切り分けられている状況である。
DVDは赤色、BDは青紫色レーザーを採用している。青紫色は波長が短いので記録密度を大きくすること、すなわちディスクの容量を大きく(2層で50GB)することができる。
BDは、地デジのハイビジョン放送の録画や市販の映画などのコンテンツの再生など、AV系での利用が主であるが、パソコンのHDDが大容量になったのに伴い、そのバックアップにも便利である。そのため、各社が外付けのDBドライブを生産しているし、AV用途(映像をパソコンで見るなど)を重視したパソコンではBDを内蔵したものもある。これらのドライブの多くは、CD-RやDVDなども使えるようになっている。
放送などの録画では著作権保護の問題がある。以下のことはDVDとBDに共通することであるが、ここではBDとして記述する。
録画コンテンツをパソコンとディスプレイを接続して視聴する場合、デジタル接続の場合は、パソコンとディスプレイの両方が著作権保護技術に対応している必要がある。アナログ接続ではその必要はないが画質が低下してしまう。
また、BD媒体も「CPRM対応」とそうでないものに分かれている。記憶方式は全く同じだといわれているが、国内のデジタル放送には著作権保護機能が組み込まれているため、その録画にはCPRMに対応していることが必要である。バックアップなどのデータ用では、その必要はない。
「blue-ray Disk」ではない。
「Blue-ray」とすると一般名称になるとの指摘があり、それを避けたのだそうだ。
HDDやDVDは「disk」だ。一般用語のお皿は「dinc」し、昔のレコードは「disc」だった。「アナログはdisc、デジタルはdisk」だとの論もあったがいかがわしいし、BDで否定されてしまう。どうも音楽分野ではdisc、コンピュータ分野ではdiskという歴史的習慣によるものらしい。では、コンピュータ分野で誰がdiskと言い出したのか? 私は知らない。
USB(Universal Serial Bus)とは、パソコンに周辺機器を接続する規格の一つである。パソコンのUSBコネクタにケーブルで周辺機器を接続する。USBメモリとは、フラッシュメモリにUSBケーブルのコネクタを組み込んだもので、USBメモリをパソコンに直接差し込むことができる。
USB接続やUSBメモリには、次のような長所があるため急速に普及した。
・回転機構がない:軽量小型化できる
・プラグアンドプレイ機能:ドライバが不要であり、挿入すればシステムが自動認識する
・ホットプラグ機能:パソコン稼働中に差し込み取り出しができる
SSDは、フラッシュメモリを発展させた記憶媒体で、HDDの代替機器として2004年頃から注目されるようになり、2000年代後半には高級機に採用されるようになった。
SSDでは、機械部分がないため、HDDと比較して、小型化や省電力化が重要なノートパソコンに適している。起動時間が短縮される、騒音がない、耐環境性が高いなどの利点もある。
反面、HDDに比べて記憶容量あたりの単価が高く、記憶素子の書き換え回数に上限があることが欠点である(そのうちに解決されるとは思うが)。