独占禁止法の目的
独占禁止法は、正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」、略して「独禁法」ともいいます。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO054.html
- 第一条
この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
単独あるいは数社の企業が手を組み、競争相手を市場から締め出したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為を「私的独占」といいます。
私的独占の状況では、独占企業は競争相手がいないので、消費者により安く、より良い商品を売ろうというよう企業努力をしなくなります。また、取引先企業に圧力をかけるなど、新規参入企業を排除する行動をすると、価格や品質に優れた新規参入者が市場から締め出されてしまいます。
消費者が、より安くより良い商品を選ぶ権利を確保するには、自由競争の市場である必要があります。自由競争は資本主義市場経済の基本だといえます。独占禁止法は、市場の自由競争を確保し、それを妨げる私的独占行為を規制するための法律です。
- (独占と寡占)市場に一つの売り手しかいない状態を「独占」、少数の売り手しかいない状態を「寡占」といいますが、ここでは、実際の売り手の市場支配力により寡占も含めて独占といいます。寡占ではあるが、自由な競争を阻害していないならば独占にはなりません。
- (工業所有権との関係)例えば特許権は独占の権利を認めており、独占禁止法と矛盾することが考えられますが、独占禁止法では、著作権法、特許法、意匠法、商標法による権利の行使には、独占禁止法を適用しない規定になっています。
独占禁止法を運用し、監視しているのが公正取引委員会です。国の行政組織上は内閣府の外局として位置付けられています。
違反の疑いがあればその調査を行い、違反が認められると、違反行為をやめるように命令を下します。
また、「不公正な取引方法」などに関して具体的事項の設定をしています。
独占禁止法による禁止事項
独占禁止法が禁止する行為類型は、
私的独占
不当な取引制限
不公正な取引方法
に区分されます。
私的独占
- 競争制限的な企業結合
一企業が特定の分野で過度なシェアをもつと自由競争が阻害されます。正当な企業努力によりシェアを拡大した結果であれば仕方がありませんが、企業結合(買収や合併など)により、事業支配力が過度に集中することとなる会社となつてはならないとされています。一定の企業結合を実施しようとする場合は、競争制限的か否かをあらかじめ審査するために公正取引員会への届出が義務付けられています。
- 私的独占行為
市場シェアの相当に高い企業が(一社あるいは数社が話し合って)、新規参入を妨げたり、メンバー以外の弱者を市場から締め出す行為は禁止されています。
例えば、地元企業が競合商品を出す地域だけは、採算を度外視する安値で販売し、地元企業を撤退させるようなな行為です。
不当な取引制限
これらは、単に排除命令を受けるだけでなく、刑事罰になります。課徴金を科せられることもあります。
- カルテル:複数の企業が談合して、商品価格や生産数量などを共同で取り決める行為です。
- 入札談合:公共事業などの入札に際して、関連企業が談合し、受注企業を決めて各社の入札金額を決めることです。
不公正な取引方法
「不公正な取引方法」とは、「公正な競争を阻害する恐れのあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」をいうとされています。すべての業種に適用される一般指定と、特殊の業者にのみ適用される特殊指定があります。主なものを列挙します。
- 再販売価格の拘束
小売業者等に指定した価格を守らせることです。
ただし、書籍や音楽CDなどの著作物など例外の品目があります。
- 共同の取引拒絶
例えば安売り小売店には取引しないことを申し合わせるような行為です。
- 取引妨害
ライバル会社とその取引相手間の取引について、契約成立の阻止、契約不履行の誘引などにより、その取引を不当に妨害することです。
- 優越的地位の濫用
取引上優越した地位にある企業が、取引先に対して不当に不利益を与える行為です。
大手スーパーが納入業者に対して、押し付け販売、返品、従業員派遣や協賛金負担などを強いるなどがこれにあたります。
なお、下請取引においては「下請法」により、さらに詳細な制限規定がされています。
- 抱合せ販売
ある商品を販売する際に、他の商品も同時に購入させることです。取引強制であり優越的地位の濫用とみなされます。
- 景品表示法関連
虚偽広告、誇大広告、過大な景品などは、消費者の正しい商品選択をゆがめるので景品表示法によって規制されています。