https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC0000000151
例えば引越時に、全ての手続を個々の窓口で処理していた環境では、新・旧住所の市役所に行き、各課の窓口を回り、同じような内容の種類を作成することになり、多大な時間がかかり煩雑なものでした。
国は、2000年以来、IT推進戦略の大きな柱として、行政内部のIT化による効率性の向上、行政と民間の接点である各種申請のオンライン化など、電子政府・電子自治体を推進してきました。その例として、引越時手続をパソコンやスマートフォンから行政システムに1回アクセスするだけで、全ての手続が完了できるようにすると説明しました。
実際、多くの自治体が引越時手続システムをはじめ多様なオンラインシステムを構築してきました。しかし、多様な理由により利用率が低く費用対効果が低いシステムが多いことが指摘されました。引越時手続システムでは、多くのサービスが関連していますが、サービス間の連携が複雑で期待した効率性が得られないとか、自治体間の仕組みの違いにより連携が円滑にできないなどの課題が指摘されました。
サービス間の連携では申請者情報の結合が基本ですが、そこ結合キーになるのは個人コードですから、各サービスで共通の個人コードを用いるのが便利です。住民基本台帳法(1967年成立)やマイナンバー法(2013年)が定められたのですが、その個人コードの用途は限定されてきました。
もし、マイナンバーが民間システムへも適用できれば、引越時手続システムに電気・ガス・水道事業者などのシステムと円滑な連携が可能になるので、非常に便利になります。しかし、それには万全なセキュリティ対策が求められます。
2016年に「官民データ基本法」が成立。いわゆるオープンデータの活用を目的とした法律ですが、それに関連して、行政手続等のオンライン化、マイナンバーの利用拡大を掲げています。それを受けた国のIT戦略である「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」では、これらに関して具体的な方策を示しています。
国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会が実現されるよう、
【対象・手段】
情報通信技術を活用した行政の推進について、
その基本原則及び情報システムの整備、
情報通信技術の利用のための能力
又は利用の機会における格差の是正
その他の情報通信技術を利用する方法
により
【施策】
手続等を行うために必要となる事項を定めるとともに、
民間手続における情報通信技術の活用の促進に関する施策について定めることにより、
【目的】
手続等に係る関係者の利便性の向上、
行政運営の簡素化及び効率化
並びに社会経済活動の更なる円滑化を図り、
もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
「国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会の実現」を目標としています。そして、そのために、「デジタルファースト」「ワンスオンリー」「コネクテッド・ワンストップ」の基本原則を定めるとしています(この用語は法律本文にはありません。「概要」(上図)で示されています)。
これらの実現のために、「行政手続きを原則オンライン化(ただし、地方公共団体などに関しては努力義務とする)し、本人確認や手数料納付も電子署名や電子納付などでオンラインで実施、行政手続きに関連する民間手続きもワンストップ化、法令に基づく民間手続きについて支障がないと認める場合にはオンライン化を可能とする法制上の措置を実施する」とされています。
ワンスオンリーの観点では健康保険証や運転免許証でのマイナンバー利用が考えられます。また、コネクテッド・ワンストップを実現するには、マイナンバーの民間システムへの利用拡大が求められます。しかし、そのためには関連法の法改正が必要ですし、より厳格なセキュリティ対策が求められます。
デジタルファーストではオンラインでの本人認証が必要です。それには電子証明書がありますが、利用者証明用電子証明書の利用方法の拡大(暗証番号入力を要しない方式)のための公的個人認証法の改訂やマイナンバーカードの利用が検討されています。